We are The Super STAR!**   作:A×K(アツシくん)

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第39話

【翌日の朝】

 

かのん「……んっ……あ、れっ……命く……ん?」

朝、かのんが起きると、そこに命の姿は無かった。

 

かのん「……5時半……こんな時間に、どこに…」

気になったかのんは、部屋を出て下へと降りていった。

 

 

かのん「(……靴が無い……外に行ったのかな……この時間って事は……もしかして…)……命くん」

曜「……命なら、走りに行ったよ」

かのん「よ、曜さん……っ!」

曜「……多分、体動かしてないと……どうにかなりそうって思ってるんじゃないかな……」

かのん「……命くん……」

 

 

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「…………っ……はっ……はぁっ……!!」

(くそっ……くそっ……!!!

俺はこんな所で……止まってるつもりはねぇのに……っ!!)

 

大粒の汗をかきながら走り続ける命。

足が止まった瞬間、肩で息をしながら膝に手をついた。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!!!!…まだだ……まだ、まだ……っ!!」

目を血走らせて再び走ろうとする命……その肩を誰かが止めた。

 

???「走り過ぎだ、ぶっ倒れるぞ」

「……っ……!!」

 

???「オーバーワーク……それに、頭に血が登りすぎて周りも見えてない」

「……誰だっ……てめえ……っ!!」

 

???「(……こいつ、入院してた時の記憶、無いのか……ふっ、まぁいい……それならそれで好都合だ)…一旦落ち着け、このままだと……招いてはいけない事態に陥るぞ」

「……っ……うるせぇっ!」

 

 

その男の手を強引に払い、命は走り出した。

???(……目の奥にあるは……絶望と焦燥……か

これは、崩壊までの時間……あっという間かもな)

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

帰ってきた命は汗で髪も服も濡れていた。

かのん「め、命くんっ……!……とりあえず、シャワー……!」

「…………あぁ……でも、その前に……」

 

庭に置いてあるボールを手に取る命。

かのん「……命くん……」

「……くっ……!!」

震える腕を抑えようと、何度も何度も叩く。

……しかし、震えは収まるどころか……悪化し、手からボールが零れ落ちた。

 

「……畜生……っ……」

かのん「……風邪、引いちゃうよ……」

「………………………………」

 

零れ落ちたボールをじっと見つめながら……命は家の中へと戻っていった。

 

かのん(……神様……どうか、命くんを元気にしてあげてください……もう、これ以上は……)

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

登校した命、あの事故の事は学校内でも大きな話題となっていた。

もちろん、命に声を掛ける人がいる……かと思われたが…。

 

 

 

生徒A(まだ、入院明けだし……そっとしておこうぜ)

生徒B(なんだか、怖い感じ出てるし……)

生徒C(…おいおい…なんか目が死んでねーか……?)

 

 

命はまるで、聞こえないかのようにずっと外を見ていた。

(……………………………………)

 

そして、自分がどうしたいかも…分かり始めていた。

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

【その日の夜】

 

 

命は、悠と曜……そして、かのんを呼んだ。

沈黙の中……命が口を開いた。

 

 

 

「…………俺……''野球を辞める''」

曜「……っ!」

かのん「………………えっ……」

 

 

悠「……………………」

「正直……投げる事が、また出来るかって言われてたら……俺は出来ないと思っている

……それだけ、怖いって感じている」

 

悠「……調べたのか、イップスのことを」

「……プロでも同じような症状で引退した人もいる……それに、治し方も……無いんじゃ……俺は……」

 

曜「……命……」

かのん「……ダメだよ……そんなのっ、ダメだよ!

今はまだ、自信が無いだけだよっ!……だから、辞めるなんて……!」

 

「……父さんや母さんの支えが今まであったから…こんな形で告げるのは正直、心が苦しい

それに……かのん、今まで応援してくれたお前の事も裏切るようで……申し訳ない……けど、どうしても……どうしてもあの光景が蘇るんだ…」

 

 

かのんにだけ見せた涙の理由を、かのんは知っている。

……だけど、言葉は止められなかった。

 

 

 

かのん「……嫌だ……嫌だよっ!!!

私には、諦めるなとか出来るとか言ってくれたのに……命くんがそんな簡単に諦めてどうするの……っ!!!

私には、困ったら助けてやるって言ってくれたのに……私、まだ何も命くんの事を助けてあげられてない!!」

「……っ……お前に……お前に何が分かるんだよ……っ!!

怖さも知らないで……知ったような口を聞くんじゃねぇ!」

 

 

かのん「……っ……!」

曜「……かのん…ちゃん……」

「……正直……もう、限界なんだよ……野球を続けるって事が…」

 

 

 

かのん「……っ…………!!

そんな弱気な命くん…………嫌い……っ……大っ嫌い!!!」

 

 

そう言うと、かのんは家を飛び出てしまった。

曜「かのんちゃん……っ!!」

悠「……本当に……その考えは揺るがないんだな?」

 

「……………………悪い、外の空気……吸ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「悠くん……」

悠「俺も、同じような経験したから……分かる

周りが言うほど……簡単じゃないって事を、でも……その中でも自分には何ができるか……それを気づいて行動できるのは、自分次第だ」

 

 

曜「…………」

悠「俺は……アイツを黙って、見守るつもりだ」

曜「……命……」

 

 

悠「……似るのかもなぁ……曜ちゃんと喧嘩した時と…そっくりだ」

曜「…………」

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

【街】

 

 

(……嫌い……か…)

自分でも、格好のいい事を言っておいてこんな形で腑抜けた事を抜かしているのはダサいと思った。

けど……乗り越えようとしても……何度這い上がっても……その考えはどうしても拭えない。

 

 

(……もう、合わせる顔がねぇよな……)

どうして……こんなことに……。

 

 

 

???「……ったく、だから忠告しただろ…視界狭男」

「……お前……っ」

 

朝、オーバーワークを指摘した男に出会った。

……なんで、こいつ……いつも制服姿なんだ?

この前も……今日の朝も……。

 

???「俺の詮索はいーよ……それより、お前喧嘩しただろ?」

「……っ……!」

 

???「顔にそう書いてあんだよ……んで、喧嘩して……その後はどーするつもりなんだ?」

「……どう……って……」

 

 

???「1つ、アドバイスをしといてやる

本当に大事な人ほど……喧嘩したりした時ほど、心から心配したり大事に思えたりするもんだ」

「……何を、急に……」

 

???「……お前はもう彼女の事を顔も見たくないほど嫌いになったか?」

その質問に、命は首を横に振る。

 

???「例え、野球を辞めても……お前にはそれ以外でもやるべき事がある……違うか?」

「……えっ?……なんで俺がそれを考えてるって……」

 

???「朝のオーバーワーク、それに肩の僅かな震え……それくらい見ればそんなことだろうって予測だよ」

(……何者なんだ、こいつ……)

 

???「とまあ、喧嘩は早めに仲直りするって事とやるべき目的は一つだけじゃない……って、これじゃあアドバイスは2つ、か

まぁ、いいや……悠の息子ならこれくらいの事、乗り越えられるだろ?」

そう言って、翻し歩き出す男。

 

 

 

「ま、待っ────────」

曲がり角を曲がって追いかけると……既にもう男は居なくなっていた。

 

 

「……消え、た……?」

 

???(…………ここからどう歩き出すのか……しっかりと、見させてもらうぜ。

……って、歩夢と大喧嘩したりせつ菜と学校前で口論したりした俺が言える立場じゃねぇよな……冷静に考えたら)

 

 

 

???(……まっ、それでも何でも……乗り越えてこれたんだ

お前にだって出来るはずだよ、冴木命)

 

 

 

この日以来……謎の男が姿を現すことは無くなった……。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

曜「あっ、め、命……っ!」

「……………………っ!」

 

 

帰ってきた命は、すぐさま自分の部屋の窓を開けた。

 

「かのんっ、聞こえてるか……!」

向こうの部屋に声をかけるが、部屋の明かりは消えたままだった。

 

 

かのん「…………………………」

時間的に、寝てる可能性も十分ありえる……でも、命は言葉を続けた。

 

「俺は確かに野球を辞めるって言った……けど、それと同時に新しい目標ができた……!」

かのん「……」

 

「俺はお前を支えたい…!!

お前の力になりたい!!

野球をやる前から気づいてた……俺の相棒は野球をしてる時の選手でもボールでも無い……相棒は……バッテリーはお前だけなんだって!」

 

かのん「…………命…くん」

カラカラ……と静かに窓を開けるかのん。

 

 

 

「……ごめん、情けない事言って……自分でも不甲斐ないし、格好悪いって思ってた……」

かのん「……ううん、私も…命くんの苦しみを分かってあげられなかった……」

 

かのん「……私ね、野球をしてる時の命くんがすごく好きだった

頼もしくて、輝いて……背中が大きく見えて……そんな背中に追いつきたくて……音楽を頑張ろうって思えたの」

「……かのん……」

 

かのん「……でも……私は、追いつけなかった

だから、命くんに期待してたのかもしれない……私が出来なかったことを……命くんには達成して欲しいって

……あはは、私も心のどこかで焦っちゃってたのかもね……」

 

「……っ……」

かのん「……先に諦めて…泣いてたのに…命くんにあんなにキツい当たりをして……最低だよね…」

「……そんな事、ない……いつだって、ちゃんと言ってくれるのはかのん……お前だけだった」

 

かのん「…………」

「……かのんの夢は……俺の夢でもある…だから、俺にお前を支えさせてくれ……!!」

 

かのん「……もうっ……本当に…………命くんらしい、よねっ……」

「……かのん……」

 

かのん「大っ嫌いとか言ったのに……本心だったら、どうするの?」

「えぇっ!?……いやっ、それは……」

かのん「あっははっ!うそうそっ!……そんな簡単に、嫌いになるわけないよ///」

「……かのん……」

 

かのん「……でも、私はまだ諦めてないよ……

いつか……命くんがまた投げられる日が来ることを」

「……かのん……」

かのん「……私が……最高の景色を見せてあげる

輝いてる……最高のステージを……!」

「…………っ」

かのん「だから……着いてきてよねっ、命くん!」

「……あぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「……やれやれ、手のかかる子供たちだ」

曜「でも、どうするんだろうね……命」

悠「そりゃ、決まってるだろ?」

曜「……?」

 

悠「カエルの子はなんとやら……だよ」




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夏美「この展開……まさしくっ!ささっ、このセリフを読むんですの!♪」
きな子「なになに……地獄から来た男……スパイダーマッ……なんすか、これ?」
四季「倫理規制引っかかりまくり」
メイ「なんだこれ……」
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