「―――美味し!!?」
思わずそんな声を響かせてしまった麗日、目の前にある丼に入っているのは星辰特製手打ちうどん。確りと歯応えがあるのに噛み切ろうとしたらぷっつりと切れる、柔らかさと硬さを併せ持った麺に出汁の味が絡まって声を出してしまった。
「かしわ天とレンコン、ごぼ天にイカとジャガイモも揚がりましたよ~」
「入れる入れる~!!!」
「私も是非ほしいわ」
其処へ揚げたての天ぷらを追加で持ってくる星辰。真っ先にねじれとリューキュウが手を伸ばすが、他の事務職員たちも手を伸ばして行く光景も思わず麗日、蛙吹、耳郎は困惑したような様子だった。
「ホラホラ貴方達も早く取っちゃいなさい、でないと取られちゃうわよ?」
「そうそう、エボルの料理の上手さは俺達リューキュウ事務所の間じゃ語り草……寧ろインターンをどれだけ待ちわびた事か……!!」
「健康的な三食、栄養バランス、満足感!!」
如何やら相当星辰の料理は信頼されていることが分かった、なので自分達も慌てて天ぷらを取りに行く。途中参加だったので取れたのは僅かだったが直ぐに星辰は追加で揚げに向かうのであった。
「あっウチも手伝おうか?」
「いや大丈夫だよ、美味しく食べてて♪」
そう言いながらもノリノリでキッチンに向かって行く星辰、元々家のカフェでシェフを続けていた身としては美味しく食べて貰える事はこの上ない喜びなので準備する事は苦にもならない様子。それを見つつも耳郎は取る事が出来たかしわ天に齧りつくのであった。
「―――うまっ」
と今度は出汁に付けて味に変化を付けてみるのを試すのであった。
「大、大、大、大満足……♪」
「本当に美味しかったわぁ……♪」
「最後の締めも最高だったぁ……」
とインターン組の3人はお茶を啜りながらも極めて充実した幸福感を味わっていた。最後の星辰特製の揚げおむすびを出汁に入れて食べるのも最高だった、中に入ったキノコやニンジン、牛肉と具沢山で本当の満足に行く品だった。
「もうお腹一杯~ご馳走さま~!!」
「とっても美味しかったわね、此処までうどんをガッツリ食べたのも久しぶりだわ」
同じように満足気に笑うねじれと食べ過ぎてしまったかもしれないと笑うリューキュウ、久しぶりの星辰の料理に箸が止まらなくなっていた。気を付けない不味いと思いつつもまた味わえた事に感謝する。
「あれ、星辰は食べなかった訳?」
「ちょっとね~食べてる、時間がないから……大急ぎで別の仕込み中!!」
慌ただしくキッチンで動き続けている星辰、洗い物を終わらせると直ぐに別の作業に入り始めていた。一体何を急いでいるのだろうか……そう思っていると事務所の扉が勢い良く蹴り開けられた。
「よっ!!リューキュウ、あいつ居るか?」
「あらっミルコ、ええっいるわよ」
蹴り開けたのはミルコ、トップ10に入る超実力派ヒーローの登場に麗日たちは思わず驚いてしまう。
「改めて会うと凄い貫禄……」
「チームアップしてるとは聞いてたけど……」
「ケロォ、驚いたわあのミルコさんだなんて……」
「おっお前らだなインターン生は」
ミルコは耳郎たちを見つけると何やら見定めるかのように眺め始めた。鋭くも力強いその視線に僅かに気圧されるが直ぐに胸を張るようにして迎えると歯を見せながら笑って声を上げた。
「いいぞ、悪くないなお前ら。その内、アタシと一緒に来て貰うかもしれないからその時は覚悟しとけよ?全力で振りまわすからな」
「は、はい……出来ればお手柔らかにお願いしたい、かなぁ……」
「んじゃ―――おい準備出来てっかそろそろ行くぞ~」
「もうちょっと待ってください!!後、少しですから!!」
とキッチンを覗き込みながら声を掛けるミルコとそれに反応する星辰、それを見て耳郎は思わず声を出す。
「あの星辰連れてどっかに行くんですか?」
「ああ野暮用でな、丁度いいからエボルも連れてくわ」
「荒事って事よね?」
「ああ、最近なんかヴィラン共がつるんで何かしでかそうとしてみてぇだ。そっちも気を付けとけよ、個性のブースト薬も持ってるケースが多いらしい。おいまだかよ!?」
「今出来ました!!」
とキッチンから荷物を持って出て来た星辰、如何やら弁当を作っていたのか弁当箱を仕舞いこむとそれを背負って準備万端と言いたげな状態になった。
「夕食の仕込みはしておきました、後はとろ火でじっくり煮込めば良いだけですから」
「ごめんなさいね急かせちゃったみたいで」
「いえ、うどん作ってる時に並行作業でやってましたから」
「流石ね……」
カフェの混む時間帯ではこの位出来ないと捌けない事も多かったの出来るようになったスキル、それを遺憾なく発揮してリューキュウ事務所は美味しい夕食も確定した事にガッツポーズする所員が多かった。
「んでアタシの飯は?」
「問題なく」
「うし、んじゃ行くぞ―――ちゃんとついて来いよ」
「分かってますよ、んじゃリューキュウ行ってきます!!」
「はい気を付けてね」
「行ってらっしゃ~い!!!」
そう言いながらも飛び出して行くミルコと星辰、そんな後姿を追うように見つめていた耳郎は少しだけしょんぼりとしてしまいながらもお茶を啜るのであった。
「それで、何処にっと、向かうんですか!!」
一度の跳躍でビルよりも高く跳んで街を越えて行くミルコに追従するように追いかけるのはエボルラビットのエボル。別に他のフォームでもいいのだが、ミルコについて行く場合は跳躍で一気に離される可能性があるのでついて行く為にもラビットになっている。
「さあな」
「さあなって……」
「耳済ませとけ、事件が聞こえたら蹴りに行く!!それがアタシの基本活動だ」
「うわ~……そりゃ事務所なんて持てないわ~……」
ミルコのヒーロー活動方法。それは跳躍しながらもその最中に聞こえてきた事件の音や直感を頼りにしてそこへ蹴り込むという物、つまり―――基本的に通報など受けて出動するヒーローとは逆で常に動き回って事件を探し続けるのがデフォルト。そしてその特性上、基本的に全国を文字通り跳び回っているのである。
「―――おっ早速聞こえて来たな!!行くぜエボル!!」
そう言うと一気にその方向へと跳んでいく、しかも今までとは比較にならない程の圧倒的な速度で。それにおいて行かれないようにと星辰も空中で制動を掛けつつも空気を蹴って一気に加速する。そしてその先には―――現金輸送車を襲っていたヴィラン達が居たのだが―――現金輸送車を踏み潰さん勢いでその上へと着地したミルコとエボル。
「よぉっ白昼堂々、精が出る事じゃねぇか……?」
「よぉっ景気が良いじゃねえか、俺達も混ぜてくれよ」
その後、僅か3分でその現場は鎮圧し犯人グループは残らず確保。その時に偶然居合わせた記者に向けてミルコはエボルの肩を組んで
「こいつはアタシのサイドキックのエボルだ、覚えとけよ」
とアピールしてくれたお陰で星辰はこれから色んな意味で大変な事になるだろうなぁ……という未来が想像できてしまった。