酷く愉快そうに笑いながらもホークガトリンガーを連射して緑谷を狙っている星辰。銃撃の嵐を必死に回避しようと駆け抜けるが、フルトランスは身体に相応の負荷を掛け続けている。腕に溜まっている100%の力を全身に拡散させている為か、緑谷の身体許容上限を越えてしまっている。故か普段の彼の数倍のスピードはあるが直線的で柔軟性に欠けている。
「ハハハハッ!!!さあ如何した如何したぁもっと速く動けないと使い物になんざぁならねぇんだよぉ!!!」
「グッ!!駄目だ、今此処で解く訳にはいかないんだぁ!!」
身体にホークガトリンガーの銃弾が襲いかかってくる、鈍い痛みが走って集中力が途切れそうになるが今此処で切らしたら集中砲火に晒される事になってしまうと気を強く持って駆け抜けていく。
「(もうすぐ、リロードの筈!!)」
「何時まで耐えられるかなぁ!?」
ホークガトリンガーのリロードはマガジンを回転させる事で装填される、一般的な銃に比べればリロードに掛かる時間は極めて短いがそれでも隙はある。そして弾丸が打ち尽くされてリロードの為に左手が挙げられた瞬間に地面を強く蹴って突進する。
「そんな事が分からないと思うのか!」
「だと、思ってたよぉ!!」
「ぐっ!!」
迫って来た緑谷を星辰は回避した。スピードはあるが直線的なそれに当たるような事はない、と思っていたがそこで緑谷は星辰が回避した方向とは逆方向を殴り付ける事で強引に軌道を修正して土手っ腹に頭突きを当ててみせた。
『緑谷が行くぅ!!ナイスガッツだぜ!!』
『曲がれない事を計算して地面を殴って強引にか……』
「SMASH!!!」
「うぉっ……!!」
頭突かれた事で体勢が崩れている星辰に向けて渾身のスマッシュを放つ。今の身体許容上限は5%程度、だがそれを越える力でスマッシュをクリティカルヒットさせた。そのパワーで殴り飛ばされた星辰は地面に背中を叩きつけられながらもギリギリの所で場外にならない所でストップした。本来なら此処で追撃をしたい緑谷だが……
「ぐっ……!!ほ、骨が軋むみたいだ……!!」
これまで何度か個性のパワーに耐えきれずに腕や指を犠牲した経験はある為か痛みに耐えられているが、それでも余りの痛みに右腕を抑えながら足を止めてしまった。同時にフルトランスが解けてしまわぬように集中している姿に星辰は素直に称賛を送りたくなった。
「(本当に凄いな緑谷君……流石主人公だ。俺なんかとは比べ物にならない精神力だ)」
『クククッ自ら激痛の中に飛び込みなんてなぁ……本当に人間は面白い、本当に気に入ったぞあの小僧。ハザードレベルも高めだ、ドライバーでも渡してみるかぁ?』
「(ウルトラニキに通報すんぞ)」
『OK相棒俺が悪かった』
エボルトから見ても緑谷という少年は色んな意味で逸材だったらしい。人間的に見ても面白い、故か彼はエボルトのお気に入りに入ってしまったらしい。これからは彼も守る事になる、まあ気に入ったのは自分も同じなので人の事は言えないだろう。
「(これが若さか……)」
『相棒も若けぇだろ』
「(前世含めたら割かしいい歳になるからなぁ……)よっこいせっと」
『声出しながら動くのは老化らしいぞ』
「(やぁかましぃ!!)」
地味に気にしている事を指摘するな、と軽くキレつつも立ちあがった星辰。肝心のダメージは正直言って大した事はない、この位は掠り傷にも入らない。
「緑谷、お前の力に敬意を表して―――全力の一撃でお前を潰してやる。それが嫌だったら全力で抗ってみろ」
「ッ―――来る!」
悲鳴を上げる腕の事なんてもう気にならなくなった、それ程のインパクトがあのレバーを回す姿にはあるのだ。次の一撃で決めるしかない、身体中に走り続けている痛みも段々酷くなり始めている、如何やら本格的に限界が近い。次で決める―――と緑谷も覚悟を決める。
「行くよ―――石動君!!」
全力で地面を蹴った、爆発的な加速を得た緑谷はその勢いのまま拳を構えて一気に殴り掛かってくる。このスピードなら回避は出来ない、迎え撃つしかないと思ったのだろう。それは正しい、まあ避けるつもりは最初からないのだが……
「SMAAAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!!!!」
「てぇやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
緑谷渾身のスマッシュが星辰の必殺の一撃と蹴りと激突する、その瞬間にまるで星空のようなフィールドが緑谷と星辰の間に展開されていた。その美しさに見惚れる者も居れば途轍もないエネルギーを感じ取って喉を鳴らす者も居た。そして決着を待ち望まれていた時にそれは現れる。
笑い声と共に緑谷は場外へと大きく吹き飛ばされていき、壁へと激突した。余りの勢いと衝撃か壁にはクレーターのような跡が着き、その中心には意識を失った緑谷がいた。それを見届けたミッドナイトは審判を下す。
「―――緑谷君場外!!よって勝者、石動 星辰君!!!」
決着はついた。勝者は星辰、ある意味順当な物だったかもしれないが緑谷の頑張りは目を見張るものがあったのは事実、それをプロヒーローがどんな風に評価するのか知らないが星辰とエボルトからすれば高評価なのは間違いないだろう。
『クククッ……本当に人間って奴は面白い、なあ相棒』
「(フゥッ……本当にとんでもない奴だよ緑谷君)」
緑谷は試合の最中にも成長しているようにも思えた、此方の情報を引き出しながらもそれを分析して取れる手段で対抗していく。元から彼がヒーロー好きのマニア気質だった故に様々なヒーローの知識があった、フルトランスを使った事でそれを戦闘で活用出来るようになっていた。フルトランスの負荷がそこまででもなく長期戦が出来ていたとしたら?少々ゾッとする。
「次戦う時も勝てると良いけどな……」
担架に乗せられて医務室へと運ばれていく姿を見つつも思わずそんな言葉を呟いてしまう程に緑谷は末恐ろしかった。そしてそれは、ある意味でエボルトも同じだった。
『ククククッ……まさか、この世界にあんなハザードレベルの持ち主がいたとはな。ハザードレベル3.4……実に良い素材だ……悪くねぇよなぁ……クククッフハハハハッ!!』
不気味に、不吉な笑いを上げるエボルト。一体なにを思考しているのか、それは分からないが……エボルトは酷く愉快そうだった。