病院での日々は検査の為の入院というよりも警察からの取り調べという印象の方が余りにも強かった。それもその筈だ、自分はヴィラン連合が標的と定めた上に数日を共に過ごし最終的にあのオール・フォー・ワンと共に神野の決戦の場にいたのだから引き出せる情報があるはずだと考えるのも当然の推論だ。だからと言ってもこちとら一応入院患者なのだから養生をさせて欲しいとも思う。
「オールマイトを終わりに導いた者として責任取れ、とでも言いたいのかねぇ……」
オールマイトは終わった、既に限界であったにも拘らずこの社会の為に犠牲になりつづけた。そしてその最後を石動 星辰という少年を救い出す為に全てを振り絞った。故か一部では自分は平和の象徴を終わらせる原因ともなった評する者もいる位、全く好き勝手言ってくれる物だと言わざるを得ない。
「どうせ誰が拉致られても同じ事言われてたんだろうな、気にする事ないか……但し―――そう言う事言った編集社と新聞社の取材は今後一切受けねぇ」
『完璧に根に持ってるぜ相棒』
「この位許せ」
そんな事を言いつつも纏めてあった荷物を担ぎあげるとそのまま病室を後にすることにした、漸く今日で退院なのだ。病院のロビーでは父と姉が待っていてくれた。
「よっ、んじゃ帰るか」
「そ~そ~早く帰ろ、お父さんの料理じゃなくてアンタのご飯食べたいしさ」
「やれやれしょうがないな、んじゃタコヤキな」
「何でそこで俺の嫌いなタコ!?」
何も特別な態度を露わにしない父と姉に心で感謝しつつも適当なやり取りを楽しみながらも帰路へと着いた。久しぶりに帰ってきたような感覚になる自宅とキッチンに何処か感傷的になりつつも、うどんが大量にあったのを見つけたので天ぷらを充実させる方向に決定しつつも自宅で腕を振える事に感謝した。
「俺は反対だな」
そんな言葉から始まった家庭訪問、帰宅してから数日後にやって来た雄英の家庭訪問は雄英が生徒の安全を考慮して全寮制を検討し導入する事を決定しましたという事を伝える為の物だった。そして同時に雄英からの保護者への謝罪も含まれている、家にやって来た相澤先生と腕をギプスで吊っているオールマイト。姉は何処かマイペースにオールマイトにサインを求めていた。
そして家庭訪問は父、惣一だけで対応する事になった。曰く、星辰には家でゆっくりでして欲しいと言っていたが本当の所は別にあった。
「それが俺の素直な感想です」
姉は自分のやりたいようにやればいい、子供じゃないから自分で決めろと言っていたが……惣一は真逆の意見だった。
「お父さん……お気持ちは御理解出来ます、恥ずかしながら我々の中に」
「ああいや違うんですよ、俺は雄英の皆さんやオールマイトには感謝しきれないほどに感謝してるんですよこれでも。凄い感謝してます」
惣一の意見は当然だと相澤が頭を下げようとした時、惣一はそれを止めた。それは本当に優しさに溢れた笑顔だったことにオールマイトは驚いていた。
「星辰はこれまでなんて言うか……ちょっと物静か過ぎた所があった、事故で母親失って俺が男手一つ育てたからか分からないですけど……だけどあいつは雄英に入学する少し前から凄い感情豊かになっていった、それまでは無口なクールガイって感じだったのに……それはきっと雄英が良い影響を与えてくれたからって思ってます」
それは、記憶を取り戻す前の星辰の話。母を事故で失ってまるで自分の殻に閉じ籠ってしまっていたように映っていたのだろう、だが雄英を目指すと明確に決めた辺りから少しずつ変化していき、今のような明るく性格になった。
「でも……俺はあいつがヒーローになる事を応援、出来そうにないんです……」
「お父さん……」
「本当は応援したいんです、体育祭だって優勝して職場体験だとプロヒーローから即戦力として来て欲しいって言われて凄い嬉しかったって俺に笑顔で報告して……あいつは笑顔になるんだって」
友達が出来た、友達を連れて来た、友達とこんな話をしたなんて事も沢山あった。本当に嬉しかった、父として我が子が成長してくれる事に……だからそんな風に成長させてくれた雄英には感謝している、しているが……
「あいつは……このまま、ヒーローを目指したらオールマイト、貴方みたいになるまで戦い続ける事になっちゃうんでしょうか……」
「「っ……!!」」
オールマイトの神野区の決戦。全国中継されていたそれは決してヴィランに挫けない平和の象徴という姿を見せ付けた、自分達ヒーローがお前達を好き勝手にはさせないというメッセージがあった……だが不安を抱いてしまったのが惣一だった。優秀な生徒として名を馳せた星辰もオールマイトのように戦い続けてしまうのか……と考えると怖くてしょうがない。
「親が子供の夢を邪魔するなんてモンペも良い所かもしれないけど……俺にとってあいつは……」
相澤は言葉に困っていた。正直な事を言えば星辰がオールマイトのように戦うヒーローになるのは目に見えている、故に否定出来ない。どんな言葉を掛けるべきか……
「石動少年は私のようにはなりませんよ、これを見て頂けますか?」
そう思っているとオールマイトは鞄の中から紙を取り出した、そこには氏名がビッシリと書かれていた。他にも軽症者や重傷者の人数も、死者の欄もあったがそこには0人と書かれていた。それを見て惣一は首を傾げた。
「それは神野区で彼が救った人の数なんです。私が戦ったヴィランによって広範囲で救助者が出てしまいましたが、石動少年はそれをたった一人で救って見せました。自らの個性で瓦礫を退け、救援に駆け付けたプロヒーローが救出が出来るように」
「星辰が……助けた、人の数……」
膨大だった。たった一人で此処までの人間を救助したのかと驚くほどに星辰はブラックホールフォームの力を持って人々を救っていた。
「彼は私のようにはならないでしょう、何故なら……既に私を超えていますよ、誰かを救うヒーローとして」
「救うヒーロー……ああそっか、ヒーローって戦うだけが使命じゃなかったんだっけなぁ……」
その言葉を聞いて惣一は何処か安心したように胸につっかえていたモノを吐き出すような大きな息を吐いた。そうだ、ヒーローとはそういう物だったのだと。ヒーローは戦う者じゃない、救う者の事を言うんだと。
「それに石動少年はこうも言っていました、自分は仮面ライダーだ。人々の平和と笑顔を守り、愛と平和を胸に生きて行けるような世界を目指す仮面ライダーエボルだと」
そう、ヒーローではなく仮面ライダーだと。
「私には仮面ライダーという言葉の重みは推し量れません、ですが彼にとっての仮面ライダーという物はきっとヒーローを越える程のものなのでしょう。だから私は微力でも彼の為に力を貸してあげたいと思っております。愛と平和を胸に生きて行けるような世界を目指すなんて……私が目指した平和の象徴以上の物かもしれませんからね」
そんな風に笑うオールマイトに惣一は瞳を閉じながらも書類を返却しながらも脱帽し、掛け続けていた
「ウチの子を……宜しくお願いします」
エボルトのせいで散々言われ続けて来たから、良い父親感を出したかった……。