ヒーロー資格仮免試験の第一次試験、ターゲットを奪い合うような試験となっていた。開始の前に説明会場の壁と天井が展開して直接試験会場へと出られるようになった。会場はまるで雄英のUSJと似ていて、各所に環境の違うフィールドが準備されていて各々戦い易い場でやってくれという物らしい―――が、その前に星辰は手を上げた。
「あのすいません、ターゲット着ける前に変身の許可貰えます?」
「え~っと……雄英の石動 星辰君ですね。ハイ確認しましたので個性発動してください」
「有難う御座います、んじゃ―――行こうか」
確認を取った時、自分の方を見つめて来る他の受験者にそれを見せ付けるかのように星辰は迷う事もなくエボルトリガーを手に取ってドライバーにセットした。そして思い知らせるのだ、お前達の策謀なんて自分にとっては児戯に過ぎないんだと。
「(……やっぱりお前に思考回路近づいてるよな俺)」
『何言ってんだ元々だろ』
「(それはそれでショックなんですがそれは……)」
遂に始まり始めた変身シークエンス、その異様さには誰もが直ぐに気付いた事だろう。当然だ、雄英体育祭で見せていたそれは全く異なっているのだから当然だ。
「変身……!」
「相変わらずド派手だなそれ!!」
「でも超熱いよな!!」
「ありがと、それじゃ……まあ無難に胸に一つでこんな感じで良いかな」
一つは胸に、残りの二つはドライバー近くの腰の横側に付ける事にした。その作業を行っている他の受験者達の視線が色んな意味で騒めいていたが、特に気にする事もなかった。そして漸く準備も終わったのでいよいよ試験開始のカウントダウンが開始される。それぞれが得意なフィールドなどに向かって行く中で、雄英は基本的に一纏わりで行こうとするが―――
「ザけんな、遠足じゃねぇんだよ」
「あっおい爆豪!?んじゃ俺爆豪と一緒に行くわ!!皆頑張ろうぜ!」
「わりぃけど俺も単独で行く、俺がいると巻き込むかもしれねぇし一人の方が動きやすい」
などと言った理由で爆豪と切島、焦凍が離脱していくがそれ以外は基本的に共に行く事になっていく。そして遂に時間が―――やって来た。
『第1次試験、開始』
そのアナウンスと共に周囲から他の受験者が飛び出してきた、その全員が此方を見ている。そう、彼らは知っている、雄英生徒の個性を。体育祭によって自分達の個性を公表してしまっている上に仮免試験では雄英狩りと言われる一斉攻撃はある種の恒例行事のようになっている……が、彼らはある想い違いをしていた事だろう。
「杭が出てればそりゃあ打つよねぇ!!」
そう言いながらもMs.ジョークの教え子の傑物学園の真堂の言葉を皮切りに一斉にボールを投げて来る、全員がそれに対応しようとする中で真っ先に前に出たのがいた。星辰だ。
「なら打ってみろ、だが気を付けろ―――お前らが手を出したのは……二度と抜け出すの事の出来ねぇブラックホールだ!!」
そんな笑いを上げながらもブラックホールアタックを発動させ、試験会場上空に巨大なブラックホールを出現させた。それはその重力を使って投擲されたボールを吸い上げていく、その光景に思わず全員が絶句した。
「な、なんだぁありゃああああ!!?」
「く、黒い渦!?」
「あれって神野区でも出たバカデカい渦じゃねぇか!?まさかあいつの力だったのかよ!?」
「そんなわけあるかよ!?唯姿を変えるだけの個性なのに何でそんな事が―――」
一人の受験生が姿がブレて姿が掻き消えたと思った直後、轟音と共に岩壁にめり込むように叩き付けられている姿があった。それは何故か、一瞬にしてその受験生のマーカーにボールが投げつけられて全て点灯させられていた。そう、失格だ。
「な、なんだ今の!?」
「一瞬で一人終わったぞ誰がやった!?」
「俺以外にいると思うのか……?」
その言葉に導かれるとエボルが居る、彼の手の上には同じような渦が発生しておりそこから吸い込まれた筈のボールが出て来ている。そしてそれらをクラスメイトに配りつつもそれを使って一人を仕留めたのであった。
「他人のボールを使ったらルール違反、なんてルールはないよなぁ?」
『問題ありません。地面に落ちたボールはアウトですが、キャッチしたらセーフです。ドッジボール的なあれだと思ってください』
とお許しも出ているので星辰の行いは全く問題ない、そして同時に雄英狩りを行おうとした受験生らは分かってしまったのだ。自分達は決して手を出してはいけないモノへと手を出してしまったのだと。
「す、凄いね石動君そんな事まで出来るなんて……」
「この位ちょろいもんだ、さて皆の衆―――成ろうぜヒーローに、今こそ変身の時だ」
『応!!』
その言葉を皮切りに雄英勢の大抗戦が始まったと言っても良いだろう、それぞれが今日までに積んできた鍛錬を今日此処で発揮していく。そして其処に加わったのが―――
「そんなのプロになれば当たり前の事じゃねぇか、そんな事を気にする必要なんてねぇよ。寧ろ光栄に思えるね―――お前らは雄英をプロだと思って警戒している、俺達が怖くて怖くてしょうがない臆病者の敗北者連中って訳だ」
『敗北者……!?』
「あの野郎、今俺達の事をなんていった……!?」
宇宙の大災厄、星狩りの一族、エボルトの煽りである。
「臆病者の敗北者っつったんだ、同じ土俵に立つ気概も力量もねぇから身を寄せ合って乳繰り合ってるド底辺共、プロになってからもそうやっていくつもりか。俺ならそんな連中雇ったりしねぇなぁ……悲しいねぇ折角合格しても受け入れて貰えないで夢も叶わずハイさよならバイバイだ」
『もう我慢出来ねぇあいつぶっ潰す!!!』
とエボルトの相手の怒りを誘い自尊心を著しく傷つける物言いは受験生たちに極めて有効だった、自分達の行いは雄英をプロだと認めている証拠であると同時に自分達はプロになる資格なんてない、と言っているに等しい故にヒーロー志望として許せない言葉なのである。そして―――
「こんな安っぽい挑発に乗る時点でプロになる資格もねぇな、ヴィランにもそうやって突っ込む気かお前ら」
『くっそぉ……!!』
エボルはそれを一蹴しつつも合格をもぎ取って勝ち抜いたのであった。一足先に合格者が待機する先程まで説明を受けていた場所まで戻るのだが―――そこでは一人の女子が待ち構えていた。それは士傑高校の生徒―――の筈だが気配でエボルは直ぐに誰かを見破った。
「久しぶりだな、態々俺に顔でも見せに来たのか―――マッドローグ」
「はいっ♪お久しぶりですエボルさん♪」
やっぱり言葉攻めがエボルトの真骨頂だと思うんだ。