甘濃い一日を過ごした次の日。
私とヌ―ス、秋雲は執務室に呼ばれた。
何となく予想はしている。
猫さんが荷物をまとめているから、
そう言うことだろう。
「早いな~。夏雲が来てから
もうそんなに経ったんだね。」
「皆さんのおかげで、ここは変わりました。
感謝してもしきれないですね。」
「私達の命も救われたからな。
あの子たちも笑顔になった。礼を言う。」
霧島と長門に礼を言われながら、
皆で思い出す、ここでの生活。
夏雲が来て、突入して、
赤城さんたちに会って。
ヌ―スが来て、加賀さんと別れて……。
辛いことも楽しいことも、
本当に多くの事があった。
他にも何かあったと思うが忘れた。
そんな生活も、明日には終わってしまう。
今日は皆も色々準備するそうなので、
しっかりと楽しもうと考えた。
「そう言えば、
みんなからのリクエストなんだが…。」
ん?
「歌音に歌ってほしいって。」
…やっぱり?
まあ、絶対そうなると思ったから
歌う準備はしてある。
どこかに行くときには歌を歌う。
それがいつもやっていたことだから。
時は経ち、夜になった。
グラウンドにステージが設置され、
周りには屋台がたくさんできていた。
どうやらいくつかの
グループに分かれて用意したようだ。
ちょっとした祭りのようで、
楽しい時間を過ごしていた。
しばらく楽しんでいると、
時間が来たのでステージへ。
那珂ちゃんが盛り上げてくれたので、
私もテンションを上げてステージに上がる。
言葉を借りるなら
「気分が高揚します」だ。
今回は楽器がないため歌で、
BGMはマイクの力で何とかした。
いつも以上にテンションが
上がっていたからだろう。
休むことを忘れて歌っていた。
大汗を掻きながら、全力で
歌い、踊り、楽しんだ。
皆との楽しい時間は
あっという間に過ぎていく。
気づけばいつもの寝る時間。
でも、誰も終わろうとはしなかった。
駆逐達も眠たいのを我慢して、
必死に目を覚ましていた。
この時間を
誰も終わらせたくないのだろう。
中には泣きそうな子もいた。
どうしようかと考えていると、
潮奈が皆に声を掛ける。
「皆さん、そろそろ
あの場所に行きましょう。」
あの場所?
私はどこの事か見当もつかなかった。
でも、皆はどこか分かっているらしく、
私は手を引かれ、連れていかれた。
着いたのは
辺り一面は
花が咲いていて綺麗なところだった。
その先は月が海面を照らし、
花を輝かせていた。
「駆逐艦たちのお気に入りの場所です。
ここを歌音さんに見せたかったそうで。」
とても綺麗な場所だ。
かなり前からお気に入りだったらしく、
解放されてから、手入れしたらしい。
ここも、アニメに出た場所だ。
慰霊碑ということで分かるだろうが、
あの…悲しい……。
でも、私にはそれと同時に
違うものが見えていた。
それは、とある物語の終幕。
それは『生まれた意味を知る』物語。
その物語の終幕に
このような場所で歌うシーンがある。
私はそれを知っている。
そして、それを知っているであろう
後ろの2人も気づいている。
「秋雲、気づいたか?この場所…。」
「すごく分かるよ。つい最近やったし、
歌音も気づいてる、というか知ってる?」
私はその問いに頷く。
秋雲は「マジか…。」と言いながら、
猫さんとニヤニヤしていた。
考えていることは何となく分かる。
恐らく再現したいのだろう。
「どうする?どっちが言う?」
「そりゃ、再現するなら秋雲だろう?
あれは王女様のセリフだからな。」
「秋雲さんには似合わないけど、
とりあえずやるか~。」
この2人だけは、
この状況を楽しんでいる。
他のみんなは分からなくて
キョトンとしているのに。
そんな事を気にすることなく、
秋雲は私に近づいてこう言った。
「歌音、『譜歌』を歌ってくださる?」
予想通りのセリフだった。
お嬢様口調のせいで、少し吹いたし。
しかも、用意周到なようで、
何故かヌ―スがマイクを渡してきた。
「私もどのような曲か気になりますので。」
そう言って、少し後ろに下がった。
私は観念してマイクを受け取ると、
少しだけ前に歩く。
そして、マイクを起動させて歌う。
トゥエ レィ ズェ クロア リュォ トゥエ ズェ
クロア リュォ ズェ トゥエ リュォ レィ
ネゥ リュォ ズェ
ヴァ レィ ズェ トゥエ
ネゥ トゥエ リュォ トゥエ クロア
リュォ レィ クロア リュォ ズェ
レィ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レィ
ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レィ
クロア リュォ クロア ネゥ トゥエ レィ
クロア リュォ ズェ レィ ヴァ
レィ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レィ レィ
いつも通りに現れる三面鏡。
でも、今日はいつもと違った。
いくつかの破片は浮かび上がり、
2つの丸い鏡を見せる。
片方の鏡には、私のヲ級の時の姿が、
もう一方には、赤毛の青年が映る。
残った破片は私の隣に集まり、
人の形を形成していく。
ロングヘアの女性が私の横に。
笑みを浮かべながら
私と一緒に歌い始める。
この歌は2週するため、
その2週目を一緒に歌う。
歌い始めると2つの鏡も変化を見せる。
鏡の中の私と青年が動き出す。
私は何が映っているのか、
すぐに理解することができた。
それは私という人間の物語。
私の生きてきた証だ。
人間の歌音として、ヲ級の歌音としての。
今までの事が第三者視点で映る。
青年の方も同じだ。
青年が歩んできた物語。
青年の人生、戦い、覚悟、誓い。
青年が青年であるための。
そして、2つの鏡は暗闇に包まれる。
青年が映った鏡には月夜の白い花畑。
私が映った鏡には、この岬の景色。
違うようで…、似ているようで…。
そんな景色を映し出す。
歌い終わると、唐突に強い風が吹く。
私は目を瞑り、腕で顔を覆った。
『―――――』
ッ!
風が止んで目を開けると、
女性と鏡は消えていた。
残っていたのは、
私の姿が映る丸い鏡。
しかし、それもすぐにひびが入り、
割れると風に乗って消えていった。
振り返ると、皆がすすり泣きをしていた。
猫さんと秋雲は分かっていても
あのシーンで泣いてしまうタイプだろう。
他の子たちは、泣きながら私を見ていた。
そして、一斉に抱きついてきた。
何故かは分からない。
ただ、私も何か感じたのだろう。
自然と涙がこぼれてきた。
今までの悲しみのような感情でも、
歓喜のような感情でもない。
よく分からない不思議な感情が、
私に涙を流させる。
しばらくの間、皆と抱き合い、
私は鎮守府へと戻った。
その私を見ている影に
気づくことなく…。
「もう関わらないつもりだったが、
いい肴になりそうだからな。
少しだけ特権を使ってやる。」
それは正真正銘、
最後の
「今までありがとうございました!敬礼!」
潮奈の号令で、佐世保鎮守府総員による
敬礼に見送られ、私達はこの地を去る。
長かった佐世保での生活とともに、
私の目的も一区切りついた。
次の目的は歌で平和を。
終わりが見えない途方もない目的だ。
だが、少しずつでいい。
キューちゃんたちやネ音たちのように
平和を願うことはできるのだから…。
さあ、久々の大本営だ。
今度はどんなことを
することになるのだろうか。
そう思っていると猫さんから
あることを告げられる。
「あ、言い忘れてた。
歌音、これから
……え?
「チビ助には言っておいたから、
しばらくは呉で生活な。」
……本当にこの人は
何を言っているのだろう。
どうやら、また一波乱ありそうな
そんな感じがしてならない。
そう思いながら、
私は車に揺られていくのだった……。
「あ、じゃあ秋雲さんは…。」
「お前は呉に着いたら足柄考案の
お仕置きメニュー確定なのです!」
「そんなあああああ!」
「それじゃあ建造を始めましょうか。」
「はい!この朝潮、
全力でやらせていただきます!」
歌音たちが佐世保を去った後、
朝潮の最初の仕事が始まった。
今は少なくなってしまった戦力を
取り戻すための建造を行っている。
潮奈と共に工廠に向かい、
名誉を挽回するための初仕事。
呉や大本営からの支援のお陰で、
資材には十分余裕がある。
そのため、最初は思い切って
資材を多めに入れた。
「最初は誰が来て下さるのでしょうか?」
「戦艦や空母が出るように入れたから
必ずではないけど出てくれるわよ。」
そんな会話をしていると
妖精さんに声を掛けられる。
「高速建造材ですか?そうですね。
まだ余裕もありますから、使いましょう!」
妖精さんは、すぐに高速建造材を使用し、
建造が終了したことを伝える。
そして、建造ドッグの扉が開いた。
「さてと、一体だれが……。」
「貴方は…まさか……。」
その建造ドッグから現れたのは……。
「航空母艦、加賀です。…何故かしら?
此処を知っている気がするのだけれど、
気のせいね。よろしくお願いするわ。」
これにて佐世保編は終了になります。
1つの山場がようやく終わりました。
歌は、テイルズシリーズ8作品目
10周年記念作品
『テイルズオブジアビス』
で歌われている『譜歌』
この作品のラストシーンの再現を
したいと思って組み込みました。
このEDは、第二章作成中、
第三章の大まかな設定と共に
こうすることを決めていました。
最後は、こうしたかったんや…
さて、続く第4章
呉編は、ゆったり日常話
かなり疲れているはずの歌音には
ここでゆっくりと休んでほしいですね。
え、波乱が起きるんじゃないかって?
チョットナニイッテルノカワカラナイ
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)