バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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伝説のギフト*

 

 収穫期の警備はどこに行こうか。

 行くのは決まっている。ギルドからの強制任務だからだ。ついでに集団に放り込まれることも決定している。面倒だがブロンズランクの数少ない強制の一つだから仕方ないと諦めよう。それはいい。

 だが、今年はできれば近い場所の方が助かるんだよな。

 早めにレゴールに戻ってレゴール伯爵の結婚式に備えておきたい。そろそろ祭り用の食材を本格的に集めなきゃいけない頃だからな。

 

 そんなわけで、ギルドで行き先を見繕っていたところなんだが……。

 

「一番強いギフトってなんだろうなぁ」

 

 ルーキー達がまた何かルーキーらしい話題を上げているのが耳に入った。

 見てみると、いろいろなパーティーの若者世代の連中が話しているらしい。

 おっさんの居ない、実にフレッシュなテーブルだ。

 

「それはもう大剣豪ラーフレンに決まってるだろ! “繊月剣(アークブレイド)”だよ! 一度の斬撃で鎧を着たサングレール兵を三人も切り捨てたんだぜ!?」

「バカね、アルテミスに決まってるでしょ。彼女の“落涙の矢(フォールショット)”は三人どころかもっとたくさん仕留めたわよ!」

「んー……俺は蛮王アリグナクだと思うけどなぁ。“怒れる刃(エクスキューション)”ってやばかったんでしょ? 少しでもアリグナクを怒らせるとそれだけでどんな騎士でも貴族でも簡単に殺されたって……」

 

 いつの世も、最強談義というものは少年少女たちの憧れである。これが魔力やスキルのない世界だったら格闘技や剣術の一番達者な奴の名が挙がるだろうが、この世界にはもっと派手な能力がある。

 それがスキルであり……更に上があるとすれば、ギフトの存在だろう。

 

 ギフト。それは天性の能力だ。

 比較的ありがちでショボいものでも武器種の使用ボーナスや能力底上げのパッシブタイプ。

 魔力を消耗する発動タイプなんかだと、スキル以上にとんでもない威力を発揮したりする。こいつらルーキーが盛り上がってるのは発動タイプだろうな。

 

「イガルクのギフトも強いぞ! 月から光線が落ちてきて町をまるごと焼いちまうんだ」

「それを言ったらイラルギの盾の方が最強でしょ! イガルクの光線を跳ね返せるんだから!」

「でも防御が一番強いってわけじゃなくない? 攻撃しなきゃ最強って言わないでしょ」

「防御すれば絶対に勝てるし」

「そういうギフトじゃないだろ」

 

 ……で、まぁ……ギフトっていうのはそう、さっきも言ったが……血筋とか、そこらへん得られやすかったりするものだしね。

 持ってるやつは持ってる奴で、サングレールほどではないが若いうちから取り立てられて出世する。だから……ギフト持ちってのは、なかなか身近には居ないのだ。

 特にこんな、ハルペリアのセーフティーネットに等しいギルドなんかじゃ特にな。

 

 そうなると、ギフトの存在は神話とか伝説級のレアなものになってしまう。

 明らかに“いやそんな壊れギフトねーよ”って突っ込みたくなるようなものでもあると信じてしまう純粋なキッズの完成だ。

 

 ただでさえ昔の偉人とか軍人ってのは眉唾もののギフト持ちが多いのにな……いや、半分くらいは実際に持ってたのかもしれないけどさ。

 イガルクとイラルギのはぜってぇ嘘だよ。月から光線ってもうそれロボット大戦とかの世界観だろ。そんなギフトがあってたまるか。

 

「なーモングレルさん、モングレルさんは何が最強だと思う」

「おいおい……俺は今任務を選んでるんだぞ」

「やっぱイガルクでしょ」

「イラルギ!」

「あーあーわかった。何のギフトが最強かって話な? わかったよ」

 

 こいつら……俺がだいたいいつもどんな相談でも乗ってやってるからって、最強談義にまで参加させるなよ……。

 

「……やっぱ月の剣聖テナロの“月河斬(カトクレバス)”じゃねーの? テナロ河の溝を作ったっつー最強のギフトだぞ。発動したせいでテナロ死んじゃったらしいけど」

 

 しかし最強談義はいくつになってもやめられねえんだ……気持ちはわかるぜ……。

 俺的一番威力高そうなのはやっぱ“月河斬(カトクレバス)”のギフトを持つテナロだな。実在性ほぼゼロの神話キャラだけど。

 

「テナロかぁ」

「テナロってなんか嘘くさくね?」

「“月河斬(カトクレバス)”なんてあったら自分で最強の国作れちゃうもんな」

「おい、神話もアリって話じゃねーのかよ。イガルクとイラルギがアリだったらテナロもアリだろが」

「イガルクはいる!」

「イラルギもいる!」

「俺にはお前らの基準がよくわからねえよ……」

 

 この世界は情報の保存も伝達もまだまだ未熟だ。

 数百年前のことは普通に伝説になるし、神話に片足を突っ込むことにも等しい。

 特に戦争なんかがあると、その戦果はそもそも盛って話されることも多いからハナから信憑性がアレだしな。そこにギフトとかスキルとかの憶測が乗っかって、最終的にとんでもないギフトとスキルを持った化け物みたいな偉人列伝が完成するのである。

 今ではもう眉唾どころか完全に神話みたいになっているイガルクとイラルギも、かつては普通の戦士とか軍人だったりしてもおかしくはない。いや普通ではないか。時の権力者とかだった可能性は高い。尾ひれが沢山くっついてるだけで。

 

「ギフトかぁ……」

「ほしいよなーギフト……」

「敵の国の兵士を殺すとギフトを授かりやすいって聞いたけど」

「ウソでしょ」

「本当だったらどうする?」

「軍人になる。けどありえねーって」

「わかんねえぜ、百人斬りしたらもらえるのかも」

 

 で、まぁあやふやな存在だからこんな話も飛び出てくる。

 都市伝説と言うのも失礼な嘘八百。最悪なのは、これを信じ込むような馬鹿がたまーにいるということだ。

 

「おい、人を殺しても何も身につかないぞ」

「モングレルさん、そうなの?」

「なんだよ、そうなのか? でも軍人さんはすげぇ強いし……」

「それは毎日しっかり訓練してるからだ。人を殺せばギフトがもらえるなんて完全な嘘だよ。そんな馬鹿みたいな話を信じるな」

「ちぇー、もらえないのか」

「生まれ持っての才能ってことなんでしょ」

「はーぁ」

 

 人を殺せばギフトが手に入る。それは嘘だ。完全な嘘。

 そんな変な考えを若いうちから持たれちゃたまったもんじゃない。

 

「強くなりたきゃしっかり修練場で訓練して、パーティー組んで安全に任務をやってろ」

「説教はやめてくれよぉ」

「わかったってば」

「こいつら……」

「まあまあ、モングレルさん。あまり怒らないで。それよりもこちらの任務、いかがですか」

 

 ルーキーたちから目を離し、ミレーヌさんと向き合う。

 どうだろう。何か近場で良い警備任務でも見つかったんだろうか。

 

「北部のモーリナ村はいかがですか? “大地の盾”の分隊で欠員が出たそうでして、一人だけ補充したいとのことなのですが……」

「お、良いのかい。ていうか珍しいね、欠員なんて」

「ええ、本来は丁度八人のフルメンバーで任務を受注されていたんですが……一人、怪我のせいで護衛に出られなくなったそうでして」

「なるほどな、それで一人募集してたのか。じゃあ空いてるならそこに入れてもらおうかな」

 

 モーリナ村は畜産が盛んでそこそこ近い村だ。ここなら帰りも早く済むかもしれん。

 “大地の盾”と一緒ってのは少し息苦しいけどな。力を抜いて仕事をするにはお堅い連中だ。アレックスあたりと組めたら良いんだが、そればかりは運か。

 

「ではモングレルさんはモーリナ村で……はい、受け付けました」

「よし、ありがとうミレーヌさん」

「ちなみに代表の方はマシュバルさんになります」

「ええ、マシュバルさんかぁ」

「お嫌でしたか」

「いやー……嫌ではない……いやほんと嫌ではないよ? うん」

 

 マシュバルさんは“大地の盾”の副団長だ。

 話もわかるし話すこともあるけど、それでもすげぇ真面目だからな……マシュバルさんの指揮下だと仕事で手抜きができなさそうなんだよな……。

 真面目にやれってのはまさしくその通りではあるが……。

 

「最近、“大地の盾”はとても忙しそうに仕事をされていますから。あまり彼らに負担をかけないようにお願いしますね?」

「うーん……ミレーヌさんにそう言われちゃ従う他ねぇなぁ……わかった、頑張るよ」

「ふふふ、ありがとうございます」

 

 少なくともバルガーと一緒に任務をしている時ほど気楽にはやれなさそうだ。

 まあ、たまには真面目にしっかりやるとしますかね。

 

 ……ああ、そういえばあれだな。

 マシュバルさんも持ってたっけなぁ、ギフト……。

 





【挿絵表示】

(ヽ◇皿◇)h様より、ライナのイラストをいただきました。ありがとうございます。


当作品の評価者数が4100人を超えました。

いつもバッソマンを応援いただきありがとうございます。感想や評価、とても励みになっています。

これからもバスタード・ソードマンをよろしくお願い致します。


ヾ( *・∀・)シ フニッフニッ…
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