バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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シルバー昇級試験

 

 ここ数日ギルド内が慌ただしい。

 というのも、シルバーランクのギルドマンの昇級試験が行われているせいだ。

 

 アイアンやブロンズの試験はまぁ相応にショボい。

 特にアイアンなんかは試験官を俺みたいなブロンズに任せるレベルなので、試験の質なんかはお察しだ。

 その上のブロンズの試験だって内容がちょいマニュアルっぽくなっただけでまだまだ適当にやっている。

 

 しかしシルバーランクからはテストもそれなりに厳格になってくる。

 ギルドマン個人の信用は当然見られるものとして、基礎的な魔物の知識、規則の確認、対人戦闘能力も見られる。

 この対人戦闘能力ってのは盗賊とかならず者の対処だったり、戦争での活躍なんかも期待されているんだが、これがまたなかなか厳しいんだ。

 どんな基準で強さの線引きをしているのかは詳しいとこは知らないが、どうもギルドとしては適当なブロンズ2人を相手に勝利できるっていうのがシルバーの基準となっているらしい。試験内容がそんな感じだしな。

 

 ブロンズまではそこまで実力が無くても問題ないんだけどなぁ。

 誠実に任務をこなし、真面目にやってればブロンズ3までは目指せるんだ。現に“レゴール警備部隊”の爺さん達だってそんな感じで働いている。

 けどそれからシルバーに上がろうとなると、一気に“強さの壁”が立ちはだかってくるわけだ。

 

 

 

「シルバー昇級、近接戦闘試験を始めよう。監督試験官は私マシュバルが務めさせてもらう。同じ“大地の盾”であっても贔屓するつもりはないので、心して臨むように」

 

 修練場に集まっているのは数人のシルバーギルドマン。それぞれの得物は槍、剣といったオーソドックスなものばかりだ。

 だがオーソドックスだからこそ強く、様々な状況に対応できる。

 シルバーギルドマンともなればハルペリアの兵士と同等の力量があると言っても過言でないだろう。

 

 そして兵士と同等の実力があるならば、ブロンズランクのギルドマン2人を相手に余裕で対処できなければならない。戦争で表舞台に立つならばそれは当然のこと。

 

 そんなわけで、今日はシルバー対ブロンズ2人の日です。

 俺もブロンズ3を代表するギルドマンとして、シルバーランクの皆様に挑ませていただきますわ。対戦よろしくお願いします。

 

「よーしロレンツォ、今から俺とウォーレンで挑ませてもらうからな」

「よろしくなー! ロレンツォさん!」

「おいおいふざけるな」

 

 ロレンツォVS俺+ウォーレンの組み合わせだ。

 

 ロレンツォは小規模熟練パーティー“報復の棘”に所属する、シルバー2のどこか陰のある男剣士。

 対人戦闘に優れた彼らは主に街道警備や護衛、賊討伐をメインにこなしている。ロレンツォはパーティーの中でも新参だが、それでも対人剣術の腕前はシルバーの中でも優秀だったはずだが……。

 

「どうしたロレンツォ、自信ないのか?」

「……モングレルと戦いたくねぇー。しかも多対一だろ。ふざけやがって……」

「俺はブロンズ3のギルドマン、モングレルだ」

「知ってるっつーの。さっさと昇格しろホント……」

「おいおいロレンツォさん。俺のことも無視してもらっちゃ困るからな」

「……わかってるよ。まぁぼやいてもしょうがねぇからな。モングレルとウォーレンに負けないよう、せいぜい本気で足掻かせてもらうさ」

 

 試験を受ける方は使い慣れた任意の装備に木剣で。ブロンズのお邪魔2人は防具を着けた上、木剣一本で攻めていく。お互いにスキルの使用は禁止かつ一発良いのを貰えばアウトなルールなので、堅実に、そして慎重に戦わなければならない。

 ちなみにスキルの方はまた別の審査項目としてある。見せたいやつはそこでお披露目すればスキルによって加点って感じ。便利な攻撃スキルほど優遇される。

 

「よし。じゃあウォーレン、いっちょ二人で格上狩りといっちまうか」

「おうよ! 俺たちが勝てばそれだけで加点だしな!」

「こいつら……」

 

 まぁロレンツォはどこか俺を嫌がっているみたいだが、もちろん俺はブロンズ3なりの戦い方をさせてもらう。つまりはそれなりの手加減だ。

 ここで張り切って戦ったんじゃ、ただ試験を落とさせにきたクソ野郎になってしまうのでね。

 ウォーレンには悪いがほどほどの力でやらせてもらおう。勝てるかどうかは向こうさん次第だ。

 

「ったく……ようやくシルバー3に上がれそうだって時に……ついてねぇ」

 

 互いに木剣を構え、戦意を高める。

 俺とウォーレンは横並びに。ロレンツォは俺らに向き合うような位置にいる。

 

「戦闘試験、はじめッ!」

 

 マシュバルさんの宣言と共に、ロレンツォが動いた。

 

「弱い奴から潰す」

「!」

 

 ロレンツォに迷いはない。試合開始と同時に強引に踏み込んでウォーレンを潰すのが作戦だった。

 が、これで終わったらさすがに味気ない。

 

「うぉっと、そうはさせねぇ!」

「くっ」

 

 ウォーレンへの踏み込み突きを横っ腹からカーンと弾き、前に出る。

 正直、ウォーレンはまだまだ弱い。木製とはいえロングソードを持ったシルバー相手にまともな作戦で勝てるかっていうと大分厳しいだろう。まだまだウォーレンはアイアンから無理やり上げられた感の否めないひよっ子だ。今回は俺が中心に戦ってやらなきゃならんだろう。

 

「クソッ、どけモングレル!」

「どけってのは礼儀がなってねえな。試合中は技で道を作るのがマナーだぞ」

 

 と、余裕ぶっこいて見たものの、向こうはロングソードでしかも突きを中心に放ってくる。対するこっちは手加減バスタードソードだ。リーチで負けている上に手加減だから武器を吹っ飛ばすこともできないので難儀している。

 

「弱い奴って言われたままじっとしてられるかよぉッ!」

「っ、と!? はは、悪いな。まだまだ未熟と言っておこう……!」

 

 後ろからウォーレンの加勢が入った。ありがたい。このまま二人で攻め続ければロレンツォのリーチの長さも破れるはず……!

 

「うわっ!?」

「隙ありだな!」

「あるぇー」

 

 と思ったら速攻でウォーレンの守りが崩されて胴に一発、良い突きを貰っていた。

 防具をつけているので刺さることはないが、強い衝撃でそのまま後ろに吹っ飛ばされている。これは完全にアウトですわ。

 

「ウォーレン死亡! 下がりなさい」

「ちぇー……悪い、モングレルさん。あとは任せた!」

「……一対一ならまだ希望があるな」

 

 人数差の不利を弱い奴から先に片付けることで覆し、強い相手と一対一に持ち込む。常套手段だな。

 しかし今の俺はブロンズ3相応の力で戦ってるからなぁ……もうこのままロレンツォ勝利で良いんじゃね? 無傷で一人撃破なら勝利判定で良いだろ。

 

「手を抜くなよ、モングレル」

「……よし。その心意気には応えてやろう。いくぞロレンツォ!」

「!」

 

 素早く前に出て、斬り払い。此処から先はロレンツォの突きだけでなく斬りにも注目して戦ってみようか。

 

「くっ、こいつ……!」

「お前の突きでは死なん!」

 

 リーチに有利があるからと、ロレンツォは俺たちに突きをメインで戦ってきた。

 しかしそんなチクチク戦法だけで勝たれても癪だ。なのでここからはロレンツォの全ての突き攻撃を完全に弾いた状態で戦うことにした。

 俺は斬り攻撃しか認めねえ!

 

「どうした、遠くから刺すだけがお前の剣術かぁ!?」

「んなわけあるかッ!」

「うお」

 

 ガンガンに木剣をブチ当てて攻めていたが、向こうも何かを学んだのか、それとも突き以外もできると証明するためか、斬り払いによる攻撃にシフトしてきた。攻守が入れ替わり、俺の方が防戦一方になる。

 なんならこっちの斬りの動きのほうが剣術らしくて良いんじゃねえの? 無理にわかりやすい有利を取ろうとして突き技に固執するよりは絶対こっちの方が強いと思うんだが。

 

「ぜいッ!」

「ぐえー死んだンゴ」

 

 そこらへんの確認はできたので、俺は満足して良い感じの胴斬りを自ら受け入れた。

 手加減とはいえここまで打ち合えるならシルバー3の連中と同じくらいの腕前はあるだろ。

 

「モングレル死亡! 勝者、ロレンツォ」

「……お前! 最後手を抜いたな!」

「かもな。だからもう一回やり直して良いか?」

「認められん。今の試合は充分にロレンツォの実力が発揮されたものだった。条件を変えてやり直す必要性は無いだろう。勝ちは勝ちだ」

 

 ロレンツォは最後に俺が防御をサボったことについてまだ引っかかっているようだったが、監督役のマシュバルさんに言われたら何も言い返せないのか、モヤっとした顔のまま修練場の端に戻っていった。

 実力がある分、手加減をされることに抵抗があるのだろう。真面目な奴だ。ランクが上がれば上がるほど、この手のギルドマンは増えてくる。それだけ手抜きを看破できるってことでもあるんだが。

 

 

 

「これは、なかなか素早い剣ですね……レオさん、本当にブロンズですか?」

「く……そうだよ。ブロンズだ……!」

「アルテミスに取られたのは痛かったですね……っと」

「あっ!」

 

 その他のギルドマンも試験を受けている。

 アレックスはレオの双剣を弾き飛ばし、余裕有りげに勝利していた。やっぱ強いんだよなあいつ。

 

「……木剣は扱いにくいな」

「片手の保持では限界がありますからね。武器弾きを優先させていただきました」

「やはり、僕ではまだまだ未熟みたいだ。対戦ありがとう、アレックスさん」

「いえいえ」

 

 試験にはレオの姿もあった。

 実力のあるブロンズということでどんな扱われ方をするものかと思ったが、相手がアレックスなら丁度良かったかもしれない。

 レオの戦い方はスキル込みでないとなかなか難しいもんがあるだろうし、試験を受ける側になった時が大変そうだ。まぁでも挫けず頑張ってほしいな。

 

「あ……モングレルさん」

「ようレオ、おつかれ。そっちも終わったか」

「……はい。お疲れ様です」

 

 あれ? なんかちょっとそっけないというか、冷ややかだな。

 前はもうちょっと和やかだった気がするんだが……。

 

 ……手加減してたのが気に食わなかったとか?

 だとしたらごめんなさいとしか言えないが……。

 

 まぁ、別に悪いことはしてないし……時間を置けばなんとかなるだろう。多分。

 

 

 

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