バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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クヴェスナの真相に迫る

 

 この世界は色々と、まぁ前世のサブカルで良く見たような存在がいる。

 ドラゴンじゃん。ゴブリンじゃん。エルフもまぁ一応いるじゃん。魔法もあるしスキルもあるじゃん。

 だからこそなんていうか俺は、この世界をゲームか創作の世界の何かだと思ったりすることもあるわけよ。

 まぁ今じゃ半分以上割り切って、そういうものを土台にしたリアルだと受け入れてもいるんだが。

 

 ただこの世界がファンタジー冒険物なのか恋愛物なのかが未だによくわからん。

 聞いた話では王都には貴族向けの学園があるんだよな。そういう舞台を出されると一気にこう、異世界恋愛物の気配がしてくるわけで。

 いやまぁ仮にこの世界が異世界恋愛をベースに回ってるとしたら下っ端ギルドマンでやってる俺が画面外過ぎてそれはそれで面白いんだけども。気楽にはなれるよな。

 

 ……けど。

 そういう、転生した世界に対してメタ的な考察をする俺でも全く理解のできない存在が、わりと日常的に存在していたりも……するわけだ。

 

 

 

「クヴェスナの討伐任務だってよ、どうする?」

「うーん……クヴェスナは別に……」

「数いればやる価値もあるけどなぁ。今の時期にやるのはちょっと時間がもったいねえだろ」

「じゃあやめとくか」

「クヴェスナなんて適当なアイアンにやらせときゃいいんだよ」

 

 時々、ギルドでそういう討伐依頼が出る。

 季節的なものは不明。条件も不明。気がつくとバロアの森に集団で現れて、人間に……害を与えるんだか与えないんだか、よくわからない存在がうろつき始めるのだ。

 

 クヴェスナと呼ばれている。こいつらがマジでよくわからん。30年この世界に生きててガチで何の元ネタもわからないし考察もできてない謎の魔物だ。そもそも魔物かどうかも怪しいと俺は思っているんだが。

 

「あれ? モングレルさん、こちらの依頼を受けられるのですか?」

「ああ、なんとなくクヴェスナ狩りたい気分でな」

「珍しいですねぇ……討伐証明部位は尻尾の先端部です。よろしくお願いしますね」

「うぃーっす」

 

 別に美味しい依頼でもなんでもないんだが、俺は時々こいつの討伐依頼を受けている。

 金や貢献度というよりは、完全に俺の興味とか、そういうのだな。

 まぁ謎ばっか増えてく連中だが、一応調べ物はしておきたいわけだ。

 

 

 

 出現場所はバロアの森東部、シャルル街道をずーっと走ってトウモロコシ畑が見えるところで森に入っていく道の先。

 普段は誰も人が通らないような、寂れた森への入り口だ。

 

 獣道をズンズン突き進んで一時間ちょっとしたくらいで、俺はそいつらと遭遇した。

 

「……うーん、五体か」

 

 森の中で、そいつらの体色はよく目立つ。

 全体が薄灰色で、……全体的に骨のような細長いパーツが多い。

 

 ……いや、説明が難しい上に多分聞いてもよくわからないだろうから、流すように聞いてて欲しいなこれは。

 

 脚は十本以上ある。それぞれ人間の肘のような折れ曲がった部分を地面に接していて、歩き方としては虫に近い動きをする。

 

 腕は多分無い。それっぽい部分はあるが、物を掴んだり殴ったり拘束したりだとかはしない。腕の代わりにあるっぽいのが……こう……エビの尻尾の半欠片みたいな形をした……エラ? みたいなものを何十個もつけていて、時々それがパタパタと胴体で動いている……。

 

 胴体は人間の肋骨のようにも見えるが、内臓を守っている様子もない。完全に骨っぽいパーツだけで構築されている。こいつには血も流れてもいないし、呼吸もしていないようだ。

 

 頭部が一番わかりやすい。動物の頭の骨って感じがする。草食動物の……馬とか、そこらへんの面長な草食動物の頭蓋骨に近いかな。それが大口を開けているのがデフォって感じ。けどもちろん皮膚も肉も無いし、脳みそもない。眼窩もないのでただの顎があるだけのフォルムだ。

 

 みんなはイメージできたかな? つっても多分いまいちできてないと思う。

 クヴェスナを初めて見た時はガチでビビリ散らしたからな……それくらいなんというか、俺にとっては異質で、奇妙な魔物だったんだ。

 

 俺はこの手の意味不明で来歴不明の魔物たちを“謎系”と呼んでいる。

 調べたって何もわからないのだからしょうがない。

 なんだよクヴェスナって。深海魚とかにこういうやついた? それともクトゥルフ神話で居たりする? 俺が元ネタ知らないってだけかな……?

 もしも今ここでグーグル検索できる権利が与えられるとしたら、一日の終りくらいのタイミングでクヴェスナを調べるかもしれん。

 

「おーい、ここに人間がいるぞー」

 

 バスタードソードを木の幹にバシバシと打ち込んでやると、クヴェスナが音に反応するように方向転換を始める。

 体高は160cmくらい。結構高めだが、アイアンでも問題なく仕留められるくらい弱い魔物だ。位置づけとしては単体としてはゴブリン以下だろう。集団で湧くので実際の危険度はそれよりも上ではあるんだが。

 

「お前たちは何者なんだろうな」

 

 クヴェスナはカタカタと骨のような身体を動かして、こちらへ突進を試みる。

 動きのキレは出来が悪くて予選落ちしてそうなロボコンみたいな感じだが、頭部っぽい部位はしっかりと噛みついてくるのでそれだけはなんとかしなければならない。

 

「ほい」

 

 とはいえ、強化を込めていない剣でもあっさり殴り砕けるほど骨っぽいパーツは脆い。タイミングを合わせて首っぽいところを叩くだけで簡単に討伐できる相手だ。

 

「お前たちはあれか? アンデッドか? クトゥルフか? それともスカルグレイモンの出来損ないか?」

 

 気をつけるべき点としては尻尾のように見える部分の骨。そこを忘れずに回収することだ。バラバラになるとこの部分を回収するのもひと手間なので、散らかさない倒し方も考えなくちゃならん。

 

「それともやっぱり、魔大陸から来た魔物か何かだったりするのか?」

 

 三匹目。

 仲間が砕かれても怯みも怒りもしない。ただ音を立てた俺に向けて、単調にロボットのように襲いかかってくるだけだ。

 

「サングレールとかで秘密裏に作られたゴーレム……ではないんだろうなぁ、こういうのは」

 

 四匹目。……砕いた後の骨は地味に毒性があるらしく、全く食用にはならない。燃やしても茹でても無意味だ。

 こういう食用に適さない特徴から、最有力としては魔大陸から渡ってきた繁殖力の強い魔物……というのが俺の考えるこいつらの正体ではあるんだが、それを裏取りしてくれる知り合いもいないしなぁ。

 

「さて、お前が最後の一体だぞ。……どこかの斥候で、お前の後ろで誰かが見ているんだとすれば……俺のこの言葉も聞こえているのかな」

 

 残った一匹に向けて剣先を向ける。それでも反応はない。

 やっぱりこいつらは感情がないんだろうか。

 

「……“(イクリプス)”」

 

 入念に周囲を確認してから、ギフトを発動してみた。これはさすがに初めての試みになる。

 

『なあ、この姿で何か反応はあるか? “こいつを生かしてはおけねえ”とか、“迎えに来た”とか……は、なさそうだな』

 

 問いかけてみても、特に変わった様子はない。

 怒り狂うでも怯えるでもない。……俺のギフトの特別感が無視されるとそれはそれでなんか癪だな。

 ちょっとバカバカしくなって、ギフトを解除する。

 

「ふう……相変わらず、訳の分からない奴らだぜ」

 

 結局、最後に残った一匹もパッカーンと砕いて終了となった。

 

 

 

 こいつらは単体だと弱っちいが、集団となると珍しい時では三十体にもなったりする。

 そういうパターンで湧いたクヴェスナが街道に現れたりすると人死が出ることもあるので、そういう意味で討伐が組まれるわけだ。

 

 つっても人を食うわけでもないし野菜も齧らないし、というか水も飲まないしでその他の害が一切無い。かといって可食部もあるわけじゃないから利用価値が皆無なんだよな。だから誰もこぞって討伐しようとは思わない。そういう意味ではゴブリンよりも討伐し甲斐のない魔物だ。

 

「あれ……尻尾の骨どこだ、尻尾……四個しかねえぞ……? あれぇ……?」

 

 あとぶっ壊した後の討伐証明部位を探すのがめんどくさい。

 似たようなパーツばっかでマジでわからねーんだ。

 

 ほんとなんなんだよこいつ。クヴェスナってどこの誰だよ。

 

「お前たちが神様の眷属的な奴じゃないことを祈るよ……あっ、尻尾見つけた!」

 

 なお、討伐報酬は一匹20ジェリーになります。ゴミすぎる。

 

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