バスタード・ソードマン   作:ジェームズ・リッチマン

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ライナ視点


ライナの帰宅と欲しいスキル

 

「ええー!? 一緒に寝たの!?」

「っス」

「なのに何もしなかったの!?」

「……っス……いや、普通に寝るだけっスよ。当然じゃないスか、ウルリカ先輩」

「いや当然って……ことはないよぉーその流れはー……」

 

 モングレル先輩との狩りを終えて、私はレゴールに戻ってきた。

 成果はお肉と羽毛。一泊して次の日の帰り道でも何匹か仕留められたので、成果としてはまずまずだった。

 

 まぁ、モングレル先輩は結局一匹も仕留められなかったんスけどね。要練習っス。

 

「私とモングレル先輩とは、そういうんじゃないっスから……」

「……男の人なんて普通そういうものなんだけどなぁ」

「でもウルリカ先輩はそうじゃないっスよ?」

「私はぁー……まぁちょっと違うからー。でもライナ、全ての男の人がモングレルさんと一緒だと思っちゃ駄目だからね? 他の男の人と二人きりで狩りに行くなんて駄目だよ?」

「まぁ、はい。そんな予定は無いっスけど……」

 

 アルテミスのクランハウスに戻ると、ジョナさんがお肉の調理をしてくれた。どこかのお店に売るほどの量もなかったから、みんなで食べようってことになったんスね。

 モングレル先輩は自分で仕留めたクレータートードの方をたくさん持って帰ったみたい。一緒に狩りに行ったけど、それぞれが仕留めた獲物を持って帰る。なんだか変な感じっス。

 

「ナスターシャさんがお風呂用意してくれてるから、先に入っちゃいなよー」

「はぁい。あ、パフ鳥の羽毛、ウルリカ先輩使うっスか? 集めてるんスよね、こういうの」

「えっ、いいの? うん欲しいっ! ありがとーライナ! 馬車乗る時用のクッション作ってるからねー、これだけあれば八割方終わりそうだよー、助かるー! 後でお金払うから!」

「えへへ」

 

 クランハウスは清潔で、いい香りがして、みんな優しくて……とっても居心地が良い。

 だけど私はこの中で足手まといのギルドマンにはなりたくない。

 一人の弓使いとしてもっともっと腕を上げて、みんなを支えていけるようになりたい。……なんて、分不相応なこと思っちゃったり。

 でもモングレル先輩なら、こんな私でも応援してくれそうな気がする。

 

 いつかきっと、立派なギルドマンになれるように。

 弓の腕を磨いて、強くなって……あともうちょっと身長も伸びて、ミレーヌさんみたいに胸も大きくなりたいっスね……。

 

 

 

「あの洗濯板っていうの、良いわねぇ。簡単だけど使いやすいわ。土汚れもよく洗い落とせるし」

「ジョナさんもそう思う? 良い買い物だったのよね。ウルリカがどこかで買ってきたみたいなのよ」

「あ、ギザギザのやつっスか。なんか近頃、いろんな宿屋が外で使ってるの見るっスね」

「うん、市場で見かけてねー、買ってきちゃった。雑貨屋さんも真似し始めてるからこれから安くなりそうだけど、早めに買えて良かったかな?」

「便利な道具は多少割高でも構わないわ。ありがとうね、ウルリカ」

「あはは、褒められた」

 

 夕食はみんなでご飯。

 ポリッジには私の獲ったパフ鳥のお肉も入っていて、とっても美味しい。

 お肉ばかりのご飯も豪華スけど、やっぱりポリッジがないとご飯って感じがしないっスよね。

 

「ライナ。夜営はどうだった? 魔物は居なかったか」

「安全っスよ、ナスターシャさん。お香も炊いてたし、モングレル先輩が拠点周りはしっかり固めてたっスから」

 

 小さな天幕の周りには長めの枝で杭を打っていたし、薪ストーブ? の火は思っていたよりずっと長く灯っていて、おかげでわずかな明かりが常に拠点周りを照らしてくれていた。

 というより、多分夜の間にモングレル先輩がちょくちょく起きて、薪を補充していたんだと思うスけど……。

 

「でも二人だと何かあったらいざという時が怖いスね……」

「そうね。人でも魔物でも、夜襲に対応するには四人は欲しいところだわ。拠点作りの準備にも人手は必要だもの」

「二人は大変よねぇ。私も若い頃は何度かやったけど、夜なんて怖くて寝れたもんじゃなかったわ!」

 

 やっぱりそうなんだ。……それでも夜寝れたのは、モングレル先輩がいてくれたおかげなのかも。

 他の人だったら、そこまで安心感はなかったと思うし……。

 

「ライナも少人数の夜営ができるようになったかぁ………大人になってきたねぇー……私は嬉しいよぉ」

「私は大人っスよ」

「わかってるわかってる。……ねえねえ、ライナがもう一つスキルを習得してからと思ってたけどさっ。もうシルバーランク受ける頃じゃない? シーナ団長」

「……ライナの昇格ね」

「え、もうスか」

「ライナはもう実力はあるよ。考え方や知識だってそこらのシルバー1よりあるし、足踏みする理由もないんじゃないかなぁ」

 

 シルバー1……モングレル先輩より上のランク……。

 ……いや、あれはあの人がおかしいだけなんスけどね。

 

 なんだかなぁ。モングレル先輩も一緒にあげて欲しいのに……。

 

 でもシルバーランクになれば報酬が上がるし、仕事の幅も増える。何より討伐できる魔物の種類も増える! 

 ギルドマンとしてこの昇格を拒む理由はないっス! 

 

「私、頑張るっス!」

「いえ、まだ受けなくていいわ」

「だはぁ、なんでっスかぁ!?」

「そーだよ団長ー、ライナは私より狙いは良いよー?」

「スキルをもう一つ。それが絶対条件よ。いくら腕が良くても『照星(ロックオン)』だけでは弓使いは厳しいもの。もっと弾道系や強撃系のスキルがないと連携が厳しいわ」

「むむむ……シーナ先輩の言う通りっす……」

 

 確かに今の私のスキルじゃ大きな獲物は倒せない。みんなと連携してようやくといったところだ。

 前のオーガを仕留めた時だって、みんながいたから目を狙えたようなものだし。

 

「……私も次はウルリカ先輩みたいな弱点看破(ウィークサーチ)とか強射(ハードショット)とか欲しいっス」

「便利よねぇ、ウルリカちゃんのスキル。私もその二つが良かったわ」

「あはは。まぁ使い勝手は良いけどねー……矢の消耗がちょっと」

 

 ウルリカ先輩は生き物の弱点を可視化するスキルと、矢の威力を上げるスキルの両方を持っている。そのおかげでどんな状態の魔物が来ても狙うべき場所に迷うことはないし、近付かれても強引にはね飛ばすだけのパワーもある。

 私のはちょっと地味すぎて……。

 

「でもライナは丁寧に撃つタイプだからなぁー……なんとなく私と同じスキルはもらえなさそうだよねぇ」

「わぁん」

「ふふ。スキルは本人の性格やそれまでの積み重ねによって得られるというものね。ライナは弾道系になるのかしら」

「……できれば早くスキルを手に入れて、シルバーランクに昇格したいスけど。できれば使い勝手のいいスキルがいいなぁ……」

 

 弾道系……軌道を安定させたり、飛距離を長くしたりする弓使いのスキル。

 悪くは無いっスけどねー……どうせなら私も大物仕留めたいなぁ……。

 

 二つ目だとそろそろ新しいスキルが手に入っても良い頃らしいスけど……夏か秋か、そのくらいなんスかねえ。

 楽しみなような、怖いような……。

 

 




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当作品をお読みいただきありがとうございます。

これからも応援よろしくお願い致します。

(羽毛)*・∀)))ズモモ…

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