「チェエエエストォ!!!」
「ガァァァァッッ……!!!」
一撃を受けて吹き飛ばされたヴィラン、それは他の物質と同化する事で力を高める個性、その拠り所となっていた金属で構成された巨人から弾き出された姿だった。弾き出されると同時に巨人は沈黙と同時にその周囲を飛び回っていたそのヴィランの部下と思われる者達は一斉に仇を撃つぞ!!と言わんばかりに迫って来るのだが―――
「テェヤァ!!」
迫り来るヴィラン達を文字通りに一蹴するように空間に向けて放たれた回し蹴り、それは例え肉体を捉えなくてもその身体を抉る程の威力を秘めており総勢7名のヴィランを一撃で大地へと叩き付けた。地元のプロヒーローですら歯が叩かなかったヴィラングループをあっという間に制圧してしまったその者は一蹴したヴィラン達へと向けて銃を構えるとトリガーを引いた、そこからは糸が伸びてヴィラン達を絡めとりながらも先程の金属個性ヴィランと纏めておく。
「これで良しっと」
いい仕事を言わんばかりに額を汗を拭うような仕草は妙に似合っていて、周囲の人たちはそれに向けて拍手を送るのであった。
「それではお疲れ様でした」
「いえいえ此方こそ。急ぐ場合でしたらその糸は火で炙ると溶けますので」
「承知しました!!」
ヴィランを地元の警察に渡しつつも状況の説明やらも全て終わったエボルこと星辰は変身を解除した状態で警察署を後にするのであった。警察署付近には自分を待ち受けていたと思われる報道陣が待機していたのだが……
「まだ掛かるのかなぁ……」
「のんびり待とうぜ、なにせあのミルコのサイドキックの取材なんだからな!!」
「そうそう、俺達超ラッキー!!」
「すいませんちょっと失礼しますね~」
『ああっこれは失礼』
マシンエボルダーを押しながら横を抜けて行く星辰、流石にメットを被っている上に変身も解除されていたら分からないらしく何の問題も無く警察署を後にする事が出来た。
『にしても最近はああいうのが流行してんのか?』
「(あれってブースト薬の事か?)」
『ああ、あいつらも使ってたろ』
今回戦っていたヴィラン全員は漏れなくブースト薬を使用して個性の増強を図っていた。警察の話では特にブーストを使用するヴィランは増加傾向にあるらしく、それらを狙った依存性の高い粗悪品のブースト薬を売り捌く売人も増え続けてしまっているとの事。
「(これもオールマイトの引退の影響による物だろうなぁ)」
『だろうな、あんだけのバケモンが引退したんだ。誰だって自分にチャンスがあるって思うもんだ』
オールマイトの引退は様々な場所で影響が出ている、特にヴィラン犯罪の発生率という意味では分かりやすく出ている。それだけオールマイトが抑制になっていたという事にもなるが、同時にオールマイト一人に頼りきりだった今の社会のボロが出たという事にもなる。
『そもそも社会を人間一人で支えるなんて事がまず可笑しいんだ、それに甘んじて何もしなかったヒーロー委員会ってのも愚かなもんだ』
「(それには同意)」
エボルトの言う通りこの世界は色んな意味で歪んでいる。オールマイトに任せていたなんて特にそうだと思う、誰もついて行けなかった、代わりがいないからしょうがないなんて言い訳にならない、それの結果が今なのだから。
『ヒーローヒーロー言ってるくせに随分と文句が多いな』
「(だからこそ文句が出るんだよ……)」
同じ世界にいるからこそ思う事だってあるのだから……そう思いながらもリューキュウ事務所に向けてメールを発信する、直ぐに了解、ゆっくり帰って来て良いと返答が来たのでこのままマシンエボルダーで帰ろうと思いながら高速へとハンドルを切ろうとするのだが……
『相棒!!』
「っ!!?」
突如、光弾が飛来してきた。光はそのままマシンエボルダーを捉えようとするのだが、星辰は咄嗟に後輪を持ち上げるようにしながらもそのまま後輪で光弾を殴り付けた。突然すぎる事だがこのバイクはフルボトルの成分を使って生み出しているモノ、故にタイヤにエネルギーを纏わせる事も可能なので光弾は相殺する事は出来た。
「なんだいきなり!!」
『あそこだ』
そう言って視線を向けた先、そこには人影のような物があった。それは逃走を始めるが星辰は素早くマシンをスマホに戻しつつもエボルに変身するとそのまま一気に跳躍しつつ空高く浮遊しつつもセンサーを使ってその人影を補足すると一気に加速する。
「逃がすかぁ!!」
「―――っ!!」
漸く視界に捉えた犯人、全身を黒いローブで身を覆い尽くしているので姿を確認する事が出来ない。だがそれならばそのローブをはぎ取って、その正体と目的を白日の下に晒してやると星辰は思っていた。だが―――それは突然すぎる事に脚を止めてしまった。
「おいおいおい、これってマジか……!?」
『なんだこりゃ……言っとくが俺なんもしてねぇぞ』
エボルトも驚いているのか、星辰にそんな言葉を掛けつつも無罪を主張している。別に疑ってはいなかったがこれに驚くなというのには無理がある……黒ローブを守るように現れたのは機械と生物の融合したような不気味な姿をした怪人たちだった。
「キクカカアカ……」
「グルギュパルビシャ……」
「バリモワ……」
何故エボルトが無罪を主張したのか、それは機械部分にある。肩にはミサイルポッド、左手にはクロー、頭部には黄色い三角のようなセンサーが取り付けられている。それは……ビルドにも登場したハードガーディアンに酷く酷似していた。それらにこの場を任すように黒ローブは何処かへと消えていくが……
「是か非でも、あいつとっ捕まえるぞ!!」
『同感だ、俺も聞きたい事が出来た』