私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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第25話 呉の鬼嫁

 

昨夜の騒動が収まり、

いつも通りに生活する。

 

駆逐達は何事もなかったかのように

いつも通り鍛錬を行っていた。

 

ただ、その顔は憑き物が取れたように

いつもよりスッキリしていた。

 

長門たちの調子も良さそうだった。

 

タンコブができたままの川内は

ちょっと辛そうだった。

 

川内を除き、調子が良かった艦娘たちは、

午後の鍛錬に向けて食事。

 

間宮も腕によりをかけて作ったため、

いつもよりキラキラしていた。

 

私達も食事を楽しんでいると、

誰かが走ってきた。

 

全員の視線が入口の方に集中する。

 

そこには息を切らし、

肩で息をする朝潮が立っていた。

 

私達は全員警戒する。

 

今までの事もあり、全員が身構える。

 

何人かは怯えて震えていた。

 

何をしに来たのか、

猫さん達はどうしたのか。

 

色々と気になったが、

それを聞く前に朝潮が行動した。

 

「大変申し訳ございませんでした!」

 

…へ?

 

いきなりの土下座。

 

その行為に食堂がざわついた。

 

今までの朝潮では考えられない

この行為に全員が戸惑った。

 

「あれほど説明を先にしろ言ったのに」

 

「行動が先に出るのは朝潮らしいだろ?」

 

「教えた意味が無いのです。」

 

何があったか聞こうとしたら、

朝潮の後ろに猫さんと誰かが立っていた。

 

いつの間にか、気づいたらそこにいた。

 

「ほら、ちゃんと説明しないと、

誰も理解できないのです。」

 

「分かりました!それでは説明します!」

 

そう言って朝潮は話し出す。

 

私達が朝潮を見ていないここ数日の事。

 

大本営に行き、前提督と話し、

目が覚めたからボコボコしてきた。

 

とにかく皆に謝りたい。

 

まあ、訳したらこういうことらしい。

 

猫さんからの補足も入り、

全員がある程度納得した。

 

しかし、不安は残る。

 

特に第六駆逐達にとっては

また襲われるかも知らないからだ。

 

そこは今後の行動で

判断してもらうことになった。

 

ところで…この人はどちら様?

 

猫さんの関係者だろうけど…。

 

「ああ、この子は…」

『こら皐月!サボるんじゃない!』

 

「へへーん!捕まらない…よ……。」

 

「ようやく追いついた!

ん?どうした急に立ち止まって…。」

 

猫さんが話そうとすると

呉鎮守府の面々がやってきた。

 

どうやら午後の鍛錬の

準備ができたようだ。

 

皐月はサボったそうだが…。

 

しかし、様子がおかしい。

 

急に固まった。

 

眼を見開き、顔を青くしていた。

 

後ろから残りの面々も来たが、

全員が同じように固まった。

 

心なしか、空気が重く感じた。

 

体も重たく感じる。

 

「元気いっぱいですね、皐月。

また仕事をサボったのですか?」

 

「あ、ああ…あああ!」

 

「指導が足りてないようなので、

今からしっかり指導してあげるのです。」

 

「い、嫌だー!うあああああッ!」

 

「ふふふ、少し遊んでくるのです。

その間に説明を任せるのです。」

 

「……ほどほどにな。」

 

「なのです!」

 

逃げ出した皐月を追い、

満面の笑みをして消えていった。

 

何故か分からないが、

体が軽くなった感じがした。

 

長月は力が抜けたように座り込み、

残りの面々は猫さんに抱き着いた。

 

「なんであの人がいるんですか!」

 

「前より恐ろしくなってるよぉ。」

 

「皐月ちゃん……健闘を祈るにゃし~」

 

「あら。長月ちゃん、気絶しちゃってる。」

 

「……」

 

……場の雰囲気がカオスになった。

 

猫さんも苦笑いである。

 

さらにこの場に龍田さんも来た。

 

「私がいない間に、

面白いことになったのね~」

 

「龍田、どこに行ってたんだ?」

 

「この人の付き添いで大本営よ。

元帥と意気投合して、楽しかったわ♪」

 

天龍の問いかけに対して

笑顔を見せる龍田。

 

悪い笑顔だった。

 

「それにしても大丈夫なの?」

 

『ごめんなさーい!』パチィーン!

 

「止めた方が良いんじゃない?」

 

皐月の悲鳴だろう。

 

聞いたことが無いぐらい

デカい声で謝っていた。

 

呉鎮守府の面々ですら、

恐怖している感じだった。

 

あの人は一体?

 

「司令官、あの子って電よね?

どこか『()()()()』が違うけど。」

 

その言葉を発したのは暁だった。

 

私達は面影があるなと思ったぐらいで、

あれが電だとはすぐに分からなかった。

 

口調で電かなと思ったぐらいだ。

 

暁は姉妹だから分かったのだろう。

 

「ああ、間違いなく電だよ。

今は現役を引退しているけどね。」

 

猫さんがそう説明する。

 

……ん?現役引退は、おかしい。

 

此処に突入前に大本営に来ていたし、

呉鎮守府では鍛錬をしていたはず。

 

「引退しても呼ばれたりするんだよ。

鎮守府にいたのは様子見みたいなものさ。」

 

…何となく理解した。

 

あれだ、

卒業したOBOGが部活に顔を出す感じだ。

 

睦月たちは、凄く嫌そうにしているけど。

 

「あの子、一体何者なの?

深海棲艦よりも威圧感が…。」

 

「あんなの威嚇にもなってないよぉ。

本気なら全員倒れちゃうぅ。」

 

「電ちゃんが5割も出したら

睦月たちは手も足も出ないのね。」

 

そんな話をしていると、

秋雲が食堂にやって来た。

 

恐らく、寝起きだろう。

 

髪の毛が乱れ、跳ねていた。

 

「ん~騒がしいけど何があったの?

誰かお客さんでも来たの…?」

 

「電ちゃんがやってきたにゃ。

今、皐月ちゃんのお仕置き中にゃし。」

 

「げっ、嫁さんが来てるの⁈

会いたくねえ、説教されそうだな~。」

 

…へ?嫁さん?誰が?誰の?

 

「うん?ああ、電は猫さんの嫁さんだよ。

ほら、猫さんの左手見てみ?」

 

そう言われて手を見ると、

綺麗な指輪が着いていた。

 

「この人が前線に出るタイプだからね。

壊れないようにいつもは外してるんだよ。」

 

ああ、だから見たことないし、

挨拶の時に殴られてたのか。

 

「オフだとデレッデレなんだけどね。

厳しすぎるから鬼嫁なんて言われ…」

 

「ふ~ん、そう言われていたのですね。

一体誰が言っていたのです?」

 

あ、秋雲が固まった。

 

ムンクの『叫び』のような顔をして。

 

秋雲が振り向くとそこには、

電が仁王立ちしていた。

 

皐月は頭にタンコブを生産され、

睦月たちに慰められている。

 

泣きながらお尻を抑えていることから、

さっき聞こえたのはお尻を…。

 

考えただけで身の毛がよだった。

 

そして、次の目標は秋雲になった。

 

「あ~き~ぐ~も~。その髪は何です?

今何時だと思っているのです~?」

 

「ひゃああああ!

くぁwせdrftgyふじこlp!」

 

秋雲は逃げようとしたが、時すでに遅し。

 

一瞬でコブラツイストを掛けられた。

 

「徹底的に指導してやるのです。

さっきの事も洗いざらい吐くまで!」

 

「ジョーク、ジョークですって!

骨が折r、(ボキッ)ぎゃあああ!」

 

鬼嫁どころか悪魔だった…。

 

秋雲が凄い顔で地面に倒れた。

 

え、これヤバくない?

 

下手したら次は私達じゃ…。

 

あ、こっち見た。

 

「さあ、つぎはお前たちを

……はにゃぁ~ん♡」

 

…は?

 

え、何?なんか大人しくなった⁈

すごい緩んだ顔してる⁈

 

猫さんが電の頭を撫でて、

何処からか出てきた櫛で梳かして…。

 

もしかして、これがオフ?

 

「ほら。リラックス、リラックス。

とりあえず、執務室に行くぞ。」

 

「えへへ、はぁ~い♡

仕方ないから貴方たちは許すのです♡」

 

大人しくなったから猫さんが電を抱いて

食堂から出て行ったけど…。

 

…………なぁにこれ?

 

皆、戸惑って固まっちゃったよ。

 

余りの事にヌ―スも動かないんだけど。

 

何だろう、こう…くどい?というか…

何とも言えない変な甘さを感じた。

 

全身が砂糖になりそうな感じ。

 

後で秋雲に聞いてみると、

あれが電の『素』の姿らしい。

 

厳しいのは艦娘が現れた頃から

長生きしているから。

 

己の力で生き抜かないといけない。

 

そんな生活をしていたそうだ。

 

だから、あの姿が見られるのは

平和である証拠でもあるらしい。

 

そんな姿を見送り、食事をし、

いつも通りの時間を過ごす。

 

鍛錬が終わった後の食堂には

素の状態の電がいた。

 

すごく優しく、間宮に料理を教えていた。

 

電はアドバイスをするだけだったが、

間宮は頷きながら学んでいた。

 

その料理はいつもより美味しく感じた。

 

若干の甘さも…。

 

 

 

 

 

「―という感じですが

よろしいでしょうか?」

 

「ああ、いいと思うよ。

皆も楽しんでくれるだろう。」

 

「こういう時は泣き出す子が多いのです。

その辺のケアも考えておくのです。」

 

夜遅くに執務室で話をする、

潮奈と猫と電。

 

それはここから離れる話。

 

役目が終わり、滞在するのも後2日。

 

長くても明後日の昼には

ここを離れることになる。

 

それは歌音も同じこと。

 

長く色々あった佐世保での生活が、

終わりを告げようとしていた。

 

 

 

 




猫さんのお嫁さんの電
実はとんでもない立場の人で…

何より恐ろしいのは
皐月の声より大きい叩く音。

でも、オフになると
目がハートになります。


次回は佐世保編、最終話

既に話は完成しているけど
少し間を開けて投稿します。

最終話の題名を見たら
一部の人は私のしたいことを察せます。

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