バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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二人で自由討伐

 

 新居の工事についての発注が大体終わった。

 とりあえず敷地いっぱいに風呂用の空間を増築。一階の勝手口にバスルームが繋がるようにした。ほぼ木造である。檜風呂に近い感じになるだろうが、香りは全くの別物だろうな。肝心の湯沸かし器は俺がなんとかしなきゃいけないので構造は本当に大まかにしか作ってもらえないが、それでも十分である。水を貯めることができて栓を抜けば排水できる。それだけで完璧だ。

 元々丁寧に使われていた家だったので、元あった部分のリフォームらしいリフォームはそこまで多くない。丁寧に掃除して、塗り直して、水回りだけいじったくらいかな。

 地下はちょっとした氷室、外には風呂と魔改造が入っているが、まあその辺りは俺の欲求が大爆発したんでね……そこだけはへそくりに頑張ってもらったさ。

 部屋のあちこちに隠して溜め込んでた宝石類をいくつか換金して用立てることでどうにでもなってくれたぜ。

 

 俺も色々わがままを詰め込んだリフォームだが、もちろんライナの方の希望も盛り込んである。

 とはいえライナの方は俺ほど明確なビジョンはないのか、トゥートゥーカンのトゥーちゃんのためのスペースを作ってくれという注文くらいのものだった。お安い御用である。

 

 そんなこんなで色々と注文を出し終わってしまえば、必要経費とはいえ金は一瞬で吹き飛んでしまった。

 いやまだへそくり自体はあるんだが、これ以上はさすがに何か悪いことしてんだろと言われても“はい”としか言えなくなってしまうので、そろそろ金を稼ぐことにする。

 せっかくシルバーに昇格したんだ。シルバーギルドマンらしくバロアの森で稼ごうと思う。

 もちろん、ライナも一緒にな。

 そんなわけで早朝、“アルテミス”のクランハウスで待ち合わせしたのだが……。

 

 

 

「モングレルさん婚約おめでとー! すっごい言いそびれちゃったよ、もー!」

「いやーどうもどうも。最近ウルリカとは入れ違い多かったからなぁ」

「遠征から戻ったらみんなから聞かされてびっくりしたよほんとー」

 

 遅まきながら、ウルリカからも祝福のお言葉をいただいた。

 “アルテミス”の面々はもはやライナの家族のようなものなので、この手の挨拶は疎かにはできない。

 遠征から戻ったウルリカはやつれ気味のレオとは違って肌艶も良く元気いっぱいな様子だ。力自体はそんなにないのに、随分と元気な奴である。

 

「まぁ俺も突然家を貰っちまったからな……良い機会だし、善は急げと思ってな」

「すごいよねぇ、お家貰っちゃうなんて。そのお家くれたブレークさんって今どうしてるの?」

「鉤爪のブレークって呼ばれて恐れられてるのは聞いたぜ……詳細はあまり知りたくないから調べてもないが……」

「元気なお爺さんだね……」

「間違いなくベッドの上で死ぬタイプじゃねえなあれは」

 

 語弊なく幸いなことに、あれからブレーク爺さんが俺に干渉してきたことはない。

 家をくれてやった恩でどうたらというゆすりたかりがないのは良いことだ。

 ……まぁ騒々しくも孤独な人ではあるから、こっちもデカすぎる恩を貰っちまったことだし、今後は少し……多少は爺さんの様子を見守るとしよう。

 犯罪行為を擁護してやることはできないし、家に転がり込んでくるなんてことは絶対に阻止したいが、まぁ困ってたら人として少し手を差し伸べるくらいはね……。

 

「ところでウルリカ、シルバーになったら“アルテミス”じゃ変わった討伐を受けたりするのか?」

「近隣の村で強い魔物が出てきた時なんかは、遠征して行くことはあるかなー。けどそれはシルバーというよりはパーティー組んでるからじゃない? まとまった人数で受けてくれたほうがギルドとしても楽だろうしさー」

「やっぱパーティー前提の任務かぁ」

 

 わかっていたことだが、パーティー前提の任務が多いようだ。

 ソロでクレセントグリズリー討伐任務とか受けさせてくれねえかなぁ。無理か……。

 

「……状況も変わったし、モングレルさんも“アルテミス”入らない? 前みたいに意固地になることないでしょ?」

「まぁ、それは必要にかられたらな。今のところはまだ考えてねえよ。これからも外部のお助けギルドマンとして帯同させてくれや」

「えーなにそれー。……私もレオも一緒だし、楽しいよ?」

「新居に腰を据えた新婚さんだぜ俺は。しばらくはプライベートな生活を楽しませてくれよ」

「……うーん、確かに。それもそっかー」

 

 渋々だが納得してくれたらしい。

 まあ万が一戦争が起こったりなんかしたら、その時はパーティーに加入してライナといっしょに行動できるようにするからさ。しばらくはこのままの距離感でいさせてくれや。

 本音を言えば入団に際して俺のスキルを探られるのが厳しいんでね……さすがに加入するにあたってスキルひとつも言えませんは怪しすぎるからよ……。

 

「モングレル先輩、準備できたっス!」

「おーライナ。それじゃバロアの森に行くかー」

「二人とも気をつけてねー」

「うっス! 軽く良いもの獲ってくるっス!」

 

 ライナも装備の支度が終わったようだ。よし、そろそろ久々のバロアの森探索に行こうじゃないか。

 “日陰者”騒動の時はうんざりとさせられた森の探索だが、何日もブランクがあるといい加減に恋しくもなってくるってもんだ。今回は後光のサルバドール直々に認定された探索ヘタクソな俺にかわり、ライナがしっかりと索敵してくれるだろう。獲物の追跡は任せたぜライナ……。

 

「……引っ越しして落ち着いたら、モングレルさんとライナのお家、遊びに行ってみたいなー」

「いいっスね! ちょっとしたパーティーしてみたいっス!」

「おー、そん時はみんなで来てくれよな。一階部分で楽しめるようにしておくから」

 

 そういうわけで、俺とライナはバロアの森へ出発するのであった。

 

 

 

 “日陰者”やスタンピードによって一時期荒れたバロアの森だが、今はすっかり元通り……とはいかない。

 普通にまだちょっと生態系が歪んでるところがあるらしい。

 とはいえそう物騒なものではなく、普段と魔物の分布が変わったりしているとのことだ。椅子取りゲームで全員の席の位置が一気にガラッと変わる感じに近い。

 とはいえそれはバロアの森におけるスタンピードあるあるなので、昔からのギルドマンはその辺りの対処法は弁えている。

 曰く、初心に立ち返って森を覚え直せ、だ。要するに根気と力技。“がんばれ”ってやつだ。まあ、下手な裏技が存在しない分諦めはつくけどな……。

 

「そうは言っても、森なんてものは普段から少しずつ変わるもんスから。いつも通り周囲を警戒して、いつも通り痕跡を探っていればいいんスよ」

「そのいつも通りのパッシブスキルが俺に備わってればなぁ」

「……前にスタンピードが起こる前、森の中で道に迷ってたんスよね。危ないっスよモングレル先輩……」

「いや俺もすげぇ索敵モードだったんだぜ? ……努力はしてるんだがなぁ」

 

 秋の森を二人で歩きながら探索中。

 俺は剣を手に、ライナは弓を手に。今回はまだ森の様子もわからないってことなので、俺はいつでも戦えるようにバスタードソード装備だ。弓の実地研修はまた今度である。いずれな、いずれ……。

 

「まだ見つかってないギルドマンの人もいるらしいっスから、できれば見つけてあげたいっスね……形見だけでも……」

「……だな。もう既に浅い部分は探されきってるだろうから、今回はちょっとだけ奥の方まで踏み入ってみるか。そこでギルドマンの遺留品を探しながら狩りをして、成果が得られたら帰還ってことで」

「うっスうっス」

 

 今回の俺の荷物はいつも通り、野営グッズ大盛りだ。テントと薪ストーブ用の煙突、調理器具に敷物などなど。ライナと一緒なら成果無しってことにはならないだろうから、食材は思い切って少なめにしておいた。頑張って現地調達することにしよう。

 

「モングレル先輩、今回は鳥のお肉どうスか。必要なら枝の上も警戒しとくんスけど……」

「おー……じゃあ頼めるか? 軽く一羽くらいは食いたい気分だわ」

「うっス! かしこまり!」

「索敵の負担になるようだったら大丈夫だぜ?」

「全然平気っスよ! かるーく手頃なの二羽くらい仕留めちゃうんで!」

 

 ありがてぇ……鳥肉の供給は助かるぜマジで。

 ライナがいないと全然獲れる気がしないもんな……。前に一人で森に潜った時に樹上の鳥にチャクラム飛ばしたら外れた上にチャクラムの回収に三十分くらい時間かかったしな……得意なやつに任せたほうが良いわ本当に。

 

「そのかわり、モングレル先輩……ちゃんと私のことは守ってほしいっス」

「もちろんだ。俺の可愛い嫁さんに傷一つ付けるつもりはねえよ」

「えへへ……」

 

 どうだ、ライナ的には今の格好良かっただろ。……俺的にはちょっとキザだけどな!

 




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