必殺技を編み出す、とは別に新しい姿になった星辰はその力の完全に把握し使い方も理解した。引き続きエボルロックの習熟訓練をし続ける、そもそも必殺技ならばエボルテックフィニッシュがあるので作る必要がないと言えばないのでやるべき事と言えばそれぞれのフォームで異なる特徴を理解してその使い方を考える事ぐらいなのである。
「チェストォ!!」
複数の鎖を同時に飛ばしつつもそれぞれを独立した動きで操りながらも目の前の壁を抉り続けていく、そして最後に鎖を回してから一気に突き出して壁を一撃の下で粉砕する。
『なんだなんだ、随分と型が決まってるじゃねぇか』
「(鎖を武器にするって結構ロマンだからな)」
『そ~言うもんか?』
鎖を制御しているのは星辰の思念、自分の想った通りに動いて行くので強固なイメージがあればあるほどに鎖の動きは鋭敏かつ強力になっていく。とある時期に患う病の影響で鎖に憧れていた時があったのがまさかこんな所で役に立つとは……と内心では顔を赤くしていたのであった。
「HEY!石動少年、精が出るね」
「あっオールマイト」
内心で赤っ恥を欠いている時にやってきたのはオールマイトだった、だが以前のような筋骨隆々の姿ではなく骸骨のように痩せ細ってしまっている。当人曰く、これこそが
「今皆を回ったアドバイスをして回っているのだが……どうかしたのかい?」
「……いえ」
「―――ああっその事か。君の責任なんてないさ、君は被害者なんだから」
オールマイトは顔を伏せてしまっていた星辰の内面を即座に読み取った。世間では星辰の事をオールマイトを終わらせた原因の少年、ヴィラン連合が狙う程の存在、ヴィランの素質があるから、などと好き勝手に言う者も居る。勿論そんな者は大批判を浴びるのは当然の事、それでも間接的にもオールマイトを終わらせてしまった事への責任は感じてしまっている。
「元々私は既に限界に近かった、だけどその前にオール・フォー・ワンを刑務所に送る事が出来たのは素直に僥倖だった。君が気にする事ない」
「……有難う御座います」
頭を下げながらも星辰は同時にこの世界の歪みを感じた。何故このオールマイトだけにこれだけの重荷を押し付けていたのか、オールマイトが大怪我をした時に彼を十二分にサポートする体制などを整えるべきだっただろと思わざるを得ない。
「しかし改めて君の個性の幅広さには驚きを禁じ得ないね、そんな姿もあるなんて」
「俺の場合は必殺技というか姿の発掘的な事になってますね」
「ふ~む……そう言えば仮免試験なんですけど、それって如何したらいいですかね?」
基本的に必殺技の開発というよりも新しい姿の慣れを主軸としているので仮免ついてのアドバイスを求める事にする。そう、星辰が気になっているのは自分達は体育祭などで個性などを明らかにしている点。試験なので他の受験者と合格を奪い合うのは必然なのでそれゆえの情報戦の有利を気にしている。
「エボルロックで行くべきか、それとも最初からブラックホールで……ああいや、でも流石にバレるかな?」
「いや何方でもいいと思うし後者でも問題ないと思うよ私は」
星辰的にはブラックホールは中継で見られているので控えた方がいいのかな?と思ったのだがオールマイトの答えは全く違っていた。
「ハッキリな事を言えば、君はあの場でブラックホールを出現させて瓦礫を吸い込んでいただろう?加えてブラックホールの重力の影響で報道ヘリは近寄れない状況になっていたんだ。私も報道映像を確認させて貰ったけど、私とオール・フォー・ワンの戦いばかり撮っていたからね。それに君があんなものを作り出したなんて誰も思いもしないよ」
「あ~……確かに」
言われてみたら腑に落ちた。個性としてブラックホールを宿している13号ですらあくまでの指先などから吸い込む程度でブラックホールその物を生み出すなんて事が出来るなんて誰も思いもしないだろう。しかもそれが攫われた人質がやっていたなんて……誰も思わない。そして遠方から撮影するしかなかった報道ヘリはオールマイトのばかりに注目したのも幸運で星辰と脳無の戦闘は見られる事は無かった。
「だったら初っ端からブラックホールで暴れた方がいいかも?」
「それは正直あるね。ぶっちゃけ、脳無に全然力出してなかっただろう?」
「あっバレました?」
「教師としては新米だけど、人生経験じゃ負けないからね」
お茶目にウィンクするオールマイトにクスッと笑ってしまう。
「ああそうだ、オールマイト実はもう一つ新しい姿があるんですけど見て貰っていいですか?」
「おおっまだあるのかい?是非見たいよ」
その言葉を貰ってから星辰はボトルを変えた。
「―――変身!!」
瞳は戦車を模した物へと変化すると同時にその両肩には戦車の形をしているEVOタンクショルダーが追加されており、エボルロックよりもより攻撃的な印象を強く受けるフォームとなっている。
「WOW!!戦車とは、これはまた攻撃的な姿だね」
「でもこう見えて攻防一体みたいですよこれ、後足の裏にキャタピラがあるみたいで」
足の裏裏はキャタピラ状になっているのか星辰はそれを高速回転させる事で高速で走り始めた。しかもキャタピラの名に恥じないのか相当に走破性も高い、それにそもそも両脚で立つ人間のそれが加わって走らない場所などないと言わんばかりの走りを見せ付けている。
「ハハッ中々楽しそうだね石動少年」
「ええこれ結構楽しいですよ!!」
内心ではまるでローラーダッシュみたいだ!!とテンションが上がっている星辰に漸く笑顔になってくれたかとオールマイトは微笑みながらもエボルタンクの力強さを褒めるように肩をポンポンと叩く。
「これは仮免では他の受験生は驚く事間違いなしだね!!」
「ハハハッそうですかね」
「そうともHAHAHA!!」
そう言って肩を叩き続けたのだが、最後に少しだけ力を込めてバンッ、と叩いてしまった。その時―――左肩のEVOタンクショルダーから轟音と共に砲弾が発射されてしまった。それに連動するように右肩からも砲弾が発射されて目の前へと命中して大爆発を引き起こした。
「「あっ」」
思わず間抜けな声が出てしまった二人、しかもその砲撃の威力は相当な物なのか砲撃を受けた台地はボロボロと崩れ始めて行った。それを見た二人は顔を青くしながらも冷や汗をかいた、そしてその瓦礫の上からエクトプラズムの分身に抱えられていた耳郎はいい笑顔をしながら此方へと迫って来た。
「へぇ~星辰それがアンタの新しい姿なんだねぇ~へぇ~……随分と良い威力してるじゃない、ウチがいた所を吹き飛ばすぐらいにはさぁ~?」
ニコニコとしているがその額には青筋が浮かんでおり明らかにブチ切れているのが伺える。
「あ、あのその……じ、耳郎さん落ち着―――」
「んっ耳郎さん~?ウチの聞き間違いかなぁ~ねぇ星辰?」
「きょっ響香さん……」
傍から見たらエボルトがたった一人の少女ににじり寄られて狼狽えているという事になっている、これを掲示板の皆が見たらどんな反応をするだろうか。
「じ、耳郎少女今のは私が不用意に彼の肩を叩いたせいで……だから責任は全面的に私に―――」
「そんなわけないですよね~?元を正せば星辰がちゃんと気を付けて、砲門のロックとか掛けてればいい話だもんね~」
「お、おっしゃる通りです……」
何処か妖艶に、ミッドナイトのように顎をそっと撫でる耳郎。それは不思議と威圧感に溢れておりそれを見ていた周囲のクラスメイトも硬直していた。
「それで、ウチになんか言う事あるよね?」
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!!」
恥も何もなしに速攻で土下座をする星辰に対して耳郎は笑顔を変える事もなく優しく彼の頭を撫でる。
「うんっウチは優しいから許してあげるよ、勿論♪で・も・さ―――分かってるよね?」
「はっはい勿論でございます!!」
「なら宜しい♪」
この時、A組の全員が思った。耳郎を決して怒らせてはならないと。