体育館中に蜘蛛の巣のように張り巡らされている焦凍の氷、演出の為に伸ばしたそれをブラックホールを有効に活用して一気に片付けて行く。それでも細かな破片は出るので他のメンバーは其方の対処を行っている中で星辰は汗だくになった汗を拭う。
「お疲れ様星辰君、差し入れだよ」
「先輩、どうも」
そう言いながらもスポーツドリンクを受け取ると一気に飲み干す。大体の氷の排除が終わったのでボトルを引き抜いて変身を解除するのであった。
「エボルさん、本当に本当に凄かった!!最初は風がぶわ~って来たら一気に音が来てね、それからそれからお星さまがいっぱいになっててそれから!」
壊理ちゃんも興奮が未だ冷め非ず、と言った様子なのか少々たどたどしいながらも自分なりに言葉を作って表現をつづげる。その表情はとても明るくて嬉しそうなものだった。それを聞いて漸く満足できたと言わんばかりに縛っていた髪ゴムを外した。
「やり切ったって実感出てきた……」
風になびく長髪と光る汗、中性的な見た目の星辰が行う髪を振るう仕草に思わずA組の面々は見つめてしまった。妙に似合っているというか……女よりも女らしい仕草に一部は顔を赤くするのであった。兎も角作業を終わらせて体育館を出ると―――
『A組お疲れさま~!!』
『最高だったよ~!!!』
『文化祭アンケートには絶対入れるから!!』
普通科やサポート科、経営科の皆から暖かな言葉は送られてくる。これは嬉しいのだが……明らかに人数が多い、此処までの人が如何して……と思っているとその疑問には何故かマイクを縛っている相澤が応えてくれた。
「済まん。此奴が独断でお前らのライブをスピーカーを通して雄英中に流したせいだ」
「だが俺は反省も後悔もしちゃいねぇぜ!!」
「そうか、それならしょうがないな」
「イデデデデデデデデッ!!!?締まってる締まってるぜマイフレエエエエエエンド!!!」
との事。まさかそんな事になっているとは予想外だった、だが出し物の関係でライブに行きたくても行けない人もいただろうからそう言った方向への配慮と考えればありなのではないだろうか……?と思い始める、これはこれでナイスプレーだったのでは。
「兎も角、今度は俺達が文化祭を楽しむ番だ―――さあお前ら、クライマックスはまだまだ続くんだ。ノリノリで行こうじゃねえか!!」
『おっ~!!!』
すっかりモモタロスの演技に慣れてしまったのか、それともモモタロスの人格が生まれているのかそんな言葉を口にしながらも楽しむ為にその場の全員を鼓舞する。
『相棒、お前そんなキャラだったか?』
「(……我ながら、テンション上がり過ぎて可笑しくなってるかも)」
「星辰、壊理ちゃんがアタシ達と一緒に回りたいってさ。ミリオ先輩と緑谷と一緒にほら早く!!」
「あっうん、今行くよ響香さん」
「あれ、あの時みたいに呼び捨てしてくれないんだ?」
「んぐっ!?」
言葉に詰まる、あの時はつい、空気に流されてやってしまった星辰。それを引っ張り出されて言葉に詰まる、のだが―――笑いながら自分の手を取って壊理ちゃんの下に歩く響香にそっと耳打ちをされる。
「―――二人っきりの時にそう呼んでくれるなら、ウチは良いよ」
「ハードル高ぃ……」
星辰は今すぐにでもベットに横になりたい気分になりながらも、それを必死に押さえながら壊理ちゃんと共に文化祭を回ることにするのであった。希望もあってB組の劇を見にも行ったのだが……
「私がお前の父だぁぁぁぁぁ!!!」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「いや怒られろ、流石にやり過ぎだ」
『ねぇわ流石に」
オリジナルシナリオ、題名『ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~』はハッキリ言って見た事あるぞこれ展開のオンパレードであった。王道的な展開が多く取り入れられているのだが……なんというか、タイトルから漂う出オチ感に恥じない内容だった。
「えっと……如何だった壊理ちゃん?」
「えと……よく分からない?」
「フォローしてあげたいけど何とも言えないよね!!」
とこれ以上にない程にミリオの言葉がよく現わしている。休憩がてらジュースを買って飲みながら感想を言い合っているのだが……壊理ちゃんどころか緑谷と響香からの評価も悪い。
「僕さ、基本的に映画とかアニメのこういう所があんまりよくなかったな、って言わないタイプなんだよね。何だかんだ楽しめるって感じ、でも何ていうかその……」
「うん、言いたい事は分かるよ緑谷。ウチも似たようなもんだから」
ハッキリ言ってしまうとコメントに困る。言いたい事はあるのだけど言語が出来ないというべきなのだろうか……。
「おやおやおやぁ!!?そこにいるのはA組じゃないかぁ!!」
と片付けも終わったのか、自分達も文化祭を回るモードに入ったB組の物間が此方を見つけたのか近寄って来た。明らかに此方を煽る目的なのは間違いないのだろうが……今はそんな気分ではない、というかなんと反応したらいいのか困る。
「僕達の演劇『ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~』は如何だったかなぁ!?君達のライブはある程度盛り上がったらしいけどさぁ、僕たち程じゃないよねぇ!?僕達のオリジナルには君達のオリジナルじゃ勝てないってよく分かったと思うけどさぁ!!」
「パロディ塗れが良く言うわ」
と此処で星辰が思わず口を開いてしまった。本当は言うつもりは無かったのだが、なんといかエボルトも言いたい事があるらしいのでそれを代弁する為に口を開く事にした。
「題名からしてオリジナリティゼロだろ、模倣して自分達なりの解釈と表現をするならばいいと思うけどさ……あんまそういうのなかったじゃん」
「な、何を言うかと思えば……」
「だってさ、お前らのそれって元ネタが存在しない所無いだろ?」
常に付き纏って来るどっかで見たぞこれ、という感覚は観客に直ぐ様に次を連想させる。基礎にしている要素が誰もが知っているものである為に予想を裏切られる展開が全くない。安定していると言えば安定はするのだろうが……圧倒されるような物が無かった。
「まあ演劇はその辺りは難しいのは察するさ、だけどある程度絞ってオリジナル入れた方が見ててワクワクすると思うぞ」
「ハ、ハハハッ随分と上からな意見だね!!もう勝った気でいるとは慢心かな!?」
「あっ居た居た!!お~いA組さ~ん!!」
そんな時だった、他の科の先輩やらから声を掛けられた。
「なあなあ、校内放送で流れてたあれってA組のライブだったんだよな!?あれマジ最高だったわ!!あの曲って配布とかやらないのか!?」
「は、配布ですか?」
「うんうん!!私はGiant Stepを配布して欲しいんだけど!!」
「いやいやいやあの開幕だろ!?」
「あ、あの耳郎さん貴方のファンになりましたサインください!!」
「ウチのサイン!?」
校内に流れた事でライブで歌ったライダーソングは瞬く間に波及していった、今まで聞いた事も無いような熱を帯びたヒーローソングの数々に雄英の生徒達は心を奪われたようだった。そして口々にサインや配布の予定などを尋ねる人が大勢いた。その光景に思わず愕然とする物間、B組は劇の事もあったのでライブを聞けていないのでこの辺りは致し方ないかもしれない。
「ま、まだだ……アンケートを取ればB組の勝ちに決まってるさ、そうさそうに決まってる……」
「お前も性懲りねぇな」
「まあ懲りたら物間じゃねえしな、もうほっとく……訳にも行かないか、お~い物間専用のハリセン持って来い!!」
これ以上文化祭の空気を悪くする前に、物間の意識はB組学級委員、拳藤の代理を務める泡瀬がハリセンのフルスイングで物間の意識を刈り取るのであった。
「なあなあ、あのクライマックスだぜって奴やって貰えないかな?!ライブ見た奴がそれが最高にカッコよかったって言ってたんだ!!」
「そ、それでは……へっ何だ何だどいつもこいつも、俺のカッコよさに気付いたってか。なら目ん玉ひん剥いてよく見やがれ。俺、参上!!俺に前置きはねぇ、最初から最後までクライマックスだからな!!」
「星辰君、ノリノリだ……」
「彼も結構エンターテイナーだよね!!」