バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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はず槍のような何か

 

 俺はアルテミスと合同任務に臨むことになった。

 ライナを連れ回すつもりなら彼女を守れる腕っ節を証明してみんかい、という流れだ。過保護とは言うまい。年頃の女一人を得体の知れない男に預けたい奴はいないだろう。

 何より俺自身得体の知れない変なおじさんという自覚はあるからな。わざとそう振る舞ってるのだから、こういうしっぺ返しがどこかで来るのはわかりきっている。力試しだって今回が初めてというわけでもないしな。

 

 俺の実力を試すための任務は、二日仕事の森林探索となった。

 森の中で消息を絶った不運な新入りどもの探索と、馬鹿な新入りが森の中に無許可で仕掛けた罠を見つけ次第解除するという、この時期特有の甲斐甲斐しいケツ拭き任務である。

 森に行ったまま帰ってこない奴らは大抵が死んでるか、野盗になってるか、もしくは無言でサラッと故郷に帰ってるかのどれかだ。いずれにしても手がかかる連中だ。

 

 とはいえ闇雲に森を歩き回るわけではなく、森の奥にある規定の作業小屋まで行って帰ってくるという明確なルートは設定されている。

 寝泊まりは先客がいなければ作業小屋でできるし、周辺はそこそこ安全だ。完全に暗くなる前に作業小屋を目指すのが重要になってくる。

 

 道中で魔物に出くわすか、罠に襲われるかは運任せ。

 だが俺の経験上、この道中で完全に何もないという経験は無い。

 

 ギルドマンとしての俺の総合力を見るクエストってこったよ。

 

 

 

「待たせたな」

 

 まだ仄暗い明け方。

 東門に行くと、既にそこにはアルテミスの面々が揃っていた。

 

「あれ、さすがにアルテミス全員集合ってわけでもないのか」

「もちろん。大人数でこなす任務でも無いし、他に色々とやることもあるから。うちも分担してるわ」

「俺で最後かな? 馴染みのない奴もいそうだから一応挨拶しておくか。俺はモングレル、剣士だ。ランクはブロンズの3」

 

 集まっていたアルテミスのメンバーは五人。

 リーダーのシーナ、後輩のライナ、あと前に男と見間違えたゴリリアーナさんは知っているが、他二人は顔は知ってるけど話したことのない奴らだった。

 

「やぁどーも、モングレルさん。私はウルリカ。見ての通り弓使いだよ。ランクはシルバーの2。酒場で顔合わせたことはあったけど、こうして話す機会は無かったね?」

 

 ウルリカと名乗った薄紅色の髪の女は気さくそうな、明るいタイプの子だった。

 ライナの姉貴分と言えばしっくり来そうな感じがする。

 

「ナスターシャだ。水魔法使いのゴールド1。今回はお前の実力を見極めるために来た。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 おう、こっちの女はだいぶキツそうだな。

 青い長髪に人を寄せ付けない鋭い眼差し。冷たい印象の女だ。

 シーナとよく一緒にいるけどほとんど喋っている姿は見たことがなかった。そんな声してたのな。

 

「……」

 

 こっちの……アルテミスというよりどちらかといえばFateのヘラクレスっぽい感じのお方は……ゴリラ、違う、ゴリリアーナさん。

 俺ですら見上げるほどの上背。屈強な肉体。どう見ても……女性です。本当にありがとうございました。

 

「ほらゴリリアーナさん、一応挨拶はしておかないと。最初なんですから」

「そっスよ。モングレル先輩も反省してますし、そう悪い人じゃないスから。怖がらなくて大丈夫っス」

 

 シーナとライナに押され、ゴリリアーナがうっそりと俺に歩み寄る。

 彼女が背負う半月刀の間合いだ。何故かそんなことを考えてしまう。

 

「あの……ゴリリアーナ、です……シルバー2の剣士です……今日は……よろしくお願いします……」

「あ、はい……どうぞよろしくお願いします」

 

 見た目の割にオドオド喋るのがなんか怖いんだよなこの人。

 いや、オドオドさせたのは俺の第一印象が最悪だったからかも知れないんだが。でもこのナリで女だとは思わんじゃん。声も俺よりダンディじゃん。初見殺しじゃんそんなん。

 

 まあ、まあまあ、今回を機にわだかまりを取り払っていきたいとこですね。はい。

 あまり敵に回したいビジュアルしてないし……。

 

「……私とシーナさんは紹介はいらないスよね」

「いらんいらん。作業小屋着くまでに日が暮れるといけないし、さっさと出発しようぜ」

「ちょっと、貴方が仕切るわけ? 今回はアルテミスの人数が多いのだから、私たちの指針に従ってもらえると楽なんだけど」

「おう、そこに異存は無い。指示待ちのが楽だしな。でも今回は俺の力を見るんだろ? 俺の舵取りも少しは見ておいても良いんじゃないか」

「あ、私さんせーい! いつもアルテミスの動きしか見てないし、たまには他人のやり方も見てみたいなー」

「なかなか話がわかるじゃないか。ウルリカだっけ。よろしくな」

「はーい!」

 

 シーナが少しだけ渋い顔していたが、俺の実力を見ると言った以上異論は無いらしい。

 俺に舵取り含め先行させる形で、とりあえず今日は様子を見ることになった。

 

 

 

 森に入ると、通い慣れた獣道を進んでゆく。

 入口からしばらくは馴染みのある森だ。ここらで獣が飛び出すことはほとんどない。

 だからまだまだこの辺りでは遠足気分である。

 

 それでも不意の遭遇に備え、陣形は整えてある。

 前後からの襲撃を警戒し、先頭から見て剣士・弓使い・魔法使い・剣士という陣形だ。

 

 この並びになると自然と、弓使いの連中と会話も弾むわけで。

 

「へー、だからモングレルさんってソロでもお金持ってるんだぁー」

「数人でやる任務を一人でやるわけだしな。人の三倍は休みがあるってわけよ」

 

 ウルリカは話好きなのか、後ろからしょっちゅう話しかけてくる。

 賑やかで良いけど、一応そろそろ周りに警戒してくれるとありがたいんだが。

 

「でもモングレル先輩がお金持ちってイメージは全然無いっスね。いつも変な買い物してる気がするっス」

「失礼な奴だなお前。俺は必要と思ったものだけ買ってるぞ」

「っスっス」

「今回もアルテミスと合同ってことで、とっておきの弓を持ってきたしな?」

「えっ! モングレルさんって弓使えるんですかー!?」

「マジっスか。言われてみれば確かに背負って……え、なんかそれ形変じゃないスか」

「お、見るか? 前に黒靄市場で安売りしてるのを買い取ったんだ」

 

 新武器のお披露目ということで行軍停止。致し方ない足踏みだ。

 怖い顔しないでくれシーナ、ナスターシャ。お前たちもこれを見ればわかってくれる。

 

「じゃじゃーん! 弓剣!」

 

 布を取っ払ったそこには、弓の端に小さな刃物を取り付けたカッチョイイ武器があった。

 そう。この弓剣、普段は弓で遠距離攻撃しつつ、相手に近づかれた時はこの弓に備わった刃物で槍のように闘うことができるのだ! 

 

「うっわ……まじスか。またそんなのにお金使ってるんスか……」

「ハハッ……」

 

 あれ、反応鈍いな。今回の弓は長さもあるしちゃんと矢も飛ぶんだが。

 ただ剣の部分が滅茶苦茶邪魔だけど。

 

「一応聞いておきたいんだけど。モングレル、貴方それまともに使えるの?」

「ああ、使えるぜ。矢も一本持ってきたしな」

「一本」

「矢って高いのな。まとめ買いは勇気無かったわ。まあここからあの木までの距離なら当たらなくもないってとこかな」

「射程短っ! ほぼ投げナイフの距離じゃないスか!」

「良いんだよ、外したら接近戦すれば良いだけだし。俺はそっちのがメインだしな」

 

 ……新武装のお披露目で逆に心配そうな顔されてるんだけど。

 いや別に弓が追加されたからって俺が弱体化するわけではないんだが? 

 

 それに俺だって今回は矢は当たればラッキーくらいのもんだと思ってるわ。流石にその辺り自惚れてはいない。

 

 まぁ暇な時に矢を貸してもらって練習したいなとは思ってるけどな。

 

「さあ、そろそろ森も深くなってくる。警戒して進んでいこう」

「うっス……」

「……ねぇライナ。あの人いつもあんな感じ?」

「あーはい、大体あんな感じスね……」

「聞こえてるんだが?」

 

 陰口は本人のいない所でやりなさい。

 

 

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