星狩りのヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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30スレ

「ううっ……」

 

呻き声とともに目が覚めた、視線の先にあったのは青い空ではなく何処かの天井すなわち室内である事が直ぐに分かった。

 

「気が付いたかい?」

 

自分の声に反応したのか、顔を覗き込んできたのは校医のリカバリーガールだった。個性の関係でそれなりにお世話になった事があるので面識はそれなりにあった。

 

「リカバリーガール……ってことはここは医務室……」

「そうさね、アンタは担架で此処に運ばれてきたんだよ」

「Hey緑谷少年、無事で何よりだ」

 

声の聞こえたほうへと顔を向けてみると、そこには骸骨のような風貌の男がいた。だがその男こそ、平和の象徴して名が轟いている№1ヒーローのオールマイト、その真の姿ともいうべきトゥル-フォーム。ヒーローとしての姿は本人曰くマッスルフォームというらしく、プールで腹筋に力を入れているようなものとのこと。なお、掲示板ではその話になった時にお前のような見せ筋があるか、となっていた。

 

「オール、マイト……そうだ試合は!?」

「君の場外負けだ、最後の一撃の激突で君は石動少年に蹴り飛ばされてしまったんだ」

 

ここで寝ている場合じゃないと思って質問したが、それを聞いて既に自分が敗北してしまった事を察した。素直なことを言えば残念だと言わざるを得ないが……そう思っているとリカバリーガールの個性におり治療が行われて身体の傷が治癒していく。

 

「今回の傷は今までの物に比べたら軽いものだね、腕に集中させたらこれまでと同じぐらいのものにはなるかもしれないけど……今までの物に比べたら一気に減ってきてるねぇ」

「ああ、緑谷少年実に素晴らしかったぞ!!」

 

そういいながらオールマイトこと八木 俊典は今回の試合についての事を褒める。幸いな事にリカバリーガールは個性については知っているので遠慮なく話す事が出来る。

 

「全身でのワン・フォー・オールの発動、今までそんな事出来ずに腕や指などで100%使用が限界だったが今回は全身だ!」

「全部石動君のお陰ですよ」

 

星辰の煽るような言葉や本質を突いた言葉などが自分に新しい世界を見せる切っ掛けになった。

 

「成程、腕で100%を発動させつつそれらを全身に……私にはない発想、そして相澤君じゃないが実に合理的だな!!」

「でもまだまだです、ぶっつけ本番でしたし身体許容上限も超えてましたから身体が悲鳴上げてました……」

「だろうね、アンタの身体の傷は正しくそんな感じのものばかりだった」

 

緑谷の話を聞いてオールマイトは益々石動 星辰という少年への思いを強めていく。アイテムを作り出し、それを使うことで全く違う姿へと変身することで圧倒的な力を発揮する個性。しかもその個性の力にはまだまだ先が見えない。寧ろ無限に成長するような底知れなさをオールマイトは感じてしまっている。一先ずこれ以上医務室にお邪魔している訳にもいかないので、リカバリーガールに頭を下げて共に出ると尋ねた。

 

「緑谷少年、君は石動少年と戦って何を感じた?」

「えっと……なんて言ったらいいんですかね、なんかワザと敵役を演じてるみたいな感じがありますね。態々声まで変えてなんか演技をしてるみたいで」

 

星辰は戦いになると基本的に声を変える、時折そのままのままな事もあるが基本的に少々高めな声から低く渋さのある男の声へと変化する。その時には必ずと言って良いほどに普段は見せる事はない姿を見せる。相手を煽ったり馬鹿にしたりする言動などまさにそれだ。

 

「後なんていうか……轟君の時も思ったんですけど妙に僕たちを育てようとしている感じが」

「それは私も感じ取ったよ。しかもその時も妙に戦闘慣れしているし如何すれば相手の奥にある限界を引き出せるかも心得ているような節があった」

 

焦凍の時なんて正しくそれが顕著となっていたと言っても過言ではない。内に潜む黒い感情を全て吐き出させる為に進んで悪役を演じ、結果として次のステージへと上げるための手段を尽くしていた。そしてそれが叶った時などは自分の事のように喜びを露わにし、それこそが君の変身だ!!と大声さえも上げていた。あの時の声は彼の素の物、それを見てオールマイトは星辰は個性を使っている時は二重人格に近い状態にあるのではと推理している。

 

「緑谷少年、君はこれから如何するべきか解っているかい?」

「勿論ですオールマイト、僕は石動君のためにももっともっと鍛えなきゃいけない。フルトランスを完璧に使いこなせるようにならないと石動君に申し訳ないですもんね」

「―――GOODNESS!!!」

 

瞬時にオールマイトはマッスルフォームになってその筋骨隆々な姿で緑谷の肩を力強く叩いた。

 

「正しくそれだよ、君はもっともっと強くなれるんだ!!その為にももっともっとだ!!」

「はいっオールマイト!!」

 

師として、弟子の成長は酷く嬉しかった。自分がそこに導いて上げられなかったという残念さはあるがそんな事はどうでも良くなる位には大きな進歩だった。これからの平和の象徴―――彼の成長が益々楽しみになってきてしまった。そして、緑谷にその為の研究として他の試合を見てくるように促すと慌しく走り出していく姿に笑みを作る……が、姿が見えなくなってきた頃にオールマイトはトゥルーフォームに戻りながらも眉を顰めていた。

 

「確かに石動少年の為にもそれは必要だと思う、だが何だこの違和感は……何故私は緑谷少年とのあの試合に危機感を覚えたんだ……?」

 

結局言葉にする事が出来なかった、友人として慕っている顔をしているあの顔を曇らせたくはなかった。根拠も何もない、唯の自分の直感だけで言える訳も無い。彼に、石動 星辰に自分の宿敵と近い何かを感じたなどと。

 

「きっと、そうだ彼の演技力がいいからだ。相手にそう思わせてしまうほどのものがあるんだ、それはそれでヒーローとしては非常に素晴らしい才だ。ならば私はそれをもっと正しい方向に導けばいいんだ。よし、家に帰ったら子どもの才能の導き方の本を読もう」

 

―――だがオールマイトは知らなかった。その直感は極めて正確に的の中心を射抜いていた事を。彼は星々を滅ぼす災厄を封じ込めている禁忌の箱(パンドラボックス)である事を。

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