…何度目だろうか。
私の目の前に「あれ」が出てくるのは。
未だに姿が変わらない「あれ」。
私の睡眠時間を
あの手この手で削ってくる。
噛みつき、腹を穿ち、
口に何かを入れ…
そんなこんなで
今日は既に3回起きている。
実は北上に薬を貰っているのだが、
また相談するとしよう。
そう考えていると「あれ」が
近づいてきた。
今度は一体何を…
そう思った時、
私の視線は
「………」
もう、朝になっていた。
頭がぼーっとする。
怠さも前以上にひどいものだ。
とりあえず体を起こす。
寝不足と疲労でフラフラする。
顔を洗うために洗面台に立つが
支えがないと倒れてしまいそうだ。
なんとか顔を洗って部屋を出た私は
食堂の方へと向かった。
途中で駆逐の子が支えてくれなかったら
食堂にすらたどり着けなかっただろう。
そうして支えられた私は
北上に検査される。
今日はとりあえず安静にしろと言われ
私はゆっくりとすることになった。
今日は戦える艦娘たちのリハビリと
響たちの仕事の実践だ。
響たちは猫さん、暁と一緒に
これから行うことの確認。
基本的に家事全般と書類作業になる。
今日は家事の方を色々とやる予定だ。
そしてその姿を見学するのは
天龍と天龍に支えられている女性。
片腕の無い包帯を所々に巻いた女性。
天龍の姉妹艦の龍田だ。
彼女は昨日の夜に入渠が終了。
今日の朝に目を覚まして今ここにいる。
最初は私たちに敵意を向けていた。
しかし、天龍の説明と暁たちの説得で
とりあえず様子見となった。
今はまだ満足に動けないため
響たちの様子を見学しているのだ。
後々自分がやるかもしれないことを
猫さんの監視を兼ねて。
一方でリハビリ組は神通教官と
呉鎮守府の面々が支援している。
海上走行をして感覚を戻しているのだ。
不安がある艦娘も何人かいたが、
支援のおかげで落ち着いていた。
私はその様子を眺めている。
海から来る風が気持ちいいのだ。
さっきまでの怠さを和らげてくれる。
本当ならネ音を抱きしめて
落ち着きたいところなのだが。
それはできないので我慢する。
そうやって時間を潰していると
天龍たちがやってきた。
どうやら見学は終わったようだ。
猫さんは執務室に戻り、
第六駆逐隊は仕事を続けているらしい。
今は食堂でお手伝いだとか。
それからしばらく雑談をする。
龍田も天龍の様子から
信頼してもいいだろうと判断した。
そのため、3人で雑談をした。
今までの事、私の話せることを話した。
天龍も今までの事を話してくれた。
辛いこと、悲しいこと、嬉しいこと。
お互いに話し合った。
気づけば3人で笑っていた。
とても楽しいこの時間。
でも、すぐに終わってしまった。
「「「「きゃあああああ!」」」」
突然、鎮守府に悲鳴が響いた。
気づけば私は走っていた。
天龍が何か言っていたが
気にせずに走った。
悲鳴が聞こえた場所は食堂の近く。
そこに走っていくと食堂から
砂埃と何かが壊れる音がする。
何事かと思っていると
第六駆逐隊が走って食堂から出てきた。
4人は私に気づくとこちらに走ってくる。
そして私の後ろに隠れた。
響たちだけでなく暁も震えていた。
これはただ事ではない。
私は食堂の入り口に目を凝らす。
するとそこから出てきたのは朝潮。
しかも、私の武器を持っている。
あれは工廠に置いていたはずなのだが…。
だが、考えていても仕方がない。
とりあえず朝潮を止めることが大事だ。
「一体何をしているの?」
私はそう質問する。
朝潮はすぐに返答した。
「戦わないと言うから
始末しようとしているだけですが?」
「誰の命令なの?」
「司令官の、この鎮守府の規則です。
規則を破るのですから当然ですよ。
だから、早くそこを退いてください。
そうでなければ貴方から始末します。」
当たり前のように言いながら
朝潮は武器を構える。
どうやら前提督は最悪な
置き土産をしていったようだ。
始末される気はないが、
この子たちをやらせるつもりもない。
「…何も言わないのですね。それなら…
今すぐ始末します!」
そう言ってこちらに突っ込んでくる。
私には武器はない。
体術でどうにかするしかない。
「暁、すぐに妹たちとここを離れて!」
そう言って暁たちを避難させる。
暁はすぐに妹たちと避難した。
私はその様子を確認した後、
朝潮の攻撃を何とか受け流す。
しかし、いつもより体が重いせいで
上手く受け流せず肩に受ける。
あまりの痛みに顔を歪める。
後ろに飛んで逃げるが
上手く着地出来ずに尻餅をつく。
ここに来て寝不足の弊害がきた。
腕に力が入らず立つことができない。
眼も霞んで朝潮の姿が
はっきりと見ることができない。
どうにかしなければ…。
しかしどうすることもできない。
既に朝潮は目の前にいる。
そして棒を私に振り下ろす。
私は目を瞑り、下を向く。
………何も起きない?
棒は振り下ろされたはずなのに。
ゆっくりと目を開けて顔を上げる。
目の前には棒がある。
朝潮も必死にふり下ろそうとしている。
棒が小刻みに震えているため
それはよく分かる。
だが、それを何かが止めていた。
それは白い触手のようなもの。
朝潮の身体を縛るように動いている。
そしてその後ろには
白い髪の青年が立っていた。
「ダメじゃないか、お嬢ちゃん。
こんなところで棒を振り回したら。」
そう言いながら朝潮の身体を縛る。
彼は右の触手で朝潮を拘束し、
左の触手で私を抱き上げる。
見たことのない青年。
その青年は私から触手を外し、
左手を胸の前にして頭を下げる。
「貴方様にお会いできることを
待ち望んでおりました。
まずは、許可もなく貴方様に
触れたことをお許しください。」
いきなりそんなことを言われる。
名前も分からぬ青年が
なぜか私に頭を下げて。
私は気にしてないからと言う。
すると、彼は嬉しそうにする。
「ああ、寛大なお言葉感謝いたします。
流石は歌音様。」
…私は混乱した。
え、様?…どういうこと?
寝不足もあり思考がまとまらない私。
そこに暁たちが戻ってきた。
「歌音さん!みんなを呼んできたわよ!
…そこの人は誰?」
暁たちも疑問に思っている。
猫さんも誰か分かっていないようだ。
「これは、これは。
歌音様のために来て頂き、
誠に感謝いたします。」
そういって再び頭を下げる。
そして頭を上げて笑顔で言う。
「
それ以上もそれ以下もありません。」
すると、みんなの目線が私に移る。
いや、知らない。
私、この人とは初対面だし
様付や僕の理由も知らないんだけど。
訳が分からないので
詳しいことを聞こうとすると。
「もう!1人で行くなって
あれほど言ったでしょ!」
そんな声が聞こえた。
振り返ると私服姿の明石がいた。
持っているカバンには
大本営所属と書かれていた
「明石殿、良いではないですか。
たかがあの距離…」
「300キロをたかがとは言わないのよ!
それと大事なことを言っておくけど、
彼女は貴方の事知らないわよ。」
その言葉に青年は目を見開く。
「え、嘘ですよね。歌音様が
私の事を知らないなんて…。」
今にも泣きそうな青年。
しかし、本当に知らないのだ。
だからこう答えるしかない。
「ごめんなさい。」
青年はすごくショックを受けた。
凄くいじけている。
その様子を見て、
ため息をつきながら明石が話す。
「この子は姿、形が変わっているけど
あなたの知っている子だよ。」
私が知っている子…。
姿、形は違う……。
…ダメだ、頭に浮かんでこない。
「じゃあヒント、
貴方は最初に誰と過ごしてきた?」
最初に誰と過ごしてきたか?
最初ってことはこの世界に来てから。
え~っと、キューちゃんたちでしょ、
それから大福、後は……あ。
いた、最初からいた。
というか最初の方だけいた。
私といつも一緒にいた。
え、あれって生き物の扱いなの?
でもそれしかないのだ。
そう…彼の正体は………
龍田さん、復活!
そして青年の正体は何と!
次回に続きます。
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)