「あ~……あかん、自暴自棄になってた……もうぃゃ壊理ちゃん慰めて……」
「カッコよかったよ?」
「ぅぉ……純粋無垢ゆえの反応が余計に刺さる……」
「ま、まあまあ星辰君……」
校内放送によって別の側面のファンが出来てしまった星辰と響香、しかもそれが中々に熱狂的だったのでヤケクソ気味にリアクションしてしまった星辰は特にダメージが酷いらしい。
「さてと、ミスコン会場に到着だよね!!」
「ミスコン?」
「ミスコンっていうのは女の人達がどれだけ自分をキラキラしてて綺麗に見せられるかを競う物なんだよ」
支えられながらも到着したミスコン会場、中々に説明に困るそうなミスコンの概要をかなり分かりやすく簡潔に教えるミリオにおおっ、と声が漏れるのだが―――直後に巨大な人の顔をした戦車のようなメカに乗った色んな意味で絢爛豪華な姿をした女性が色んな意味で大暴れしている光景だった。
「……あれ、これ本当にミスコンテストなの?」
「奇遇だね星辰、アタシもミスコンって何だっけって思ってたところ」
「あれは前年覇者の絢爛崎さんだね」
ミスコンテストというのは女性が自分の美しさや可憐さなどといった魅力を武器にした上で誰が一番なのかを競う物だと思っていた。それなのに目の前では巨大な絢爛崎先輩の顔をしたメカが色んな意味で大暴れをしている、もはや美しさとかけ離れているような気がしてならないというのが素直な感想であった。というかそんな事よりも……
「確かにキラキラピカピカしてる、これがミスコン……?」
「いやうん、なんかあってるようで間違ってるよね多分……」
流石のミリオも誤解を解きたい所なのだが、どうやって説明したらいいのかに困る。
『悪くはねぇだろ、綺麗だのなんだので競うって言っても結局のところはインパクト勝負なのがミスコンの肝だろ。だったらあれはあれで正解だろ』
「(そう、なのかな……)」
『あんだけ自分に自信あるんだ、印象に残るだろ』
確かにそう言われればそうだ……自分だって一番印象に残った、色んな意味で。恐らく暫くは絶対脳裏からあの光景が離れる事はないのだろう……一種の呪いの類なのだろうか。そんな中、続けて登場のしたのはねじれだった。
「おおっ先輩だ」
「さて、波動さん今年は如何かな?」
話を聞いてみると前年は絢爛崎に敗れてしまったとの事、だが今年は違う。去年と違って、今年は自分らしさを活かして戦うと決めているのかねじれは笑みを浮かべ続けながらも浮かび上がった、そしてそのまま波動を発しながらも空中を舞うかのように飛び回っていく。
「きれぇ……」
思わず出た壊理ちゃんの言葉には同意しか浮かべられない、屈託のない笑みと裏表が一切ない純粋さが合わさりながらも優雅且つ美麗に空を舞う姿は正しく妖精……それに星辰も見惚れてしまう程だった。
「先輩、可憐だ……」
「―――うんそうだね、認めるしかない……しかないけど……」
それ自体は認めざるを得ない、認めるしかないのだが……なんかこう、モヤモヤして来たので星辰の心臓にプラグを挿して自分の心音を流し込んでおく。
「(ぐあああああっ身体の内部に別の心臓音がぁぁぁぁぁ!!!!)」
『相棒、好い加減にこの女何とかしようぜ。ぜってぇお前に惚れてるって』
「(だとしてもこの表現は何なん!!?)」
『お前は私の物だという事忘れんなアピールだろ、愛が重い女に愛されたな』
コンテスト中なので何とか悲鳴を上げないように下唇を血が出そうになる程に噛んで耐える、が、直ぐ傍からは絶対零度の視線を投げかけて来る響香に寒気が走る。星辰は女性との交際経験はないがセラピストニキの世界にいるイッチーことワンサマーほど鈍くはない、明白な好意を持ってくれているという事は分かる、分かるのだが……いわゆるヤンデレ系は程遠い存在だったので戸惑いを隠しきれないのである。
「い、一緒に巡りましょうか響香さん」
「んっ許す♪」
タイトロープを歩く様な気持ちになりながらも、緊張したまま響香と共に文化祭を巡る事になった。と言っても、前述の通りのような気分なのでハッキリ言って楽しめるような心境ではなかったのだが、エボルトになっているという関係もあって外面を整えるのは得意なので表向きは本当に楽しそうに過ごせていた―――という体裁を整える事に見事に成功した。この時程この特典に感謝した事は無かっただろう。
「文化祭の締めに星辰の珈琲……うん、悪くない、寧ろ最高だね」
「それはどうも……今回のは47点かな」
文化祭は大盛況のうちに閉幕としたと言っていいだろう。ジェントルたちの事で色々あったが、結局文化祭に影響する事はなかったしライブも完璧だった。問題と言えば……校内アンケートの結果をミッドナイトが軽く教えてくれたのだが、教師を含めて是非ライブの曲を配信して欲しいという感想コメントが多数あったと言われた事位だろうか。
「にしても星辰のあの曲マジでよかったよ、ウチはClimax Jumpがやっぱ好きかな。ノリノリな星辰含めて」
「いやホント勘弁してください」
此処が自室だからというのもあるが、本当に忘れて欲しいのかその場で即座に土下座を行う星辰。本人的にはもう恥ずかしくなってしまって致し方ないのだろう。
「Climax Jumpはやってて一番楽しいけどでもBE THE ONEかな一番は」
「最後のデュエットはアドリブだったけど、良く合わせられたよね」
「星辰の事だからすぐにこうするって分かったからね」
ウィンクしつつも胸を張る彼女に星辰は苦笑しか出来なくなる、何だかんだありつつもそう言って貰えるのは本当に嬉しい限りだ。改めて思うと本当に彼女には感謝しかない、こうして楽しい時間を送れたのも全て……だからこそ言おうと星辰は決意を固めるのだが―――
「ねぇ星辰、ウチさ―――アンタの事すっごい好き」
「俺―――ヘァッ!?」
意を決して言葉を作ろうとした矢先にそれよりもずっと鋭い言葉が飛んできて驚いてしまった。硬直していると自分が座っているベットの上に彼女も座る、いや自分の膝の上に乗りながらも瞳を見つめて来る。
「今日の事で確信した、アンタといると凄い楽しいし嬉しいしドキドキする。んでねじれ先輩と仲良しな所見るとすっごいモヤモヤしちゃう……何度も心音流してゴメン、でもそれだけウチの事をアンタに知って欲しい、意識して欲しかったの」
踏み込むように顔を近づける。
「馬鹿みたいな事してたけど……だから今ハッキリさせる、アンタの珈琲をこれからも毎日飲ませて、それでウチの心音を隣でずっと聞いててくれない、かな……?」
様々な思いが込められた言葉に星辰は放心状態の一歩手前まで来ていた、何故ならば此処までの人生で女性と付き合った事なんてなかったから。告白をした事も無ければされた事も無い。そんな人間が此処までの事を言われてしまったら処理する事なんて難しいに決まっている、だがそれでも彼は誠実なのだ、だから必死に茹りそうな頭を働かせながら紡いだ言葉は―――
「……え、っと……その、告白、先取りされちゃった、ね……?俺が言おうとした事も言われちゃった」
「それってもしかして……!!」
「ふ、不束者ですか末永く宜しくお願い致します……」
紅潮しきった星辰の言葉に響香は感情が限界突破してしまい、そのまま星辰を押し倒すように抱き着きながら彼の耳にささやくように言った。
「それはこっちの台詞―――毎日、ウチの音楽でコーヒーブレイクしようね……マイダーリン♪」
なんか、ワンサマーって文字を出したらどうしても酢豚が思い浮かんじゃって……