私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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佐世保の立て直しは
まだまだ続きます。


第9話 これからのこと

 

暁の妹たちはあの後、

泣き疲れて眠った。

 

私は天龍たちと一緒に

3人を部屋に連れて行った。

 

3人を同じ布団に入れた後、

暁に任せて入渠施設に戻る。

 

入渠施設に入り、

残る2人の様子を見る。

 

私は入ろうとしたときに

あの姿を思い出した。

 

そのため入ることを躊躇った。

 

でも、天龍に「だいぶ治っている」と

伝えられたため覚悟を決めて入る。

 

そして赤城さんを見た。

 

赤城さんは確かに治っている。

 

髪は肩のあたりまで伸び、腕も普通だ。

 

爪も生え、左膝の骨は隠れている。

 

だが、痣や傷、火傷後、

欠損部位は治っていなかった。

 

こればかりは入渠でも治らないそうだ。

 

幸いなのはやけどをしたのが

顔の右半分であるということ。

 

これが左であればどちらの目も

見えなくなっていただろう。

 

そんな赤城さんの姿を見た私の鼓動は

やはり早くなっていた。

 

だが、初日ほどではない。

 

治っている、生きているということが

私を落ち着かせている。

 

入渠時間は約144時間。

 

大体6日である。

 

とりあえず今日はここまで。

 

ちゃんと向き合えた。

 

それだけでも大きいから。

 

私は北上と天龍に先に出ることを伝え、

自分の部屋へと戻った…。

 

…………。

 

どこまでも広がる暗闇の中。

 

私の前にはまた「()()」がいた。

 

私の心臓はまた痛いほど強く動く。

 

それは再び私に近づいた。

 

大丈夫、大丈夫。

 

そう思っているとそれは

あり得ないほど大きな口を開ける。

 

そして私をたべ「グチャ」…

 

「っ!はぁ、はぁ…。」

 

私は目を覚ます。

 

時間は2時。

 

また途中で目が覚めてしまった。

 

前よりマシになったのは確かだ。

 

それでもひどいことに変わりはないが。

 

後で北上に相談するとしよう。

 

今は横になっていたいから…。

 

 

 

 

 

結局あの後、3回起きた。

 

とてもしんどいが耐えるしかない。

 

こうして2日目に突入した。

 

今日は大本営からの支援が来る。

 

一体何が来るのかと思っていると

トラックが2、3台入ってきた。

 

広場に到着すると、艦娘が下りてくる。

 

人は1人もいなかった。

 

代表として1人出てくる。

 

出てきたのは神通教官だった。

 

「大本営特殊部隊、支援に参りました。

それと、1()()()()です。」

 

教官はそう言う。

 

すると一つの影が走ってくる。

 

向かう先にいるのは陽炎。

 

お姉ちゃん!」「ぐほぁ!

 

そのまま勢いよく突撃した。

 

そこにいたのは小さな幸運の女神。

 

顔を上げて陽炎の顔を見ると

泣きながら敬礼する。

 

「遅くなりました…陽炎型8番艦雪風。

佐世保鎮守府に、帰投しました!」

 

雪風が佐世保鎮守府に帰投した。

 

陽炎は嬉しそうに雪風を抱きしめる。

 

そこに他の艦娘たちも近づく。

 

何人かは困惑しているようだった。

 

そのような反応になるだろう。

 

雪風はここで誕生して

すぐに大本営に送られたのだから。

 

多くの交流は無かっただろう。

 

でも雪風の帰投にみんな喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

微笑ましい光景を見て、和んだところで

今日も私はお手伝いをする。

 

今日は提督の手伝い。

 

と言うよりは今後の話し合いの同席。

 

この鎮守府の方向性についてだ。

 

話し合いの場には霧島、天龍、秋雲、

神通教官に第六駆逐隊が集まっていた。

 

何故このメンバーが集まっているのか。

 

それは響たちも含め

この鎮守府に関係しているからだ。

 

少し前に猫さんが言っていた

「艦娘としては生きられない」。

 

これの真相を話してくれた。

 

これは生きていられない

と言う意味ではなかった。

 

普通の人として生きることができる

という意味らしい。

 

つまり人間と同じ生活を

送ることができるということだ。

 

過去にもそう言う艦娘はいたらしく、

今この場にいる秋雲がその例だそうだ。

 

詳しくは後で秋雲が話すだろうが、

まあ、そう言う艦娘がいる。

 

中には旅をしたり、警備会社に入ったり

鎮守府の裏方をしているのだとか。

 

そこで猫さんはある提案を出した。

 

それは響たちや龍田をこの鎮守府の

職員にしたらどうかという案だ。

 

鎮守府の清掃、食事、点検、事務などの

裏方の仕事ならできるだろうと。

 

この案の利点は2つある。

 

1つ目は人との関わりが少ないことだ。

 

人が来ない限り

基本的には艦娘としか関わらない。

 

関わっても提督や裏方作業で関わる

少数の人しかいない。

 

それに少数の人との関わりであれば

人にも慣れていくだろうと言う理由だ。

 

2つ目は居場所の確保。

 

戦えなくなった艦娘は基本解体される。

 

戦えない艦娘をいつまでも置いておく

理由はないからだ。

 

だが、役割があるのであれば

解体されることは無い。

 

ここで職員としていられれば

解体されることもない。

 

理由はこんな感じらしい。

 

さらに神通教官からも案がある。

 

それは元艦娘の憲兵隊の配置だ。

 

先ほど話した、戦えなくなった艦娘で

構成されている憲兵隊。

 

その憲兵隊であれば配置されても艦娘と

いい関係になれるだろうとのこと。

 

ほぼ全員がブラ鎮出身のため、

響たちのことを理解するだろうと。

 

その案に霧島と天龍はいい反応を見せた。

 

だが、それと同時に疑問も浮かぶ。

 

本当にそんなことが可能なのか、だ。

 

もちろん反対の意見は出てくるだろう。

 

特にあの会議で反発した提督たちは。

 

だが、そこは大丈夫らしい。

 

なんでも拘束されていった佐世保提督が

色々と情報を吐いたらしい。

 

初日は頑なに黙秘をしていたらしいが、

次の日には人が変わったように。

 

体全身がボロボロの状態になって。

 

そのため、反発をするだろう提督たちは

この件を話しても強く言えないそうだ。

 

それに、今回の案はテストも兼ねている。

 

ちゃんと鎮守府として機能するのなら、

他の鎮守府でも採用したいとのことだ。

 

これは元帥からのお願いらしい。

 

提督の手配や支援を可能な限り行うと。

 

かなりの職権乱用をしているが、

まだマシな方らしい。

 

そんな提案を霧島達は受け入れた。

 

断れないからと言う理由もあるが、

主な理由は第六駆逐隊のことだ。

 

ここまで色々してもらえているし、

この子たちも賛成したのだ。

 

天龍と暁の涙ながらの説得もあって

この案で行くことになった。

 

この後、大本営から送られた資材で

鎮守府の修理が終わった。

 

途中で妖精さんが出たり、

神通教官が猫さんに戦いを挑んだりと。

 

色々あって騒がしい一日になった。

 

神通教官たちは数人残り、

鎮守府の警備に回るそうだ。

 

雪風も残るらしい。

 

でも、役目を終えたら

また出ていくそうだ。

 

理由は自分と同じ立場の

艦娘を救いたいから。

 

雪風はしっかりとした意思を持って

この答えを出した。

 

みんなはその意思を尊重。

 

残りの時間を

大切に過ごすことに決めた。

 

徐々に修理が進む佐世保鎮守府。

 

だが、この佐世保の一番の障害が

まだ残っている。

 

まだ、向き合わないといけない者が

いることを忘れてはならない。

 

この鎮守府の営倉に入れられている

糸の切れない傀儡(マリオネット)がいることを…。

 

 

 

 

 

佐世保の修理が進んでいる頃、

大本営では、とある騒ぎがあった。

 

営倉に入れられている1人の男。

 

黒い独特の柄のパーカーを着た

白髪の赤い目をした男。

 

右目はゴーグルのような機械で

手は触手のような手をしている。

 

見た目は20くらいの青年だ。

 

この青年はある男を何度も殴ったため、

大本営で騒がれている。

 

今は人が変わったように大人しく

鉄格子の窓から空を眺めている。

 

その青年の前にある人物が現れる。

 

「…やあ、顔色が悪いですよ明石殿。

私に何か御用でしょうか?」

 

彼の前に現れたのは明石。

 

隈を付けた眠そうな顔で青年を見る。

 

「貴方のせいでさっきまで

書類を作成していたんだけどね。」

 

ため息をつきながらそう言う明石。

 

青年を睨みながら用事を言う。

 

「今後のことが決まったから伝えるわ。

明日、佐世保に行くわよ。」

 

そう言う明石に青年はにやける。

 

そして空を見上げながら呟いた。

 

「ああ、ようやく会えるのですね。

待っていてください、()()()。」

 

笑いながら喜ぶ

歌音の事を「様付」で呼ぶ青年。

 

その青年を見た明石は頭を押さえながら

自分の仕事に戻っていった。

 




雪風が佐世保に帰投しました。
この場合は帰還が正しいのかな?

そして大本営営倉にいる謎の青年。
はたして彼の正体は一体…。

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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