バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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バロアソンヌの歩き方

 

 レゴールを!

 駆け巡って!

 星を集めろ!!

 

「モングレル先輩少し寝といた方が良いんじゃないスか」

「説明ッ!」

 

 バロアソンヌは革に描かれたすごろくだ。名前は適当である。バロアとカルカソンヌを混ぜただけ。ただしカルカソンヌ要素は極めて薄い。何故なら完全に語感で決めたからだ。

 

 盤面はそうだな、想像しやすいように説明すると二つの楕円が十字に重なっている姿を想像してもらえるとわかりやすいだろうか。

 そういった図形を描くと内側を走るルートと外側を走るルートの二つに分かれるようにも見えるだろう。この内側が街ルートで、外側が森ルートだ。両方のルートともマス目の数は同じ。それぞれのルートが交差するマス目は門番マスで、東西南北を表現している。東門マスはギルドマスも兼任しているぞ。

 

 街ルートはローリスク・ローリターン。大きなトラブルなどは少なめで、雑貨屋で武器屋で買い物できたり、都市清掃などの安い儲けマスなんかが配置されている。

 森ルートはハイリスク・ハイリターン。採集マスに停まればそれだけでちょっとした儲けになるし、魔物マスに停まって倒せれば星をゲットできる。

 街で準備を整えつつ森に潜って討伐……それを繰り返し、誰よりも早くゴールド3を目指す。それがこのゲームの基本的なルールだ。

 ……俺としてはもっと色々な要素があった方が面白いと思うんだけどなぁ。まぁ最初だしシンプルモードでいいか……。

 

「じゃあ私この水色のコマを使うっス」

「あ、じゃあ私このピンクのやつねー!」

 

 なんだかんだでテーブルにいた全員が参加した。

 ライナ、ウルリカ、レオ、サリー、モモ、ミセリナの六人である。

 俺? 俺は今回はサポートに徹するよ。制作者の俺は勝手も知ってるからな。そんな奴が最初に大勝ちしたゲームなんてやりたくないだろ。

 

 ひとまず右回りでターンを進めていくことにして、最初はライナのターンだ。

 

「じゃあまず私から……ていっ」

 

 賽は投げられた。ダイスの目は……1!

 

「うわー1マスだけっスか……あ、こっちだとダイスのマークが描いてあるっス」

「そこに停まった奴はもう一度サイコロを振って進めるんだぜ」

「わぁい」

 

 すごろくの1マス目、すげー良いマスかすげー悪いマスか結構二極化するイメージが俺の中である。

 なんとなく最初に1で進めない上に悪い効果が出てくるのは踏んだり蹴ったりだと思ったので、今回はプラス系の調整にしておいた。

 続けてライナの第二投。今回は普通の目が出た。停まるマスは街ルートの箒マークだ。下にはコインのマークと数字が描かれている。

 

「都市清掃マスに停まったな! そこに停まったプレイヤーは金貨二枚もらえるぞ!」

「うーん……都市清掃で金貨二枚だったら誰も苦労しないっスね……」

「このゲームでは全ての経済活動が金貨で行われてるんでな……」

「でも堅実に稼いでいくのは悪くないっスね」

「はいはい! 次私ね!」

 

 ウルリカがダイスを振ってピンク色のコマを進めていく。こっちは森ルートを進んでいくようだ。

 

「やった! これは……薬草マスかな? 金貨三枚もーらい!」

「ウルリカ、物騒なマスの手前で止まれて良かったね……その一歩先は魔物がいるよ」

「うわっ、ほんとだ!」

 

 まぁ最初の一投ではいくつの目が出ても左右どっちかに行けば悪くないマスに停まれるからな。

 

「なるほど……最初は街で安全に準備を整えてから、次から森へ進むと! 完全に理解しましたよ!」

「おっそうだな」

 

 やらかしそうな雰囲気のモモではあるが、言ってること自体は至って真っ当だ。

 実際そういうプレイで進めていくのが一番安定するんじゃねーかな。

 

「確かにモモの言う通り、街から森に活動を移していけば安定はするだろうね。けど森ルートのこういうマスを踏めば何も問題ないと思うんだよね」

「……えー、そう……?」

 

 サリーが指差したのは森ルートのちょっと奥まったところにある宝箱マスだ。なんとこいつに停まると即金で十金貨が貰えちまうんだ。そのプラス効果たるや都市清掃の五倍である。

 分岐から一発で停まれる場所には無いのでリスクを承知で森に突っ込んでいく必要はあるが、停まれば一発逆転も不可能ではない。

 

「僕はこっちを進ませてもらおうかな」

「うーん……ウルリカとサリーさんは森ルートだったけど……僕は街の方が良いかな」

「わ、私も街の方から……」

 

 ゲームの進め方にも個性が出てくる。

 賽の目までは選べないが、自分で進むルートは決められるのがこのすごろくだ。

 特に意味のないような選択肢であっても、自分で決断すると納得できる。完全な運ゲーよりも“自分でやっている”感はあるはずだ。

 

「あ、武器屋マスに停まったっス。金貨三枚……早速剣を一本買うっス」

「あーっ! ゴブリンに襲われたぁ! ここで剣使うの勿体ないのにー……!」

「薬屋マスでポーションを買います! 安くはありませんが、これがあれば失敗をケアできますからね!」

「……うっ、罠マス踏んだ……! こ、これってさっきミセリナが仕掛けた罠だよね?」

「は、はい。仕掛けた罠を踏んだ人は……金貨を一枚失って宝箱に置かれます。レオさんの金貨を一枚、没収ですね……ふふふ……」

「なんかミセリナ先輩の顔が怖いっスね……」

「あ、僕このサイクロプスにやられて治療費が払えないんだけど、これどうなるのかな」

「ようこそサリー、借金したプレイヤーは中央の労働ルートに強制移動だぞ。安心しろ、堅実に稼げばいつかは抜け出せるからな」

「うわぁ」

 

 まぁ、ある程度自分でハンドル握れるゲームとはいえど、賽の目が運命を左右する遊びだ。ツイてない奴は本当にツイてないので、有り金を失ったり強制労働に勤しんだりと大変な人生を送り始めるわけだが。

 

「えへへー、また良いとこ停まっちゃった! お祝いマスに停まったから全員から金貨一枚ずつもらうねー!」

「またっスかウルリカ先輩!」

「さっきから何のお祝いを開いてるんですか!」

「僕が鉱山で稼いだお金が溶けていく……」

「おめでとうウルリカ、何のお祝いかは知らないけど」

 

 ツイてる奴はなんでだろな、こういう系のゲームをやってると順調に伸びてくんだよなぁ。不思議なもんである。ツキとか流れってのはあるんだろうかねぇ。

 

「……はい、門番マスに停まったからさっき街で買った看板を使うね……こ、これを森ルートに向けて……ここを次通る人は、絶対に森ルートを通らないといけないから……」

「次通る人って……次って私じゃないですかミセリナさん!?」

「そ、そうだよ? ふふ……大変だね……剣も買えてないのに……」

「……ミセリナちゃんなんか黒っぽい性格出てきてないー?」

「そう? 彼女僕らのパーティーだと普段からこんな感じだよ」

 

 そして他プレイヤーの妨害に楽しみを見出す奴もいる。

 喧嘩の原因になるかもしれないからシンプルルールでは極力無しにしているのだが、それでも全く互いに干渉できないのではつまらないからな。数少ない友情破壊要素を存分に楽しんでくれ……。

 

「あーっ! またウルリカ先輩に金貨取られたっス! 私がその金貨を貯めるためにどれだけ都市清掃をしてきたと思ってるんスかぁっ!」

「えへへ、ごめんねーライナ。ちょっと借りるだけだからねー」

「ようやく鉱山での労働から解放されたよ……単純労働って大変だねぇ……」

「実際の仕事はもっと大変だと思うけどな……あ、森で武器拾えた。これは運が良いや」

 

 ゲームの勝手を覚えて慣れてくると、段々と進行もスムーズになってくる。

 それに伴ってゲームの理解度も深くなると、皆が自然と熱中してコマを動かすようになっていった。

 その盛り上がりは他のテーブルのギルドマンにも伝わっているようで、バロアソンヌのプレイを見るギャラリーもちらほらと増えていった。

 

 ここまで来ると俺もゲームの成功は疑いようがない。華麗にエールでも注文して半分くらいギャラリーの一員になっちまうとするぜ……。

 

「エレナ、エールひとつな」

「はい。……随分とあちらのテーブルが盛り上がってますけど、モングレルさんが作ったゲームですか?」

「おう。まぁ聞きかじった色々な遊びをごっちゃにした奴だけどな。みんな楽しんでるようで何よりだ」

「へー……」

 

 ちらちらとそっちのテーブルを窺っているが、さすがに受付のメインが席を外すわけにもいかないだろう。

 

「面白そうならどっかで作って売り出してもらおうかなーって思ってるから、そうしたらエレナもやってみると良い。盛り上がるぞー、付き合ってる男と一緒にやると良いかもな」

「……正式なお付き合いをする前に断られましたけど?」

「おっとすまん、あ、これ代金な。じゃ」

「あ、ちょっと!」

 

 エレナ……顔は良いけど男運の無い奴である。いや、男の理想が高過ぎるんだろうな、エレナに限って言えば。

 それともうちょいガツガツしない方が良いと思うぞ! こういうアドバイスは口には出せないけどな!

 

「うわーっ! オーガに負けたー!」

「ウルリカの所持金が治療費で吹っ飛んでる……」

「あ、僕こっちの宝箱マス踏んだね。これで累積してる金貨二十枚僕のものってことか。やった」

「あああっ……! わ、私が貯めてたお金がサリーさんに盗られた……!」

「それ皆から掠め取ってきたお金ですよね!?」

「……僕はしばらく街ルート通っておこうかな。あ、市場でアイテムが売れる。剣が余ってるから一本お金に変えちゃおう」

 

 逆転したり、どん底まで落ちたり、這い上がったり。そんな激戦を繰り返しながらゲームを進めていき……最終的に最速でゴールド3を掴んだのは、自己流の堅実さを貫いてきたモモであった。

 

「や、やりましたよ! 私が一番です!」

「うわー! あとちょっとのところで負けたぁー!」

「おめでとうモモ。僕はまだもうちょっとかかるなぁ」

「……こ、こんなの納得できない……これ最後の一人になるまで続けないスか!?」

「の、望むところです……全員蹴落としますよ……ふふふ……」

「……お前ら、あんまり喧嘩しないようにやるんだぞ?」

 

 一部ちょっと友情破壊プレイに取り憑かれた奴もいたようだったが、全員もれなく熱中して遊べた辺り、この世界では上手いこと売れそうなゲームだなとは確信できた。

 テストプレイによってルールに調整すべき点は出てきたが、そういう部分も何度かテストを繰り返していくうちに最適化していくだろう。

 

 そうしてどうにか形にして量産できれば……今年のレゴールの冬は、娯楽が一つ増えるかもしれないな。

 




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(投票ページ*・∀・)

バッソマンが上位にランクインすると私とにくまんが喜びます。
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