星狩りのヒーローアカデミア   作:魔女っ子アルト姫

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転生前を含めて、此処まで緊張した事は無かった。別に力を込められたり、威圧されたわけじゃない。左右を固められたうえで万丈には肩を組まれている、そんな状況になっているだけなのだが……

 

「(おいエボルト、話合わせろよ。転生云々とか絶対言うなよややこしくなるから!!)」

『分かってるっつの、相棒こそ余計なこというなよ。下手したらここで俺達GAME OVERだぞ!!どこぞの社長みたいにコンテニュー出来ねぇんだからな!!』

 

内心で互いに話し合いつつもどんどん脚は進んでいく、スピードを速めたり遅くしたらその時点で殺されるのでは……とビルドの本編を視聴している身としてはあり得ないことまで考えてしまっている。それ程までに二人がエボルトに向けるヘイトというのは凄まじいのである、エボルトがやらかした事はエゲツないのである。

 

「此処だ此処」

 

案内されるがまま、連れて行かれたのは町はずれにある寂れた小さな工場。神野区にあったという脳無の格納庫があった場所もこんな場所にあったと聞く。そこには木の看板に手書きと思われる字で桐龍開発工房、と書かれていた。戦兎と万丈の住まいは此処、という事になるのだろうか……万丈がシャッターを開けて中へと通されるとそこにはVシネで二人が拠点にしてた場所にそっくりだった。

 

「ようこそ、桐龍開発工房へ」

「え、えっと……お邪魔します……あっそうだ、すいませんちょっとインターン先に連絡していいですか?今、買い出しに出てまして……」

「ああそうだったのか、そりゃ悪かったな」

「いえ、少し失礼します」

 

そう言いながら少し離れながらも連絡をする星辰を見る戦兎、それを怪訝そうな目で見つめる万丈。

 

「おい、連絡取らせていいのかよ?」

「大丈夫だろ、エボルトと一緒に居るとは思えないほどに善良な精神の持ち主だぞ彼」

「そりゃ体育祭の中継やらの音声解析で分かってるけどよぉ……」

 

自分達は自分達で出来る限りの手を尽くして石動 星辰という人間についての調査を行った。その結果、判明したのはエボルトとは正反対と言っていい程に善良で優しい性格、友人が立ち直る為ならば悪役も喜んで引き受けて演じる程のお人好し。ある意味でエボルトが善性をもって行動をしていたら?というアンサーになっていると良い程の人格者、だからと言って油断を緩めていい理由にはならないのだ。

 

「バレねぇようにドライバーは付けたぞ」

「ああ、いざって時は……そうするしかない」

 

二人も命懸けなのである、下手を打ったらエボルトに殺される可能性だって高い。奴に取ったら自分達は目の仇なのだから今度こそ倒す、と息込んでいても可笑しくはない。だから最大限の警戒は怠らない……この世界の仲間たちを守る為にも自分達が命を張るのだ。電話を終えて戻って来た星辰に対して二人は笑顔を装いつつも内心で緊張し切っていた。

 

「さて、何が飲みたい?つっても大したもんはないけどな」

「緑茶にウーロン茶に……プロテインジュース!?何これこんなの買ったっけ俺?」

「ああ俺が買った、中々に美味い上に普通のプロテインよりもよく効くんだぜそれ」

「ったくいつの間に……」

「あっじゃあそのプロテインジュース貰えます?」

「おっ、お前プロテインの良さが分かるか!?」

 

一応お客として持て成してくれるのか、お茶などを準備してくれる二人。此処で星辰は一応トレーニングなどでも飲んだ事のあるプロテインジュースを選択する、味としても好きなのもあるが万丈の好印象値を稼いでおこうという魂胆である。

 

「さてと……俺達の事は知ってる、よな?」

「は、はい……仮面ライダービルドの天才物理学者の桐生 戦兎博士に仮面ライダークローズの格闘家の万丈 龍我さん」

「それはお前の中にいる奴からの情報か」

 

対面に座る戦兎とトレーニング器具に腰掛ける龍我、その視線は極めて鋭く本当に此方を射抜くようだった。そしてその問いには勿論YESとしか頷く事が出来ない。何か一つ間違えたらこの命の危険になると思うと嘘一つ付けない。

 

「そ、それで……お二人は俺を……殺しに来たんですか」

「……何でそう思う?」

「エボルトがやった事を踏まえて考えた結果です」

 

エボルトの悪行は数えきれない。人生を狂わされた、という言葉だけで済ませる事なんて出来ない程の被害を二人は受けている。それを考えたら二人が感じる危機感は大きいだろう、故にこの世界で同じ事をさせない為にエボルトの抹殺を計るのが普通だと思っている。

 

「考えなかった訳じゃない、体育祭を見た時はまさかと思った。だから万丈なんて直ぐに行くべきだって言ってたよ」

「当然だと思います」

「お前は何とも思わないのか、今この場で俺がクローズになってお前を倒すって言っても可笑しくはねぇだろ」

 

そう言いながらも万丈は腰に巻いていた上着を脱いで見せた、そこには既にクローズドラゴンがセットされているビルドドライバーがあった。何時でも変身して攻撃する事が出来るんだぞと言いたげなそれに星辰は息を呑むが、それも致し方ないという気持ちもある。

 

「勿論俺も死にたくはないですけど……そうされるならしょうがないって気持ちもあります」

『おいおいおい相棒、此処で死ぬ気か?』

 

その言葉を聞いた時、思わず二人は立ち上がってしまった。星辰の影が地面から引き剥がされるが如く、立ち上がるとそのまま姿を変え始めてエボルコブラの姿を取りながら星辰に寄り掛かったのだ。二人からしたら警戒しない訳がないのだ。

 

『よぉっ戦兎に万丈、久しぶりだな』

「エボルト……!!お前、如何して……!!」

「お前は戦兎に倒された筈だろ!!それで新世界創造の為のエネルギーにされたはず!!」

『物理法則を越えた救済、葛城 忍もよく考えたもんだ……だがな、俺自身をエネルギーにしたならば―――俺の因子もこの世界にあるとは考えなかったのか』

 

その言い方に戦兎は思わず歯軋りをした、可能性としては無くは無い、その程度の確立だが完全に消滅はせずに何かしらの影響はあるのではという予測はあった。だがそれ以上にパンドラボックスによって狂った影響を無くす方が圧倒的に大きいな物だった。エボルトは戦兎ならば、という事を言って自分が特典云々というのを上手く誤魔化しているのを星辰は感じた。

 

『だがまあ安心しろ、俺には前みたいな力はない。何せ相棒に抑え込まれる程度の力しか持ってないからな』

「相棒って……そいつにか?」

『俺とこいつは一心同体みたいなもんだ、石動 星辰という人間は俺であり、俺は石動 星辰という人間だ』

「つまり、その子が力を付けるという事はお前も力を付けるが同時に彼自身の力も上がっているからお前は抑え込まれるって事か」

『そういう事だ、相変わらず頭の回転が速くて助かるぜ戦兎。其処のバカにも見習ってほしいもんだぜ』

「あ"あ"っ!!?」

 

怒りを露わにする万丈にエボルトはおおっ怖い怖いと言いながらも星辰の背後に隠れる。その様子に確かに今までのエボルトとは何かが違うという事を察知する戦兎。確かにブラックホールフォームまで力を取り戻しているのならば、星辰は既に用済みに近い筈。それなのに行動を共にし続けるのはどうにも解せない。

 

「君自身は如何するんだ、ハッキリ言っておくがこいつは良い奴なんかじゃない。宇宙を旅しながら惑星を狩るブラッド族、極悪人なんて言葉じゃ片付けらない程。だが君は仮面ライダーエボルという名前で活動もしている、それは何故なんだ?」

「それは……」

 

自分の瞳を真っ直ぐ見据えて来る戦兎、まるで心の奥底まで見られているような感覚になって来る。此処は嘘なんて言えない、だから……素直に言おう。

 

「俺は……貴方に、いや仮面ライダーという物に憧れました。誰かの為に、誰かの笑顔の為に力を振う姿に憧れました。俺もそれになりたい、そんな力がエボルトから齎された。勿論この力が本当は破壊の為だけにあるのは知ってます、最初は凄い悩みました、どれだけ自分が思ってもエボルになればどうすれば星を効率的に破滅させられるのかっていうのが流れ込んできますから」

 

その言葉をただ黙って聞き続ける戦兎、一方で万丈はエボルトとは全く違う考えを持っている星辰に感心しつつも何やってんだテメェ!!と殴り掛かりそうになるのを止められている。

 

「でも、仮面ライダーは軍事兵器でもあるって聞きました」

「……ああ、そうだ」

「でもそれは使う者次第だからですよね、貴方みたいにラブ&ピースの為に使おうとする人だっている。だから俺だって……この力で何かをしたいって思ったんです。エボル、EVOLは反対から読むとLOVE。それを齎せるヒーローになれればいいなって……思ったんです」

 

それを聞いてエボルトは臭いねぇ……と言わんばかりに肩を竦めるが、戦兎は徐々に口角を持ち上げながらも顔をくしゃとさせたような笑顔を浮かべながらも髪の一部が跳ねた。

 

「ハハハッ聞いたか万丈!?つまりこいつは……俺のファンって事だ!!俺のファンがエボルトに憑りつかれた少年の心を正しく導いた……凄いでしょ最高でしょ天っ才でしょ!?」

「何言ってんだ戦兎、こいつは仮面ライダーに憧れたんだお前じゃねえ。そう俺に憧れたんだよ!!」

「ハァッ!?万年筋肉バカのお前に憧れる訳ねぇだろ、少しは脳みそ使えよ」

「ンだとテメェ!!?」

 

と何故か言い合いが始めてしまう二人に思わずエボルトは呆れたような声を出した。

 

『なんで喧嘩始めてんだよこいつら……』

「さ、さあ……」

「兎も角!!星辰君、俺達は君を信じることにする!!」

「但しエボルト、テメェは信じねぇからな!!何か変な事したらぶっ潰してやるから覚悟しとけ!!」

『やれるもんならやってみろってんだ』

 

 

 

『あ~助かった……こんなに緊張したのはいつ以来だ?』

「(あんだけ言っといて煽るのマジでやめろよ……心臓に悪すぎるぞお前……)」

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