バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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雛の行列

 

 ギルドにはパーティーというものがある。

 

 ……いや今更その説明いる? って思っちゃうけど、“ギルドのパーティー……? お祭りか……? ”とか連想しちゃってる絶滅危惧種みたいな人がいるかもしれないから一応解説はしておこう。細かい違いもあるからな。

 

 パーティーとは複数のギルドマン同士で組む、チームみたいなものだ。

 2人以上からなる集団でパーティーとして登録することができ、依頼を受注する時や発注する時などにパーティー名義で扱うことができる。

 

 ドラクエとかで勇者、魔法使い、戦士、僧侶とかで組むやつだ。ああいうのを想像してもらえればわかりやすいだろう。

 とはいえこの世界におけるパーティー構成は、そんなバランスの良いジョブ構成でない場合がほとんどだ。

 

 剣士だったら基本は剣士オンリー。弓使いなら弓オンリーとかザラにある。討伐依頼を受けるときに連携しやすいしな。

 魔法使いやヒーラーは近距離役の援護がないと厳しいから、そこらへんは単独パーティーとかはあまりない感じかも。俺が知らないだけで無くはないとは思うが。

 

 ああ、この職業的なもの、別にジョブみたいなシステムがこの世界にあるわけじゃないからな。

 戦闘スタイルは自前の武器や自己申告によるものだ。当然“盗賊”なんて戦闘スタイルは無い。犯罪者カミングアウトする奴がいたら怖すぎるわ。

 

 

 

 んで、この街レゴールには目立った活躍をしているパーティーがいくつかある。

 

 一つは剣士を中心に組んだむさくるしいパーティー「大地の盾」。

 人数は今何人くらいいるんだろうな……俺が最後に聞いた時は20人くらいだったが、今はもっと増えてるかも。

 槍と剣、そして盾と鎧といった王道の装備でガッシリ足元を固め、レゴール中心に討伐依頼をサクサクこなしている。盗賊征伐なんかも積極的にこなしてるガチ戦闘パーティーだ。

 ここの強みは何頭も自前の馬を持ってることだな。依頼の受注から現地への到達がアホみたいに早い。おかげで安定して仕事をこなしているが、諸々の維持費でちょくちょく苦労してる姿もよく見ているから、羨ましがるにはちょっと残念なとこはあるな。

 アレックスのような元ハルペリア軍人はだいたいここにいる印象だ。つまり体育会系。絶対入りたくない。

 

 大地の盾の次点扱いを受けているのが、「収穫の剣」。

 こっちは大地の盾のガッチリした体育会系についていけないタイプの奴らが好むパーティーで、人数はもっと多く30人以上いる。

 しかしここは集団行動が苦手なのか、全員で集まって何かをするって感じの場所ではなく、あくまでも所属する奴の互助会みたいな組織になっているらしい。バルガーもここ所属だな。

 使う武器は色々だ。オーソドックスに剣を持つ奴もいるし、槍を使う奴もいる。魔法使いも数人抱えてるし、弓使いだっている。装備に統一感が無いので、辛うじてパーティーのエンブレムの入ったワッペンを装備に付けることで連帯感を出している感じ。

 けどここも大人数の中で仲の深まった奴らがちょくちょく小勢力として離脱すること多いし、上手くやれてるのかはわかんね。なんとなく昔やってたネトゲの無意味にでかくて交流の薄いチームを思い出すパーティーだ。特別入りたいとかは思わない。

 

 レゴールで活動させておくには無駄に華やかな女性パーティーが「アルテミス」だ。

 メンバーの殆どが弓使いと魔法使いで、近距離担当が二、三人くらいしかいないという滅茶苦茶尖ったパーティーである。人数は12人かそこらだったかな。ライナとか女性ギルドマンはほぼここって感じ。

 遠距離からの堅実な討伐の他、時々貴族街のお偉いさんからも仕事の依頼があるそうだ。女性だけってとこに便利な要素があるんだろう。

 一見華やかなアイドルパーティーだが、所属してる何人かが鬼強いので下手に手出ししたらぶっ殺される。あと一人だけ男メンバーがいるらしいけど俺はいまだに見かけたことがない。“この人かな?”と思って声かけてみたら実は女で、それ以来俺はアルテミスから目の敵にされている。

 当然俺は入れないし、入りたいとも思わない。

 

 警備専門にやってる最大手は「レゴール警備部隊」だ。

 ここは討伐はほとんどやらず、建物や人物、馬車などの護衛を中心とした任務をよく受けている。人数はわからん。めっちゃいるのは確かだ。

 多分所属してる人はそこまで戦闘に秀でて無くて、けど安定した仕事はしたいってのが多いんだろう。中年とか年寄りとかもいる。

 まぁ日本でも「お前が何を守れるんだ」みたいな爺さんが警備員やってたしな。質はともかく護衛は欲しいって人もいる。そういうポジションで飯食ってるのがここになる。カスパルさんもヒーラーとして所属してるくらいだしな。

 まあ……楽なパーティーではあるとは思うんだが、俺はちょくちょく討伐してジビエ食いたいタイプのギルドマンだから。老後はともかく、体の動く若いうちは入ろうとは思わないね。

 

 目立つのはそんなとこかな。

 あとは仲間内で固まってる少人数パーティーがたくさんってとこだ。

 

 田舎村から出てきた若者は結構香ばしいパーティー名つけてて楽しいよ。「死神の鎌」とか「覇王の月」とか。名前だけならゴールドランクの連中がゴロゴロいるからな。

 

 そう。

 

 収穫期を終えた今。

 夢見る(畑継げない)若者がギルドマンとしての名声(食い扶持)を求め、田舎から続々とやってくる季節が到来していた……。

 

 

 

「何みてるんだよ」

「あ? そっちが見てるんだろうが」

 

 続々と来ます、将来有望な若者たちが。

 収穫の手伝いだけやらされて、あとは他所で稼いでこいと家を追われた勇者の卵がダース単位でわらわらと……。

 

 ギルドは会員登録作業で連日大忙し。ただでさえ業務が圧迫されているというのに施設内でひっきりなしに起こるフレッシュな喧嘩。

 

 額に青筋を浮かべて激務に励むエレナちゃんを眺めながら飲むミルクの美味いこと美味いこと……。

 

「なんだとっ!?」

「やるのかぁ!?」

「こら! ギルド内で暴れるなら即時除名だぞ!」

 

 礼儀も学も無いが威勢だけは良いガキばかりだ。この時期ばかりはギルドも大変である。

 まあ、ここで全員を突っぱねても後々ギルドの首を絞めるだけだから、頑張るしかないんだがね。

 

「見ろよあのおっさん」

「白髪だ」

「まさかサングレール人じゃないだろうな」

 

 お。隅っこでほのぼのしてたらなんか三人組に絡まれたわ。

 ふらふらこっちに歩いてくるのは別にいいんだが順番待ちは大丈夫かお前ら。列から出たせいで普通に詰められてるぞ。

 

「何の用だ、ルーキー共」

「……へー、ブロンズか」

「俺たちはルーキーだけどな、サングレール人のおっさん。そんな銅色のランクなんかすぐに追い越してやるぜ」

「追い越す分には歓迎だ。最初は厳しいけどまぁ頑張れよ。あと俺はハルペリア人だ」

「サングレール人の混ざりもんだろ」

「まぁそうだけどな。……列閉じてるけど、良いのか?」

「……あっ!?」

「おい、そこは俺たちが並んでたんだぞ!」

「ぁあ!?」

 

 馬鹿だなぁこいつら。まぁ村からやってきた奴らは似たり寄ったりなんだが。

 田舎はゆったりしてるからなぁ。行列に並ぶ経験もないだろうし、色々慣れないことだらけで大変そうだ。

 

 だからまあ、相手は子供だし。最初のうちはかなり大目に見るようにしてる。

 何度も突っかかられるのは面倒だし、あまり調子に乗られたらそれなりにお灸を据えてやるつもりではあるが。

 

「……けっ。おっさんのくせに酒場でミルクなんか飲みやがって」

「ギルドマンなら酒飲めよ。だっせえ」

「お前ら知らんのか。こいつはモーリナ牧場の新鮮なミルクだぞ。搾りたてのミルクは下手なエールより美味いだろうが」

 

 そう、俺だっていつもエールとか酒ばかり飲んでるわけじゃない。

 普段はこうして新鮮なミルクをキメてるのだ。現代人にとってこの贅沢が手頃な値段で味わえるのだから、なかなかやめられん。

 

「モーリナ村……は、俺の故郷だ……」

「あ、そうなの。美味いよお前んとこのミルク。ひょっとしたらお前の家が育てたやつも飲んでるかもな」

「……そうかよ」

 

 地味に繋がりを感じるとそれまでのように粋がれなくなったのか、彼らはどこか気まずそうに列の後ろに戻り始めた。

 

 いやぁ、本当に初々しい奴らだ。かわいいね。

 

 ここから二年後三年後、何人がギルドマンとして残るのか……。

 そう思うと少し気持ちも重くなってしまうが、今この時だけは。

 彼らの青っぽい横顔を、眺めていたく思う。

 

 

 

「よっし……今日が俺たち“勇者の軌跡”の第一歩だ!」

「へへ、やってやるか!」

「おうっ!」

 

 あと俺は彼らが結成した厨二なパーティー名をメモって数年後に弄り倒すのが趣味なんでそこらへんもわりと楽しみです。

 

 

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