『さあ休憩を挟んだところで第一回戦第二戦を始めるぞぉ!!第一試合はA組の緑谷 出久と普通科の心操 人使が激突、緑谷が勝利をおさめたが次は一体どんな試合展開になる事やらの楽しみだなぁ!そして注目の第二戦は大注目の一戦だぁ!』
会場の空気を盛り上げるマイク、彼の面目躍如といった所だろうか。だが彼のそんな煽りなんてなくてもとっくに会場のボルテージはMAXフルゲージ。
『首席入学者でその個性は摩訶不思議!!空は飛ぶはアイテム作れるはで幅広過ぎだろぉぉぉ!!?この男には何が出来ない、ヒーロー科 石動 星辰!!!同じくヒーロー科、此処まで全てを氷付けにするスーパークールなイケメンガイ!!推薦入学者は伊達じゃねえってか!?轟 焦凍ぉ!!』
互いにこの体育祭で圧倒的な存在感と力を示し続けてきた二人、その激突となれば否が応でも注目を集めるし期待も集めるという物だ。互いにステージに上がるとミッドナイトが早速スタートの合図を出そうとするのだが……轟がそれを止める。
「待ってくれ、石動が変身してからにして欲しい。それが一番だ」
『おっと轟、石動の個性発動許可を求めたぞ』
『合理的、とは言えないが真正面からぶつかり合いたいらしいな』
「許可します!!それでは試合開始の合図は石動君の変身完了後とします!!」
主審のミッドナイトの許可も取れたので轟は視線で早く変身しろと促してくる。それを見ながらもエボルドライバーを装着する。
「俺からすれば有難いが……それは例え、変身してからでも勝てるっていう慢心か」
「違う、あの時と同じじゃなきゃ意味がない。戦闘訓練と同じ……それが一番平等だ」
轟の瞳に曇りはない、つまりあの時の戦いのやり直しをしたいという事。そしてそれをエンデヴァーに見せ付ける事で自分がどれだけ本気なのかを見せ付けようとしている、それを感じ取って思わず星辰は小さく舌打ちをした。何処までもこの親子は自分を見ないつもりなのか……。
「なぁ轟言ったよな、自分のエゴを貫き通すつもりがあるなら俺を倒せないとなりたいものになれないって」
「ああ、言ってた」
「だから、俺はこれからお前のヴィランになる。それを越えてみろ、貫き通してみろ、自分のエゴをな」
着々と進んでいくシークエンス、前後のビルダーにハーフボディが完成し星辰は至る。
「―――変身!!」
首を鳴らしながらも変身を完了した星辰に轟は構えを取る、変身終了を見届けたミッドナイトは鞭を振り上げながら高らかに宣言した。
「試合開始!!」
直後に轟は右側から前回の氷結を繰り出す、戦闘訓練の時を踏まえた一切の加減をしない最高出力での開幕ブッパ。地面から次々と突き出て行く無数の氷の棘が星辰を貫くように激突しながらもその身体を覆い尽くして行く。が―――
「相変わらずの個性押しか……言った筈だ、もっと頭を使えとなぁ!!」
全身からオーラのようなエネルギーを放出して氷を粉々に砕きながら吹き飛ばす、何も変わって無い個性出力によるごり押しだが視界から轟が消えていた。が、EVOツインアイコブラは確かに轟を捉えている。彼は自分が生みだした氷が凍て付かせた地面を滑って一気に距離を詰めていた。
「ああ、だから頭を使う!!」
スケートのように滑って速度を得ながらも跳躍、そのまま右足での飛び蹴りを放つのだが右脚から冷気を放出して星辰の身体をピンポイントで凍らせていく。星辰の身体自身に霜が降り、それは一気に膨張するように分厚い氷となって星辰の動きを封じて行く。そしてそれを加速した飛蹴りを浴びせ掛けた。
「ぐぅっ……!!」
「ぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」
渾身の蹴りは氷を砕きながらも星辰の身体を確りと捉えてそのまま蹴り飛ばした。そのまま一直線に場外に飛んでいくと思ったが、空中で停止するとそのまま体勢を立て直すと地面に降り直した。
『轟渾身の飛び蹴りを受けても石動は未だ健在!!やっぱり飛べるって卑怯だろぉォ!!?』
『個性に卑怯も糞もないだろう。轟の技の組み合わせも悪くない、自分の最大パワーを隠れ蓑にしながらの追撃はいい。だが相手が空中制動な事を考慮しきれていなかったな』
「(お前はレンゲルかよ……いや、氷で勢い作ってるからある種グリスブリザードなのか?)」
ダメージはそれ程でもない、だがまさか轟がライダーキックをやって来るとは思わなかった。だが……
「左を使う気はないか」
「……っ」
轟は未だに炎を使う様子を見せない、今のキックだって炎を推進力にすれば威力は何倍にもなるし急速な冷却と急速な加熱で自分にも通じるダメージを与える事だって出来た。だがそれをしなかった……
「それがお前の全力だってのか、だったらガッカリさせてくれる。お前は素晴らしい力を持っている、それを何時まで無駄にするつもりだ!!」
「ッ―――俺だって、俺だって……!!」
轟は、炎を使うつもりで此処に来た。だが……試合前に父、エンデヴァーが声を掛けてきた。
『焦凍、次の試合では炎を使え、でなければ石動に勝つ事は出来ないぞ』
『……何だ急にアドバイスか、父親面すんじゃねえ』
『違う、俺は―――』
あの言葉が如何してもフラッシュバックしてしまう、何があっても父に対する憎悪を抑える事が出来ない。母を傷付けたあの男が、唯自分の目的を遂げる為に自分を望んだあの男が……!!
「そうか……ならお前はもう終わりだな、言った筈だ、俺はお前にとってのヴィランになるってな」
「(さあ力を貸せエボルト、それがお前の望みでもあるんだろ)」
『……良いだろう。クククッ相棒からの協力要請がこれとは嬉しいねぇ、さあやろうか』
「フン!!」
「なっ!?」
「ヌゥゥッゥゥゥ……ラァァァ!!!」
突如、星辰は自らの身体に手を突っ込んだ。手はみるみると身体の中へと入り込んでいく、その光景に悲鳴のような声が上がるがそんな事も気にせずに星辰は腕を引き抜くとその中にある物を見て満足気に笑いながらコブラエボルボトルを引き抜いた。
「こっからが本当の戦いだ……お前は何時までそのままで居られるか見物だな」
ヘビの代わりとして入れられたのは龍、ドラゴンのボトル。先程とは全く違う威圧感が発散されていきながらも星辰はレバーを回して行く、そしてハーフボディが完成されるとまだ、あの言葉を言い放つ。
『
「―――変身!!」
そこにあったのは全く別の姿の星辰、頭部の瞳は口を開き牙を剥くコブラのようだったが今度はドラゴンの横顔のようになっている。加えて胸部のパーツの一部と肩のパーツが無くなっているせいか何処かスッキリしているような印象を受ける。
「フェーズ2、完了……!」
「姿が、変わった……進化してるのか!?」
「どう思うがお前の勝手だ……さあ続きをやろうか」
『い、石動新たな姿への変身んんん!!!突然胸に腕突っ込んだ時は何やってんだと思ったけど、変身に必要な物を取り出してたのか!?心臓に悪いわ!!』
『取り出した、というよりも今作り出したという感じだったな……今作り出したのはある種の賭けだったのかもしれないな……』
ゆっくりと此方へと歩き出して来る星辰、よく分からないが今発散されている威圧感は先程よりもずっと強い、故に全力で行くしかないと先程と同じように氷棘を地面から突き出して攻撃する。その太さは人間の数倍もある物、これならばと思ったのだろうが……その目論見は甘すぎる。
「フン!!」
星辰は腕を振るった、その瞬間―――氷棘は一瞬で圧し折られた。いや溶断されていた。
『石動が轟の氷をあっさりと破壊しやがったぁぁぁ!!』
『いや、氷が溶けている……あの形態は強い炎を生み出す事が出来るのか』
「ッ!!!」
その言葉を聞いた時、星辰にエンデヴァーの姿が被った。瞬間に轟の中にあったどす黒い感情が爆発して最大出力で氷を放つ、津波のように迫り来る氷に星辰は全く慌てない。頭部のEVOドラゴンフェイスモジュールが輝くとその拳に青い炎が灯る、そしてそのまま腰と据えた正拳突きを放つと巨大な氷に巨大な穴が空いた。そこを通りながら星辰は絶句している轟へと接近すると首を掴んだまま地面へと叩きつけた。
「ぐっ……がぁ……!!!」
咄嗟に右手を地面に置いて周辺に氷を巡らせてから無数の氷柱を生み出し、それを星辰の顎を狙って伸ばしていく。それを見た星辰は手を放して後ろへと飛び退いた。脱出には成功したが、自分の氷を容易に溶かす事が出来る今の星辰は極めて相性が悪い。
「言った筈だ、俺を倒せないとなりたいものになれないってな。さあ俺を倒してみろ、なりたいものになりたいなら俺を越えてみろ……!!」
「―――っ!!!」
それを言われた時、激しい憎悪が燃え上がって来た。そして―――轟はそれを全開にしたまま氷を生み出して星辰を攻撃しようとする。