ソードアート・オンライン Re:紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、原作における、ヒースクリフとの対話が終わったまでです。


第14話 ヒースクリフ

 翌日、俺とミトは朝9時に転移門前のカフェに向かうと既にキリトとアスナが来ていた。

 血盟騎士団としてではないのか、ミトとアスナは私服で来ていた。

 俺とキリトは、2人に見惚れていた。

 一方の俺達は、そこまで地味ではないが、2人の奴を見ると、見劣りする。

 

キリト「なあカルム?俺達今から、あの美少女達と一緒に行動するのか?」

カルム「そうだな。こんな事なら、もうちょい私服に気を使うべきだったな。」

 

 そんな事をキリトと話しながら合流し、昨日の出来事を話す。

 

アスナ「聖竜連合が?」

キリト「あぁ。あの槍を掻っ払った。掻っ払ったのはシュミット。死亡したカインズに、グリムロックの名前に凄く動揺してたし、槍を受け取る時も酷く怯えてた。まるで何かを知ってるみたいに。」

カルム「そうか……。」

ミト「そのシュミットが犯人って線は?」

キリト「それはないだろう。シュミットが犯人なら、足がつく様な真似はしない。あの槍は犯人からのメッセージじゃないか?」

カルム「それに、武器の名前はギルティソーン。罪のイバラって所からも、犯人がシュミットにメッセージを残した意味合いだろうな。」

アスナ「じゃあ、シュミットは、過去に何かあってそれに狙われてるって事?」

ミト「そうでしょうね。現場に残った槍が意味してるメッセージは、『次はお前だ。』って所が妥当じゃない?」

 

 俺達は一通りの情報整理を終えて、ヨルコさんの元へ。

 ヨルコさんは、目に見えて疲労していた。

 

アスナ「ごめんなさい、お友達が亡くなったばかりなのに……。」

ヨルコ「いえ、大丈夫ですから………。」

 

 本当に大丈夫なのか?

 アスナとミトの私服姿を見て、ヨルコさんは目を輝かせた。

 

ヨルコ「うわぁ……!その私服って、アシュレイさんのオーダーメイドなんですか!?」

カルム「アシュレイ?」

キリト「誰だ?それ。」

ヨルコ「知らないんですか!?」

 

 うん、知らない。

 だって、俺は私服にはそこまでこだわらないタイプだもん。

 だからと言って、ダメな人間を見るような視線はやめてくれ。

 

ヨルコ「アシュレイさんは、アインクラッドで最初に裁縫スキルをコンプリートした人で、カリスマお針子として有名なんです!しかも、最高級素材を持ち込まないと作ってくれないって事で有名で、中々作って貰えないんですよ!!」

「「へぇ〜〜〜〜!!」」

 

 それは確かに凄いな。

 ヨルコさんも、年相応なはしゃぎ方をして良かった。

 気になった俺はミトに聞いてみた。

 

カルム「そうなのか?」

ミト「えぇ。最高級素材を集めるのは結構苦労するわよ。」

カルム「ふぅん………。」

 

 なら、俺も集めて頼もうかな。

 そうして、俺達は昨夜に行ったレストランに移動して、調査結果を報告した。

 

キリト「まず報告だけど、カインズは確かに死んでたよ。死亡日等が全て合致した。」

ヨルコ「………そうですか。すみません、わざわざ確認して貰って……。」

カルム「早速で悪いんだが、ヨルコさん。シュミットとグリムロック。この2人を知ってるか?」

ヨルコ「………知ってます。2人とも、私が昔所属してたギルドの仲間です。」

 

 やはりか。

 という事は、そのギルドで何かあったな。

 

カルム「ヨルコさん、俺達は今回の事件が復讐、もしくは制裁の意味合いと睨んでる。申し訳ないけど、何か事情は知らないか?」

ヨルコ「………一つあります。昨日はお話し出来ませんでした。でも、無関係だと思ってて……。わかりました。話します。」

 

 そうして、ヨルコさんが語り出した。

 ヨルコとカインズ、シュミット、グリムロックが所属していたギルド、『黄金林檎』。

 ゲーム攻略が目的ではなく、生きる事を目的としたギルドで、互いに協力してたそうだ。

 リーダーの名前は『グリセルダ』。

 とても強くて、賢く、美人の女性だそうだ。

 半年前、レアな指輪を手に入れたらしいが、それがギルド崩壊のきっかけだそうだ。

 最初は、ギルド内でその指輪をどうするか揉めたそうだ。

 ギルドの為に使うか、売却してコルにするかの2つで。

 その後、多数決の結果、売却になって、リーダーのグリセルダが最前線の競売屋に委託しようと出かけた。

 しかし、いつまでも帰ってこず、黒鉄宮に確認して、死亡した事が判明。

 

ヨルコ「死亡時刻はグリセルダさんが指輪を持って最前線の層に上がった夜中の1時でした。死亡原因は、『貫通継続ダメージ』です。」

ミト「そんなレアアイテムを持って圏外に出るのはあり得ない。という事は……。」

カルム「恐らく、睡眠PKの被害にあったんだろうな。」

アスナ「半年前なら、手口が広まる前で、街の公共スペースで野宿する人もいたわ。」

キリト「偶然………じゃ無いだろうな。」

ヨルコ「誰がやったのか分からなくて、疑心暗鬼に陥った結果、ギルドは崩壊しました。」

キリト「ヨルコさん、辛い事を何度も聞いてすまない。指輪の売却に反対したのは誰なんだ?」

ヨルコ「カインズにシュミット、そして私です。反対した理由は2人とは違いますが。」

 

 ヨルコさん曰く、カインズとシュミットは前衛として使いたいと言って、ヨルコさんはカインズの意志を尊重したそうだ。

 その後、グリムロックの事も聞いて、お開きになった。

 俺達はヨルコさんを宿屋へと送り、話し合いをする事になった。

 

カルム「さて、本当なら、朝の時に言うべきだったんだろうけど……。」

ミト「?」

カルム「その、服、凄く似合ってますよ。」

ミト「あ、ありがとうね。」

 

 それを聞いたミトは機嫌が良くなったのか、鼻歌を歌い出した。

 なお、キリトもアスナの服を褒めたが、怒られたそうだ。

 

アスナ「それで、どうするの?」

 

 騎士服に着替えたアスナがそう切り出した。

 ちなみに、ミトも騎士服に着替えていた。

 

カルム「俺達に出来るのは、3つ。1つ目はグリムロックが何故、その槍を作ったのか、そして誰が依頼したのか。2つ目は残りの黄金林檎のメンツに接触してヨルコさんの発言の裏を取る。3つ目はカインズ殺害の手口検証。」

キリト「1つ目は無理だな。俺たち4人じゃ、探すのは効率が悪いし、もしグリムロックが犯人ならとっくに隠れてるだろ。」

ミト「2つ目もね。ヨルコさんやシュミットの反応から、あまり触れられたく無いし、仮に矛盾する事があっても、確認できない。」

キリト「なら、3つ目か。………知識のある奴の情報が欲しいな。」

 

 キリトの呟きに、アスナが反論する。

 

アスナ「そうは言っても、ヨルコさんには迷惑は掛けたくない。でも、信頼できて、尚且つSAOのシステムに詳しい人なんて……。」

キリト「あ。いるじゃん。アイツ呼ぼうぜ。」

アスナ「アイツって?」

キリト「ヒースクリフだよ。」

アスナ「ええっ!?」

 

 こうして、ヒースクリフを呼び出す事になった。

 アルゲードの転移門から、ヒースクリフが現れる。

 ヒースクリフが現れると、周囲のプレイヤー達が騒めき出す。

 ヒースクリフは、俺たちに気付くと、こちらに近づく。

 すると、アスナが弁解する。

 

アスナ「突然のお呼び立て、申し訳ありません団長!このバ………いえ、この者がどうしてもと言って聞かない物ですから………。」

カルム(アスナの奴、キリトの事をバカって言おうとしたな。)

ヒースクリフ「何、丁度昼食にしようと思っていた所だ。かの《黒の剣士》キリト君に、《紫紺の剣士》カルム君にご馳走してもらえる機会など、そうそうあるとは思えないしな。夕方からは装備部との打ち合わせが入っているが、それまでなら、付き合える。」

 

 ヒースクリフは、滑らかかつ鋼の様に引き締まったテノールで言う。

 キリトは、肩をすくめながら答える。

 

キリト「アンタには、ここのボス攻略戦で十分もタゲ取って貰った礼をまだしてなかったしさ。そのついでに、ちょっと興味深い話を聞かせてやるよ。」

 

 そう言って、キリトが案内したのは、一度キリトと行った事がある謎のNPC飯屋だった。

 あの飯屋は、かなり独特だからな。

 すると、アスナが声を出す。

 

アスナ「………帰りもちゃんと案内してしてよね。私、もう広場まで戻れないよ。」

カルム「噂だと、この街には、道に迷った挙句、転移結晶を持ってなくて、延々と彷徨ってるプレイヤーが何十人も居るらしいぞ。」

ヒースクリフ「道端のNPCに頼めば、10コルで広場まで案内してくれるのだ。その金額すらも持っていない場合は………。」

ミト「…………そうなるわね。」

 

 その後、無事に店に着いて、中に入る。

 中は客以外無人で、やる気のなさそうな店主のNPCのみだ。

 アルゲードそばを注文して、水を飲む。

 すると、アスナは微妙な顔で呟く。

 

アスナ「何だか………残念会みたくなってきたんだけど………。」

カルム「気のせいだろ?」

ミト「それより、早くヒースクリフに説明をしましょう。」

 

 俺たちは、ヒースクリフに昨夜の事件について、説明をした。

 ヒースクリフは、表情が変わらないが、カインズの死の場面で、片方の眉が動く。

 

アスナ「………そんな訳で、ご面倒おかけしますが、団長のお知恵を拝借出来ればと……。」

 

 アスナがそう締めくくると、ヒースクリフは水を飲んで口を開く。

 

ヒースクリフ「………ふむ。では、まずはキリト君とカルム君の推測から聞こうじゃないか。君たちは、今回の《圏内殺人》の手口をどう考えているのかな?」

キリト「まあ………大まかには3通りだよな。まず一つ目は、正当な圏内デュエルによる物。二つ目は、既知の手段の組み合わせによるシステム上の抜け道。」

カルム「そして、三つ目は、アンチクリミナルコードを無効化する未知のスキル、またはアイテムか。」

ヒースクリフ「三つ目の可能性は除外して良い。」

 

 俺が三つ目を言うと、ヒースクリフはそう断言した。

 それには、ミトとアスナも驚いた様で、ミトが口を開く。

 

ミト「………断言しますね、団長。」

ヒースクリフ「想像したまえ。もし君たちがこのゲームの開発者なら、その様なスキルや武器を設定するかね?」

キリト「まあ………しないかな。」

カルム「俺もそう思います。」

ヒースクリフ「何故そう思う?」

 

 ヒースクリフが、俺たちに磁力的な視線を放つ真鍮色の瞳を見返して、俺たちは答える。

 

キリト「そりゃ………フェアじゃないから。認めるのもちょいと業腹だけど、SAOのルールは基本的に公正さを貫いている。」

カルム「………尤も、あなたの《神聖剣》を除いては、ですけど。」

ヒースクリフ「フッ………。それを言うなら、君の《フュージョンジャック》も、随分と強いじゃないか。空を飛べるのだから。」

カルム「まあね………。」

 

 まあ、確かに、そういう意味では強い。

 だけど、ヒースクリフの神聖剣には敵わないだろうな。

 ミトとアスナが呆れながら口を開く。

 

ミト「まあ、今の段階で三つ目の仮説を確かめるのは時間の無駄よ。確認しようがないし。」

アスナ「そうね。まずは、デュエルによるPKの可能性から検討しましょう。」

ヒースクリフ「良かろう。…………しかし、料理が出てくるのが遅いな、この店は。」

カルム「俺たちが知る限り、あのマスターがアインクラッドで1番やる気がないNPCだ。」

キリト「まあ、そこも含めて楽しめよ。氷水なら幾らでもおかわりできる。」

 

 そう言って、キリトはヒースクリフのコップに水を注ぐ。

 

キリト「………圏内でプレイヤーが死んだならそれはデュエルの結果、てのがまぁ、常識だよな。」

カルム「だけど、カインズが死んだ時、デュエルのウィナー表示は出なかった。そんなデュエルなんて、あるのか?」

アスナ「それにしても、ウィナー表示の出る位置って、どういう決まりになってるの?」

ミト「…………ウィナー表示って、気にした事ないからね………。」

 

 俺たちが首を傾げる中、ヒースクリフは即座に答える。

 

ヒースクリフ「決闘者二人の中間位置。或いは、決着時二人の距離が十メートル以上離れている場合は、双方の至近に2枚のウィンドウが表示される。」

カルム「…………よく知ってますね、そんなルール。でも、カインズが死んだ場所では、ウィンドウは出なかった。誰も目撃してないからな。」

キリト「それに、カインズの背後の教会の中に出た場合は、犯人も教会内部に留まってる事になるから、アスナとミトと鉢合わせてなきゃ可笑しい。」

ミト「そもそも、教会内では、ウィンドウを私もアスナも見てないわよ。」

アスナ「うん。」

 

 じゃあ、どうやって………。

 俺は、一人で考え込む。

 ミト、キリト、アスナ、ヒースクリフの話を聞きつつだ。

 二つ目の仮説に関しては、不可能だと分かったからだ。

 すると、店主が丼を持ってくる。

 

店主「………お待ち。」

 

 そう言って、のそのそとカウンターに戻っていく。

 割り箸を取って、割って、食べる体勢を取る。

 すると、ミトとアスナが、低い声で言う。

 

アスナ「…………何なの、この料理?」

ミト「ラーメン?」

「「に、似た何か。」」

 

 ミトとアスナの疑問にそう答え、俺たちはラーメン擬きを食べる。

 しばらくして、食べ終えると、キリトがヒースクリフに質問をする。

 

キリト「………で、団長殿は、何か閃いた事はあるかい?」

ヒースクリフ「…………これはラーメンではない。断じて違う。」

カルム「俺らもそう思う。」

ヒースクリフ「では、この偽ラーメンの味の分だけ答えよう。」

 

 そう言って割り箸を丼に置き、口を開く。

 

ヒースクリフ「………現時点の材料だけで、《何が起きたのか》を断定する事は出来ない。だが、これだけは言える。良いかね………この事件に関して絶対確実と言えるのは、君たちがその眼で見、その耳で聞いた一次情報だけだ。」

カルム「それは………?」

キリト「どういう意味だ………?」

 

 俺たちが首を傾げる中、ヒースクリフは俺たちを見る。

 

ヒースクリフ「つまり………アインクラッドに於いて直接見聞きする物は全て、コードに置換可能なデジタルデータである、という事だよ。そこに、幻覚や幻聴の入り込む余地はない。逆に言えば、デジタルデータでない凡ゆる情報には、常に幻や欺瞞である可能性が内包される。この殺人………《圏内事件》を追いかけるのならば、眼と耳、つまる所、己の脳がダイレクトに受け取ったデータだけを信じる事だ。ご馳走様、キリト君、カルム君。」

 

 俺たちは、店を出る事にした。

 その際、ヒースクリフの、『何故こんな店が存在するのだ………。』という呟きが、微かに聞こえた。




今回はここまでです。
ヒースクリフが唖然とするNPCの店。
まあ、そんな反応になりますよね。
そして、リーファとシノンの彼氏キャラを思いついたので、書いておきます。
リーファの彼氏キャラは、現実での名前は佐々木悟で、キャラネームはアーロン、シノンの彼氏キャラは、現実での名前は木村大二で、キャラネームはギルバートです。
ちなみに、異世界おくてっとにて、そのキャラ達を先行登場させています。
まあ、異世界おくてっとに於けるRe:紫根の剣士の時系列は、アリシゼーション後ですが。

アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか

  • 刃王剣十聖刃
  • オージャカリバー
  • オージャカリバーZERO
  • その他
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