私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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最近、電ちゃんの他に何人か、
艦娘を好きになっていく。
今は秋雲先生と白露。

あ、電ちゃんを
嫌いになることは(ない)です。


第22話 秋雲の過去② Autumn Clouds Oath

 

眩しい光が、病室を照らす。

 

眼が痛くなるほど眩しい太陽だ。

 

その光に当てられて、一人の少女が眼を覚ます。

 

「……私、生きてる…?」

 

体を起こし、周りを見る。

 

綺麗な白い部屋だった。

 

横には机があり、花瓶に入った花と

果物の盛り合わせが置かれていた。

 

どれだけ眠っていたのだろうか。

 

彼女は分からなかったが、

体は次にすることを分かっていた。

 

ぐうぅぅぅぅ~

 

彼女は何か口に入れたくなった。

 

何でもいいから口に入れたい。

 

だから目の前に果物に手を伸ばす。

 

動かしづらい、重たい体を動かし、

一番近くにあったリンゴを手に取った。

 

そして、口を大きく開けて噛り付く。

 

「……うまい。」

 

また、一口頬張る。

 

一口、また一口と含んでいく。

 

気づけばリンゴを食べきっていた。

 

だが、まだ足りない。

 

手を伸ばして次の果物に手を伸ばす。

 

バナナ、みかん、ぶどう、もも。

 

次々に手を伸ばす。

 

まるでリスのように頬張っていた。

 

流石に詰め過ぎたと後悔する。

 

少しずつ咀嚼しながら減らしていくと

足音が聞こえてきた。

 

その音は次第に大きくなっていき、

部屋の扉が壊れる勢いで開かれた。

 

「秋雲!」

 

「フグッ、…ングッ!」

 

彼女は驚いた拍子に喉を詰まらせた。

 

だが、秋雲はそれに気づいていない。

 

泣きながら彼女に抱き着いた。

 

「秋雲!良かった、目を開けてくれた!」

 

「ン!ンン―!」

 

思いっきり抱きしめられる。

 

どうにかしたいけど

腕ごと締められて何もできない。

 

あ、やばい。苦しい……………。

 

彼女の目の前は、再び真っ黒になった。

 

 

 

 

 

目を覚ますと部屋の奥から

小さい声で怒鳴っているのが聞こえる。

 

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「いいですか、次は出禁にしますからね。」

 

「ぅぅ、ごめんなさい……。」

 

丁度説教が終わったようだ。

 

声の主、明石がやってくると

彼女が起きていることに気づく。

 

「あ、起きてる。長かったですね。

約半年と数時間の睡眠です。」

 

そう明石に言われ

彼女の頭は真っ白になった。

 

数時間は分かる。

 

さっきの事だから尚の事。

 

しかし、半年も眠っていたというのは

理解が追い付かなくなるのも仕方がない。

 

詳しいことは明石と秋雲が説明した。

 

作戦の成功、大本営への貢献、秋雲の異動。

 

彼女が眠っていた間の全てを聞かされた。

 

そしてもう一つ、

明石からあることが告げられる。

 

それは彼女にとって最悪な知らせであった。

 

「貴方は艤装を装備できなくなりました。」

 

「…………は?」

 

艤装が装備できなくなった。

 

その言葉に彼女は納得できなかった。

 

そうなった前例があることは知っている。

 

艦娘について調べた時に目にしたからだ。

 

だが、自分がそうなると思っていなかった。

 

いや、認めたくなかった。

 

自分が戦えなくなると。

 

彼女はすぐに起き上がると、

部屋を飛びだしていった。

 

明石の制止を聞かずにすぐに病棟を出る。

 

近くに工廠が見えたため、走って向かい

艤装を手に取ろうとする。

 

だが、手に取ることはできなかった。

 

妖精たちが必死に止めていたのだ。

 

泣きそうな顔をしながら、

中には泣いている者もいる。

 

彼女はその姿を見て

この現実を認めた。

 

もう海に出ることはできないのだと。

 

その場で座り込んだ。

 

明石と秋雲が追い付いた時には

大きな声で泣き叫んでいた。

 

 

 

 

 

秋雲に連れられて病棟に戻った彼女は

前のように廃人となりかけていた。

 

戦いができないなら

生きている必要が無い。

 

そう思ってしまうほど

彼女は衰退していた。

 

秋雲が毎日傍に寄り添い、

明石が様子を見に来る。

 

何とか返事はできるが、

ベッドの上からほとんど動かなくなった。

 

戦えないなら知識もいらない。

 

そう考えてしまうようになり、

本を持ってきても読むことは無かった。

 

そんな生活が数日続いた。

 

秋雲の異動も刻一刻と近づいてくる。

 

いつものように過ごしているある日。

 

秋雲はいつものように

何度も彼女に話しかける。

 

言葉が返ってこなくても

何度も話しかけていた。

 

だが、その声もどんどん小さくなっていく。

 

彼女が反応してくれない。

 

秋雲は悲しくなって涙を流す。

 

「被弾したのが、私だったら……

私が被弾すればよかった………。」

 

そう、言葉を零した。

 

それは本心ではない。

 

だが、そうであってほしかった。

 

お互いに臨む理想なら、

その方が良かったから。

 

「…………」

 

「私が教えなければ、あの時負けていれば

私が会わなければ良かったッ!」

 

バシィッ!

 

言い終わると同時に強烈な痛みが頬を襲う。

 

秋雲が目を開くと目の前には

怒った彼女の顔があった。

 

先ほどまでの廃人のような姿ではなく、

眼を見開き、荒れた息で肩を震わせていた。

 

「てめぇ、ふざけんじゃねぇ!」

 

彼女は秋雲を掴み、押し倒す。

 

「被弾すればよかった?教えなければ?

負けていれば?会わなければ?

ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞ!」

 

「……だって私のせいで…。」

 

「お前のせいじゃねぇ!

あれは私が勝手にやったことだ!」

 

「でも…」

 

「お前じゃなかったら、

こんなことはしねぇんだよ!」

 

声を荒げて彼女はそう言った。

 

秋雲でなかったら

庇うことはしなかったと。

 

「お前と会ったから、あの時負けたから、

戦い方を教えてもらったから…

守れたから今の私が此処に居るんだよ!」

 

「守れたから……?」

 

「そうだ!お前がいなかったら私はいない!

お前がいるから私が私でいられるんだ!」

 

彼女がそう言葉にすると秋雲は涙を流す。

 

彼女の心は完全に死んではいなかった。

 

彼女はゆっくりと呼吸しながら、

秋雲の体を抱き寄せる。

 

そのままギュッと抱きしめた。

 

「ごめんな、私のせいで思い詰めさせた。」

 

彼女は秋雲に謝罪した。

 

優しく抱きしめながら、謝った。

 

それに対して秋雲も謝罪する。

 

「こっちこそ、ごめん。

あんなこと言って。」

 

お互いに涙を流しながら、

抱きしめながら謝罪する。

 

「なあ、約束しないか?」

 

「約束?」

 

彼女は自分と秋雲の小指を絡める。

 

指切りだ。

 

「私は自分の生き方を探す。

お前のために、私のためにできることを。

別の形で戦うことを誓う!」

 

「なら!私は貴方の想いを引き継ぐ。

貴方の想いと共に戦って、

私の見た世界を描き続けると誓う!」

 

お互いがそのように誓い、指を離す。

 

2人はさっきまでの事がおかしくなり、

次第に耐えられなくなり、笑い出した。

 

此処がどういう施設なのかも忘れて……

 

「2人とも、少しよろしいでしょうか?」

 

声を聴いて2人は体を震わせる。

 

振り向くとそこには仁王立ちで

怖い顔をしている明石がいた。

 

「「あ……」」

 

「出禁にするって言ったよな?」

 

「あの、その」

 

「言ったよな?」

 

「はい……」

 

これだけ騒いでしまったのだから、

仕方がないだろう。

 

2人はすぐに横に並び、土下座をした。

 

「「すみませんでした」」

 

息の合った謝罪をする2人。

 

すると誰かがこの部屋に入ってきた、

 

「この部屋か……。なんだこの状況。

明石、お前にそんな趣味が。」

 

「違います!騒いだから注意したんです!

前にも忠告したんですからね!」

 

明石は愚痴をこぼす。

 

「許してやれよ、色々あったんだろ?

お前だって荒れてたんだから、同じ同じ。」

 

2人が顔を上げると

そこには1人の若い男性がいた

 

見た目は青年、声は大人だった。

 

「猫さん……どうしてここに。」

 

「いつも元気なお前が静かだったからな。

何かあると思ってお前の提督に聞いたら

もう一人の秋雲の事を聞いたんだよ。」

 

やってきたのは猫さんだった。

 

秋雲は顔見知りだったが、

彼女はこれが初対面だった。

 

「君が例の秋雲か。」

 

「えっと、多分そう、です。」

 

「あ、敬語はいらないよ、

いつも通りの話し方で大丈夫さ。

今日は、君に提案があって来たんだ。」

 

そう言って1つの紙を目の前に出す。

 

「明石から艤装が装備できない事と、

戦うのが生き甲斐だと聞いてね。

それを解決する案を見つけたんだ。」

 

そこに書かれていたのは

艦娘としては前例の無い内容だった。

 

「……憲兵隊」

 

大本営に所属する警備隊。

 

人でありながら艦娘とも渡り合える

実力のある者たちが集まる集団。

 

通称“化け物の巣窟”

 

一部の艦娘からは恐れられている。

 

そこへの、勧誘と言う名の招待状だった。

 

「ここなら君の力を十分に

活かすことができると思っている。

提案に乗るかは君次第だ。」

 

これは彼女にとってまたと無い機会だ。

 

恐れられている場所ではあるが、

彼女自身の理想の場所でもある。

 

それにさっき誓ったこともある。

 

この提案に乗らない手は無かった。

 

彼女はすぐにこの提案に乗った。

 

「やる、やらせてください!

どんな形でも戦うって誓ったから!」

 

「…分かった、いい目をしているな。

君のことは憲兵隊に話しておこう。

これから君の創る物語が楽しみだ。」

 

猫さんはそう言うと、

明石を連れて部屋を出て行った。

 

部屋は静寂に包まれた。

 

その後、部屋には同じ声の

2人分の笑い声が小さく響いた。

 

 




「Oath」は『誓い』
という意味があります。

最近、艦これアーケードに似たアプリが
今年8月末にサ終すると告知しましたね。

Oathはそこから取りました。

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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