「無事でよかった、石動少年!!」
「御覧の通り、オール・フォー・ワンには何もされてねぇよ」
「相変わらずの大体不敵な物言いで安心したよ!!」
満月を背にしながら空からやってきた平和の象徴、どうやって飛んできたんだとも思うが同時にオールマイトだから出来ても可笑しくないか、という印象を抱かせる辺りは死柄木弔の言う通りのチート性能と言わざるを得ない。これで身体能力だけでやっているのだから余計の質が悪い。
「待っていろ石動少年!!今こいつを片付けてともに帰ろう、雄英に!!」
「そうはさせないよオールマイト、彼に対する用は終わってないのだからね」
「貴様……石動少年に何をさせるか知らんが、私がそれをさせるかぁ!!」
片足でジャンプするように準備運動を済ませると一気に跳躍してオール・フォー・ワンへと殴り掛かる。一瞬で距離を詰めて殴り掛かったオールマイト、その一撃はビルを一撃で崩落させるに十分過ぎる威力―――である筈なのだが
「何っ!?」
「忘れたのかいオールマイト、僕が君の事をどれだけ憎いのか」
片手でオールマイトの一撃を楽々と受け止めた、しかもまるで子供同士が御遊びで拳をぶつけ合ったかのように衝撃波も全く生まれていない。それに驚愕するが直後にオール・フォー・ワンの腕は異様に肥大化し始めた、そしてそれは一気に伸びながらその勢いで空気を途轍もない勢いで押し出した。押し出された空気はオールマイトを一瞬で吹き飛ばしてビルを幾つも貫かせていった。
「衝撃吸収、反転があるからこの個性は使い道がないと思っていたけど君には適切だね」
「今のも個性か」
「ああ、僕のお気に入りさ。空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×4+膂力増強×3、人間空気砲と言った所かな。だけど増強系をもう少し足してみてもいいね」
本来はあり得ない事をやってのける。複数の個性を組み合わせて一つの技として昇華させる、普通ならば数世代の年月が重ね合わせる事でこれは再現出来る事だろう、だがオール・フォー・ワンはたった一人でそれをやってのけるから空恐ろしい。
「さてと―――弔、今の内に行くと良い」
「先生……エボルトは」
「彼の事は僕に任せると良い、まだ約束も果たしていないしね―――さあ黒霧ゲートを開くんだ、個性強制発動」
そう言うとオール・フォー・ワンは指を稲妻の如く赤い線の入った黒い触手のような物に変化させて黒霧へと突き刺した、プロヒーローの襲撃の際に意識を失った黒霧は本来個性を発動できない、だがオール・フォー・ワンは個性を自在に操る化物だ、他人の個性に干渉して強制的に発動させるなんて朝飯前だ。
「これでいい、さあ行け弔」
「―――分かった、行くぞお前ら」
何かを察する死柄木は一瞬何かを躊躇するが、直ぐにそれを切り替えて開かれたワープゲートの中へと入っていた。次々と入っていく中、最後にトガは振り向いて笑顔を見せながら言った。その手に星辰の血が入った容器を抱えながら。
「エボル様また逢いましょうね♪この血大切にします♪」
そう言ってゲートに消えていくと最後に黒霧も中へと入っていった。これで此処に居るのはオール・フォー・ワン、そしてオールマイトのみだ。そこへオールマイトが再び飛んでくる。
「逃がしたか!!だが、貴様だけは絶対に逃がさん!!!」
そう言いながら渾身の一撃がオール・フォー・ワンの頭部を捉える、確かな手ごたえがあるのにも拘らずダメージがまるで入っている感じがしない。これも奴の個性かと毒づきながらも連続で拳を叩き付ける。
「私の攻撃を無効にする個性、ならばそれが追い付けないほどに攻撃するまでだ!!」
「相変わらずの思考だね、まあ正解ではあるが」
そう言うと再びオール・フォー・ワンは腕を肥大化させるが、それと同時に指先が変化してまるで銃口のようになった。
「さて、指鉄砲を足してみよう」
指先から放たれていた一撃はオールマイトの肩を撃ち抜いた。身体を大きく揺らす程度のもので威力は大した事はない、だが―――指から連続的に放たれてくる無数の空気弾がオールマイトの全身へと浴びせ掛けられてくる。
「この程度の、銃弾で私を倒せると思っているのかぁ!!」
「思ってないさ、だからこれは繋ぎさ」
右腕を上げると全く同じように腕が肥大化し始めた、が今度は腕が増えて砲門のように大きな口を開けていた。
「さあ今度は如何かな?」
指鉄砲をやめると右腕にそれを集中させて一気に空気を放つ、今までは拡散気味だったそれが収束されて放たれる為に威力は数倍に増していた。これを受ければオールマイトと言えど無事では済まない、だが唯でやれるオールマイトではない。
「DETROIT SMASH!!!」
空気のミサイルとも言えるそれに真正面から攻撃するオールマイト、渾身の一撃を放った。常識外れの剛腕によって放たれた一撃は単純なパワーとそれによって押し出された空気が共にミサイルへと襲い掛かった。それは一瞬拮抗したが、オールマイトはなんと腕の勢いを利用しながら回転し、もう一度SMASHを放った。
「DETROIT SMASH SECOND!!!」
二重の衝撃となって襲いかかってくる一撃にミサイルは破られてオール・フォー・ワンへと攻撃が命中する。寧ろミサイルさえ飲み込んで威力が激増した一撃にオール・フォー・ワンは吹き飛ばされる。が、即座に個性を発動させてそれらを全て吸収する。
「全く相変わらずでたらめだね、僕の空気弾をこんな風に破るなんて……」
「この程度、造作もない事だ!!」
「どんだけだよオールマイト……流石に引くわぁ」
「ちょっ石動少年それ酷くない!?」
流石のエボルトも若干引いていた。この人間が単純な身体能力だけで空を飛んだり空気のミサイルを拳でかき消すどころか飲み込んで威力を倍増させるなんて普通は出来ない事だ。
「だけど―――衝撃吸収はもう限界か……」
「やはり限界があったか、USJの脳無と同じか!!」
「ああ、だからあまり使う気はなかったから……だから、この衝撃は君に上げるよ―――エボルト」
そう言うとオール・フォー・ワンはエボルトへと向けて腕を差し向けると先程まで溜め込んでいたすべての衝撃を放出した。
「なっ!?石動少年!!!?」
オールマイトは駆け出して庇おうとするが間に合わない、自身のスマッシュの衝撃と爆風、オール・フォー・ワンの攻撃などが収束されたそれはエボルトへと向かって行く。間違いなくそれを受けたら死ぬ、それなのに―――エボルトは笑っていた。そしてエボルトリガーを取り出しそれへと翳した。
「フフフ……ハハハハハハ!!!マッドローグ以上のエネルギーだぁ!?お前らどうなってんだぁ、だが素晴らしいエネルギーだ全く以て―――だから人間って奴は面白い!!」
笑い声を上げ続けていたエボルト、竜巻のようなエネルギーを浴び続けていたが―――それらは一瞬にして消えた。そしてそこにあったのは―――石のような姿から色を取り戻した完璧なエボルトリガーの姿だった。
「クククッ……これだ、これを待っていたんだ……!!遂に、遂に戻って来たぁぁぁぁ!!!」
大声で歓喜の雄叫びを上げるエボルトにオールマイトは何のことか全く理解は追い付かなかった、そしてオール・フォー・ワンはどれ程の力を見せて来るのかとても楽しみだった。
「さあ君の完璧な力を見せてくれ、最初から―――そのつもりだったんだろう?」
「なんだやっぱり解ってて協力してたのか」
「伊達に悪の帝王をやって無かったからね、君には弔が成長するに相応しい糧になって貰う。弔はいずれそれだけの成長をするからね」
それは侮りなのか、それとも……だがエボルトはその言葉に真実を感じる、それだけの素質を死柄木弔という男は持っているのか。ならばそれはそれで楽しみになるという物だ。
『―――おい、エボルト好い加減にしとけ』
「……何だよ相棒もう少し位良いだろう?」
『もうバレてるんだ、やる意味がない』
「そりゃそうか」
そう言いながら肩を竦めるとエボルトは唐突にがくんと頭を下げた、電池が切れたように……そして直ぐに頭を上げつつも声を上げて身体を伸ばした時には―――
「オールマイト、ご心配おかけしました」
「い、石動少年……で良いんだよね?」
「ええ俺です、ちょっと嘘ついてました―――こいつを完成させる為に」
エボルト、いや星辰はエボルトリガーの起動させた。彼の意志でエボルトリガーを起動させた、そしてエボルドライバーを装着しながらそこに装填した。そして―――ボトルを装填する。
レバーを回して行く、だがそれすらも違う。周囲には異常なまでのエネルギーが放射されると同時に星辰を中心に渦が発生している。EV-BHライドビルダーが形成されていくが、星辰を囲むようにしつつも縦に三つが並んだ。そしてその周囲を渦に乗って何処からともなくやって来た黒い立方体が取り囲んでいく。そして―――あの言葉が問いかけられる。
「変身……!」
その言葉と共に立方体が一気に集結しライドビルダーと連結して星辰を完全に取り囲んだキューブを形成すると同時に世界から掻き消えた。だが直にそこに何かが世界の壁を突き破るかのように出現した、まるで異次元からワープして来たかのような……そこにいたのは―――白いエボルだった。だが違う、その名は―――
仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム。宇宙の厄災、ブラックホールの力をその身に宿した仮面ライダーエボルの完成形とも言うべき形態。
「フェーズ4……完了……!!」