『さあ初めて行くぜ第二回戦第一試合!!』
結局有用な話を一切する事もなく来てしまった時間。纏めニキの話を聞けたことはそれはそれで嬉しかったし面白かったが……主人公補正云々については全くと言っていいほどに手付かずだった。とりあえず油断せずに頑張ろうという妥当すぎる結論で纏まったのであった。
『第一回戦でその実力を見せつけ、既に最強とも呼ばれるヒーロー科、石動 星辰!!そして同じくヒーロー科で冴えた頭脳で障害物走、騎馬戦を超えてやってきた緑谷 出久!!またもやA組同士の激突だぁ!!こりゃ面白くなってきたぜぇ!!』
「宜しくね緑谷君」
「う、うん宜しく!!」
「今回の試合も石動君の変身完了後に開始とします!!緑谷君いいかしら?」
「はい大丈夫です!!」
「直ぐ済ませるからね」
温和な態度と言葉、そして笑顔に戦う相手なのに安心感を抱いてしまう緑谷。同じクラスメイトとして彼は不思議な存在だと思っていた、個性のこともあるが彼には何やら他人を引き付ける何かがあるようにも思える。時折人が変わったように声と語りが変わるのもその魅力の一つとしてA組は捉えている。
「(だけど……石動君は、強い……!!)」
「―――変身!!」
「僕は負けない!!君に、勝ってみせる!!」
「良い啖呵だ。そこまで言われたら俺だって負けるわけにはいかないね」
変身終了を見届けたミッドナイトは鞭を振り上げながら高らかに宣言した。
「試合開始!!」
試合開始直後に緑谷は腰を落としながらいつでも走り出せるような準備を行いながらもじっと星辰を見つめた。此方を余裕があるようにしながら見つめているその動きの全てを見逃さぬように。
「(随分とこっちを睨みつけてくるな……カウンターのタイミングを伺ってるのか)」
『あの小僧の個性はパワーがあり過ぎるタイプだしな、リミッター解除系かもな』
「(それありそうだな)」
星辰はエボルトの話にも耳を傾けながらもこちらを警戒している緑谷がどう出るかを伺う。流石のエボルも緑谷の超パワーの一撃をまともに受けてしまえば吹き飛ばされて場外に出る可能性は十分にあり得る。それの為にもどうすればいいのかも考えておく。
「(轟君との戦いで石動君は武器を作成できる事も分かった、手持ちサイズのガトリングに近接も出来る弓……それに空も飛べるし相手の動きを拘束することができる……如何すればいい!!?)」
緑谷は星辰が思っている以上に警戒を強めている、それ程までに焦凍との戦いは警戒させるに値するようなものだった。今までは姿は一つだと思っていたのに更にその先までが存在している、これはとてつもない衝撃だった。という事は星辰はドライバーにどのボトルを差すかによってあらゆる状況にも対応できることが意味している事とになる。
『互いに中々動かねぇなぁ~警戒してるのか?』
『だろうな。緑谷の超パワー、石動の様々な力に姿に武器、互いに警戒するに相応しい物を持っている。下手に突っ込んだらカウンターを食らうだけだ』
『……おい相棒、暇だ』
「(黙ってろ、分かってる。いつまでこうしてるつもりはない、こういう時はな)藪を突く!!」
一気に地面を蹴って加速する星辰、遂に状況が動いた!!と歓声が上がる中で緑谷は想像以上のスピードで焦りながらも構えた。同時にイメージする、同時に右腕に光が集中していき輝きを増していく。
「(レンジの中で卵が爆発しないイメージ……!!)はぁぁぁぁぁSMASH!!!」
まるで掴みかかるとするような一撃、伸びてくる腕には相当なエネルギーが集まっているのがよく分かる。このままの速度ではまともに攻撃を受ける―――が、その攻撃が命中する寸前にその場で浮き上がるようにして緊急停止しつつ一回転して攻撃を完璧に受け流した。
「避けられ―――!」
「おいおいおい、随分と分かりやすい個性だな」
回避された事に驚愕し動きを止めてしまった緑谷に空中で静止している星辰は宙返りしながらの蹴りを叩き込みながら着地する。大したダメージにはならないし後退っただけ、軽い挨拶だけだ。
「くっ完全に捉えたと思ったのに……!!」
「あの程度の攻撃、例えフルパワーだとしてもそんな個性の回避は余裕だけどな」
両手を挙げてやれやれだぜ、と言わんばかりのポーズをとる星辰に僅かな苛立ちを覚えてしまった。緑谷にとっての個性は特別大切なもの、オールマイトから継承した個性で心からこの個性に敬意を抱いている。それを馬鹿にされたのだから苛立たない訳がない。
「何処にパワーが溜まってるのか一目で丸わかりな個性なんざぁ俺の敵じゃないな」
「そんなの―――溜まってる……?」
その時、緑谷の動きが止まった。そして一気に視界がクリアになっていくかのように霧が晴れたような気分になっていった、確かに星辰の言うことは正論だし自分の今までの使い方なんて正しくその通りじゃないか。腕にパワーをためて放つ一撃必殺、腕にパワーを溜めるなんて当たり前、だけどそれだと簡単に見切られる、それなら如何するべきなのか―――その答えは既に目の前にあった。個性を全身に発動させているといえる星辰が。
「そうか、そうすればいいんだ……簡単な事じゃないか!!」
「んっ~?」
「有難う石動君!君のお陰だよ、僕はもっと強くなれるんだ……!!!」
その言葉の直後、再び腕に光が集まっていくのだが直後にその光は全身に四散していく。腕にのみあった力が、血管を通る血液のように全身を巡って纏うイメージ。その結果、腕にのみあったエネルギーは全身へと分配されていって全身が腕ほどではないが輝きを放っている。
「ワン・フォー・オール―――フルトランス……!!!」
「クククッアハハハハハ!!!これだから人間は面白い……たったあれだけの言葉で新しい技のヒントを掴んだぁ!?ハハッなんだお前主人公かよ!!」
「そんな事、ないよ……君のおかげだよ……!!!」
刹那、緑谷は地面を蹴った。バトルフィールドに一陣の風が吹くと緑谷は星辰の背後を取っていた、ゆっくりと振り向いた星辰は何処か楽しげにしていた。
「そうか、一箇所だけではなく全身に纏う事で負担を軽減しつつ基礎的な能力も向上させたんだね。それが君の変身か……いいじゃないか、とてもカッコいいよ」
「でもまだまだ制御が難しい、けどね……!!身体が軋みそう……でも、僕はまだまだ行くよ石動君!!」
「ああ、とことん付き合ってやる。さあ来な!!」
ワン・フォー・オール・フルトランス
星辰の言葉とエボルという変身の状態がヒントとなって編み出した新技。フルカウルと異なり、全身のスイッチを入れるのではなく腕に100%の力を集めてからそれを全身に分配して巡らせる形になっている。
が、何処かしらに100%を発動させてから分配するので時間も掛かる上にフルカウル以上に負担がかかるのでまだまだ未完成且つ未熟な技という印象がぬぐえない。