「ったく……」
「いやぁ悪かったっていやホント」
ビルボードチャートの発表後の控室で思わず溜息混じりにそんな事を口遊んでしまった。それにホークスが謝罪するがそんな物をする位だったら最初からするなと言いたかった。ハッキリ言って今回の事で自分は酷く悪目立ちした感じがする、分かり切っていた事だがそれならせめて最後の最後は自分で決めたかったという気持ちがあった。
「エンデヴァーさん、これっていつもこんな感じなんですか」
「遺憾ながらその通りだ」
「おいおいおいもうこれ扱いかい?」
同室にいたエンデヴァーも溜息混じりにそうだと答えた、既にこれ扱いを受けている当人は不服そうな顔をしているがそれだけの事をしたのだと理解してほしい物である。
「でも実際さ、俺は君の言葉が本当に欲しかった。オールマイト主導のヒーロー社会になんて絶対に未来はない。あるのは衰退しかないんだ」
その言葉にはエンデヴァーも同意見だった。そうしなければいけなかった時代は既に過ぎ去ったのにたった一人に依存して社会の安定を求め続けるなんて愚の骨頂、なのに誰もオールマイトを目標にしなかった事に対してある種の失望を感じていた。何故あれを目指さない、せめて肩を並べることを目指さないのだ。そんな社会への反骨心もエンデヴァーの№1への気持ちには入っていた。
「理想を掲げなきゃ、未来を作り出せない。正しくそれだよ俺が求めてたのは、そういう事を言える人を求めてたんだよね。俺絶対言えないから」
「……」
「撃って構わんぞ」
「イエッサー」
「タンマタンマ冗談だってば!!」
良い事を言ったと思ったら本音はそれかと思った、それはエンデヴァーに届いたのは射撃許可が出たのでトランスチームライフルにガトリングフルボトルを装填しようとする星辰であった。
「(何と言うか、お前とは別ベクトルで口が回る人だな……)」
『一緒にすんなよ、俺はこんな胡散臭くないぞ?』
「(お前は胡散臭い前に悪意が見えてるからな)」
『褒めるなよ、照れるじゃねえか』
まあ悪意がない分、エボルトに比べたら遥かにマシかもしれないが実態が如何にも掴めない。そう言う意味ではホークスの方が厄介ではある。
「でも実際さ、簡単に言えるもんじゃないよ。ヒーローが集結してる場所で堂々とラブ&ピース、愛と平和を齎すヒーローを目指してますなんて」
「事実を否定して何もなりませんからね、それを笑うのは目指した事もその有難みを感じた事も無い奴って事です」
随分と辛辣な物言いにホークスは言うねぇ~と笑う一方でエンデヴァーは的を射ている返答だと思う。エンデヴァーはそのような事を言うタイプではないが、自分が守った平和を享受している人々を見て胸を撫で下ろしたり誇りに思ったりはする。ヒーローとは正しく愛と平和を人々に齎す職種なのだ。
「それで何故俺を呼んだ、下らんようなら焼き殺すぞ」
「ヒーローが軽々しく殺すとか言わないでくださいよエンデヴァーさん」
「それ、ウチの同級生にも是非言ってあげて下さい」
何処かで爆豪がくしゃみをする音が響いた。
「チームアップの要請をしたいんですよ」
「……何?俺だけではなく、エボルにもか」
「ええそうです」
「えっ俺も?」
純粋にエンデヴァーに向けての物だと思っていたので自分もそれに含まれている事に驚く星辰、と言うか何で自分がそれに含まれているのかまるで分らなかった。驚いている星辰にも分かるようにホークスは一つ一つ筋道を立てて説明を始めた。
「まず、脳無って分かるよね」
「ヴィラン連合が使ってた改造人間でしょ、神野区にも居ましたよ」
「うんそう、それの目撃情報が俺の地元であるんだよ」
それを聞いて二人は瞳を鋭くした。脳無との交戦経験がある二人としては聞き逃す事が出来なかった、脳無にもレベルがあると思われるが、低い物でも一般的なヒーローでも太刀打ちできない程の強さの物もだ。そして、もしもそれがUSJなどに出て来た物と同レベルの物ならばトップヒーローでなければ対応出来ない。
「……貴様、それを俺に打ち取らせて恩でも売るつもりか?」
「いやいやいやそんなつもりはないですって、まあ確かにエンデヴァーさんが倒せば№1として肯定的に思う人が増えるだろうなぁとは思ったりはしましたけど」
薄ら笑いを浮かべているホークスに星辰は僅かに底知れなさを感じた、見た目こそ軽薄そうだが実際はかなり思考を巡らせて策も敷く事が出来るタイプ。既にエンデヴァーを№1として立てる為の準備も行っている。そう思っていると今度は自分を見て来た。
「んで君はこれを見て欲しいんだ」
そう言いながら差し出してきたのは数枚の写真だった。其処に映っていたのは―――以前、自分を襲ってきたハードガーディアンの装備を付けていた怪人に極めて似ている。いやあの時よりも装備が強化されている上に更に機械化されている。
「以前、君が倒した奴と似てるだろ。結局専門機関が調査しても大した事は分からなかった、内部データは既に削除されていたし装備についてもサッパリ。だからこいつの脅威を知っている君にも協力を仰ぎたいんだ」
それを聞いて僅かに黙る。そしてその間にエボルトと対話をする。
「(どう思う)」
『文化祭の時に襲ってきた奴と同じ、かもな。武装が如何にも似てやがる、脳無が目撃されてる場所で実地テストってのも考えにくい。となると―――』
「(ヴィラン連合と通じてる)」
『正解』
「分かりました、リューキュウさんに許可を貰ってくれれば」
「あっそれはもう貰ってる、後は君待ち」
「手回し早っ」