私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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第3話 王様式会話法

 

検査の翌朝。

 

私は外に出ていた。

 

歌うために出てきたけど、

今日は別の理由もある。

 

なにかに呼ばれたような気がした。

 

何に呼ばれたのかは分からないけど、

来なければいけないと思った。

 

いつもと違う今日の朝に

戸惑いながらも出てきた。

 

そう、いつもと違う。

 

最近見る夢も無かった。

 

何かに呼ばれた感じも無かった。

 

でも、今日だけは違った。

 

よく分からない不思議な感じ。

 

それを拭うため、

いつものように歌った。

 

空を覆う厚い雲が

日の出の微かな光を遮る。

 

波は怖いほど静かで、

何かの予兆を運んで来そうだ。

 

不安ばかりが、私の心を締めつける。

 

今は歌い、祈ることしか出来ない。

 

あの子たちの笑顔を見れば、

こんな不安も打ち消すだろうか。

 

…久しぶりに

あの子たちに会いたくなった。

 

ネ音、キューちゃん、

鳳翔さんにも会いたい。

 

でも、今は叶いそうにない。

 

私を襲う冷たい風が

全てを飛ばしてしまいそうだから。

 

この拭えない不安をどうするべきか。

 

悩んでいると、足音が聞こえた。

 

振り向くと、そこには明石がいた。

 

いつもの明石とは、少し様子が違う。

 

何かに悩んでいる様な感じがする。

 

少しだけ唸って考えた明石は、

覚悟を決めたように私に話しかける。

 

「今から突拍子もない事を言うけど、

聞くだけ聞いてほしいの。」

 

いきなりの事だった。

 

突拍子もない事を言うと。

 

昨日行った、私の体の実験。

 

その時の彼女からは

考えられない言葉。

 

私の体にいるヲ級についても、

ありえないと言ったぐらいだ。

 

そんな明石が言うということは、

何か分かったのだろうか?

 

「ついさっき、私は夢を見ていた。」

 

…何でいきなり夢の話を?

 

「そこで誰からか忘れたけど、

貴方に伝言を頼まれたの。」

 

夢の中、誰かに…。

 

何故だろう、

私にもそんなことがあった気がする。

 

思い出せないけど、

明石も似たようなことが起きたみたい。

 

そこで伝えられた、私への伝言は…。

 

「貴方の中にいる『魂と向き合え』。

そう言っていたわ。」

 

私の中の魂…。

 

間違いなくヲ級の事だろうが、

どうやって向き合えばいいのか。

 

「このことは提督にも伝えるから、

朝食の後に、執務室に来てくださいね。」

 

そう言って、明石は戻っていった。

 

本当に突拍子もない事だ。

 

魂と向き合うなんて…。

 

…いや、別にそうでもないのか。

 

心の中で

加賀さんと話したことがある。

 

でも、あれは加賀さんから

じゃないとできなかったし…。

 

いい案は浮かびそうにない。

 

今は部屋に戻ろう。

 

流石に、体を冷やし過ぎたから。

 

 

 

朝食の後、

私は執務室に来ていた。

 

ソファーに座り、

猫さんと明石と対面になる。

 

今日はヌ―スが傍に居て、

膝の上にはユリちゃんがいる。

 

電は提督の椅子で

猫のように丸くなって寝ていた。

 

そのため、

静かに話し合いが始まった。

 

「魂と向き合え、ですか。

私ではお役に立てそうにありませんね。」

 

「ヌ―スでも無理なのか?」

 

「私のは夢の中、脳の制御ですので

魂には干渉できないのです。」

 

ヌ―スでも魂には干渉できなかった。

 

彼が言うように、

出来るのは脳の干渉まで。

 

魂までは不可能なのだ。

 

「困りましたね、

何かいい方法があればいいのですが。」

 

魂への干渉というオカルトな話。

 

今の技術では不可能だろう。

 

可能性として、深海棲艦同士の

通信みたいなことができればいいが。

 

ネ音やキューちゃんたちに

その様な能力があれば…。

 

…はぁ、あの子たちの事を考えると、

会いたいという気持ちが膨れてしまう。

 

大本営で過ごしたネ音との時間。

 

駆けつけてくれたキューちゃんたち。

 

思い出すだけで会いたく…なる……。

 

あっ…。

 

「ん?どうかしたのか?」

 

思い出した。

 

キューちゃんが私の中に入ってきた。

 

その時に使っていた機材なら、

魂との会話ができるはずだ。

 

「あれは他人が入り込むものなので

本人だと使えません。」

 

どうやら自分では使えないらしい。

 

なら、ヌ―スに頼むしかないだろう。

 

他の案も、思いつかないのだから。

 

そう思っていると、猫さんが呟いた。

 

「ヲ級の魂…。

もう一人の歌音みたいなものか。」

 

確かに、そう言えるのだろう。

 

ヲ級の体に私の魂が入って、

今は私の体にヲ級の魂がいるから。

 

「あっ!その手があっ、ングッ!」

 

いきなり明石が叫んだ。

と同時に猫さんが口を押えた。

 

理由はすぐに分かった。

 

何かが明石の

顔の横に飛んできたからだ。

 

明石の後ろの壁に刺さっている。

 

それは万年筆だった。

 

そして、飛んできた方向からは、

不機嫌そうな顔の電。

 

「…あれほど静かにしろと、

注意したのですよ…ッ!」

 

私はユリちゃんを守るように抱き、

ヌ―スは私の体を自分に寄せた。

 

「私の眠りを邪魔するとは

いい度胸なのです。」

 

目つき悪いし、変なオーラが見える。

 

だが、大丈夫なはずだ。

 

だって猫さんが何とかしてくれるはず。

 

「すまん。寝起きの電は、

この前のナデナデじゃ効果が無い。」

 

…え?詰んだ?終わった?

 

そう思っているとユリちゃんが

電の方に歩いて行って抱き着いた。

 

「まま~、だっこ~。」

 

「…はいはい、いい子いい子。」

 

電はユリちゃんを抱いて、

頭を撫でながら退出した。

 

数秒の沈黙の後、私達は席に着いた。

 

「すまない。立場上の連絡もあってな。

ストレスと寝不足であんな感じなんだ。」

 

電は苦労してるんだな。

 

猫さんが休まないのが原因だろうけど。

 

ところで、

明石が言いかけたことが気になる。

 

何かいい案が浮かんだのだろうか。

 

「はい、良い方法を思いつきました。

とりあえず、工廠に籠ってきます!」

 

明石の行動は早かった。

 

すぐに部屋を出て、

工廠へと向かったのだから。

 

置いて行かれた私たちは、

明石の作業が終わるまで待った。

 

待つと言っても、

いつも通りの事をする。

 

猫さんは執務作業、

私は適当に、ヌ―スは料理。

 

各々が自分の時間を過ごし、

その夜、食堂に集まった。

 

 

 

「お待たせしました。

こちらをどうぞ!」

 

明石から渡されたのは

青色の宝石が光るペンダントだ。

 

何の変哲もないが、見ているだけで

吸い込まれそうな綺麗な青色。

 

付けてみて欲しいと言われたため、

髪に引っ掛からないように付ける。

 

邪魔だと感じない重さで、

おしゃれには良いのかもしれない。

 

少し体が軽くなった気もした。

 

『あれ?なんで外が見えるの?

これは一体どうなっているの?』

 

同時に、何かの声がした。

 

辺りを見るが、

居るのは艦娘たちだけだ。

 

聞いたことのある女性の声は

一体どこから聞こえているのか?

 

『もしかして、貴方が歌音?

あの人の言っていた人なの?』

 

「歌音様、どうされました?」

 

声だけが聞こえる。

 

ヌ―スには聞こえていないようだ。

 

いや、これは聞こえると言うより、

響くと言った方が正しい。

 

こう、頭の中だけに響く感じで。

 

『ねえ、貴方の歌を聞かせて。』

 

だから、どこから話しかけているの!

 

さっきから一方的なのよ!

せめて場所を言いなさい、場所を!

 

『ヒャッ!ごめんなさい。』

 

「落ち着いてください、歌音様!

突然大声を出されては困ります!」

 

「その様子だと、

上手くいったみたいだな。」

 

私を宥めるヌ―スと、

食堂に入りながら笑う猫さん。

 

せめて説明をしてほしい。

 

「そうだな。

『王様式会話法』とでも言おうか。」

 

猫さんがそう言うが訳が分からない。

 

「簡単に言うと、ヲ級の魂を

そのペンダントに移しました。」

 

明石、それは簡単と言わない。

 

話しについて行けないから。

 

「妖精さん技術で、着けている間は

ヲ級と会話できるはずですよ。」

 

話は聞いてほしいが、

そんなバカな話があるはずがない。

 

そう思ってペンダントを外すと、

声が全く聞こえなくなった。

 

付け直すと…

 

『うわあああん!

1人にしないでよーッ!』

 

本当に聞こえた、

しかも、泣かれた…。

 

仮にも大人の見た目をしているのに。

 

中身は子供のようなヲ級のようだ。

 

何だろう。

 

キューちゃんやネ音のような、

子供っぽい子が多いのだろうか。

 

手のかかる子供が増えたような。

 

そんな気がしたのは、

間違いではなかった。

 

しばらく泣き止まなかったので、

子守唄を歌って、ようやく泣き止んだ。

 

グッスリと眠ってくれたのは良い。

 

だが、これから毎日、

子守唄を歌うのが日課になりそうだ。

 

 




話せる理由は題名で察してください

私の中で候補が2つあったので
この題名にしています。

ちなみに、この題名は2つ目です
原案は「ファラオ式会話法」

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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