「オール・フォー・ワン、皆は一人の為にってか。如何やらアンタは随分と貪欲らしいな」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
何処かも分からぬほどに暗い場所、僅かにモニターの光だけがその場所を頼り無さげに照らしているが……それに照らされて見える者は身体のあちこちからチューブを伸ばしている為か病人に身間違えそうになる、だがこの全身に伝わってくる感覚を味わえばそれを病人とはとても思えないだろう。オールマイトにも匹敵しそうなほどの屈強さすら感じそうなそれを纏った男……オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オール継承者たちが倒そうと目指す男。
「さて、君は完全体になりたいと言っていたね。その為の手段を提供すれば連合に入ると」
「まあな」
「それで、如何すれば完全体に至れる?」
「こいつだ」
そう言いながらエボルトは自らの身体の中に手を突っ込んだ、そしてその奥の奥、心臓から何かを分離させるとそれを手の中で改めて形にしてオール・フォー・ワンへと見せた。
「相棒の成長で此処までは形にする事が出来た。側だけだけどな」
「フム……完成の方法は分かるのかい、弔には時間さえ掛かるが出来ると言っていたが」
「単純だ、エネルギーを吸わせればいいだけの話だ」
それを聞いてオール・フォー・ワンは酷く興味深そうにそれを、いやエボルトを見つめていた。そのエボルトが完全体へと至らせるアイテムにも多分に興味を惹かれるがそれ以上にエボルト自身に興味を惹かれるという物だ。
「成程エネルギーか……君の口ぶりからして相当に大きなエネルギーらしいね」
「だから回収に苦労してんだ、そもそも相棒が簡単にあのお嬢ちゃんにやられると思ってるのか?」
「フフフフッ!!君も随分と悪い事を考えるものだ、トガ ヒミコの一撃をワザと受けたんだね」
「大正解。あれだけのエネルギーを逃がす手はないんでね」
はっきりした事を言ってしまえば、あの時に受けた毒を消す事は出来た。だが、目の前に現れたマッドローグというこの世界では得る事が出来ないと思っていたほどに自分に近しい高エネルギーを生み出す事が出来る存在。その必殺技が目の前にあったのだ、攻撃を受けるという選択肢しかないだろう。
「さて、エネルギーか……僕もエネルギーを生み出す個性は多く持っているからそれでまずは実験を始めよう」
「名前から察したが、多数の個性持ちか……そりゃ脳無なんて複数個性持ちのバケモンを作り出せる訳だ」
「頭の回転も速いようで何よりだよ」
互いが互いの事を一つずつ知っていく事に納得し次の段階へと進んでいこうとしている時―――モニターが落ちて辺りが暗くなった時、凄まじい衝撃が襲いかかってきた、それは建物が倒壊するかのようなとんでもない衝撃音だった。
「矢張り来たね……此方にいて正解だった」
「正解ぃ?」
「ああ、悪いけどそれを取って貰ってもいいかな」
「これか?」
エボルトは頼まれたとおりに傍にあったマスクを取って投げ渡した。身体からチューブなどを抜くと投げられたマスク……生命維持装置が組み込まれているそれを装着すると立ち上がって身体を伸ばした。
「済まないねエボルト、少し待って貰ってもいいかな。野暮な連中の対処をしてくる」
「俺がやってもいいんだぜ?」
「フフフッそう言って僕に対する貸しを作っておくつもりだろう?借金はあまり好きでなくてね」
「チッ鋭いこって」
手を適当に降って送り出した後にエボルトはコブラエボルボトルを使い視野を強化した、暗い闇の中に何があるのかを確認する為に。だが大したものはない、生命維持装置にコンピューターなどの機械類。大したものは……と思った時に視界の先、オール・フォー・ワンが歩いていった先に見えたものがあった。それは脳無だ、脳無の格納庫というべきものがあった。そしてそこにいるヒーロー。
「ヒーローも随分と動いてるらしいな……俺がいるって事を想定してか、いやワープで移動してんだ、本命は死柄木の方の筈……つう事はこっちは後詰か」
瞬時に様々な事が脳裏を巡っていく、同時に周囲が凄まじい爆風で消し飛んでいく。それもエネルギーとしては優れている、故にエボルトリガーを翳す。そのエネルギーを吸収しても尚、完成には至らないが近づいた。それを見つつももう一度聞こえて来た激しい音、それを確かめる為に脚を進めると襲撃に来たであろうヒーロー達を一蹴に伏したオール・フォー・ワンの姿がそこにはあった。
「お~お~派手にやったもんだな。ベストジーニストが見事に倒れてら、一応№4だろ」
「ああ。彼の判断力と精神力は素晴らしかった、だからこそ今倒しておいた。さてと、実験を始める前に先ずは弔達を此方に呼ぼう」
そう言うと空中に何やら酷く濁った灰色の液体が出現するとそこから死柄木達が現れて来た、口々に嗚咽や鼻をつまんでいる所から察すると匂いが酷いらしい。
「うぇぇぇ……先生……この個性、あんま使われたくねぇ……」
「僕も同感だね、黒霧の事を考えても微妙ではあるがこれで助かったんだ、文句は無しで頼むよ」
「だな……んで先生、エボルトとは話は纏まったのか」
「ああ、如何やらエネルギーが必要らしいからね―――手っ取り早い方がいいだろうね、僕と彼で用意しようと思うよ」
「彼……?」
思わず首を傾げた、この場合の誰を指しているのか分からない。だがオール・フォー・ワンは即座に空を見上げた、来ているんだ善意の協力者が。自らの正義と繊維を振りかざす悪意を駆逐する災害が、そんな力を利用しないなんて手はないだろう。それにオール・フォー・ワンとワン・フォー・オールは表裏一体、協力するべきだ、なあそうだろう―――
「全てを返して貰うぞ、オール・フォー・ワン!!!」
「また僕を殺すか、オールマイト!!」
「そうだ、この時を待ってた……この世界に置いての最大のエネルギーと言えばお前達の激突を置いてないからなぁ……!!」