ニッチすぎる。需要はどこだ?
「あのーなんですかこれ?」
私は自分を拘束する鎖をジャラジャラと鳴らしながら問いかけた。
目を覚ましたと思ったら身体中に鎖が巻いてあるのだから、流石に混乱してしまう。
SMプレイだろうか?
私にそんな趣味はない。
もっとも縛る側なら大いに興味はあるが……
「あなたは危険なので、妥当な処置です」
私の目の前に立つ女が毅然とした態度でそう言い放つ。
なにそれぇ……傷つくなぁ。
あなたとは初対面だと思うんですが、私の何を知っているというんですかねぇ?
「あなたのことならよく知っていますよ」
本当に?
私は女を見つめる。
女も私の方をじっと見つめ返してきた。
あれ?これもしかして本当に知ってる?
「繝�§ã郎、34歳、罪人。罪状は複数の殺人及び、傷害。食人に動物虐待、窃盗、……まぁ細かいのをあげるとキリがないのでこのくらいでいいでしょう」
全部バレてるじゃ〜ん。
え、なんで?
うまく隠せてると思ったんだけどな。
最近の警察ってすごいね。
「警察ではありませんよ」
女がにっこり笑う。
う?
なんだかさっきから口に出していないのに答えが返ってくる。
考えが読まれてる?
なんだこいつ…………人間じゃないのかな。
確かに、よく見たら微かに光を放っているような気がする。
神々しい、人知の及ばぬモノの気配。
外面は人間と同じだけど…………
すっごく気になる。
身体が自由を求めてがくがくと震える。
なんで拘束されているんだろう?
自由だったら、愛用のナイフがあれば、すぐにでも割り開いてナカを確かめられるのに……
ああぁ!確かめたい!タシカメタイ!
涎が、口から溢れ出そうになるのを必死に抑える。
女はそんな私を見て深いため息を吐いた。
「やはり、あなたは狂っている。魂が汚れきっている」
ひどいこと言うなぁ。
ただ、人より好奇心が旺盛なだけ。
ただ、常人より肉と血に興味津々なだけだって。
「あなたの魂は汚れきっていて浄化しても黒く、生まれ変わらせるのは無理そうでした」
うん?
浄化?生まれ変わらせる?
なにを言っているんだこの女は。
「ですので、浄化は諦めて、汚れた魂でも問題ない世界へと生まれ直してもらうことにしました」
はぁ……
どういうことだ? 意味がわかんないぞ。
さっぱりだ。
生まれ直し…………もしかして私って死んだの?
なんでだろう、思い出せないな。
「力が世を支配する弱肉強食の世界です。そこで自由に生きなさい…………ただし、今回は弱く食べられる者の肉体です。少しは傷付けられる者の気持ちを理解してくれるといいのですが…………」
えーと、つまり……
強い者が弱い者を食べるのが当たり前な世界で、私がその弱い者の体に入って生活しろってこと?
嫌だよそんなの。
なんで好き好んで弱者にならなくちゃいけないのさ。
弱者になって食われるなんてごめんだね。
喰らうのは私だ。
お前も、喰らってやろうか?
「やれやれ、あなたの魂はとことん不良品ですね。もういいです、さようなら」
女が目を閉じる、それと同時に私の視界も真っ暗になった。
暗闇が私を満たし、意識が遠のいていくのを感じる。
本当に生まれ直すのかな?
次に目覚めた時、私はどうなっているのか……
妙な夢を見たというだけならいいけど。
被捕食者なんて嫌だなぁ………………
そうして私は意識を失った。
―――――――――――――――――――――――――――――――
はい、こんにちは私です。
なんというか、あれはやはり夢なんかではなかったみたいです。
無事転生しました。
奴隷で、家畜な、小さな、女の子でーす。
はい、ものの見事に弱者として生を受けたようです。
家畜、黒兎族の雌でございます。
獣ではなく獣人です。
耳が頭の上に生えていますし、手足にはフサフサとした毛が生えております。
でもそれ以外は人間っぽいんだよなぁ。
あ、一応尻尾もあります。
兎なので短いですが。
兎らしい長い耳には穴が開けられ、商品タグがぶら下がっています。
家畜って感じですねぇ〜。
奴隷で家畜ってのは肉体的にも、性的にも喰われるために育てられているからですね。
お客様はもちろん肉食獣人様。
この世界は、力こそ全て。
強い者が偉く、弱い者は自由に生きることすら許されない。
草食獣人の多くが、虐げられ、家畜として飼われているようです。
いや〜地獄ですね。
なんで私肉食獣人側じゃないの????
自分の身分を示すかのような、耳のタグと首輪、まったく嫌になる。
私をこんなふうにした女神様は私にひどい目にあって欲しいみたいだ。
でも、あの女の思い通りに生きるつもりなんて、さらさらないけどね。
私の魂が不良品だと言うのならなんで破棄しなかった?
お優しいことで。
その優しさのおかげでこうしてまた生きている。
また、肉の味を噛み締めることができそうだ。
家畜?奴隷?そんなの知ったことじゃない。
喰らうのは私だ。
私は牢屋みたいな家畜小屋のすみで1人声を殺して笑っていた…………