「さあ後は君だけだよ、後輩君!!」
「もう勝ったつもりでいるとは、随分とおめでたいもんだなBIG3って奴も」
残された星辰、状況はハッキリ言ってよくはないかもしれない。ミリオの個性の正体は掴めない、攻撃を自在に通り抜ける上にワープのような移動まで可能にする。それがどんな個性なのか……だが星辰としてはその正体を探るつもりはない、緑谷が言っていたように自分が理解できる範囲で答えを探すだけだから。そしてその手に握ったトランスチームガンで周囲にスチームを散布する。
「目くらましかな?」
「違う―――整理だ」
その言葉の直後に倒れこんでいたクラスメイト達の姿は壁際に移動していた、此処からの戦闘は何処までの規模になるか流石に分からないので被害が行かないようにの配慮―――エボルト的には邪魔だっただけ。
「さあこれで思いっきり行ける、来いよ」
「それじゃあ―――行かせて貰うよね!!!」
その言葉に甘えるようにミリオは駆け出しながらも再び姿を消した。完全に姿も見えない、何処からの攻撃が来るかも分からない、また背後か、はたまた横か、真下か、神出鬼没の戦法は相手の精神にも負担をかけて行くのも有効な戦術。だが星辰は極めて冷静だった。
「―――っそこだ!!」
「(見切られてた!?)」
真正面に向けて拳を振るう、敢えての正面から姿を現したミリオは驚いた。背後からの奇襲をするだろうと予測している筈の虚を突いたつもりが全く通用しなかった。だが同時に酷く嬉しくも思う、先輩として有望な後輩が目の前にいるのだからと思いながら拳をすり抜けていく。
「いけない石動君……!!」
あれは自分が一度受けた技、それに注意を飛ばそうと苦し気に呻く緑谷。
「必殺!!ブラインドタッチ目潰し!!」
例え一度知られているとしても人間の本能はそう簡単に押さえられる物などではないの。例え目の前に野球の試合で、ネットがあったとしてもファールボールを反射的に避けようとするように。確かに星辰の顔面に自らの腕が埋まった、そして今度は拳を―――
「わぁお♪」
「―――嘘だろ……?」
ねじれは思わず嬉し気な声を、天喰は驚愕に目を見開いた。何故ならば―――
「っ―――!!?」
「確かに、捉えたぞ……!!」
深々とミリオの腹部に星辰の拳が突き刺さった、通り抜ける事もなく確りとミリオの実体を捉えていた。ギリギリと肉にめり込む拳に思わず肺の中の酸素を吐き出した、そして今度は首筋へと回し蹴りが炸裂した。あれ程までに攻撃を通り抜け続けていたミリオに確かに命中している、そして蹴り飛ばされて数度バウンドしながらも彼のズボンの傍まで転がった。
「ゴホガハッ……久し、ぶりだよね……こんな重い打撃を受けたのは……!!」
ズボンを履き直しながらも酸素を求めて呼吸し続けているミリオを見続ける星辰、エボルダイナソーの攻撃をまともに受けてまだ立てる辺りBIG3は伊達ではないという事らしい。恐らくあの肉体は鍛錬で獲得した物、そう考えると矢張り凄まじい。
「緑谷との攻防であれはもう見た、だから対策した」
「へぇっ……参考までにどうやったのか聞いてもいいかな」
「誰でも出来る事ですよ、喰らう前に自分から目を閉じて勘で打ち込んだ」
余りにも単純な理屈だ、目潰しで動きを封じるなら最初から目を閉じておけばそれに動じる事もない。そしてミリオはブラインドタッチ目潰しの関係上至近距離にいる、後は攻撃をするであろうタイミングで攻撃を仕掛ければ良いだけの事。
「まずは―――響香さんの仇の分」
「ハハハッ……確かに単純明快な解決法だ、参っちゃうよね」
至極シンプルな対策だ、シンプルな攻撃故に対策も難しく考えずに単純にすればいい。当然の理屈だ。
「ねぇねぇ天喰!!ミリオがあんな風に倒れるなんて本当に久しぶりだよね!!」
「―――信じられない、あのミリオを1年生の子が叩き伏せるなんて……」
「言ったでしょ後輩君は凄いって♪」
まるで我が事のように嬉しそうにするねじれ、実際彼女にとっては本当に嬉しい事なのだろう。自分の大好きな後輩が自分と同格とされているミリオとあそこまで戦う姿が。
「それにアンタの個性も大分読めた……すげぇのは個性じゃなくてアンタ自身だな、そんな個性で良くやるぜ」
「ハハハッこりゃ参っちゃったよね、波動さんの言う通りに凄い後輩君だ!!」
「まあ、一々全裸になるのはマジで何とかしとけよ。ヒーローやる前に公然猥褻で終わるぞ」
「ハハハッこりゃ手厳しい!!まあ一回体育祭でやらかして大変な事になってる前科持ちだからね俺ってば!!」
大笑いするが、それを聞いて星辰は素でドン引きしたのか後退った。今の話が本当なら全国放送で今のをやらかした事になる、それなのによくもまあヒーローを目指し続けられる物だ……自分だったら引き籠る自信がある。そんな中、ミリオは自ら構えを解いた。
「さてと、俺の強さが分かったかな?これが俺がインターンで身に付けた強さだよ、そろそろ説明に移ってもいいかな。相澤先生にも合理的にって言われてるしね……というか、ぶっちゃけ流石に立ってるの結構辛いんだよね……」
確かに勝敗を付ける意味はない、あくまでインターンで身に着けた力の紹介という事なのだからこれ以上やる意味はないかもしれない。そしてエボルダイナソーの攻撃は相当に響いているらしい。
「んじゃ勝負放棄で俺の勝ちでいいな」
「あっ結構確りしてるね、ハハッうん良いよ!!君の勝ちだ後輩君!!そしてギリギリ見えないように努めたから大丈夫だとは思うけど、女性陣には本当に申し訳ない事をしちゃったよね!とまあこんな感じだったけど分かってくれたかな」
「通形」
ニコやかに笑いながらもこんな感じだよ!!と良い感じに締めに入ろうとしているミリオだが、それを相澤が止めた。しかも個性を発動させて捕縛布でミリオを捕縛しながら。
「お前、それ直せって言われてんだろ……調整が難しいじゃすまないんだよ、先輩が後輩に恥部晒してんじゃねぇ」
「えっと相澤先生……?」
「(クイッ)」
そっと顎で視線を誘導するのだが、その先では未だに顔を真っ赤にして伏せ続けている耳郎の姿があった。それを見て少ししてからあ"っ……と酷く濁った声が出た。
「一先ずお前はこのまま生徒指導室送りだ、担任に確りと絞って貰え。波動、天喰、上手い事締めとけ」
「は~い♪」
「無茶言わないでください……」
「やれ」
「……パワハラだ……」
そう言いながらも相澤はそのままミリオを引っ張っていった。その最中、本当にごめんだよね~!!!!と謝罪の言葉が木霊し続けたが完全にフリーズしていた耳郎に聞こえていたかは謎であった。
「響香さんマジで大丈夫?」
「―――あんなにハッキリ……BIGIBIGBIGだった……モノを―――ドアップで焼き付けちゃった……」
「……俺の秘蔵のケーキ、食べる?」
「―――食べりゅぅ……」
事情を察してしまった星辰は同じように優しく肩を叩いてあげる事しか出来なかった。
『これは流石の俺も同情するぜ……』
「(全くだ……)」