『お~お~良い殺気出しやがるな』
普段ならば苛立ちと怒りを抱きそうになるエボルトの軽口に今ばかりは感謝したくなった自分を殺したくなった。それは自分の不甲斐無さを呪っての事だ、フェーズを進めることが出来た事で成長出来たと勘違いをしていたんだ、何も成長していない。エボルとしては前に進んでいたかもしれないが、ヒーローとしては一歩も前に進めていなかった。
「動けるか!?」
「ごめん、動けないんだ……多分ヒーロー殺しの個性だ……!!」
背後には這いつくばるようになったまま動かない緑谷、いや本人曰く動けないとの事。そして他にも重症のプロヒーローに……飯田の姿があった、考えたくはなかったが自分の思っていたことが当たってしまって少しばかり嫌な気分になるがすぐに切り替える。
「通りすがりの仮面ライダー、だと……?だったらさっさと通り過ぎる事だな、今なら見逃してやる」
「フン、反応ありがとさん!!だけどなぁ―――テメェ人のダチに手出しといてハイサヨナラ出来ると思ってんのか!!?」
忠告に対して強い言葉で持って言い返す、そんな姿に動けなくなっている飯田はその背中を見つめながらも思わず言ってしまった。
「石動、君まで……如何して……!?駄目だ、そいつだけは僕が……!!」
「一つだけ言ってやるぜ飯田―――今のお前はインゲニウムでも無ければヒーローでもない」
「っ―――!!」
拳を強く握りこみながら星辰は言った、意図的に声をエボルトの物に変えながら恐怖を隠すようにしているとステインが鋭い瞳を投げかけてくる。
「ならば貴様はどうする、俺はそいつを殺さなければならない義務がある。向かってくるのならば―――消すのみ」
「消せるかねぇ~……やってみろヒーロー殺し」
絶対に引かない事を表す星辰、それに対してステインは―――ため息のような呼吸をすると刹那、ナイフを投げてきた。それを腕で砕く、だが直後にステインは一気に距離を詰めてきて日本刀で斬りかかってくるがそれをスチームブレードで受け止める。が―――
『下!!』
「うおっ!!?」
咄嗟に足を上げる、そこにはシューズの先端から鋭利な刃が突き出ながらも自分を貫こうとしてきた。それをギリギリの所で受け止める、まるでゲームのコンボを連想するような流れるような動作に星辰は思わず感嘆する。伊達にヒーロー殺しとは呼ばれていない、膨大な戦闘経験から相手の行動を読みながらも常に数手を張り巡らせている。
「ハァ……お前も悪くない、だが不可解だ」
「ッ……ラァ!!!」
受け止めた蹴りをそのまま跳ね除けるかのように蹴り上げるとその勢いを逆に使ってステインは距離を取りながらも刃を此方へとむけてくる。
「お前は明らかに俺の動きに着いて来れていなかった、いや着いて来れるだけの物は持っているがそれを操るだけの経験が圧倒的に不足しているな。だが先程の一撃は反応した、まるでお前の中にもう一人のお前がいるようだ」
「(―――なんて鋭い……)」
「故に問う、ヒーロー志望の仮面ライダーとやら」
そう言いながらもステインは一気に距離を詰めた、しかも唯のダッシュではない。瞬時に姿勢を低くしてから跳躍を織り交ぜてて一瞬だが、相手に自分が消えたように錯覚させるような動きをした。それに気を取られた星辰は目の前で刃を振りかぶったステインに反応しきれなかったが、エボルトが支配権をとって刀を白刃取りする。
「それは貴様の本当の力か、貴様のその力に踊らされているだけではないのか。そして貴様はその力で何を為す、何になる!?」
「俺は―――」
その問いかけはこれまで様々な言葉をかけられて来たが、どんなものよりも重く鋭い物だった。この力は本当に自分のものなのか、エボルトという存在がいるからこそ使えている力ではないのか、そして自分は……エボルトの操り人形になっているのではないか?そんな考えが頭の中を巡っていく。
「ダメだ、石動君……そんな話を、そんな奴の言葉を聞く必要なんて……!!」
「貴様の言葉程ではない」
「石動、君……!!」
「ヌゥゥゥゥラァ!!!」
白刃取りした日本刀をそのまま真横へと向けさせながらも手首を軽く捻ってそのまま刃を粉砕する、即座に日本刀を捨てながらも新たな剣を抜刀しながらもステインは鋭い視線を投げ続ける。
「俺は社会を正す。この世界に蔓延る紛い物の英雄を消す、ヒーローとは偉業を成した者へと送られる称号!!そうでなければならない、だが今の社会はなんだ―――多過ぎるんだよ、拝金主義者の贋作が……!!!」
力強く、訴えかけるようなステインの主張に思わず星辰は聞き入った。そうだ、ヒーローとはそうあるべき物だと自然とそう思ったのだ、超常が現実となったからなんて言い訳は通用しない。寧ろ現実になったからこそそうでなければならない……その言葉を聞いた緑谷はオールマイトから言われた言葉を同時に思い出した。
―――ヒーローってのは本来奉仕活動!!
目立ち、自らの名前を売ることが目的となっているヒーローが多いというのは事実だしその主張も分かる。それは飯田も同じだ、だがそれ以上に飯田にはその言葉は受け入れられない。彼は敬愛する兄をヒーロー殺しに再起不能されている、ヒーローとして憧れていた兄を。
「誰がやらなければならないのならば俺が執行する、俺が血に染める。痛みをもって解らせてやる、ヒーローを正しき姿に戻す為に」
例え、個性を使うこともなく彼は人を縛ることができた。言葉の鎖、意味の重さ、ヒーローを目指すものとして、ヒーローを目指すものにとってそれはまんべんなく全身を縛る鎖となっていく。理解出来る、解ってしまう、だからこそ心の何処かでそれに共感する……それは星辰も同じだった。
「……俺が好きなヒーローが言ってた。見返りを期待したら、それは"正義"とは言わない。だから今社会に溢れてるヒーローの多くの行いのそれが正義じゃないって思った」
「石動君……!?」
「君は、こいつを肯定するのか!!?」
「じゃあ飯田君、君は否定出来るのか」
何処か疲れている、いや達観したような星辰の言葉に飯田は反論出来なかった。星辰は知っている、
「ステイン、貴方から見れば俺はチグハグな存在なんだろうな……それは事実だ、俺の力は異質だ。破壊しか出来ない悪というに相応しい力だ……」
「……ならばなぜ貴様はヒーローを志す」
興味深かった、目の前の男が。何故ならば星辰は自分の主張を一番理解していると言ってもいいからだ、それに気を許した訳でもない。ただ興味を持った。それを向けると星辰は震えとともに恐怖を飲み込むと変身を解除して素顔を見せた。
「俺だってなりたかったんだ、あの人みたいに、
「お前にとって完璧な英雄か」
言葉に中に秘められている感情はステインがオールマイトに抱いているものに非常に近しい、酷く似ている。成程だから興味を持ったのかと自分でも納得した。
「でもその人達だって完璧じゃなかった、苦しんで、迷って、時には仲間とだって戦ってきた。そうしながら足掻きながら前に進んでいった、それはどうしてか―――あの人達は覚悟してたからだ。その覚悟に準じて戦ったからだ」
「ならば、貴様はその覚悟があるのか」
「―――無いさ、覚悟もなければ俺は自分の事を悪とすら思ってる、正しく偽善者だ。でも……」
偽善者と自らを罵りながらも、自らの力を―――込めた。
「今の俺はまだヒーローでもなければヴィランでもない、でもそんな俺でも……守りたい人がいる、一緒に居たい友達がいる、そんな細やかな願いを守る為になら……俺は戦える!!俺はその思いで……強い自分をビルドする!!!」
そう叫びながらレバーを回す、本来ならば隙だらけ、絶好の攻撃チャンスなのにも拘らずステインは攻撃しなかった。それどころか……口角を歪め、瞳を光を灯して笑っていた。
「未熟、余りにも未熟な言葉だ。だが……悪くない答えだ、お前が生きるに値するかこれから判断してやろう……」
「俺は―――仮面ライダーになる!!変身!!!」
「俺は仮面ライダー、仮面ライダーエボル!!」
少し、前に進めた星辰。だが、ステインに勝つ事は出来るのか?