47スレ
雄英は通常の高校と比べるとハードである。雄英は平日だけではなく土曜日にも授業がある。これだけでも他の高校と比べるときついと感じる生徒は多い事だろう平日は7時限まで存在している上に土曜日も6時限だが授業もある。相澤の言葉を借りるのならば、絶えず試練が与えられていく、これもその一つに含まれているのかもしれない。そしてやってきた日曜日。
「あ~もう直ぐかな~まだかな~」
「何ウキウキしてんだよ父さん、なんか新しい調理器具でも注文したのか?」
カフェ nascitaのシェフでもある星辰は何やらそわそわとしている父を見て首を傾げた。
「だって……今日は星辰のお友達が来るんだろ!?変な風に見られないようにキッチリ決めたからな!!」
「ああ、珍しく自分で早起きして顔洗ってると思ったら……」
「まあまあそう言わないの、アンタ今まで一回も友達を連れて来た事無かったじゃん?お父さんってば虐められてるんじゃないかって凄い心配してたんだから」
「友達連れて来ない=虐めっていうのも随分な話だと思うけどなぁ……」
記憶が戻る前の自分は物静かで大人しい、休み時間には一人机で本を読んでいたり図書室に行ったりするタイプだったので友達を連れて来た事が無かった。故か父は父なりに心配していたらしい。
「んでどんな子が来るの?教えなさいよこのこの~」
「ウッザ……」
美空も美空で姉として弟が友達を連れて来る事に強い喜びを抱いている。体育祭の一件で目立っていたが、それはそれで心配になっていた。雄英でも上手くやれているのか、そう思っていたら数日前に友達を連れてきて勉強会をすると言われたのだから驚いたものだ。そんな事をしている開店前のnascitaの扉をノックする音が聞こえて来た。それに来た!?と反応する父と姉だが、それを押しのけて星辰が対応する。
「いらっしゃい皆」
「やっほ~石動~!!」
「お邪魔するわね石動ちゃん」
「お、お邪魔しま~す」
「失礼する」
本日やって来たのは芦戸、蛙吹、耳郎、そして常闇。常闇は後からの入りだが、不安な所もあるので是非と言ってきたので受け入れる事にした。精神的には女子だらけの中で一人にならずにすんで良かったと……心から胸を撫で下ろした。
「ねっ石動あそこで|ω・`)チラって感じでじっと見てるのって……」
「ああ、父さんと姉さん。何か俺が友達連れて来た事に感動してるんだって」
やめてくれと言ったのになんでああいう事をするのか……兎も角4人を伴って自分の部屋へと通す。
「悪いな、父さんと姉さんが」
「良いのよ別に。それよりも石動ちゃんってお友達を連れて来た事が無かったの?」
「まあね。雄英に入る前までは典型的なボッチだったから」
「え~なんか想像出来ないんだけど!?」
「うむ、同じく」
戦闘中は基本的にエボルトの声にしていたり社交的な一面がよく出ているのでイメージが全く合わない、まあそれは記憶を取り戻したから精神的なゆとりが出来たからなのだが……。
「それにしても此処が石動の部屋なんだ~」
「別に面白いもんはないと思うよ」
「(ってそうじゃんここ星辰の部屋じゃん!?)」
何の躊躇もなく通されてしまったが、此処は星辰の部屋。一階部分はカフェであり二階と三階部分が自宅となっている、休憩室も一応一階にあるのだがそこまで広くないので5人が揃って勉強できる程のスペースはない。なので部屋として広い自分の部屋に通したのである。が、それに耳郎は緊張しまくりであった。そもそも同い年の異性の部屋に入った事もないので余計に緊張しっぱなし。
「あっでもこの音楽スタンド凄くない!?凄いスピーカー大きい!!」
「音楽は身体で聞きたいタイプでね」
「これは……バイクのライダー系雑誌か、そう言えば石動はバイク通学だったか」
「それ読んでいろいろ勉強中」
「ケロケロ、良いお部屋だと思うわよ石動ちゃん。ねっ耳郎ちゃん」
「えっ!?ああうん、そうだと思うよ」
咄嗟に振られたのでそう返すのが精一杯だった、ホントはもっと気の利いた返事をするべきだったのでは……と軽く落ち込む耳郎なのであった。
「皆~アイスコーヒーで良かったかな、持ってきたよ~お代わり自由だから好きに言ってね~」
「あっ有難う御座いま~す!!一回で良いからカフェで本格的な珈琲って飲んでみたかったんだよね~!!」
「父さん……さっさと置いて出てけ、居座ろうとすんな」
「あっバレた?いってぇ蹴らないであいたぁ!!」
茶目っ気たっぷりにテヘペロしてくる惣一、それにもしもエボルトがやってると思ったら想像以上にイラっと来たのでケツに強烈な一撃を加えて部屋から追い出しておく。
「い、いいのお父さんにあんな事……」
「良いんだよ、そもそも俺がやるって言っておいたのにやってんだから色々とアウト」
「まあいいじゃない、面白いお父さんで」
「そう言って貰えて何よりです……まあ取り敢えず、皆今日は勉強会頑張ろっか?」
そう声を掛けると皆はアイスコーヒーを手に取りながらお~!!と意気込む、仮にも期末が近いのだからそろそろ気合を入れて勉強をしなければ……赤点なんて取りたくないというのが学生の気持ちである。
「あっ折角だからなんか音楽掛けながらやろうよ~石動なんかノリがいい音楽ある?」
「あ~……ならこれとか?」
そんなこんなで勉強会が始まったのであった。尚、掛かったのはライダーの主題歌であった。
「あっこの曲凄い良い……これ何処の奴なの?」
「フフッ内緒♪」
そう言って内緒にするのであった。
「えっとこの数式どうやるんだっけ……」
「三奈ちゃん、そこは計算式は合ってるけど答えが違うわよ?」
「えっマジで!?」
「ムゥッ……この文法は……」
「そこはこうだよ、ホラッこうすると分かりやすい」
「成程、こうすれば……」
「あ、あの星辰ウチも良いかな」
「勿論どこどこ?」
互いが互いの苦手分野を補い、得意分野を教え合ったりしていくので勉強会としては非常に中身の充実したものとなっていった。
「は~い、nascita特製のランチメニューになりま~す。本日は特製煮込みハンバーグセットだよ」
「やった~凄い美味しそ~!!」
「本当に凄いわ……これも石動ちゃんが作ったの?」
「モチ、腕を振るわせて頂きましたん」
「これは……絶品を越えた超越品……!!」
「マジだ、マジでその位美味しい……!?」
昼食には星辰特製のランチメニューを提供し、美味しくお腹を満たしてから再び勉強。3時のおやつの時間には休憩として芦戸がお目当てだったスイーツ系を御馳走。常闇を含めて全員が笑顔であったことに星辰は最高の笑顔を作ったのであった。そして夕方……
「あ~もう凄い勉強した~……でも凄い集中出来た~!!」
「本当ね、凄い実りがあった一日だと思うわ」
すっかり日も暮れて来てオレンジ色の空が見えてきた時間帯。今回の勉強会はこの辺りで切り上げる事になった、勉強はあまり得意じゃないと言っていた芦戸もなんだかんだで中々の集中力を見せて、仕上げを見る為のラストの小テストではなかなかの点数を叩きだしていた。
「俺も随分と苦手な部分がマシになった。感謝するぞ石動」
「いいってそんなの、そうだ皆これ」
そう言いながら星辰はnascitaのネームが入った紙箱を差し出してくれる。
「中には俺特製のエクレアとシュークリームが入ってるから、家に帰って食べて糖分補給してね」
「えっ良いの!?」
「その代わり、是非今度はお客様として当店にお越しください♪」
友達へのお土産兼宣伝と言った所である、だがそれでもまさかお菓子を持たせてくれるなんて思いもしなかったのか、皆驚いているが直ぐに笑顔をになった。
「うん絶対に来る、マジで来るから」
「カフェもいい雰囲気だったもんね~今度A組の皆誘ってこよ~よ」
「名案だな」
「そうね、そうしましょう」
そんなやり取りをしつつも皆は笑顔で帰っていった、初めての友達を家に呼んでしかも自分の部屋での勉強会。色々と緊張したがとても楽しかった……と思いに浸っていると鍵を閉める前だったのか、扉が開いて耳郎が顔を出した。
「あ、あのさ……アタシさ、まだまだ不安な所あるから……また、教えて貰ってもいい、かな……?」
途中で戻って来たと思われる耳郎は何処か恥ずかし気にそう言ってきた。そんな彼女への返答は―――決まってる。
「勿論いいよ、好きな時にアプリで声かけてね」
そんな風に言ってくれる星辰の表情は本当に輝いているようだったと耳郎は感じた。そして耳と顔を赤くしながらも顔を伏せて有難うというのが精一杯だった。そしてそのまま駆け足で去って行ってしまった。
「約束、しちゃった……♪」
一人、帰り道を行く耳郎は思わずスキップをしてしまっていた。誰にも内緒で二人だけの勉強会が出来るかもしれない、と思うと本当にニヤケそうになる自分を抑えきれなくなる。
「これ、大事に食べよ……♪」
星辰から貰った紙箱を大事そうに抱える耳郎の姿は正しく恋する乙女なのであった。
『おうおう青春してるねぇ~……相棒、お前さんは期末試験に向けてなんかやらなくていいのかよ。実技もあんだろ?』
「あっそうだった……まあ、大丈夫だろ」
『そんなんで大丈夫なのかねぇ~……まあどうでもいいけどよ、久しぶりにボトルでも作ってみろ、鈍ってていざって時に適切なボトル作れませんでした、じゃ話になんねぇぞ』
「ったくうるさいな……お前に言われなくたってやってやるよ」
そう呟きつつも星辰は自室へと戻っていくのであった。だがその言葉も正論なので作るだけボトルを作るかと凝っていた肩を回すのであった。
『これで揃うな』
誰もいない星辰の中、精神世界とも言うべき所にエボルトはいた。そして自らの思惑通りに事が進んでいる事に低い笑いを浮かべていた。
『相棒、お前は心のどこかで油断してるだろうがそれじゃ無駄だぜ。エボルトリガーはこの世界でも作り出せる』
その表情は……星々を狩る一族、ブラッド族に相応しい邪悪で恐ろしい物だった。そしてエボルトは形になり始めているそれを手の中で遊ばせながら言った。
『パンドラボックスはこの世界にない、確かにないかもな……だが違うんだな、お前がパンドラボックスなんだよ。お前さえいれば俺は、いや俺とお前は完全になれる。ああ、今からその時が楽しみでしょうがないなぁ……クククッハハハハハハハ!!!!』