続くは準決勝第一試合、飯田 天哉との戦いとなった星辰。スピード自慢の飯田にどのように立ち回るか、色々考えていた。
「うおおおおおおおおっ!!!」
「まだ、まだまだまだ遅すぎる!!」
「うわぁぁぁぁ!!?」
バトルフィールドを限界まで使って加速しながらの蹴りなどをメインに据えて攻撃を繰り出してくる飯田。以前の個性把握テストで50m走で負けてしまった時の借りを返すためにとかなり張り切っており、十全に加速してからの一撃はかなりの威力がある。だが、一撃受ければ即座に対応出来る。
「如何したお前ならもっとギアを上げられる筈だが」
「クッ……矢張りカーブを意識するとギアを上げられない……!!」
ガチバトルトーナメントのバトルフィールドはそれなりの広さはあるが、高機動戦を得意とする飯田からすれば広くはなく寧ろ狭さを感じてしまう広さ。切りかえしやカーブの事を考えるとスピードの出し過ぎは厳禁―――故にこれを切るしかない。
「行くぞっ……」
そう言いながら飯田はクラウチングスタートのような態勢を取った。その時に、同時に彼の脚にあるマフラーから唸るような音が響いてきた。あれこそ飯田の切り札とも言える技、本人曰く間違った使用法のレシプロバースト。騎馬戦でもそれを使って見事な機動戦を見せ付けていた、このままでは勝てないと飯田は賭けに出る事にしたのだろう。それを見て星辰は何処か笑いながら首を鳴らした。
「レシプロバーストか、それで俺に勝てると良いなぁ」
「勝つさ、その為にこれを使うんだ!!」
「―――フフフッそう言う意気込みは嫌いじゃねえぞ、いいだろうそれに付き合ってやるよ……10秒間だけな」
飯田を真似るかのように半身を引きながら態勢を整えると全身に赤いオーラのような物を纏って行く、それがどんな結果になるのかと皆が思う中で飯田は遂にそれを発動させた。
「レシプロォ……バースト!!!」
マフラーから青い炎を噴出させながら一気に加速する。加速距離無ければ決して至れない速度まで加速した飯田はそのまま星辰へと蹴りを繰り出す―――がそれを意図も容易く身を屈めて回避される。
「(流石に楽にはいかないか、だがこの10秒で絶対に蹴りを―――)」
「着けられると良いなぁ!!」
「なっ!?」
回避されたのでバックステップで距離を少し取ったのだが、あっという間に星辰はその距離を詰めて来たのだ。時間制限はあるが距離を離さなければと走り出すが星辰はピッタリと追いかけて来る。
「クッ振り切れないなんて……!!」
「ハッハァ!!いいスピードだ、だが今のマフラーじゃあ限界が近いようだな!!」
「くっ!!ならば―――!!」
逃げても追いかけられる、ならばと一気に停止してからの飛び蹴りを繰り出すが十字受けで防御される。あと5秒、もう時間がないと焦りが出て来るが決死の連続攻撃を仕掛けていく。
「うおおおおおおおおお!!!!レシプロォォォォ!!!!」
屈んでからの飛び回し蹴りを回避されるが、それは織り込み済み。空ぶった脚のマフラーから限界まで力を出力する、それによって飯田は超高速回転しまるで竜巻のようになっていく。周囲の空気を飲み込むほどの巨大な渦を作り出しながらも回転で得た莫大な遠心力をそのまま蹴りのスピードと威力に転化して必殺の一撃とする!!
「エクステンドォ!!!」
「速い!!」
流石の星辰も回避が間に合わずにそれをまともに受けてしまう。肩へと直撃したその一撃の衝撃はステージ全体へと拡散していく程に強力だった。取った!!と確実に飯田は勝利を確信した―――が、何かが自分の足を掴んだ。
「良い攻撃だったが……詰めが甘かったな」
「なっ無傷!!?」
星辰だった。その手が自分の足を掴むとそのまま振り上げられて大地へと叩きつけられてしまった。
「何故……!!」
「如何やら相当焦ってたみたいだな、回転の途中でお前さんのレシプロバーストは終わりを告げていた。自分の中でリズムの管理が御留守になってたって事だ」
「それで、威力が下がってしまったのか……!!」
レシプロバーストにもついて来る星辰、それによって煽られた事で集中力が乱されて焦ってしまった。それによって攻め時を見失って制限時間の終わりを見誤ってしまった。
「さて、お前に付き合ってやるのはもう終わりだ」
「てやぁぁぁ!!!」
「ぐぁっ……!!!」
正拳突きが飯田の腹部を捉えると凄まじい勢いで場外へと弾き飛ばされていってしまった。そのまま飯田は場外認定を受けて敗北する事になって勝者となった星辰はそのまま控室へと戻るのであった。変身を解除した時に身体が揺れて倒れそうになるが、テーブルに手を付いて身体を支える。
「……こりゃ時間切れになって無かったら少し危なかったかもな」
飯田のレシプロバーストの対策としてメナスラッシュアーム・レッグの機能で運動能力・速度を大幅に引き上げて対抗するという作戦は成功した。だが流石に引き上げ過ぎてしまったせいか身体に反動が来てしまっている。そこにレシプロエクステンド、思った以上のダメージが蓄積していたらしい。
『あの眼鏡も中々に悪くなかったな、ハザードレベルもあと少しって所か。覚醒の時は近いな』
「(お前、ンな事考えてたのかよ……)」
『良いじゃねえかこういう楽しみを見つけてもよ』
勝手にしろ、と言いたい所なのだが何せエボルトのする事だから無意識的に警戒が先に出てしまうのである。実際ハザードレベル云々もビルド本編では全て自分の為だったわけなのだから……。
『相棒のハザードレベルも順調に上がってるからなぁ、フェーズ4まであっという間かもな』
「(嬉しいような、嬉しくないような……)」
フェーズ4、仮面ライダーエボルの変身の第四形態にして完全体とも呼ばれる形態。この形態迄来るとエボルは正しく無双の一言にまでなる、そこに至るまでまだ必要な事はあるのだが……それでもそれが近いと言われると本当に複雑な気持ちになってくる。
『んじゃテンションが上がる話題でもしてやるよ―――今の相棒なら自分のボトルを作る事が出来るぜ』
「俺の、ボトル……?」
思わず声に出てしまった、控室には自分一人しかいないがそれでも驚きだった。一体何を言っているのかと思っているとエボルトはそのまま言葉を続けて来た。
『俺は言うなれば相棒の記憶の覚醒と共にこの身体、石動 星辰という肉体で覚醒した。だったら元々の身体の個性はどうなったんだろうなぁ?』
「―――俺には元々の個性がある?」
『クククッまあ俺が入ったせいでその個性は塗り潰されたに近いが……今の相棒のハザードレベルならそれをエボルボトルとして形にする事は出来るだろうなぁ』
ハザードレベル、かつて自分が挑戦したエボルボトル作成の失敗。その原因がハザードレベルだとすればフェーズを進めている今ならきっと出来ると断言された、信用性はいまいちだが、こう言った事で嘘を吐くタイプではない事を星辰は良く知っている。
『今度はお前自身でフェーズを進めてみろ、フェーズ3……その扉をな』
「フェーズ……っ!!!」
その言葉に導かれるように星辰は自分の中に腕を突っ込んだ。控室に生々しく痛々しい音が木霊していく中、激痛の中でもがきながらも星辰は必死に自分の元々の個性を探して行く。
「がぁぁぁぁっ……ぁぁっ、あああああああっ……!!!!」
『ほらもうちょい奥だ、さあ俺が塗り潰す前の個性を形にしてみろ』
「ッァァァァァァ!!!!!」
声を振り切るように思いっ切り腕を引き抜いた、その時に地面に自らの血が四散した。やり方が下手なせいだ、とエボルトが軽く鼻で笑うが同時に愉悦に満ちた声でも笑った。
『ハハハハハッ!!!流石だな相棒、それがお前のボトルだ』
「俺の、ボトル……」
『そうだ、オリジンエボルボトルとも言うべきかな!!兎も角祝福だ、さあフェーズ3の始まりだ!!』
手の中にあったボトル、それを見て星辰は何処か震えるような喜びが身体を突き抜けて行った。そして同時に思った、これは紛れもなく自分の力だと。オリジンエボルボトルとはよく言った物だ。
「良いだろう、エボルト……お前の企み、少し乗ってやる。だが覚えとけよ、俺は俺だ」
『分かってる分かってるさ相棒。俺だってウルトラニキに消されたくないからな、少しは信用しろって』
何処か、自分に寄り掛かって来るようなエボルトの姿が見えた気がした。だが、兎も角これを使う決心を自分はする。エボルトを抑える為にも、そして自分が目指すヒーローになる為にも……このボトルは必要なんだと直感出来た。
『……こりゃ変質してやがるな……個性と俺の遺伝子が反応でもしたか?思った以上のボトルが出て来たな』
煽ったエボルトは何処か驚きを持った星辰の作り出したエボルボトルを見ていた。元々あった個性とはまた何か違う物になっていた、いや本質的には同じだろうが……想像以上の力を感じる。
『さてどうなるのか、俺も楽しみだな』
そんな風に笑うエボルトの視線の先には深い碧色をしたボトルがあった。