バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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パーティーの連携確認

 

 ローサー君はちょっと前に他所から来たパーティーの一員であった。

 ……が、実力不足と金銭面にルーズなところなどが色々災いし、パーティーから追放された。

 

 装備は大盾にショートソード。だが基本的に剣は上手く扱えず、盾は自衛のために構えることが多いらしい。自身の守りは堅いが味方を庇うようなムーブが苦手で、所持スキルも盾由来のものばかり。

 

 その……まぁなんというか……オブラートに包んで言うと……。

 

「そいつと一緒にいるとダフネが早死にするからやめておいたほうがいいぞ」

「えっ!? ちょっ……ちょっと何言ってるんだよ! というよりなんだよあんたは!」

「俺はモングレル。ブロンズ3のベテランギルドマンだ。そして縁あってダフネに色々教えてやってる親切な男でもある。無関係ではないからな」

「ぐっ……」

 

 ローサーはブロンズ1。装備は全身揃えてはいるが……使いこなせているかというと微妙なとこだろう。

 その証拠に、パーティーから追放された後も誰とも組めていない。

 パーティー追放騒動で彼の人柄やスペックが暴露され、それが広まったせいもあるだろう。その点はちょっと可哀想かなとも思っているが、かといって実力不足の地雷タンクとダフネを組ませてやるわけにはいかねぇんだこっちは。

 

「まあまあ、彼をパーティーに入れたのは私だから」

「ダフネお前なぁ……前々から思ってたけど、もう少し男を警戒した方が良いぞ」

「これでも考えて入れたのよ! 加入申請してきた時点で受付のエレナさんに聞き取りはしたからね。ミレーヌさんとラーハルトさんは教えてくれなかったけど」

「えっ、そうなの……?」

 

 エレナ……まぁ親身に相談してやるのはギルドマンとしてはありがたいけどな。

 

「ローサーの評判が悪いのは知ってたわ。お金にだらしなくて戦闘能力も半端。正直私も迷ったけど……犯罪者ってわけではないし、私に対する害意も感じない。だったら少しくらいは一緒に活動してみても良いんじゃないかって思ったのよ」

「害意ねぇ」

「あ、それはまぁなんとなく感じなかったってだけよ。……ローサーだってお金なくてどん詰まりなんでしょ? だったら私のパーティーで再起をしたいはずよ。そうよね?」

「あ、ああ。もちろん。……パーティーメンバー無しじゃ、俺の装備は活かせない。このままアイアンの依頼で凌ぐのにも限界が近かった。俺は本気だぜ、モングレルさん……!」

 

 キリッとした顔は誰でも作れるわな。それに実態が伴ってるかどうかが全てよ。

 

「まあ、二人にやる気があるのはわかったが……こっちも金貰ってお節介してる立場なんでな。口だけでなく行動で示してもらおうか」

 

 俺は修練場まで続く扉を指差した。

 

「盾持ちと飛び道具専門。二人のコンビネーションを少しテストしてみるぞ。いきなり本番で力試しってわけにもいかないからな」

 

 

 

 修練場では“報復の棘”のメンバーが本格的な対人戦練習をしているところだった。

 人対人に重きを置いたパーティーだけあって、打ち合いは非常に高度で気迫がこもっている。

 後ろを歩く二人は“報復の棘”の様子に少しビビっているようだった。

 

「あれは極端に熱の入った連中だから、あまり気にすんな。こっちはこっちで初心者向きの訓練をしっかり積めば良い」

「モングレルさん。俺はブロンズ1だし初心者じゃないんですけど……」

「基礎を疎かにした自称ベテランは俺の中だと初心者と同じかそれ以下なんで……」

「なっ! い、言い方がひどい!」

「まぁ確かにちょっと言いすぎた。すまんな。けど戦い方に変な癖があるからこそ、今まで上手く立ち回れてこなかったんだろ。ローサーはその辺り直さないとずっとお荷物だぞ」

 

 ローサーは自前の大盾と木製ショートソード、ダフネは木製ダガーを4本装備した。

 俺はまぁ普通にバスタードソードサイズの木剣でいいや。

 

「ローサーが前に出て魔物を引きつけつつ、ダフネが後衛として毒ナイフを使う。そんな感じだろ?」

「すごい、さっすがモングレルさん。やっぱりわかるのね、私達の作戦」

「いやまぁそれ以外に無さそうだし……」

「ダフネ、君は俺が守る!」

「口だけじゃなくてちゃんと働きなさいよ!」

「は、はい……!」

 

 なんかもうすでにパーティーの中の序列が決定してて、ブロンズの面子もクソもない状態に見えるんだが……まぁいいや。とりあえずやっていこう。

 

「じゃあ俺はゴブリン……いや、ホブゴブリンになったつもりでこれから攻めていくから、二人はそれをどうにか対処するように。ローサーは“盾撃(バッシュ)”以外ならスキル使ってもいいぞ」

「ぐ、自分のスキルがみんなにバレてるの嫌だな……わかったよ。俺の鉄壁の防御、見せてやる!」

 

 というわけでラウンド1、ファイッ! 

 

「男女がペアで森の中にいやがるゴブねぇ……ゆるせねぇゴブねぇ……」

「なんか喋り始めた!?」

「ローサー、知能の高いゴブリンよ! 気をつけなさい!」

「ああわかってる! “鉄壁(フォートレス)”!」

 

 ローサーは大盾を構えつつ、スキルを発動した。全身の耐衝撃性能を高める防御スキル。優秀ではあるが……。

 

「新鮮な女がいるゴブねぇ……」

「ちょ、ちょっとローサー! 回り込もうとしてる!」

「え!? おい卑怯だぞ!」

「ゴブリンだから何言ってるかわからないゴブねぇ……」

「人の言葉喋ってるじゃねえか!」

 

 大盾持ちの弱点。

 武器側から回り込まれるとちょっとつらい。立ち位置を大幅に調整しなきゃいけなくなる。

 

「えいっ!」

「効かねえゴブなぁ」

「うっそナイフ弾かれた!?」

 

 まぁゴブリンだって無能じゃない。特に隙が作れているわけでもないのに何か飛んできたら避けるくらいのことはする。今回は剣で弾いたけど。

 

「グヘヘヘ、気の強い女はタイプゴブねぇ〜!」

「ぎゃーこっち来てる! ローサー防いで!」

「うおおお任せろッ!」

 

 後衛だからといって狙われないわけじゃない。むしろ弱い後衛ほど狙われる。

 俺はダフネのもとに駆け出して、ローサーは横合いから……。

 

「くらえっ!」

「え、なにそれゴブ」

「はあ!?」

 

 ショートソードを使わず、大盾による殴打を試みてきた。

 当然そんなのんびりしたクソ雑魚リーチの殴打に当たってやるほどのプロレス精神は俺にはない。適当なステップで回避して、そのままダフネのもとまでたどり着いた。

 

「剣使いなさい、よっ!」

「ほんとそれなゴブ……ぐえー」

「あ、刺さった」

 

 接近戦に持ち込まれたダフネだったが、手持ちのダガーを一気に投げる事で反撃は成功。俺も剣で弾いてみたが、2本は身体に命中した。

 

「まぁ数本刺さったくらいじゃすぐには倒れないんで、はい刺されて逆上したゴブリンからの報復攻撃ゴブ」

「いだっ!?」

 

 しかしまぁ投げナイフですぐ沈むわけもなし。

 木剣で優しくダフネの頭を叩いてやり、撃墜判定。けどよくやったよお前は。

 

「うおおお! ダフネは俺が守る!」

「いてっ。いやお前おせえよ!」

「ぐえーっ!?」

 

 その後ローサーが背後からショートソードによる突きを決めてきたが、落第点もいいとこである。

 この突きで俺は撃墜判定だったろうが、なんかムカついたのでローサーの尻を蹴っ飛ばしてやった。

 

 

 

「ローサー。お前もうパーティー降りろ」

「ええっ!?」

「ええじゃないでしょ! 何よあのもっさりした動きは! ゴブリンが普通に私のとこまで素通りしてきたじゃない!」

 

 そのまま反省会である。いやけどこれはパーティーの反省会というより、ローサー個人の反省会だろう。

 

「盾持ちなら敵を後ろに通すなよ。自分が怪我してでも食い止めろ。あと敵を食い止めるのに剣使えよ。なんで盾で殴った」

「それは……盾の方が使い慣れてるし……」

「あんたのせいで私死んじゃうんだけど!」

「ご、ごめん……」

「ていうかショートソードが良くないのよやっぱり! 短槍にしなさいよ! どうせ突きしかしてなかったんだしその方がいいでしょ!」

「ええっ!? そ、それは……ただでさえ今のショートソードだと短くて格好付かないのに……俺の憧れるパラディン像から離れすぎというか……」

「知らないわよ! ショートソードは無し! 使いやすい槍で戦いなさい!」

「そ、そんなぁー」

「槍の方が皮の傷が少ないし高く売れるのよ。これは強制よ!」

 

 どうやらローサーの装備構成は、どっかの物語に登場するパラディンをリスペクトしてのものらしい。鉄壁の防御を持つ守護騎士。

 いや、仲間を守れない守護騎士なんて誰もいらんが……。

 

「あと盾持ちで相手を引きつけるなら、最初に盾を叩いて音を出すなりして目立っておけよ。後衛が飛び道具で先に攻撃する前に相手の敵意を集めるんだ。同じ理屈で、ダフネもローサーが何か気を引くまでは動くべきではなかったかもな」

「な、なるほど……」

「確かに……それもそうね」

 

 ローサーの防御力だけならば十分だと思う。

 こんなへっぽこタンクでもスキルを活かせばチャージディアやクレイジーボアの突進を真正面から受け止める事はできるだろうし、打撃も交えれば手痛いカウンターも決められるだろう。

 問題はその形まで持っていけるかどうかだけどな。こればかりは練習しかない。

 

「ダフネはローサーを盾にして、ローサーはダフネを守るように位置取りすることを忘れるなよ。魔物だって真正面から一直線に来るやつばかりじゃないんだから」

「こうして……こう動いたら、こうかな?」

「武器もちゃんと構えて、横から抜け出さないようにしないと」

「あ、ああ。確かにそうだ」

 

 それから少し練習して、再びトライ。

 

「俺はクレイジーボアでボア。ど素人丸出しのギルドマンを今日の昼飯にしてやるでボア」

「なんかまた知能の高い魔物が来たわね……」

「さすがに喋らないだろ……!」

「は? ノリの悪い男ボアね、無視してあの女ぶっ殺してやるボア」

 

 今度はゴブリンほどゆっくり動かない。ササッと走って回り込む動きでダフネを狙おう。

 

「こ、こらっ! お前の敵はこっちだぞ!」

 

 その寸前、ローサーが盾を鳴らし、貸し出し品の短槍を広げて俺に立ち塞がる。

 

「邪魔くせぇ男がいるボアね。ぶちのめしてやるボアよ」

「こいっ! “鉄壁(フォートレス)”!」

 

 俺はそのままローサーの大盾に突進し、低めの位置に蹴りを放った。

 

「ぐっ……!?」

「お、守りは良いな。いや良くなきゃ困るが」

 

 さすがいい盾を持ってるだけあって守りは堅い。クレイジーボアを意識した強めの蹴りを入れたが、あっさり塞がれてしまった。

 

「えいっ!」

「いってボア」

「こ、これが俺たちの力だぁ!」

「ボア〜!」

 

 投げナイフを食らったら、盾の横から槍を喰らったり。

 もちろんそれだけで沈むわけはなく、しかし毒と出血を意識した精彩を欠いた動きで再び回り込んで……と攻めてはみたが、それもローサーに防がれた。

 よし、こんなもんならいいだろう。

 

「負けたボア〜」

「よっしゃあ!」

「はー! 勝った!」

「うん、まあ今みたいな連携なら良いんじゃないか。ダフネはひとつくらい手斧があっても良いかもな」

「あ、確かに」

「槍……もしかして俺に向いてるのでは……?」

「いやそれは最初からそう言ってるだろ、周りの奴らも」

 

 まだまだ課題の多い二人だが、戦闘面はひとまずこれでよしとしよう。

 問題はローサーに不安のある金銭面だが……。

 

「ローサー、あんたのショートソード私に売らせなさいよ。そのお金で短槍と必要な物を買い揃えてあげるわ」

「あ、ああ、うん……」

「あとはパーティーメンバーの共有物資は私の貸し倉庫で管理して……そうすれば結構お金浮くわね……ローサー、今度また資金調達の任務受けるわよ。しばらくはアイアンの力仕事だから、頑張りなさいよね」

「はい……」

 

 ……そこまで不安は無いかもしれない。

 

 

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