セディバードとマルッコ鳩は半身にして揚げ焼きにすることに決めた。
皮をじっくり重点的に焼いて、ジューシーに。ラードのおかげでこってりした旨味も添加され、あっさり目の鳥肉でもなかなか良い具合の味になってくれたんじゃないだろうか。
最後に辛味のあるスパイス入りの塩を追加で多めにガーッとかけてやれば、完成だ。
「わぁい、シンプルだけど美味しそうっスね!」
「結局手軽に美味しくってなるとこういう感じになるんだよな。まあ、俺はこういう鳥肉を食いたくてやってるとこはあるけど」
「モングレル先輩の味付け私も好きっスよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないの……」
夜の森は灯りがなければ一気に暗くなる。
こうして野営をしていると、唯一の光源は火の灯りだけだ。それすらも暖を取るような景気の良い燃やし方をしていなければ大した灯りにはならない。
薪を節約するための熾火になったら、今こうしてライナと隣り合っていても表情すら見れなくなるだろう。
「こっちのスープもなかなか……街で食べるものと違った味わい……あー、良いっスねぇ……」
「市場に出回らない葉物や根菜を味わえるのは、俺たちギルドマンの役得だよな。……おー、温まる。鳥肉ちょっと入れといて正解だったな。やっぱ動物性の旨味は大事だわ……」
秋の夜ははっきりと冷え込む。こうして火に当たりながらアツアツの肉を頬張り、湯気がもくもくと立つスープを啜ってようやく相殺って感じだ。
まあ、今は隣にぴったりとライナがいるので、人肌で結構温かい。こういう暖の取り方はソロじゃ絶対にできないから良いよな。もちろん滅茶苦茶相手は選ぶが……。
「ライナは街で、どうだ。新しい友達とかできたか? モモとちょくちょく仲良く遊んでるのは知ってるけど」
「モモちゃんとはよく遊んでるっスね。最近はダフネちゃんとか、受付見習いのレニアちゃんとも話すようになったっスよ」
「お、マジか。俺もレニアとは知り合いだぜ。アサーラ村から来てレニアも心細いだろうから、仲良くしてやれよ」
レニアはアサーラ村の救貧院出身の、ミレーヌさんの一人娘である。
訳あって時々ミレーヌさんから救貧院周りのおつかい任務を頼まれることがあるので、俺とレニアはそれで知り合った仲である。……ま、まぁ最近ちょっとレニアに誤解されててあんま話せてないけど……ミレーヌさんの娘さんなだけあって、真面目だしテキパキと仕事をこなすし、立派な女の子だよ。
「っス。レニアちゃんもモングレル先輩の話してたっス。……ちょっと下品なとこあるって言ってたっスけど、それだけじゃないよってフォローしといたっスから。感謝してほしいっス」
「ありがとう……でもそれだけじゃないってお前、下品は否定してないのな……」
「猥談バトルなんてものに参加していつもチャック先輩相手に勝ってるじゃないスか……」
「それもそう過ぎたな……」
「実力差ありすぎるのに容赦ないっス」
「実力っていうかまぁ……実力って言ったらいいのかどうか……」
しかし、レニアとも仲良くなれたか。そいつは嬉しいニュースだね。
ライナもレゴールでの友達が増えて良かったな……友達は良いぞ。数が大事ってわけじゃないが、友達が多ければそれだけで楽しいからな。いざって時には友達は手助けしてくれるし、人と人の間の結び付きが強いこういう世界じゃ友人関係ってのはとても大切な命綱だ。
俺もそうだが、ライナも家族との繋がりが遠のいたせいで、レゴールでしっかり身を立てていかなきゃならなくなっている。俺と一緒になって支えあっていくのは当然だが、それだけでなく、レゴールにもっとたくさんの縁を持ってほしい……というのが、俺の想いだ。人との関わりは決して無駄にはならないからな……。
「……まあ、私は別に……モングレル先輩がいくらスケベでもいいんスけどね」
「……」
更に肩を寄せてきながら、ライナはそう言った。
……ん? 今何か言ったか? ……みたいな難聴系主人公じゃないからな、俺は。いやいやわかるよ、普通に。空気も読めるよ。
……鳥肉とスープの控えめなディナーも終わっちまった。
最後に残ったのは、美味そうなデザートか……。
「男としては、どのくらいまでのスケベが大丈夫なのか気になるところだぜ?」
「えー……? あっ……」
そっと肩を掴んで抱き寄せ、ひょいっと膝の上に乗せる。
ライナは小柄だからこういうことしやすくて良いな。
……焚き火のせいだけでなく、真っ赤になったライナの表情がよく見える。
「ん……男の人って、普段からずっとスケベなことしか考えられないって……ウルリカ先輩もよく言ってたっス……だから、私は……モングレル先輩がしたいなら、そういうことも……」
「そういうことって? こういう風に触ったりとか?」
「っ……! うん、うん……そういうの……」
ライナの滑らかな脚に触れ、内股を擦る。服の上からお腹に触れたり、肩に触れたり。その度に大げさなくらい反応するライナの初心さに、ちょっとした背徳感が芽生えてくる。
「俺はライナが嫌がるようなことはしたくないんだ」
「あっ……耳元で喋っちゃ駄目……」
「駄目ってことは、やめておくか?」
「……いじわる。……嫌って言っても、そうじゃないから……もっとして、良いからぁ……んむッ!?」
後ろから抱きしめながら、強引にこちらを向かせて唇を奪う。
そうしてじっくりと口づけていると、腕の中のライナの強張りも段々と溶け、逆に力を完全に失ったように弛緩した。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……先輩……なにしてんスかぁ……」
「……俺さ。かわいい子をいじめるような趣味なんてなかったけど……今のライナを見てるとなんか……いじめたくなっちゃうんだよな……」
「どう……いじめるの?」
俺はライナを抱えたまま、無言で腰を押し付けた。
尻に当たる硬い感触にライナも悟ったのか、体温がカッと上がった。
「嫌って言っても、やめなくていいんだよな」
「……あ、あの……私、はじめてなんスよ……手加減してもらっていいスか……?」
「おう、考えてやるよ」
「先輩、目が怖い……けど、私のこと、そういう目で見てくれるの……えへ、ちょっと、嬉しい……」
「ごめんやっぱ手加減できないわ」
「えっ、あっ……!?」
俺はライナを乱暴に抱きしめて、そのままテントの中になだれ込んだ。
色々なものを装備から外して放り出すついでに、数日分の魔除けのお香を焚き火の近くに放り込む。これでもう、今夜は魔物も邪魔してこないだろう。
俺とライナだけの、二人だけの夜だ。
詳細は良い子の前ではとても語れたもんじゃなかったが、簡単に言うとライナを抱き潰した。
溜まりに溜まってた俺の様々なものを余すことなくライナにぶつけてしまった結果である。
ライナは……途中何度も身を捩ったり抵抗したが、その度に俺が優しく丹念に説得してやれば、最終的には折れて受け入れてくれた。
いや、受け入れさせたというか……まあアレだ。俺は終始悪い男だったよ。そしてライナは、とことんいい女だった。
狩りでそれなりに動いていたにも関わらず、夜明けがくる寸前までやっていたのだから恐ろしい話だ。ちょっと明るくなったら明るくなったで、ライナの姿がほんの僅かに見えるようになると、いい加減枯れたと思ってた性欲が復活するのだから恐ろしいものだ。
ライナには負担をかけたが……そこはもうアレだ。ごめんとしかいいようがない……。
「……変態。スケベ。モングレル先輩」
「俺を悪口の代名詞みたいな……ごめんって。許してくれよ……」
「……昨日の夜はずっと、私のこと許してくれなかったくせに……」
朝になって今、ライナは身動きが取れない状態でラグマットに突っ伏して、責めるような目で俺を見ている。
ドロドロすぎる惨状は一旦入念に拭ったり鍋に汲んだ水でどうにかしたが、街に戻る前には一度水浴びしないと駄目なやつだろう。
「ライナにあんなかわいい誘われ方したらしょうがないだろ」
「……また私のせいにして。かわいいって言うのもうやめて……」
「かわいい」
「むぅうう」
ラグマットに突っ伏したままジタジタしている姿を見て癒されながら、淹れたてのハーブティーを飲む。
……うん。美味い。
そして思う。今ならまあ死んでもいいかなぁ、と。
そのくらい、今の俺は幸福な気分であった。
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