私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

60 / 86
第8話 立て直し

 

執務室でゆっくりした後、

3人で食堂へ向かった。*1

 

食堂にはこの鎮守府のほぼ全員がいた。

 

総勢で50人ほどだろうか?

 

その中に天龍と加古と朝潮がいない。

 

長門たちもいないがそれは仕方ない。

 

天龍と加古は入渠施設にいるだろうが、

朝潮はどこにいるのだろう?

 

気になったが、猫さんの話があるので

考えるのを止めた。

 

これからのことが話された。

 

昨日の夜に北上から聞いた話と同じだ。

 

今から行うのはこの鎮守府の立て直し。

 

生活環境から色々直す予定である。

 

とりあえず今日は

鎮守府の掃除と修理をするそうだ。

 

まずはそこから始めるらしい。

 

幸い、反対する艦娘はいなかった。

 

提督に仲間を人質に取られた艦娘が

多かったからだ。

 

理由は3つ。

 

1つは赤城さん達を

助けに来たことが分かったから。

 

2つ目は人間に対する憎悪よりも

解放された安心感が強かったこと。

 

この鎮守府の支えになっていた

赤城さんの救出と鎮守府の開放。

 

それが彼女たちにとって

信頼できる理由になるのだ。

 

そしてもう1つは私達の戦い方。

 

当てないようにして無力化するやり方。

 

なるべく傷つけないやり方をみて

敵対する相手ではないと思ったそうだ。

 

敵意が無いことが分かり、

いい人判定されたということらしい。

 

そのため、すぐに

行動することになった。

 

最初に私達は海岸沿いに来ていた。

 

猫さんに言われるがままついてきたが

ここには何もない。

 

なぜこんなところに来たのか。

 

それは水平線の向こうに答えが見えた。

 

いくつかの影が見えた。

 

それは次第に大きくなっていく。

 

私は目が良いため、

みんなより早く視認できた。

 

やってきたのは睦月型。

 

睦月、如月、皐月、文月、長月、三日月

の6人と仁王立ちしている明石。

 

大きな船のようなものを

曳いてやってきた。

 

「皆さん、お待たせしました!

呉鎮守府支援部隊、到着しました!」

 

大きな声で宣言する明石。

 

こうして鎮守府の立て直しが始まった。

 

 

 

 

 

明石たちが持ってきた大きな船。

 

大発と呼ばれるその船に

多くの資材が載せられていた。

 

中には食材や木材、

色々な小道具があった。

 

それを陸にあげていき、

順々に運んでいく。

 

いくつかのグループに分けて

各役割のところに。

 

私は鎮守府の修理へ向かった。

 

明石の指揮の下、鎮守府を直していく。

 

(きし)む床、崩れかけた壁、

ボロボロの施設など。

 

人数を分けて修理していく。

 

私は駆逐の子たちと一緒に床の修理だ。

 

明石が用意してくれたメモのおかげで

迷うことなく作業を行う。

 

駆逐達と協力して作業をするのだが、

みんなテキパキ動いてくれる。

 

次第に楽しくなったのだろう。

 

みんなが次は何をしたらいいのかと

目を輝かせながら聞いてくるのだ。

 

そのため私がメモを見ながら指示を出し

資材を渡すという形になっていた。

 

みんなが楽しんでやってくれるため、

早く作業が進んでいく。

 

休憩を挟みながら

作業を続けること3時間。

 

私達は床の修理を終えた。

 

みんなが達成感に満足していた。

 

私はその子たちを見て

昔を思い出していた。

 

近所の子たちとの思い出。

 

大きな作業をした達成感。

 

頑張ってくれた良い子たち。

 

それを思い出した。

 

だからだろうか。

 

一番近くにいた駆逐艦の子の頭を

無意識のうちに撫でていた。

 

気づいてすぐに手を離したが、

その子が私の手を取って頭に置く。

 

どうやら嫌ではなかったようだ。

 

「ずるい!私にも!」

 

そう言って他の子が近づいてきて

私のもう片方の手を頭に乗せる。

 

私はそのまま優しく頭を撫でる。

 

2人はとても嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

私はその顔につられて笑顔になった。

 

すると、駆逐達が集まってきた。

 

私を囲うようにやってきて、

何人かは抱き着いてくる。

 

その子たちの頭も撫でていく。

 

みんなの満足する顔に

私の歌いたい欲が戻ってきたようだ。

 

私は次第に鼻歌を歌う。

 

私も満足しているんだと。

 

次第に鼻歌から歌に変わる。

 

 

 

恐怖からの解放と変わりゆく環境。

 

どこからか吹く気持ちの良い風。

 

子供たちの喜び。

 

戻ってきた仲間たちと一緒に

いつかここで盛大に歌いたい。

 

 

 

そんな思いの歌を私は紡ぐ。

 

その歌に駆逐達も反応する。

 

みんなで盛大にやりたい。

 

そう思っている子は多いようだ。

 

いつかやろう。

 

そうみんなと約束して、

私達は広場の方へ戻った。

 

 

 

 

 

広場に戻るとみんな集まっていた。

 

どうやら私たちが最後のようだ。

 

集まっている理由は

終わったからだけではなさそうだ。

 

とてもいい匂いが漂っている。

 

駆逐達は匂いにつられたのか

お腹のむしが鳴き始めた。

 

みんな走って匂いの元へ向かう。

 

そこにあるのは大きな鍋。

 

匂いの正体はその鍋から漂う

カレーの匂いだった。

 

鍋の傍にいる間宮が

みんなに配膳していた。

 

よく考えたらもう12時を過ぎていた。

 

みんなのお腹がす「キュ∼」……。

 

…私も例外ではなかった。

 

駆逐達と一緒に並んで

私もカレーを貰った。

 

そのカレーは甘すぎず、辛すぎず。

 

食べやすい辛さで美味しい。

 

何回でもお代わりしたくなる味だった。

 

流石にそんな量は無かったが…。

 

食べ終わった私たちは作業を再開した。

 

とは言ってもやることは終わったため、

部屋割などを決めることになった。

 

その場には朝にいなかった天龍たちと

長門たちの姿があった。

 

後で聞いた話だが。

明石が消臭スプレーをかけたらしい。

 

凄い効果で匂いがすぐに消えたそうだ。

 

そのため、ほぼ全員で

部屋割や配置を決めることになった。

 

基本は姉妹、仲が良い者同士の部屋割。

 

心細い子たちには軽巡以上の艦娘が

一緒の部屋になった。

 

後は長門や霧島を中心とした大人たちが

必要な施設の配置を話し合う。

 

私はその話が終わるまで

駆逐達とのコミュニケーションを行う。

 

これは北上の手伝いでもある。

 

北上がここに残った理由は

カウンセリングをすること。

 

これから先、嫌でも人との関わりはある。

 

解放されても憎悪が全員から

なくなったわけではない。

 

それに新しく来る提督やお偉いさんの

来訪はどうしようもない。

 

人間不信は少しでも減らしておきたい。

 

そのためにコミュニケーションをとる。

 

私は駆逐達、北上は軽巡以上の艦娘と。

 

駆逐の子たちは素直に答えてくれる。

 

でも、全員が素直なわけではない。

 

思ったことをそのまま口にする子。

 

不安そうに誤魔化しながら言う子。

 

そんな話をしたがらない子。

 

などの子がいるからだ。

 

それでも聞けることは聞いていく。

 

話して、歌って、遊んで、

聞いて、メモして、北上に伝える。

 

北上はそれをさらにまとめる。

 

北上が言うにはそこまで面倒くさい事は

起きないだろうとのことだ。

 

これにて1日目の作業は終わった。

 

部屋割の話も終わったようだ。

 

すると加古がやってきた。

 

加古は暁を見つけると近寄って伝える。

 

「響たちが目を覚ましたよ。」

 

その言葉を聞いた暁は

急いで入渠施設に向かう。

 

他の駆逐艦たちも向かおうとするが、

そこは軽巡以上の艦娘たちが止める。

 

あそこには赤城さんと龍田がいる。

 

あの姿はさすがに見せられない。

 

猫さんは向かわなかった。

 

行っても逆効果だろうと。

 

だが、女性ならまだ大丈夫だろう

と言われた。

 

そのため北上と入渠施設へ。

 

中に入ると脱衣所で天龍と暁が

響、雷、電を抱きしめていた。

 

3人は怯えていた。

 

 

 

ここから出るのが怖い。

 

またひどいことをされる。

 

もう、痛いのは嫌だ。

 

戦いたくない。

 

楽にさせて。

 

 

 

3人は涙を流しながらそう言葉を零す。

 

私はこの様子を

ただ見ることしかできなかった。

 

いや、見るだけが正解だろう。

 

何もしないことが最善だと。

 

そう思った私はただただ見守った。

 

その間、北上は一言も発しなかった。

 

歯を食いしばり、

拳を強く握るだけだった。

 

 

*1
(アニメ第2話でカレーを食べているところ、恐らく『間宮』ではない)




呉からの支援メンバーは
近海警備に出ているため
最初意外登場していません。

明石は工廠に籠りなので同じく。

朝潮は…いずれ分かります。

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。