「うわっ何これ、状況も相まって凄い怖い!?」
「そう言いつつも余裕ですねラグドール!?」
状況は最悪にもほどがある、薄暗い森の中でヴィランと遭遇。此処にヴィランが居る事自体が可笑しいのに加えて奇妙なガスが森の奥から流れてきている、しかも目の前にはヴィランと思われる装備を付けた少女、そして脳無。
「何、あれっUSJの……!?」
「アハッ♪」
不気味に微笑んだその笑みには凶器が滲み出ている、いやそれ以上だ。隠すつもりのない狂気、それが平常だと言わんばかりの日常だったのが伺える。
「初めましてっステ様と戦ったヒーローさん♪私はトガ、渡我 被身子です。トガちゃんって呼んでください」
その少女は酷く愉しげに言った、愉快にも取れるような陽気さで挨拶をしながらも自分を見て来た。
『おいおいおい随分とやべぇのが出て来たな……ハハッこりゃ不味い状況だな』
「(同感だ……こういう時だけ意見が合うな)」
あの時と同じ、目の前にいるのはそれを想起させる。対オールマイトに準備されていた黒い脳無、それと酷く似ているそれが此方を見つめている。
「私達はヴィラン連合、開闢行動隊ですっ♪」
「ヴィラン連合……って!?」
「う、嘘っ……!?うっ……!!」
「ラグドールさん!?」
突然、ラグドールは口元を抑えて崩れ落ちるように膝をついた。猛烈な吐き気を覚えてしまったらしく、顔色が優れない。だが直に気持ちを立て直すと険しい顔を作りながら言った。
「あ、あの脳無……個性が、複数ある……!!しかも、あれはもう死んでいる人間……だけじゃない、色んな人の情報が一気に……!!」
「そこまで分かっちゃうんですね、凄いです!!」
「耳郎さん、ラグドールさんを!!」
「う、うん!!」
耳郎について貰うが、ラグドールは未だに顔色が優れない。当然だ、彼女は自らの
「知らない人もいますね、エボルさんのお友達ですか?」
「……だと言ったら?」
「その人―――刻んだら構ってくれますか?」
「したら殺す」
「―――アハッその顔好きですね♪」
思わず反射的に言葉が出て来た、即座に殺意で答えられる当たり自分も随分とあれなことを思い知って若干げんなりしている自分に呆れた。
『相棒、案外お前余裕?』
「(否定出来ん)」
「アタシの後ろに隠れて二人とも……!!絶対に、手を出させないから!!」
口元を拭いながらも立ち上がったラグドール、プロの誇りに賭けて絶対に手を出させない。傷一つ付けさせない、自分が戦闘に向いていない事も自覚しているし相手が保須やUSJに現れたヴィランである事も知っている、だけどやらなけばならない。何故ならば……ヒーローなのだから。その時に頭に中にある声が響いてくる。
『A組B組総員、プロヒーローイレイザー・ヘッドの名において戦闘を許可する!!』
「これってマンダレイの……!!」
「如何やら……俺達だけがやばいって訳じゃなさそうだ……!」
「みたいだね」
マンダレイのテレパスで聞こえてくる情報、戦闘許可は寧ろ不安を煽ってくる。他にもヴィランが居て手が足りないから自分の身は自分で守れという事を示すからだ。だけどこれで最低限度の守りを展開出来る、そう思った時にナイフが飛んできた。それは腕を掠めて鋭い痛みと共に血が流れだす。
「それじゃあ、始めましょうか♪」
「こいつ―――ッ!?」
「星辰!?」
その時、急に体が動かなくなった。全身が痺れるような痛みが襲いかかってくる。直後―――
「がっ!?まだ居やがったのか……!!」
真横から飛び出してきた脳無、それが首元を抑えるようにしながら星辰を木へと叩きつけた。脳無が2体、そして渡我 被身子というヴィランの計3人。絶望的な状況下に置かれていると思った時にトガが此方へと歩いてきた。
「頂きますね♪」
そう言いながら、渡我は肩に付けていた注射器のような物を無造作に星辰の脇腹へと突き刺した。
「がっ!?」
「チウチウ、チウチウ♪」
「アンタ星辰に何を―――っ!!?」
「行かせない気!?」
耳郎が伸ばしたプラグ、だがそれを黒い脳無が阻止する。異常な程に筋肉質でまるでオールマイトのようなそれが肉の壁となった。目的は間違いなくトガの護衛、このままでは不味いとラグドールも攻撃を仕掛ける。情報担当とも言える彼女だが虎と同じ戦闘術、キャット・コンバットを習得している身。故に近接戦闘ならばなんとか戦力にはなれる―――と思っていたが
「速いっ!?(やっぱりアタシ位じゃ戦力にもならない……!!)」
脳無の反応速度は異常の一言。同時に振るわれるの一撃もすさまじい破壊力、咄嗟に体をねじって身体を掠らせる程度に回避しても身体の奥にまでジンジンと衝撃が響いてくる。だけど何とかして星辰を助け出さなければ……!!
「ぐぅぅぅうわぁぁぁぁっ……!!好い加減に―――」
脳無に首元を抑えられ、木に押し付けられる星辰。その瞳はまだ折れず、赤く染まり出した。
「どけぇ!!」
繰り出した一撃は赤いオーラを纏いながら脳無の頭部を捉えた。痛覚もない筈の脳無はそれで力を緩めたりはしないが、エボルトが込めたオーラによってダメージが入り力が緩まった。その瞬間に木を蹴りながら脳無の拘束を抜け出しながらその顎に膝蹴りを喰らわせて吹き飛ばしながらもトガの注射針からも抜け出す。
「っ~……!!!ってぇなもう、こちとら注射は得意じゃねえ何時まで刺してんだ献血されてんじゃねぇんだよ俺は!!」
「大丈夫星辰!?」
「大丈夫だけど、ちょっと血を結構持ってかれたなこれ……」
前世で献血の経験があるが、その時の以上に血を持って行かれてる感じがする。あの時は200~300位だった気がするが……。
「500ミリって所ですかね、十分です♪」
「血を取って、何をする気……!?」
ラグドールが庇う中、恍惚し切った表情でトガは星辰の血が入った容器を眺めていた。そしてそれを月に翳しながら言った。
「私の個性は血液が居るんです、それで血を飲むとその人に変身出来るんです♪」
「変身って……それって星辰とおんなじ?」
「そうです、トガとエボルさんは同じなのです♪ですから、一緒になりたいなぁって思ったんです。だから―――飲みます♪」
そのまま、トガは迷う事もなく血を飲んだ。500ml入っていた容器の半分程度を一気飲み干した。そして直ぐに顔を紅潮させながらも歪んだ口角を更に歪ませていった。
「―――良い、良いのです……これ最高……ですぅ……!!」
突如、その身体に変化が起き始めて行った。まるで身体の制御が出来ていないかのように踊り狂った、同時に身体から赤と青の煙が抜け出すかのようにしながらも再度トガの身体へと潜り込んでいった。そして同時にその腰にある物が浮き出て来た。
「っ!?おいおいおいマジか!?」
『マジかあの女……俺の遺伝子を取り込んで個性を強化しやがったのか』
「っつう事は……!?」
「やっぱり、素敵です……♪」
そう言った時、トガの手には二つのボトルが握られていた。嘗て、物間がコピーした時とは異なる。個性をコピーするのではなく、エボルトの遺伝子を取り込んだ事で個性が強化されている。しかも……トガはこの世界の人間としてはハザードレベルがかなり高い部類。そして個性と遺伝子の相性、それらが合わさった結果―――
「冗談だろ……!?」
『あ~あ……こりゃ、流石の俺も予想外だ』
その音声を聞くまで完全に忘れていた。それを聞いた途端、トガは更に笑みを深くしながらレバーを回して行った。天狗巣状に広がるペインライドビルダー、それらがトガを包み込み、目元と口元しか見えないように覆い尽くした時に聞こえたのは……恍惚とした悦びの声。正しくエボルドライバーの変身に相応しい顔だった。
「こうでいいんですよね―――変身♪」
其処にいたのは凶器に染まった悪党の名を冠した仮面ライダーの姿、星辰も姿を見るまで完全に忘れてしまっていたモノ。だがまさかこんな事態になるなんて想像もしないだろう、したくもなかった。目の前でもう一人の仮面ライダーが姿を現した、文字通りの悪のライダー……ダークライダーとして。その名は―――
「マッド、ローグ……!!」
「マッドローグ……良い名前です、有難う御座います♪さあ戦いましょエボルさん、私もこの力を試したいのです♪」
ウキウキと手を叩きながら此方を見つめて来るマッドローグ、最悪すぎる状況に悪態をつきそうになるが戦うしかない。生き延びるために、耳郎を守る為にも―――!!!
「クソッ……!!ラグドール、さん……奴の相手は俺がします。だから逃げて下さい……!!」
「何言ってるの!?君一人置いて逃げろっていうの!?」
「貴方じゃあれに勝てない……貴方なら分かるでしょ!!?」
その言葉に唇を強くかむ、個性故に戦力差が余りにも絶望的過ぎるのが分かるのが辛い。そしてそれに唯一対抗出来るのが恐らく星辰だけというのも分かる。あの渡我 被身子が変身したあの姿も全く個性が分からない、唯一分かるのが彼女の個性が変身という血を摂取して相手と同じ姿になり……同じ力を発揮出来るようになるという物に変化している事だけ。そう、星辰と同じ力を使えるようになっている。
「でも星辰、アンタ一人で戦う気なの!?無茶だよ!?」
「無茶、かもね……脳無だけならともかく、マッドローグが相手となると……」
耳郎の言葉に苦々しい表情を作る星辰、先程の麻痺は未だに身体を蝕んでいる。エボルト曰く、個性由来の毒らしく時間経過による自然治癒しかないとの事。その状態でこの3人を倒せるかと言われたら……ぶっちゃけ微妙過ぎる。でもやるしかない。
「でも、俺一人の方が良い。ラグドールさんは彼女を連れて撤退、出来れば応援を呼んできてください」
「―――……分かった、直ぐ戻るから、無茶しちゃダメ!!」
「ラグドールさっ……!?」
何を言うのかと叫ぼうとした耳郎の首に手刀が落とされる、それによって意識を失った彼女を抱えてラグドールは駆け出して行く。自分達がいない方が彼は戦える、だからいない方がいい。プロとして歯痒い行為だが、これしか道がない事も分かっている。苦渋の決断をした彼女を脳無が追いかけようとするがその前に星辰が躍り出た。
「させるかよ!!変身!!」
変身しながらもビルダーを盾にしながら妨害する。そして変身が完了してエボルコブラの状態で脳無に蹴りを入れる。
「さあ望み通りになってやったぜ、存分に相手をしてやる……さあ掛かってきな!!!」
「アハッ!!それじゃあ行きますね、エボルさん♪」
状況と世界は、最悪の方向に突き進み始めた。その果てに何が待つのか……その未来は、闇に閉ざされていく。
トガちゃんマッドローグ、見参。ほら、蝙蝠って血を吸うじゃん。トガちゃんも血を吸うじゃん。ベストマッチじゃね?