帰ってきてた特命全権大使 バディメフィラス
外星人零号 禍特対編
「さらばだ、ウルトラマン」
それが外星人第0号 特命全権大使を名乗るメフィラス星人の地球での最後の言葉になる筈だった。
彼は地球から少し離れた所で地球を眺めていた。
彼は自分がギリギリ被害に遭わないように地球を、ゼットンとウルトラマンの戦いを見ている。
「···抗うというのですか。万夫不当ですよ、ウルトラマン」
その時は来た。臨戦態勢ですぐに逃げれるように、ギリギリでも地球の終わりを見ようと彼はした。
ゼットンに何かが突っ込む、この短期間で人間がゼットンに対するモノを作れるはずが無い。
そうなるとアレは、ウルトラマンだ。
そう理解した瞬間、ウルトラマンとゼットンが消えたのを確認した。
メフィラスはあまりの驚きに絶句をした。
「消、えた?ゼットンと共に呑まれた?···は、ハハ、まさか、何故?ウルトラマン、君は現生人類の何を見て、何を感じて、何に惹かれたんだ」
メフィラスは母星への連絡を送った後、すぐに地球へ戻り、人間の姿をした。
その姿で空を見上げればほんの少し前まで、地球を破壊するゼットンが空映っていた筈だ。
それが消えた空、地球の正しい状態の昼間の空。
揺蕩う白い雲、有明の月、煌煌と燃える太陽らが彩る青き空。
「眩しい。···君はイカロスになってしまったが、私も君の真似をしたらわかるのでしょうか。現生人類の上位概念となり、抱くモノ以外にも、また別のモノを抱くモノがあるのでしょうか。···感慨無量、私の知らないことだ」
ウルトラマンが何故地球を守ったのか、何故人間にそこまでしたのか。
メフィラスの好奇心は地球で過ごしている間に既に擽らされている、さらに興味を持つのに理由はいらなかった。
数週間後、禍特対の部屋では帰ってきた神永新二が心做しかグッタリしながら小さなテトラポットを眺めていた。
浅見弘子と同じようなことを、さらに時間を掛けやったのだろう。
出勤し、ウルトラマンとなっていた神永ではなく、久しぶりに神永新二本人を見た田村は自分のデスクにカバンを置いて、すぐに神永に声をかけた。
「改めて、おかえり神永」
「···田村班長。はい、神永ただ今戻りました」
「いきなりですまないが、検査はどうだった?」
「人間です、しっかりと人間です。自分はネロンガの所で記憶が途切れているので、外星人1号ウルトラマンを知らないまま···」
「根掘り葉掘りと聞かれたりしたんだな。大変だったな」
「最後にある記憶は、後頭部に強い衝撃を受けた事でした。あの時自分は、恐らく死んだ可能性が高いと思います。ですのでウルトラマンについて聞かれても自分は何も答えられませんでした」
禍特対の班長 田村君男は顔を顰め、歪めた。
子供を保護しに行くと言って神永を一人で送り出したあの日、神永新二は死んだ。
あの日、部下が、班の仲間が確かに一度死んだ。
「すまない、神永。謝っても誤りきれないが、あの日俺の判断が間違えていた」
「いえ、死んだのは一人です。子供も守られ、自分の単独行動で被害は最小限で済みました。自衛隊や他の禍特対の人間だったら、自分のようにはならなかったかも知れません」
「神永···!」
「どのような理由であれ、あの日、あの時のあの行動が最善、ということだったのでしょう。それがウルトラマンの目に止まり、自分は···生き返った?」
「···なんで疑問を抱いているんだ?」
神永は椅子に座り直し、腕を組みながらブツブツと考え始めた。ウルトラマンとの状態が何だったのかを考え始めたようだ。
「いえ、即死だったなら生き返ったなんですが、気を失い死にかけている所でだったなら生命維持の上での回復なので生き返った訳ではないなと思いまして。覚えている所までを報告書に書かないといけなく、提出しなければ」
「はあ···神永!とりあえず暫くは浅見と安静にしてろ!ウルトラマンに関しては浅見が俺たちより詳しい筈だ、報告書が進むかもしれない。それに神永の体だったとはいえ、浅見とウルトラマン、二人はバディだったからな」
「バディ、ですか」
「そうだ。それに神永、浅見と話すのは目が覚めた日以来だろ?ウルトラマンは消えたが、神永と浅見のバディは継続している。ウルトラマンと神永新二は別の存在だと、分かるようにしてくれ。浅見は、神永の姿をしたウルトラマンしか知らないからな」
そう言って田村班長は神永の肩を軽く叩き、部屋を出た。
二人は都合によりいつもよりかなり早く出勤していた。あの日のことを話している内に通常の出勤時間となっていた。
「おはようございまーす、ああ!神永さん!」
「船縁さんか、おはよう」
「体の方は平気ですか?ウルトラマンが一度目はゼットンに勝てなくて、宇宙から地球に落下した際に体がボロボロになってた筈なんですが。まあ再度戻って来た際には綺麗になってましたけど」
無表情ながら微かに眉間にシワを寄せた神永は「恐らく平気だ」と答えた。
神永は既に厄介だなと思い始めた。
神永新二として生きている時間、禍特対として所属していた時間は自分の方が長いのにウルトラマンという存在があまりにも色濃く、インパクトが大き過ぎた。
それは自分の知るところ、知らないところでも同じだった。
何より一度世界中に神永新二の素顔は出回った。
神永は詳しく聞いてないが同僚に古巣にはもう帰れないと伝えられた。
検査でたらい回しされている際に一度加賀美が密かに接触してきて、それが伝えられた。
「(それに戸籍も鬼籍扱いに一度なっていた。それに伴い口座凍結もされていたが昨日ようやく元に戻った。なんだ、あとはなんだ。ウルトラマン、元に戻してくれたのは感謝するが神永新二として、なにか余計なことはしてないだろうな)」
後日図書館を一時的に利用出来なくなっているという事に神永は知るがそれは別の話。
数十分もすれば禍特対のメンバーは全員集まっていた、この日改めて浅見と神永は顔を合わせた。
神永での浅見弘子に対しての最初の記憶は泣きそうな顔でおかえりと言われたことだ。
「改めてよろしくね、神永さん」
「ああ、よろしく頼む」
「···もしかしてそれが素?ウルトラマンとあんまり変わらないじゃない!」
「ウルトラマンと神永さんの違いといえば、奇行が少し増えただけですからね」
「た、滝くん?」
「ウルトラマンと入れ替わってもすぐに気付かれないって、考えてみたら少し問題ですよ」
「···船縁さんまで」
「そういえば私が来た時も何を考えているかわからないって言われてたわね」
無表情だが明らかに落ち込んできた神永、それに気付いた田村班長は何も言えずにいた。
古巣が古巣だけに、さらに単独行動が多いとはいえ確かに優秀な部下なのだ。
「···これからの行動に、善処しよう。浅見さん、船縁さん、滝くん、改めてよろしく」
「え、おい神永、俺は?」
「自分は禍威獣の件がなくなるまで田村班長に付いていきます、ですので改めて挨拶する必要はないかと」
「そ、それを言われると嬉しいが、俺にもしてくれ」
「班長が仲間外れで寂しいってことですか!?」
「滝!」
神永は皆を見て思う。自分が意識を失う前と後で、禍特対内で何かが変わったような気がした。
ウルトラマンとゼットンが共に消え、メフィラス去り、ザラブを倒せても、そんな禍特対ではその事後処理や報告書が待っている。
新たに禍威獣が出ても、出なくてもやることは多い。
今回やるべきは全員で改めてウルトラマンに関する報告書、さらにメフィラスに対する報告書など追加され、後処理だらけだ。
室長はその報告書を確認し、その報告書をまとめ、終わるまでは班に来れないだろう。
全員暫くは内勤だろうと田村班長はぼそっと呟いた。
そのためバディになっている浅見と神永は改めてバディ感を掴めぬまま、パソコンが相棒で報告書を書き上げる日々が続くこととなる。
「···なあ、思ったんだが神永はウルトラマンを知らないんだよな」
「はい」
「報告書、なんて書くんだ?」
「死んでいたため何も知りません、でしょうか」
「メフィラスもザラブも知らないですよね?どうするんですか!」
「···外星人に対することは仕事にならないのは自分だけ、と言うことだ。自分の分まで報告書を頼むぞ滝くん、船縁さん、浅見さん」
「うわあー!数式以外にも書くこと増えるのかー!」
「仕事増えたわー」
「そうとなれば早くやらないとね。よし!頑張るわよ!」
「浅見さんが気合入れたわよ〜!ああ、仕方ない。私も頑張りますか」
イレギュラーに何度も遭遇する禍特対。
流石というべきか、一ヶ月経たないうちに報告書を皆は書き上げて提出を終えた。
禍特対の面々は少々お疲れムードである、殆どが椅子に座りながら溶けている。
「皆、お疲れ様」
「はあ〜、作成中に禍威獣が現れなくてよかったわ〜」
「ホントですね、仕事増えなくてよかったあ〜」
「外星人も来なかったわ」
「おや、良かったですね」
「よし、浅見の歓迎会と神永の復帰祝いを兼ねて飲みに行くか!」
「良いですね、慰労会ですか?私、おすすめ居酒屋を知っていますよ」
「···?さっきから聞こえる声は誰の声だ。っ!班長、ドアの前の男性がいます。あなたは、誰だ?」
神永がそう言いながら臨戦態勢で椅子から立ち上がると、窓を見ながら光を浴びていた田村班長、机に伏せながらグッタリしていた禍特対の面々が一斉に声の方向に顔を向けた。
ニコリと「お疲れ様です、禍特対の皆さん」とドアの方に立っているのはメフィラスであった。
「「ああ〜!!」」
「お、お前はメフィラス!なぜここに!」
「鍵が空いてましたので」
「確かに空いているが何故ここまで来れる、あなたは関係者か?」
「ああ、神永は人間の姿を知らないのか」
「人間の、姿?班長、人間の姿とは」
「まあまあ、ああこれをどうぞ、禍特対の皆さん。疲労にはチョコレートが良いと見ました。実はここに来るのは二度目でして」
「二度目、だって?」
田村班長や禍特対の面々はいつ来たんだと考え込んでいた。それはメフィラスの発言で気付き、思い出す。
「一度目は皆さんに声を掛けたのですが、何やらずっと画面を見て打ち込んで忙しそうで無視されてしまいましたので、その時もチョコレートを置いて帰りました。コンビニという所で買いましたが、お味はいかがでしたか?」
「コンビニの、チョコレート···ああ!先々週!」
「うっそ!あれ船縁さんのじゃなかったの!?」
「違う違う!私のはちゃんとカバンに入れてある!」
「なんで一言『それは私のじゃありません』って言ってくれないんですか、船縁さん!」
「ソーリー、その、美味しくて···つい言うタイミングが」
「···そのチョコレート、俺も二つ食べてしまった」
「俺も三つ食べました!浅見さんが美味しいって言うから···」
「すまん、班長としてあるまじき行為だ。気づかなくて本当にすまない!」
「けど誰も気づかなかったのは流石にやばいですよね、更に無視だし!」
「でも先々週は山場だったから···家に帰れた人いる?」
「船縁さん、俺風呂にすら入れてないですよ、お腹も空いてきました!」
「え?滝くん今!?」
「俺、頭脳労働なんですぐにお腹が···」
「あの、自分はチョコレートを見てませんが」
「私達が食べ終わった頃に帰ってきたわよ、神永さん」
「···そう、なのか」
内緒で禍特対のオフィスに二度目の来訪をしたメフィラス、外星人の自分がいるのにも関わらず死屍累々な上にそのような反応のメンバーを見て疑問を抱いた。
「何故そこまで忙しいのですか?」
「あんたのせいでしょうが!」
「私ですか?」
「···詳しくは言えないがウルトラマンとメフィラスが戦った時の報告書などを書き上げていた。ゼットンの事もあって書き終わるのが今になったんだ」
「ああ、あの時のですか。これは失礼しました」
「本当だよ···」
「ミートゥー···」
「それで、今度は何をしに地球へやってきた」
ようやく本題に入ったのは大変嬉しいが、個としての人間は弱く脆い。
メフィラスはメンバーの顔を見渡す。初めて見た時より、何故か確実に今の方が疲労感が伝わる。
禍威獣退治よりも何が彼らを疲れ果てさせる。
「疲労困憊のようですので、簡潔に申し上げましょう。何故ウルトラマンがそこまでして地球を、現生人類を守ったのかを私は気になりましてね。···それでウルトラマンの真似をしてみれば、それがわかるのかと思い、現在行動中です」
「ウルトラマンの真似ですって?」
「えぇ、上位概念になる以外にも、なにか得られるのかと私は考えまして。ですので申し訳ありませんがベーターボックスを渡すことはできませんが、アフターケアとして私もウルトラマンに習い、地球で働いてみようかと」
「おい、まさか」
「面目一新になるよう、まずはアナタたち禍特対の私に対する印象から。塵も積もれば山となる、私の好きな言葉です。また来ますのでゆっくりと休息を、人間の体は私の体に比べれば脆い。それではまた」
そう言うと公園でウルトラマンと消えた時のようにメフィラスは消えた、コンビニの袋に入ったチョコレートを六箱を残して。
「···まさかあのメフィラスに気を使われた?」
浅見がそう言うと田村班長はハッとして皆の顔を見た。
頬がコケる程なってはいないが、なんとも酷い顔付きになっていた。
書類の提出を出来るだけ早くと言われ、ギリギリ一ヶ月未満で終わらせた。
最後の週は誤字脱字を直したり、専門用語の説明文を増やすのに使ったのも同然だった。先週は先々週と同じく記憶や資料を辿り、一日中どころか一週間パソコンとにらめっこ。
最初っからクライマックスだった訳だ。
歓迎会と復帰会などもってのほか、皆早く帰りたい。
「···一旦帰るか」
「そう、ですね。旦那も待ってますし···」
「お腹減った、お腹減りました···」
「自分も流石に、空腹もですが今は風呂に入りたい···」
「私も早くお風呂行きたい···」
「はあ〜、今日は解散!」
その日はそのまま解散となった。
二日後、丸一日の休みを得てそこそこリフレッシュした禍特対のメンバーは出勤して思い出した。
「班長、俺たちメフィラスのことを忘れてないですか?」
「あっ!」
「勝手に来るんじゃないんですか?」
「船縁さん、勝手に来られたらセキュリティの問題が出てきちゃうでしょう!?」
「あ、それもそうか!じゃあ一応今から外に行きます?」
「外の方がよろしいなら、私は外で待っていますが」
禍特対のオフィスに響き渡る姿なきメフィラスの声、デジャヴュを神永以外は感じた。
なにかを諦めた班長は室長に連絡をメールで入れた。
「メフィラス、宗像室長に連絡を入れた。禍特対に対してアクションを起こしたいなら宗像室長と俺を通してくれ」
「そうですか、わかりました。では外でお待ちしております。どうやら中に入るのはいけないようだ。では禍特対の皆さん、また入り口で会いましょう」
「入り口だって?!滝、船縁は宗像室長が来るまでここで待機!室長に経緯の説明、その後指示を貰えへ!浅見、神永は俺と一緒に来い!急いで入り口に行くぞ!」
「「はい!」」「「了解!」」
浅見、神永、田村は急いで建物を掛け下がる。
相手は外星人、何を仕出かすかわからない、いや一度やらかした相手だ。
自動ドアの前には真っ黒い男が空を見上げながら立っていた。
「班長、いました!」
「そこを動くな!」
「おや、走って来られたのですか?余程私は信用が無いようだ」
「当たり前でしょ!」
「塵も積もれば山となる、私の苦手な言葉になりそうですね」
「ふう···さて、大人しく付いてきてもらおうか」
「ええ、大人しくしましょう」
田村と神永で挟むようにメフィラスを連れて、浅見を先頭に禍特対のオフィスへ戻る。
オフィスに行くため、エレベーターに途中乗り込んだがメフィラスに少し落ち着きがなかった。
「ほお、これがエレベーターですか」
「テレポートみたいなのばかりしてるから、まさか怖いんですか?」
「いえ、初めて乗りましたので少々好奇心が。このボタンはなんですか?」
「ああ!そこ押すな!?警備会社に連絡するやつだ!」
「なるほど、閉じ込められる可能性があると。ふむ、地球には私の知らない物がまだまだ沢山あるようだ」
「そりゃそうでしょうよ」
浅見がため息をつきながらぼやいた。
田村は敵意やあの時のようになにか企んでいるんじゃないかと思っていた、だがそのようなものを感じなかった。
無事大人しく付いてきたメフィラスと3人は誰にも絡まれることなく禍特対のオフィスへ戻ってきた。
宗像室長は本来なら田村が座っている所で待っていた、滝と船縁はその近くに立っていた。
田村は途中で政府の男、または何処からともなく出てくる神永の元同僚などが来るんじゃないかと少しヒヤヒヤしていた。だが宗像室長を見てそれも杞憂に終わり、少しホッとした。
「田村くん、浅見くん、よく無事にここまで連れてきてくれた。それと神永くん、よく禍特対へ帰ってきてくれた。そしてメフィラス、この場合は久しぶりというべきかな?」
「はい、お久しぶりです。先に言っておきますが、私はベーターボックスなどのこちらの技術を渡したり、地球に対して私が上位概念になると言うのは止めましたのでご安心を。今はただ、何故ウルトラマンが地球を守ったのかを私は知りたい。そのために彼と一番距離の近かった禍特対に対してアクションを起こしているだけです」
宗像室長はそれを聞いて唸り始めてしまった。
もしかしてこの件は思ったより長期の案件になるかも知れないと勘が訴えている。
それに伴い選択肢を間違えれば、目の前の全身黒い服装の男 メフィラスはまた地球に大してアクションを起こすかもしれない。
事は慎重さと長い目を要する。
「まず我々に敵対する意思はない、と言う事を教えてほしい」
「ではこれを、見た事あるはずです」
メフィラスは机に向かって悠々と歩き、ゴトリと重厚な鉄のような音を立てたのは、ベーターボックスの点火装置だった。
ただ全体的に黒く暗い、赤い所は少し光っていた筈だ。
点火装置はもはや光を放たないおもちゃのようだった。
「ベーターボックスの点火装置です、ただ何をしても起動しないようになっています。それが無ければ私はウルトラマンのようなサイズになることはありません。政府ではなく、禍特対で預かって貰えると好ましい」
「わかった。大事な物だろう、鍵のかかる所でしっかり預かろう」
「恐縮です」
そう言い宗像室長に頭を下げようとしたメフィラスは半端な角度で止まった。
背後からとある男の視線が刺さっているからだ。
「···ウルトラマン、ではないな。初めまして人間の神永新二、私をそんなに見て、なにか気になるのか?」
「···人間にしか見えないな」
「私に関する資料はないのか?」
「検査中にあなたに関する資料以外にも渡されていたが、その全ては検査中に奪われた。恐らくウルトラマンの記憶の有無の確認のためだったんだろうが、まだ返されていない。知っているのはメフィラスという名の外星人ということだ。姿形に関しては何も知らない」
「そうですか」と言いながら机に向かっていたままの体をくるりと翻し、神永の方に向かう。
そこに浅見が神永の前に立ち、腰に手を当て怒っている表情でメフィラスを睨んだ。あいも変わらず表情は口元だけの笑顔だ。
「神永さんに何するつもり」
「握手です、改めて挨拶が必要だと判断した」
「信用ならないわね。あなたがウルトラマンの神永さんの時、肩を触ってそのままどこか行ったの覚えているわよ。物理的接触なんてさせるものですか!それに、言っときますけど!!私はまだ許してない。データが消えても人の記憶や紙には、まだ真新しくあの出来事は残っていて覚えているのよ。私のことは世界に広まったまま!もちろんそれは神永さんも!」
「神永新二の変身に関しては私の行いでは無いのですが···やはり涓涓塞がれば終に江河となるのですね」
「けんけん?」
「積羽船を沈む、共に私の苦手な言葉になりそうですが、名誉挽回出来るよう致します、浅見女史」
「···ん?ちょっと待てくれ浅見さんにメフィラスさん」
「彼にさんはいらないわよ、神永さん」
「室長、それに班長、自分のことが世界に広まっているとは?」
「まさか資料と一緒に現状のことを書いた紙も取られてたのか!?」
「神永、だからそんなに落ち着いてたのか?」
「神永さん!これこれ!これ見てください!」
滝は急いで自分の机のパソコンに向かい動画サイトを開いた、神永を呼ぶと動画再生した。それに伴い彼の目には再生数が入り込んだ。
「なんだこれは!?再生数が、上位···」
「全て消しましょうか?」
「···いや、もうここまで行ったらいきなり全て無くなるのは不自然だ。また外星人が来たと政府などに知られてしまう。それに恐らく転載や何処か個別に動画を残している人も恐らくいる、メフィラス、君でも全ては消せないだろう」
「私も似たようなことがあった。神永さん、私達はもう古巣に戻れないわ」
浅見を見ると少し目に生気がなかった、どうやら戻る気があったようだ。
神永も一応戻れるなら戻る気でいたが、これに関しては日にちも経ち、完全に後の祭りである。
「ウルトラマンは、あと何をしたんだ」
「そういえば沢山本を読んでましたね、人間のことについてアレは調べてたのねぇ。また神永さんがなにかしてると思ったのに」
「図書館での利用が不可になっていたのはそういうことか···!」
「返却期限が過ぎていたのか」
「まあ、なんだ。ごたごたしててすまないが、兎にも角にもメフィラス、君は改めて地球に来て何をしたい」
「ウルトラマンの真似を、形から入れば少しでも理解出来るかと思いまして。私は、ウルトラマンを理解したい」
宗像はメフィラスの顔を見る、擬態してると言えどその顔は笑みが薄くなり、真剣な顔をしていた。
宗像は室長として、その立場の人間としてなるべく最善を選んだ。
「そうか、ウルトラマンを理解···ううん、なら禍特対を見学してみるか?」
「禍特対を、見学?」
「許可しなくても禍特対の周りをこれから付き纏ってくるんだろうと思ってな、それなら見学という体で許可をしよう。それに経緯が特殊とはいえウルトラマンもいた職場だ、何かのきっかけになるかも知れんぞ、メフィラス」
鳩が豆鉄砲を食ったように顔も体も動かなくなったメフィラス、すべてがピタリと止まり、彼からさらに人っぽさがなくなる。
宗像はなにか駄目だったのかと思った。その視界の端ではもの凄く嫌そうな浅見ともの凄く警戒している滝が見えた。
神永と船縁は通常運転なので田村が気を張っている顔が見える。
「見学、とは考え付きませんでした···なるほど見学ですか。流石禍特対の室長ですね、それは実に良案だ!」
気持ち目も笑っているようなメフィラス、宗像の選択肢は合っていた。だが禍特対の業務的には仕事が増えるので業務的な選択肢は合ってなかった。
この日を境に堂々と外星人0号 メフィラスは禍特対へ遊びに来るのであった。
その後、数日経って禍特対には見知らぬ人がいた。
どうやら上に勘付かれたらしい、そこで外星人担当官として禍特対やどの組織にも強い縁もゆかりもない人物がここに飛ばされてきた。
そこには当然外星人や禍威獣との縁も含まれている。
そうなるとかなりの若手が禍特対へやって来る、キャリアも経験もない。飛ばされてくるとなると相当有能か、とんでもない曲者であるが果たして。
「霞が関の独立愚連隊へようこそ〜、若いのに大変ね。私は船縁よ、よろしくね」
「船縁さんよろしくお願いします!いいえ!これも縁ですので!まあ、人助けをしたら職につけてびっくりですが」
「人助けって何をしたんですか?あ、俺は滝です」
「滝さんよろしくお願いします!体調の悪そうなおじさんを助けたんですが、縁があり二度助けたんです。一度目は名乗らなかったのですが、二度目は引き止められまして、会話をしていく内に職がないのがバレて今に至ります。その人がどっかの、管理職の人でした」
「その人は管理職ではなく大臣だぞ。初めまして、俺は禍特対の班長の田村君男だ。よろしく頼むぞ、っとそろそろあいつらも厄介なモノ引き連れて来るかな?(人を見る目があると聞く大臣だから、そう厄介な事にはならないと思うが···どうなるかな)」
「よろしくお願いします!班長!」
ドアの方が少しうるさくなって来た、誰かが一方的に怒っているようだ。
ドアの開閉する音が聞こえ、皆がそちらを向く。神永と浅見、それと珍しく歩いてちゃんとドアから入ってきたメフィラスが着いたようだ。
「だから神永さんに近寄らないでよ!」
「堂々巡り、私の苦手な言葉です。ですから彼を連れていくことは致しません。浅見女史はいつになったら信用してくれるのでしょうか」
「因果応報、なんじゃないか?二人共こちらに寄るな」
「メフィラスが押してるの!もう、重たい!だいたい女史って何!?いつの時代よ!あんたいつから日本にいるのよ!」
「ああ、私はさらに善行を石の如く積んでいかねばならないのですか、まさに賽の河原の石積みです。信用を得るが先か、寿命が先か。ああおはようございます、皆さん」
「おはようございます。神永登庁しました」
「田村班長、おはようございます!滝くんも船縁さんもおは···誰かしら?」
「おはようございます!私は[[rb:屠龍葵 > トリュウアオイ]]!外星人担当官として、将来的に作られる予定の外星人に対しての外交、対話での平和的交渉の受け渡し。いわばネゴシエーターや外交官などの役割のテスターとして、本日付けで配属されました!暫くは外星人0号メフィラスさんと共にバディを組めと司令が来ております!」
一息に説明と自己紹介が行われ、さらに禍特対にはいないタイプだったので皆が固まった。
メフィラス以外の皆がそこから少し一歩引いた、田村に関してはまた癖が強いのが来たなと脳内でぼやいた。
浅見は先頭を切って挨拶をし、その次に神永が挨拶をした。
残るは今日も全身真っ黒い男のメフィラスだけだ。
「アンタも挨拶しなさいよ、寧ろ当事者でしょう?」
「···ああすみません、私が外星人のメフィラスです。バディは相棒と言うことで理解して良いのですか?」
浅見はその発言に少し目を見開いたがメフィラスはそれをスルーした、今は屠龍葵という人間が問題だ。
「はい!外星人0号メフィラスさんから外星人とはどういう感じなのかを体感しろと言われてます!」
「それ実感じゃない?屠龍さん」
「両方だと思います!訂正ありがとうございます!浅見さん!!」
「声、デカ···!」
「···初めてみるタイプの人間だ。滝くん、どうやって会話をしていけばいい」
「ええ!?神永さんしっかり!」
「滝くん!あなたなら歳が近いから行けるわよ!」
「すまん滝、俺もちょっと···」
「···メフィラス、君は大丈夫か?」
「···為せば成る、なさねばならぬ何事も、でしょうか」
「皆さん!私のことは屠龍とお呼びください!よろしくお願いします!!!」
「声のボリュームを下げてくれ、屠龍さん」
「はい!!神永さん!」
「声が大きい···」
この日、禍特対に新たなバディが生まれた。
淡々としている愉快な外星人と禍特対にいないタイプの声のデカイ人間。
これからここに一つの嵐が起きるかもしれない。だがここは禍威獣特設対策室専従班、通称禍特対。
その嵐こそ、尋常一様である。
一方その頃、禍特対に連絡を取るべく一人の人間が動いていた。
彼は公安の加賀美、とある通報により公安が動く自体となっていた。
「同じ人間が丸々二人、この日本に存在しているのを確かに確認が取れました。片方二人には芸能人ともあって連絡は取れて、接触もしました。もう片方は連絡は取れませんでした。自分が後者の二人を確認しに行きましたが、確かに顔や背格好は同じ。同時刻に前者の二人は一時的に拘束してもらい、同時に四人の存在の確定を確認」
「つまり外星人、という訳か」
「その可能性が高いかと」
「まさか一般の通報からこうなるとはな」
「どうしますか」
「人間相手なら我々だが、外星人や禍威獣はあちらの専売特許だ。こちらに戻れないとはいえアイツは優秀だ、早々に解決してもらおう。加賀美、神永への連絡を頼んだ。神永、または禍特対への引き継ぎが終わり次第、次の件へサポートに入れ」
「了解しました」
「と言う経緯で俺はこれを神永に渡しに来たんだ」
「いや、加賀美、何もわからないが」
「都合よくはいかないか」
二人揃って椅子に座りながら缶コーヒーを持つ。
隣には首を傾げる神永、加賀美は改めて説明をし、資料を渡した。資料の題には複体と書かれている。
複体、つまりドッペルゲンガーである。
この世に同じ人間は二人はいない、あるとすれば一卵性双生児が遺伝情報的には同じだろう。
「双子と言うわけでもない。ザラブのような外星人がその二人に擬態している可能性がある」
「ザラブ、ウルトラマンを連れ去り、ニセのウルトラマンになったという件のか」
「そうだ、ようやく資料が戻ってきたのか?」
「いいや、戻ってない。禍特対に新人が来たので改めて自分も一緒に説明を受けた。実感は無いが、加賀美、ありがとう」
「···いくらこの職に就いているとはいえ、俺はウルトラマンが神永になってるなんて流石に驚いたよ。命を大事にしろ、生き急ぎ」
「ああ、ウルトラマンから貰った命だからな。もう自分だけの命じゃない、大切にするよ」
「そうじゃなくてな···まあそういう事だ。あとは田村班長にも説明して俺は終わりだ。何かあったら連絡しろ。お前がウルトラマンだろうが、ただの人間の神永新二だろうが、お前は俺の元同僚だ。助けてやるし、いつでも戻ってこい」
「戻って来れないんじゃないのか?」
「内職があるだろ、俺達はいつも内も外も人手不足だ」
「···考えておくよ、加賀美」
そういう神永を見て、戻っては来ないんだろうと加賀美は思った。同時に缶コーヒーを飲み干した二人は禍特対のオフィスへと向かう。
そう、今話題の新人がいるオフィスに。
「失礼しま」
加賀美は挨拶も早々にすぐに禍特対のドアを閉めた、後ろから「加賀美?」と神永の声が聞こえる。
加賀美は視界に写ったモノに対し、思考が少し追いついていない。
オフィスの中には居たのはパソコンと戦う船縁と滝、先にバディを組んでいた浅見と何かを聞いている屠龍とその近くに椅子を置いて深く座り込みゆったりしているメフィラス、普通に仕事をしている田村の五人。五人?
「(なんだ、あれは)」
「加賀美?おい、どうした」
「···いや、見間違いかも知れない。今開ける。失礼します、加賀美です」
「こんにちは!!」
「声を抑えなさいよ!」
「浅見、屠龍、声を抑えろ。知っていると思うが改めて田村です、ザラブの時はありがとうございました」
「···いえ、気にしないでください。神永は自分の大事な元同僚ですので。それで田村さん、これを」
「複体、ですか」
「外星人の可能性が高いです」
田村は資料を見ながら加賀美の話を聞く、大いに外星人の可能性が高くなった。居場所自体は既に公安でマークしているようだ、今からでも踏み込みに行ける。
「外星人が相手だ。俺、浅見、神永、屠龍の四人で踏み込むぞ。後ろから俺は指示と周囲の警戒をする、屠龍は俺と周囲の警戒だ。中は浅見と神永で行こう」
「おや、私はいいのですか?」
「お前は正式に入ってないだろ。屠龍と組んでいると言っても見学のお前で外星人の体感、実感をさせると言うものだろう。まあずっとお前は擬態しているからな」
「なら正式に加入してもいいですよ」
「俺一人で決められる事じゃない」
「ハイアラーキーですか。有能であればあるほど難儀ですね、田村班長」
「思ってもないことを言うな、メフィラス。加賀美さん、場所を教えて下さい、今から行きます。滝と船縁はここで待機、禍威獣が出たら室長と共に迎え」
五人が出ていくのを目で見送り、この部屋にいるのは滝と船縁、そしてメフィラスだけとなった。
あまりこの三人になることはない。
「···複体、ですか」
「気になるの?」
「ドッペルゲンガーってことですよね。そんな、都市伝説ではあるまいし」
「けどザラブの事もある。滝くん、最悪の場合私たちの仕事ものものすごーく増えるわよ。都市伝説、妖怪、それに一昔前にあったエイリアンの仕業とか言われたキャトルミューティレーションやアブダクションとかも私達の仕事になるかも」
「非科学的過ぎるし、船縁さんそれ考えすぎじゃ···」
「それを私達が人間の仕業か、外星人の仕業か、はたまた第三の選択肢か。それを調べるのよ。ウルトラマンが神永さんに変わっていたのも一種のドッペルゲンガーでしょう?」
「いやそれはなんか違うでしょ」
「···船縁じょ、いえ、船縁さんか滝さん」
「なに?」
「なんですか?」
「あとでキャトル・ミューティレーション、アブダクションについて調べたいのでどちらかパソコンを貸してください。私の知らない言葉です」
そういうとメフィラスは立ち上がった、ドアに向かうことから彼らを追い掛けるようだ。
「テレポートすればすぐ追い付くんじゃない?」
「向かう先までは知りませんので」
「ん?メフィラス、それ」
メフィラスはスーツから携帯を出し、後ろの二人に画面が見えるようにゆらゆらと振る。
点が動いているのが見えた、誰かにGPSを仕込んでいたようだ。
「地球の技術を使ってみたく、屠龍の携帯にカップル用のアプリを入れました。互いに居場所がわかる優れ物です」
「あれ便利らしいわね。まあ追うのならばグッドアイデア?」
「うわあ、噂に聞くアレ入れられたのかよ」
「では私はバディを追いますので」
メフィラスはそう言うと足元から徐々に消えていった、滝と船縁はふと思った。
メフィラスが後になって追いかける程の事なのかと。
「これはもしかしたらもしかしてね」
現場では既に加賀美は居なくなっていた。
去り際に掛けられた言葉は「また厄介な事に巻き込まれてるな」だった。
それがこれから突入する方なのか、現在進行系か。
「神永、浅見は作戦通り。屠龍、異変があったら声は俺の声の大きさで知らせてくれ」
「はい」
「声の大きさ落とせるじゃない···」
「皆イヤホンを付けたな?よし、作戦始」
「私もご同行しましょう」
声は最近良く聞く外星人の声だった。
田村は即決で突入の方に指を指した、メフィラスは頷き田村は改めて言葉を発した。
「改めて、作戦始め」
神永と浅見はドアに耳を澄ます、現状人間か外星人かわからないが、中に二人はいるようだ。
二人は同時にドアを蹴破った、行動が始まったのを知らせるためだ。
浅見は直ぐ様二人の顔を視認した、資料に載っていた二人と丸々同じだ。つまりこの二人は外星人である可能性が高くなった。
尚ご本人たちは一時拘束から監視に移行されている、この件が終われば監視の目も無くなる。
「あなたたち!外星人ね!」
「禍特対の神永だ。その顔と名前でバレないと思ったのか?」
「禍特対、ですか。聞いたことありますね」
「最後の報告の一つ前にあったやつですね、先輩」
「それにしてもこの顔と名前は有名なようですね」
「その通り、その二人は有名です。何故なら」
ドアを蹴破り入った、禍威獣特設対策室専従班 通称【禍特対】の二人の背後から足音もなく、ただ声は響くように喋る。
メフィラスは声ですぐにその場を制した。
「ライダーの、方や主役、方や信者ができる人の名前と姿。呆れて物が言えない、とはまさにこの事ですか」
「私達はあなたを探していた。なぜそちらに」
「そうですよ!なんで人間といるんですか!大先輩!」
禍特対の浅見が視線は移さないがまさかと呟いた。
神永は今や同僚となったであろう男に視線を動かした。
彼の腕に橙色の腕章が見えたからだ、それが今だけなのか彼が飽きるまでの半永久的なのか。
それとも擬態と同じくしているのか。
「彼らは私と同じ、メフィラス星人です。ですが私より未熟、故に彼らはバディを組むメフィラス、通称バディメフィラスと呼ばれてます」
屠龍葵(トリュウ アオイ)
禍特対一番の新人。誰よりも若く未熟、故に突っ走る。
性別は未定なので一人称は私。女性なら175cm、男性なら178cm。
科特隊に何故か出入りしている少年という立場のキャラがいないので、何故か禍特対に配属されてきたという立場の人間として登場。