「ハァッ……仮面ライダーエボル……と言ったか」
「ああそうだ、仮面ライダー!!ずっと昔から、人々の笑顔と平和のために戦う戦士の名だ!!俺はその名を継承する、自分のモノにする、俺は―――仮面ライダーだ!!!」
叫ぶ、叫びながら目の前に手刀を振り下ろした。何の飛び道具も持っていないがステインは即座に回避を選択し飛び退きながらビルの外壁の配管を掴んで身を支えて―――視た。直後、自分が居た所を通り過ぎたのは爆風じみた真空刃、オールマイトを始めとして圧倒的な身体能力を持つヒーローはそれを武器にする者はいる。故にステインは即座にそれを見抜いた。
「素晴らしい威力だが、威力があり過ぎるな。矢張り未熟か」
「如何かなぁ!!」
笑いながら星辰は両手の人差し、中、薬指を親指で抑えた。そして小指を立てた、まるで照準器の代わりにするように。それを視た瞬間にステインはその場から飛び退く、直後に先程までの外壁の合計6つの穴が出現した。今度は片手で狙いを定め、中指を弾いた。
「指に絞って威力を抑える、良い判断だ!!」
「くそ速い!!」
咄嗟の行動だが、あの体育祭の爆豪との戦いで考えた。エボルダイナソーは強すぎる、ヴィランの討伐にはいいが確保にはパワーがあり過ぎる。唯のパンチで外壁を深々と抉るのだ。ならば如何する、腕から手、手から指とシンプルに考えて加える力を抑える手段を考えたのが所謂デコピンによる指でっぽう。これによってホークガトリンガーを態々作り出す事なく中遠距離に対応出来る。
「ッ!!!」
「ハァッ!!」
その場で高速回転、投げつけられたナイフを全て弾く―――が、ステインは素早く外壁を登ると回転の中心部の真上を取って一気に日本刀を構えて突き刺そうとする。
「お前も、悪くない!!」
「石動君!!」
「させるかぁぁぁ!!!」
それを防いだのはステインのように外壁を駆け抜けるように疾駆した緑谷だった。先程まで身動きが取れなかった筈の彼が今までと同じように駆け抜けて行っている。
「緑谷君動けるの!?」
「なんか、急に動けるようになったぁ!!」
「時間制限か!!」
「緑谷―――そいつ離せ!!」
聞こえてきた声に従うようにステインを投げ捨てようにしながら自分は空高く跳躍するとそこへ赤い炎が放射されて来た、それはステインの身体を焼いて行くが即座に壁を連続で蹴って炎から逃れて行く。
「……新手か」
「炎って事は……と、轟君!!?」
「緑谷、こう言うのはもっと詳しく書け。数秒考えちまった、まあそんな暇なかったんだろうけどな……星辰、お前は大丈夫か?」
「こっちは問題ない」
緑谷の位置情報を見て駆けつけて来てくれた焦凍、焦凍は倒れている飯田やプロヒーローのネイティブを見ると即座に氷を器用に作り出すと自分の側へと滑らせて避難させる。氷の扱いはお手の物な彼ならではの避難方法だ。
「ヒーロー殺しの個性、多分だけど血を経口摂取で取り込んで動きを奪うんだ。血液の量、人数、血液型かによって時間が異なるんだ」
「血液型……ハァ、当たりだ」
自分の個性を言い当てた緑谷に対してステインは笑った。それは将来有望だと判断した子供の素質を見て自分の考えは間違ってなかった事への喜びか、それともこういう子供こそ自分が望むヒーローになる存在だという笑いか。
「個性、分かった所でどうにもならないけどね……あいつ、とんでもなく強い……!!!」
「だろうな……俺は少ししか見てねぇけどあの身のこなしは異常だ。常に戦いの中に置いてなきゃ絶対に身に付かない類の物……磨き上げ続けた殺人戦闘術だな。俺とお前で二人を担いで逃げた方が良いかもしれねぇな……」
「如何して……そこまでして、僕を、僕の為に……」
ゆっくり、ゆっくりと飯田が立ち上がった。ステインの個性、凝血による呪縛が解除された。思わず疑問と疑念を口にしながらフラフラしながら立ち上がった。だがその瞳には確りと芯が通った信念が宿っていた。そうだ、目の前で変身して見せた星辰のように―――
―――俺はその思いで……強い自分をビルドする!!!
今此処で、強い自分になる……!!
「自分が情けない、僕は……俺は……もう目の前で誰かの血を流させる事を許さない……!!」
「飯田君……!!」
「フンッ星辰、お前また誰かを導いたな」
それを見たステインはそれを吐き捨てた。
「感化され、取り繕おうと無駄だ。人間の本質は変わらない、貴様は復讐という私怨に囚われ優先させた贋物だ。
飯田が自分をヒーローとしてではなく、兄の敵として来た復讐者である事を身を持って体験している。目の前で傷ついているネイティブを無視して自らを狙った、故に飯田の言葉は何も響かない、粛清の対象としてしかみない、ヒーローを汚すガンとして排除するだけだと刀を構える。
「時代錯誤の原理主義者が……飯田、人殺しの理屈に耳貸すな」
「いや、俺はヒーローを名乗る資格はない―――ああない、だから俺は此処で折れたくない……此処で折れたらインゲニウムが死んでしまう……!!」
「論外……!!」
「そうでも、ないだろう!!!」
飯田の言葉など、既に贋物として認定し聞く価値の無い物として処理しているステインに星辰が向かう。拳を躱しながら刃が身体へと当たるが―――
「(この手応え、なんだ!?)」
エボルダイナソーのスーツを切り裂く事が出来ない、インパクトの瞬間に遮断フィールドを起動して攻撃を弾いた。そしてその一瞬の隙を星辰は見逃さずにステインの脚を掴んだ。
「誰かの為に戦える、誰かの遺志を継ぐ、それだって立派な―――変身っだぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐぁぁぁぁぁっっ!!」
星辰はそのまま、力任せにステインをぶん回す。ビルの外壁にステインは激突し外壁を抉るようにしながらもステインはそのまま空中へと放り投げられた、ビルの外壁に腕も脚も届かない中空へと舞い上がった。
「決めろぉ!!!」
「飯田君、轟君!!」
「ああ!!」
「行くぞ!!」
「ワン・フォー・オール……フルトランスカウル!!!」
「レシプロ……エクステンドォ!!!」
「今度こそ、決める!!」
全身に光を纏いながら跳びあがる緑谷、両脚のマフラーから炎を噴き出しながら急加速する飯田、氷の発射台を作り出しながらもそこを炎を推進力にしながら飛び立つ焦凍。そして向かって行く三人はステインの上を取った、そして―――
「「「いっけぇぇぇぇ!!!!」」」
三人揃って、向かって行く姿は―――星辰が憧れた英雄と瓜二つだった。手を取り合い、共に平和の為に戦う戦士達が放つ最強の合体必殺技。それが炸裂する様を見た星辰は心を震わせながら改めて、それに憧れた。
「仮面ライダー……俺の、俺の永遠のヒーロー……」
『成れたらいいな、その憧れにな……そう、仮面ライダーにな……』
ヒーロー殺しとの戦いにおいて、途中からエボルトは一切の手を貸さなくなっていた。全て、星辰だけの事だった。それは掲示板で彼の成長に繋がると判断したからか、それとも単純に面倒だったのか……それとも……星辰の夢を聞いて興が覚めたのか。
『ハザードレベルも順調に上がってる、そろそろ準備をしておくか……』
エボルトは星辰の身体の中で何かを弄っていた、それは……無への誘い、終末を呼ぶ、破滅への引き金。
『俺も仮面ライダーだが違うからな。そしてお前も違う、お前は―――兵器としてのライダーシステムの仮面ライダーだ』