『雄英体育祭第一回戦第二戦、早くもとんでもねぇ試合になってきたぞぉ!!?』
「テェァ!!!」
「―――っ……!!」
氷が舞えば蒼炎が燃え上がりそれらを融かし尽くしていく。既に轟の身体は氷の使い過ぎで身体に霜が降りており、動きが鈍くなり始めている。それなのに氷を多用し続ける轟に星辰は急速に接近すると蒼炎が滾る右手をその腹部を殴り付けた。
『石動のブローが轟に炸裂ぅ!!そのまま吹き飛ぶか!!?いや、轟地面から氷を伸ばして上手くコースを作って場外を逃れるぅ!!』
何とか場外落ちを回避する事が出来たが、胸部を打ち据えた青い炎の一撃は身体の内部を焼くかのように痛みを放ち続けている。そしてじんわりと身体の中を温めているのを感じる、身体の霜が溶けているのを見つつ喰らった部分を冷やす。
「テメェ……!!」
「さあどうした、お前の力はこんなもんじゃない筈だが」
轟の目にはエンデヴァーの姿が見えている、敢えて炎で身体を殴ったのは冷えすぎた身体を温める為、炎を使えと促す為。
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
星辰にそんな意図まではなかった……だが、轟にとってのヴィラン―――エンデヴァーはその位の事はすると解釈して更なる怒りを誘発した。何処までも根深い、そして複雑な感情が渦巻き続けている。地面を殴り付けながらも地面から突き出す
「何時までそうしてるつもりだ、優れた力を使わずに何処まで耐えられるかなぁ!!」
氷が近づけばすぐに溶けるような温度にまで装甲が加熱されていき、そのまま轟の腹部を殴り付けた。身体が浮き上がった時、轟は歯を食いしばりながらも右脚を凍らせながら星辰を蹴りつける。氷は直ぐに溶けていくがそれでも蹴る間は持った。
「くそぉっ……!!」
「俺はお前のヴィランだと言った筈だ、そんなヴィランがお前を圧倒してるんだ。お前は如何するべきだ、このまま氷に固執して負けるのか!!如何なんだヒーロー!!!」
「うるせぇくそ親父!!!」
「この頑固者がぁ!!」
「―――焦凍……!!!」
観客に紛れながらも闘いを見続けていたエンデヴァーは星辰の一方的な試合運びに言葉を失っていた、訳ではない……自分が望む焦凍の姿を見せると言っていた。それがあれなのか?
「うおおおおっっ!!」
「何度やろうが意味ねぇんだよぉ!!!」
氷を幾重にも纏った拳を星辰にぶつけるが、全くのダメージも無く逆に蒼炎の拳が轟を抉る様に決まって転がっていく。焦凍にとってのヴィランは自分、つまり今の戦いは自分が息子に行っていた光景なのか……そして、相手を一蹴する絶対的な炎を纏う姿。そうだ、あの姿を自分は焦凍に望んでいた、これを見せたかったのかと……声が震えそうになる、喉が渇いて行く。
「焦凍……俺はっ……!!」
自分が望んでいた焦凍は兵器である、その言葉の意味が理解出来て来る度に自分が望んでいた筈の事が今酷く悍ましく思えて来る。
「がぁぁぁっ……!!」
星辰の一撃が炸裂して再度、地面に叩きつけられる息子の姿を見て思わず観客席の最前列を越えそうになった。
「ぁっ……がぁっ……」
鳩尾に入った重い一撃、それに呼吸を忘れて苦しみもがく自分を見下ろす
「どぉすりゃ……如何すれば、良いんだ……!!どうすれば勝てるんだ……!!?」
弱音が漏れた、圧倒的な力の差に遂に轟の心が折れそうになっていた。あれだけ憎悪してきた父に屈しないと決めて来たのに、もう駄目なのかと……。
「簡単だ、炎を使え。氷だけに拘るからお前は俺に勝てない、目には目を歯には歯をって言葉あるだろう。炎をぶつけてみろ、最低でもお前は冷え続ける身体を温めて動けるようになるだろう」
「フザけんな……それだけは、それだけは……!!」
それだけは嫌だ、母を……苦しめた父のような炎を……。
「何を躊躇ってる!!お前はなりたい物があるんじゃないのか、叶えたい夢があるんじゃないのか!!?」
そんな時に掛けられたのは酷く厳しい言葉、だけど……何処までも力強い言葉だった。
「全力で俺と戦うと言ったお前は何処に行った!!それともお前の中にある全てが嘘だったのか!!?」
『おっとぉ~石動此処で轟に激励の言葉を掛けてるぞどういう状況だこれ?』
『黙ってろ』
「ならなぜおまえはヒーローを目指した、なぜヒーローを否定しなかった。それはお前がヒーローになりたかったからじゃないのか!!お前自身が絶対に護りたい人がいるからじゃないのか!!」
「―――っ……!!」
『いいのよ、なりたい自分になっていいのよ。』
「母さん……俺は……」
「だったら越えてみせろ、俺をっ!!自分が守りたいものを全部守れるような、お前だけのヒーローに!!!」
「俺は、俺はっ―――!!!」
熱い物が込み上げて来る、身体の内側からあらゆるものを燃やし尽くす熱が生まれてくる。忌避していた熱が遂に噴火する。絶対に使わないと誓っていたそれは正に火山の噴火と見間違えるほどの炎が轟から巻き起こっていく、最早爆風と遜色ない熱風を巻き起こしながら轟は熱い瞳を燃やしながら左側から、膨大な炎を巻き起こしながら確りと大地を踏みしめながら立ちあがった。
「遂に、遂に―――遂に覚醒したか!!」
冷え切っていた身体に熱が戻っていく中で見たのはまるで自分の事のように純粋な喜びを浮かべている星辰の姿だった。仮面で表情こそ読み取れないが、きっと彼の表情は満面の笑顔になっている事だろう。
「石動、お前この状況で喜ぶなんて如何なってんだ……」
「嬉しいに決まってるだろ、抑圧していた自分を君は越えたんだ!!漸く変身出来たんだ、本当の自分に!!今、その姿こそ君の本当の姿だ!!それこそが君の全力だ!!」
「俺の、全力……俺の力……」
燃え滾る炎を見ながら轟は唯繰り返し続けた、これが自分の力。憎悪し続けたエンデヴァーの炎ではなく自分の炎……そう言われても絶対に納得しないし認めない筈なのに……何故だろう、星辰の言葉は驚くほどに受け入れられていた。そうか、この炎は自分の炎なのか……と気付けば嫌悪感が無くなっていた。
「そうか……石動、お前まさかこの為だけにヴィランになるなんて言ってたのか」
「正解♪時間と手間はかかったが悪くなかったろ」
「ああっ……ホントに、な……有難うな石動」
その時にエンデヴァーは震えた……息子が、焦凍が笑ったから。何故それで震えたのかは直ぐに分かった、自分は見た事が無かったのだ……あの子があんな風に無邪気に笑った姿を。
「んじゃぁっ……石動」
「おう、此処まで来たら徹底的に付き合ってやる。氷と炎、その二つをどこまで扱い切れるのか俺が試してやる!!」
エボルトムーブ全開である。