「プロでも高難易度の案件……仮免でそれをやるか」
思わず相澤も声を上げて驚きを露わにしてしまった、昨今の社会情勢を鑑みても今年のハードルは高くなるだろうと踏んでいた。それは的中して一次から受験者を100人にまで絞った、それだけでも例年の5割を大きく下回るのにその上でまだこれをやるのか……そしてのその状況のヴィラン役に抜擢されたヒーローもとんでもない選出だ。
「さて、如何するひよっこ共……守るか戦うか。守るか戦うか、逃げるかどれを選択する……!?」
「まあどれを取ったとしても止まる気はねぇけどな!!」
男らしい笑みを浮かべながらも首や足を鳴らしているミルコは今にも飛び出していきそうな雰囲気だった。ギャングオルカは自身の事務所のサイドキック達にもヴィラン役をさせており、それらを統率磯長も救護所へと向かおうとする―――が
「あ~もうまどろっこしいの嫌いだな!!よし蹴る!!」
「おい待てミルコ!!」
「待たねぇ!!」
まさかのもう我慢切れという忍耐力がないのかそれとも強襲する事で試そうとしているのか分からないが、兎に角飛び出して行こうとするミルコ。鍛えられた脚に力を籠めると地面はそれだけで罅割れて行く、彼女の脚力が伺える光景。そして飛び出して行こうとした時―――
「おっ!?おおっ!!?」
「何!?」
何処からともなく鎖が飛来してきたミルコの身体を捉えた、そして鎖は勢い良く撓ってミルコを地面へと叩き付けようとするのだが―――空中で高速回転しながらも見事な着地をしてみせた。
「アタシのジャンプのスピードに対応するか、良いぞ面白れぇ!!誰がやったか……面ぁ見せろぉ!!」
そう言いながらも鎖を握りしめるとそのまま勢いよく引っ張った、凄まじい勢いで鎖が巻き上げられて行く中で姿を見せたのは星辰。しかもエボルロックに姿を変えている、それを見てミルコは笑みを強めた。
「そうかお前だな神野区の奴は!!こんな事も出来るのか、良いぞ面白いぞ!!だけどなぁこのミルコ様をこんな鎖で縛りつけられると、思ってんじゃねぇぞ!!!」
「うっそぉ!!?」
思わず星辰も大きな声を上げて驚愕してしまった、エボルロックの作り出す鎖は凄まじい強度がある、しかも個性封じのエネルギーを発生させていたのに全くの無意味だった。これからエボルロックの個性封印の能力は相澤に近く、異形型には上手く作用しない事を理解した。
「さあヴィラン連合に狙われるだけの力を見せてみろ!!!」
一瞬だった、星辰が引き寄せられている事を差し引いてもまだ10メートル以上は離れていた筈なのにその距離をミルコは一瞬で詰めた。彼女の移動は跳ぶと表現される、尋常ではない脚力から成される跳躍力で移動能力も尋常ではない、そして―――そこから繰り出される蹴りの一撃も常軌を逸する。
「
「ぐっ―――!!!」
笑顔を浮かべたまま、振り上げた脚がブレたかと思った直後に全身をとんでもない衝撃が襲いかかって来た。咄嗟にバインドマスターキーで防御したがそれでも塞ぎ切れない程の衝撃が全身を伝わっていく、肉体を捉えたままミルコはそのまま渾身の力で蹴り飛ばそうとするのだが―――
「逃がすかぁ!!」
「ヌッおおおおっ!!?」
飛ばされる刹那、右手でミルコの片腕を掴む。そして同時に鎖を腕に巻きつけながらも手を離さないように手に
「がぁぁぁ……なんて威力だ……」
『確保するつもりでロックにしてなきゃ大ダメージだったな……』
エボルトも認めざるを得ないほどの超威力、捕縛目的でエボルロックに変えていたのは間違いなく英断だった事だろう。ブラックホールフォームでも耐えられない事はないだろうが、今以上のダメージを受けていた事は確実。
「いいぞお前!!」
「うっそだろ……?」
同じようにビルに突っ込んでいる筈なのに瓦礫を吹き飛ばすようにしながらも姿を見せたミルコはピンピンしていた。仮にも自分の攻撃で生じる衝撃を受けている筈なのに……
「アタシのルナフォールをアタシにも食らわせるなんて生意気だな!気に入ったぞ!!」
「そりゃ、どうも……想像の5倍ぐらいお元気そうで何よりで……」
「当然だろ、自分の攻撃で死ぬみてぇな軟な鍛え方はしてねぇからな!!あれだ、フグが自分の毒で死なねぇのとは別みたいなもんだ」
「いや絶対にそれは違う」
これがトップヒーロー、トップ10の一角に立つラビットヒーロー・ミルコの実力なのか。単純な蹴りだけならば恐らく平成初期の仮面ライダーにも引けは取らない事だろう……それを生身で発揮出来るとは本当に恐ろしい。
「さあ続きやるぞ!!」
「楽しそうに言うなぁ……」
「楽しいから、なぁ!!!」
「っ!!!」
直後に迫り来るミルコ、そして今度は顔面をミルコの剛脚が捉えて蹴りが炸裂した。それはビルの外壁を一瞬で打ち砕きながらも星辰を地面へと叩き伏せた。
「がぁぁぁっ……!!!」
『おいおいおいマジか、安全機構が作動しかけたぞ今の!?』
致命的な損傷を2度まで防いで変身者を守るという機能が存在するが……それが作動しかけたという事実に流石のエボルトも驚愕に声を荒げた。顔という急所を狙ったのもあるがミルコの一撃はエボルロックの安全機構を発動させる一歩手前まで行った、異形型の個性故に身体能力が高いというのもあるが……それ以上を鍛えまくった結果、仮面ライダーに迫る、その事実に星辰は驚きを隠せなかった。
「おおっまだ動けるのか!!いいぞ本当に気に入ったぞ!!」
それはどういった意味なのだろうか、サンドバック的なあれなのだろうか……と思いつつも身体を起こす、がこのままでは本格的にまずい。エボルロックは攻撃に耐える事は出来るのだがミルコのスピードに全く対応出来なかった。あれに防御で対応してはいけない、という事だろう。
『ありゃエボルタンクでも苦労するぞ、どこぞの白い悪魔みてぇに銃口向けた瞬間に回避行動取るぞ』
「(マジかよ……)」
スピードも然る事ならながら察知能力も凄まじい、しかもウサギという事は危機察知能力も高い筈。それにあの身体能力が加わると……射撃武器なんて絶対に当たらない。つまり近接戦しかない、しかもスピード特化型の。
「(……おいエボルト、あのボトル行けるか)」
『おいおいおいマジか?確かにあのウサギの一撃からボトルは作れるが……使った事もねぇフォームで相手の土俵で戦うってか?』
「(それしかねぇだろ……エボルダイナソーでも捉えきれないだろあれ)」
『だな。対応は出来るが捉えきれねぇ』
「(じゃあ……やるぞ)」
『俺、これ好きじゃねぇんだがねぇ……ったく、しょうがねぇな!!』
「オラァァァ!!」
「ぐっ!!」
考え事をしている間に迫って来たミルコの飛び蹴りを渾身の力で防御する、それでも衝撃に後退ってしまう程の破壊力。本当に防御するのが愚策だと分かる―――だが、これでいい。
「さあ如何する、お前はまだやれるのか?」
「ああ、やれるさ……アンタのスピードにこれからついて行く!!」
「―――面白いじゃねえか、やってみろ」
星辰の言葉に不敵な笑みを浮かべて構えを取るミルコに対して星辰はロックボトルを引き抜きながらも身体の中から新しいボトルを生成、それを見ると少しだけ笑いながらもドライバーに装填した。
「―――変身!!」
そこにあったのはフェーズ2のエボルドラゴンから更に身軽になったような姿だった、そしてボトルの特性を現す瞳はウサギの横顔の形へと変化していた。エボルラビット。これならば、ミルコに対抗出来る。
「行けた……これならいける筈だ」
「ほう?アタシに対抗する為に同じウサギになんて生意気だな、だけどアタシと同じフィールドに立つ度胸は褒めてやるよ、さあ採点もしてやる!!」
エボルラビット。
元々はエボルトが戦兎を取り込む事で一気にフェーズ4へと至ろうとしたエボルトとしては想定外の姿。
攻撃力はドラゴンフォームよりも下がっている所か、パンチ力に至ってはコブラフォームにも劣る。が、その分索敵や機動力に優れており、その高いジャンプ力を生かして立ち回るフォーム。
基礎スペック的にエボルダイナソーの方が上ではあるが、小回りと瞬間的な速度では劣るので急遽ラビットエボルボトルを作り出した。