星狩りのヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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54スレ

「なぁ星辰、お前なんかあったのか?」

「んっ何よ突然藪からスティックに」

 

3日目。相変わらずの無限土魔獣という特訓を前にしても全く怯む事もなく戦い続けた星辰、寧ろ数日続けているという事もあってエボルの長時間変身にかなり適応しているのか以前よりも疲れが見えなくなってきている。そしてその日の夕食も星辰が追加メニューを作ると調理中の時、焦凍が声を掛けて来た。

 

「なんつうかさ、お前変わった気がする」

「そうかな、俺には全くそう言うつもりはないよ」

「普段のお前はそうだと思う、でも戦ってる時はすげぇ変わってるだろ」

 

焦凍も焦凍で特訓を行っているが、今日は偶然星辰が戦う所を見る機会があった。氷結と炎を交互に出して風呂の温度を一定にするという時に空を見上げた時に見えた。

 

『ハハハハッ!!如何したこの程度でしかないのかぁ!?』

 

「まあ、今の俺と比べたら随分と違うだろうな」

「別人の域で違うからな」

 

意識的に切り替えて戦う、そう言うのは珍しくないしプロにもそう言うのはいるが星辰の場合は特にそれが顕著。豹変というには変わり過ぎている。

 

「何だ、この声がそんなに気になるかぁ?」

「声っつうか立ち振る舞いだな、気になるのは普通のお前とは違い過ぎる」

「ハハハッ!!言ってくれるねぇまあそう言う事にしてるから俺の狙い通りなんだけどなぁ」

 

高らかに声を上げる星辰、その声の事をあまり知らないB組から驚きの声が漏れるがA組としては慣れているのでそこまで気にしない。精々声を変えている程度にしか……だが、焦凍はその中に違和感を感じ取った。

 

「お前の個性ってなんか不思議だよな」

「んっ~そう見えるか」

「ああ、見える」

「―――本音でもいいよ、お前の個性は可笑しいってさ」

「別にそう思ったことはねえぞ?」

 

B組の物間がその通りだよねぇ!!と言おうとした瞬間に拳藤の手刀が飛んできて強制的に黙らせた。流石にこういう話は煽ってはいけない事ぐらいは分かれと思う。

 

「受け入れようとしてるんだよ、俺の個性」

「もう受け入れてるじゃないのか」

「いや……俺の個性ってさ、使う度に頭にある事が浮かぶんだよ。それが嫌で俺はヒーローになりたいんだよ、つまり―――自分の為なんだよね」

「―――星辰?」

 

処理が終わった食材を持って竈へと移動していく姿はどことなく、何かを決意をしながらも何かを抱えているように映った。嘗ての自分とは違う何かを漂わせているとしか分からないが……

 

「だったらお前も変身しろよ、そう言う自分に」

「……ああ、するつもりだよ」

 

焦凍はそんな言葉を送る事しか出来なかったが、その時の彼の微笑みは嘘ではないと信じたい。

 

「(……顔、出すなってつったよな)」

『この位可愛いジョークだろう?変な事も言ってねぇんだしよ』

「(……まあいい、それと一つ聞かせろ)」

『なんだ』

 

薪に火を付けながら星辰はエボルトに言った。

 

「(―――今のハザードレベルは)」

『フフッやっぱりその話か、お前も大分―――近づいてきたな』

 

 

時計の針は、確実に動き出している。そしてその針は夜を指し示した時に―――変化は訪れる。

 

 

夕食も終わった頃の事、プッシーキャッツの面々は飴と鞭の飴の部分を用意してくれていた。それは

 

「という訳で肝試しの時間だよ!!」

 

クラス対抗で先にB組が脅かす側、A組が脅かされる側。二人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いた御札があるから、各自それを持って帰ることがルール。脅かす側は直接接触する事は原則禁止だが、個性を使用してでの脅かしはあり。なので普通のお化け屋敷よりもずっとバラエティ豊かで意外な恐怖が味わえるのかもしれない。

 

「それならさぁ……星辰、アンタのボトルをさ活用しない手、ないよねぇ?」

「……っ!!成程分かってますねぇ耳郎さん……フフフッ各種準備出来ますよぉ?」

 

と合宿の疲れもあるからか、耳郎の言葉に完全に悪乗りしてフルボトルをフル活用してでの事を決意するのであった。

 

「結構ノリノリなんだね石動君」

「イベントごとは好きだからね」

「アタシも大好き~!!」

 

と、星辰に軽く抱き着くようにしながらもテンションが爆上がりしていく芦戸。期末試験で赤点を取ってしまったが故にこの飴を只管に楽しみにしていたのだろう。

 

「肝を試す時間だ~!!」

「「「「おう、試すぜぇ!!!」」」

 

それは切島、瀬呂、上鳴、砂藤と言った赤点を取ってしまった全員に共通しているらしく非常にやる気満々で楽しみにしていた模様。辛い事が多い林間合宿だがこの肝試しは所謂飴なのだからある意味当然なのかもしれないが―――そこに相澤の捕縛布が彼らを拘束する。

 

「その前に、大変心苦しいのだが……補修連中はこれから俺と授業だ」

『嘘でしょ先生!!?』

「生憎マジだ。日中が疎かになってたのでこちらを削る」

『勘弁してぇぇぇぇッッ!!!!』

『試させてくれぇぇ!!!』

 

悲鳴混じりの声が徐々に遠くなっていく、自分も赤点を取っていたらああなっていたのかと思うと少しばかり恐ろしくなってくる。彼らを見送った後、今度は自分達が順番を決める事になった。

 

「あっウチとだね星辰」

「みたいだね耳郎さん、宜しく」

 

肝試しのトップバッター、そしてそのペアは耳郎だった。恐らく女子では一番気心が知れている相手で思わずホッと胸を撫で下ろしてしまった。そしてそのまま森の中へと入っていく。どんなものが待っているのか正直ワクワクしている自分もいた……が

 

「……」

「あ、あの大丈夫耳郎さん」

「ゴ、ゴメンウチ怖いの……ホントにやなの……」

 

普段のボーイッシュでクールな印象はどこへやら、身体中を震わせながらも必死に歩みを進めている彼女の姿があった。如何やらホラー系は本当に苦手らしく、肝試しなんて彼女にとって飴ではなく罰ゲームの域。

 

「ヒィッ!?なんか音したぁ……!?」

「あっウサギだ」

「何だウサギ……ヒィ今度は何ぃ!?」

「か、風だって……」

 

これは、最早見ている此方が気の毒な気持ちになるレベルの苦手加減だ。普通にしていれば何の気にも留めないような小さな音にも反応してしまっている、いや彼女の個性の関係上、聴力は他よりも優れているのだろう。それが余計に……という事なのかもしれない。

 

「あ~……それじゃあさ、こうしようか」

 

流石に目の前で怖がるを通り越して怯えている彼女を無視する事は絶対に出来ない、なので星辰はそっと耳郎の手を取るとそのまま指を絡めるようにして強く握った。それに一瞬、呆気に取られるが顔を上げて星辰を見ると青空のような澄んだ笑みを浮かべていた。

 

「俺がいるから大丈夫、いざって時はフルボトル使って驚かし返せばいいしさ」

「―――手ぇ……」

「あっゴメンいやだった?姉さんがこうしてあげたらいいって言ってたんだけど」

「い、いやじゃない、あったかくて凄いホッとして……」

 

寧ろ放したくない、そう思える程に暖かくて大きくて優しい手に深い安堵を覚えている。少しでも不安を感じて震えると握り込んでくれたおかげで恐怖心は和らいでいく。

 

 

いやああああああああああああああああああ!?!?お化けぇぇぇぇぇぇ!!?

「良い悲鳴出すなってあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っっっ!!?」

「ちょっ!?耳郎さん落ち着いて骨抜くんだからそれ心音流すのやめたげてよぉ!!」

 

いやだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?

「あっちょっと待って耳郎さんそのフルボトルはまずい!!?」

「えっ何、声が増幅されて―――みゃあああああああああああああああああああああああああ!!??」

 

「よ~うやく来たね~って……あららら……」

 

中間ポイントで待機していたラグドールはやっと来たペアに首を長くしていたが、それを見ると遅いよ~という言葉も完全に引っ込んだ。

 

「ヒックひぐっ……もうやだぁ……帰るぅ絶対に帰るぅぅっっ……」

「大丈夫だって、ほらラグドールさんもいるから中間点についたからさ、ネッ?」

「まだ半分もあるじゃん……やらぁ……」

 

完全に泣きじゃくってしまっている耳郎を背負って励ましている星辰がやってきた。本当に見ている方が痛々しく思える程の泣き具合だ。

 

「あらら~……ホラー系苦手な感じだったんだね、こりゃ悪い事しちゃったなぁ……」

「すいませんラグドールさん、ちょっと休憩させてあげて貰っても良いですかね?」

「こんな所やらぁ……」

 

と星辰の背中に張り付くようにして泣いている耳郎。完全に退行してしまっている……それだけ怖かったという事だろう、肝試し的にはB組大勝利案件かもしれないが流石にここまで来られると肝試しを企画した側として申し訳なく思える。

 

「あ~……それじゃあちょっと待ってね、これはペアが中間地点に来たら連絡して次のペアを進める感じだからさ。今連絡するから一緒に出ちゃおうか」

「その方がいいかもですね」

 

一先ず肝試しは一旦ストップして、彼女を安全に此処から出す事を考えようとしてラグドールがマンダレイに連絡を取ろうとするのだが……通信機からノイズが溢れ続ける。

 

「アニャ?可笑しいな、昨日メンテしたばっかりなのに……」

「あの、ラグドールなんか煙が―――って危ない後ろ!!?」

「ニャニィ!?」

 

背後から迫ってきたそれを星辰の言葉を受けてギリギリの所で回避する、だがそれを見て思考が凍り付いた。何故ならば……

 

「こいつは……!!?」

「アハッ♪みぃ~つけました、ステ様と戦ってた人ですね、結構好みのタイプです♪でも、血塗れになったらもっと素敵です♪」

 

そこにいたのは脳無を従えていた一人の少女がいた、それは明確な敵意を差し向けながら此方へと意識を向けていた。

 

「ヴィラン……!?」

「マジかよ、この状況で!?」




耳郎ちゃん、怖いのマジでいやらしいので、うんなんか、ごめんね……?
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