第1話 菊岡からの依頼
2025年12月7日
俺とキリトは、あの胡散臭い菊岡誠二郎に呼び出された。
冬馬「ここか?」
和人「そうだな。」
冬馬「ったく。あの人も何でこんな店に俺たちを呼び出すんだか。」
和人「後で文句を言ってやろうぜ。」
冬馬「そうだな。そのついでに嫌がらせでもしてやるか。」
俺とキリトが居るのは、銀座にある上品なクラシック音楽が流れ、高級感がある喫茶店だ。
周囲にはセレブなマダム達が居て、高校生の俺たちにとって、場違いだった。
ウエイターに待ち合わせだと言って、見渡すと、突然、この空気をぶち壊す傍若無人な大声が聞こえた。
菊岡「おーい!キリト君、カルム君!こっちこっち!」
そんな大声を出すものだから、周囲のマダムの視線が俺たちと菊岡に集まる。
気まずい思いをしながら、奥の窓際のテーブルへと向かい、菊岡の反対側に俺たちは座り、ウエイターがお冷とお絞りとメニューを渡してきた。
冬馬「あの、すいません。何でここに俺たちを呼び出したんですか?」
菊岡「この店は僕のお気に入りでね。あ、それと今回は僕が持つから、お金の事は気にせず、頼んでくれ。」
和人「言われなくてもそのつもりだ。」
冬馬「分かりました。」
メニューに目を通すと、シュークリームの値段が、1200円だという。
スーパーなら10分の1で買えるぞ。
まさかと思い、他の奴も見ると、殆どが四桁だった。
流石のキリトも値段に驚いたような反応をしつつも、平静を保つ。
そして、ウエイターに注文する。
和人「ええと……パルフェ・オ・ショコラ……と、フランボワズのミルフィーユ……に、ヘーゼルナッツ・カフェ。」
何と、これで合計3900円だ。
恐ろしいな。
ウエイターが俺の方を見てくる。
冬馬「ええと、フランボワズのミルフィーユとエスプレッソでお願いします………。」
もう、値段の事を考えると、恐ろしいな。
ウエイター「かしこまりました。」
そう言って、この場から去っていく。
すると、菊岡さんが話しかけてくる。
菊岡「やあ、キリト君、カルム君。ご足労願って悪かったね。」
和人「そう思うなら、銀座なんぞに呼び出すなよ。」
冬馬「それと、人前でその呼び方は本当にやめてくれよ。」
菊岡「うん?釣れないな。一年前、病院で目覚めた君たちの元に真っ先に駆け付けたのは、僕じゃないか。」
確かに、それは紛れもない真実だ。
菊岡さんが来たからこそ、深澄、和人、明日奈の三人と再会出来たのだから。
まあ、明日奈に関しては、ALO事件の後になったのだが。
そんな菊岡さんは、鼻歌を歌いながら、メニュー表を見ていた。
俺は、菊岡さんに要件を聞く。
冬馬「菊岡さん。SAOとALOの事件に関してはもう話しましたよね。」
どうせ、SAOかALOの事件絡みの呼び出しかと思っていたのだが。
菊岡「いや、今回は違う用件で呼んだんだ。まあ、これを見てくれ。」
菊岡はそう言って、タブレットを取り出してきて、俺とキリトに見せる。
液晶画面には、見た事の無い男性の写真とプロフィールが記載されていた。
和人「これは?」
菊岡「彼は茂村保、26歳。先月、11月の14日だな。彼が住んでいたアパートの大家が、異臭に気づいて発見してね。この時、既に死後5日半の状態だった。部屋は散らかっていたものの、荒らされた訳では無く、遺体はベッドに横たわっていた。そして、頭には…………。」
冬馬「アミュスフィアか。」
俺がそう言うと、菊岡さんは頷いた。
菊岡「その通り。変死ということで司法解剖が行われ、死因は急性心不全となっている。彼は心臓が弱かったということはなく、原因は不明のままなんだ。死亡してから時間が経ちすぎていたし、犯罪性が薄かったこともあってあまり精密な解剖は行われなかった。ただ、彼はほぼ二日に渡って何も食べてないで、ログインしっぱなしだったらしい。」
キリト「その手の話は、珍しくないだろう?」
確かに、コアなゲーマーほど、食事をしないでダイブしっぱなしというのはよくある話だ。
横にいるそこの人もそうだしな。
アスナから定期的に相談されるのだ。
アスナ曰く、『キリト君ったら、ゲームに夢中になりすぎて、ご飯をろくに食べない事があるの。』らしい。
キリトは救急搬送されるまでには至ってないが、中には死亡した人も居る。
だが、これはどう見ても違う。
菊岡「茂村氏のアミュスフィアには、《ガンゲイル・オンライン》。通称《GGO》というゲームだけがインストールされていた。」
冬馬「GGOって、確か、銃火器がメインのゲームだよな?」
キリト「ああ。日本で唯一、プロがいるMMOゲームだ。」
そんな事を話していると、俺たちが注文した物がやって来る。
菊岡は話を再開した。
菊岡「彼はGGOで、10月に行われた最強者決定イベントで優勝したそうだ。キャラクター名は《ゼクシード》。」
冬馬「じゃあ、その時、彼はGGOに居たんですか?」
菊岡「いや、その時彼は《MMOストリーム》に出演していてね。ここからは未確認情報なんだけど、同時刻に、GGOの中で妙なプレイヤーが居たらしい。」
「「妙?」」
俺とキリトが声を合わせると、菊岡が少し声のボリュームを下げて言う。
菊岡「GGOの酒場で、テレビに映っているゼクシード氏に向かって銃撃して、その直後にゼクシード氏は緊急ログアウトした。」
冬馬「待ってくれ。菊岡さんはゼクシードがそのプレイヤーに殺されたと言うのか?」
和人「幾らなんでも無いだろ。」
俺たちはそれを信じられずに、それぞれ否定して、頼んだ物を食べる。
菊岡「実は、これと似たような事がもう一件も起こっていてね。GGO内でそのプレイヤーに銃撃された《うす塩たらこ》というプレイヤーも住んでいるアパートにて遺体で見つかったんだ。」
冬馬「………………。」
偶然にしてはおかしい。
和人が、エスプレッソを飲みながら、菊岡さんに尋ねる。
和人「銃撃した奴は、ゼクシードの時と同じなのか?」
菊岡「恐らく。やはり、裁き、力といった言葉の後に、同じキャラクターネームを名乗っている。」
冬馬「どんなのですか?」
俺がそう聞くと、菊岡さんはタブレットに口を寄せて言う。
菊岡「……………
和人「デス…………?」
冬馬「ガン…………?」
デス・ガンね…………。
それはそうとして、俺はとあることを聞く。
冬馬「でも、この2人の心不全は、確かなんですよね?」
菊岡「……………と言うと?」
和人「俺たちが聞きたいのは、脳に損傷はあったのか、無かったのかだ。」
和人がそう言うと、菊岡さんは口を開く。
菊岡「……………僕も、それが気になってね。司法解剖を担当した医師に問い合わせたが、脳に異常は見つからなかったそうだ。それにね、かのナーヴギアの場合は、信号素子を焼き切るほどの高出力マイクロウェーブで、脳の一部を破壊した訳だけど、アミュスフィアは、そんなパワーの電磁波は出せない設計だって、開発者達は断言したよ。」
それもそうだ。
アミュスフィアは、ナーヴギアの高出力マイクロウェーブを出せない様にした物で、安全性を謳われている。
だが、それにしても…………。
冬馬「随分と手回しが良いじゃないですか、菊岡さん。」
和人「そうだな。こんな偶然と噂だけで出来上がっている様なネタに。」
菊岡「まあ、9割方、偶然かデマだろうとは、僕も思うよ。だから、ここは仮定の話さ。君たちは、可能だとは思うかい?ゲーム内の銃撃によって、プレイヤー本人の心臓を止める事が。」
それを聞くと、ある事が浮かび上がる。
それは、そのデス・ガンと名乗るプレイヤーが発射した弾丸が、仮想世界を越えて、現実世界にいるプレイヤーを殺す。
そんな事が浮かんだ。
俺とキリトは、顔を青ざめるが、すぐに答える。
和人「…………ありえない話だと思うけど、仮にそのデス・ガンなる銃撃者によって、ゼクシードと薄塩たらこのアミュスフィアに、何らかの信号が送られたとして、心臓を止めるほどの感触…………もしくは味、匂い、光景、音。五感情報か?」
冬馬「……………というより、菊岡さん。実はもう一通り検証済みなんじゃないんですか?エリート様連中が頭を絞った後なら、今更、俺たちの出番は要らないはずだろ?」
菊岡「いやいや…………僕が君たち二人にそんなことをする訳無いじゃないか。僕は君たちと話すのが好きなんだから。」
本当か…………?
この人のそういう所が、胡散臭いんだよな。
キリトは、椅子から立ち上がる。
和人「やめだ。結論、ゲーム内からの干渉で、プレイヤーの心臓を止めるのは不可能。銃撃と二人の心臓発作は偶然の一致だ!冬馬、帰るぞ!」
冬馬「ああ。ちなみに、俺も和人とほぼ同じ結論だ。」
俺と和人がそう言いながら、帰ろうとする。
すると、菊岡さんが呼び止める。
菊岡「待った、待った!ケーキをもう一つ頼んで良いからさ!あと少し付き合ってくれ!」
その言葉に、俺たちは振り返る。
菊岡「いやぁ…………二人がその結論を言葉にしてくれてホッとしたよ。実は、僕も同じ考えなんだ。この二つの死は、ゲーム内の銃撃によるものでは無い。」
冬馬「……………何が言いたいんですか?」
菊岡「そうだったね。…………それでここからが本当の本題なんだ。君たちにはガンゲイル・オンラインにログインして、この《死銃》なる男と接触してくれないかな?」
そんな無邪気な笑みを浮かべながらそう語って来る。
そんな菊岡さんに、キリトは冷ややかな視線をぶつけて。
和人「はっきり言ったらどうだ、菊岡さん。撃たれて来いって事だろう?」
菊岡「いやぁ、まあ。」
和人「やだよ!何かあったらどうするんだよ!アンタが撃たれろ。心臓トマレ。」
その言葉に、突然、俺の中で『トマーレ!』という謎の音声が聞こえてきた気がする。
聞いてられるかと思い、キリトと共に退出しようとすると、菊岡に足を掴まれた。
菊岡「さっき、その可能性はないって、合意に達したじゃないか!それに、この《死銃》氏はターゲットにかなり厳密なこだわりがあるようで、君たちにしかできないんだ!」
冬馬「こだわり?」
菊岡の大声で目立ってしまったので、流石に席に戻る。
菊岡「イエス。ゼクシードと薄塩たらこは、どちらも名の通ったトッププレイヤーだった。つまり、強くないと撃ってくれないんだよ、多分。かの茅場先生が最強と認めた君たちなら……。」
和人「無理だよ!GGOってのは、そんな甘いゲームじゃないんだ!プロがうようよしてるんだぞ!」
冬馬「そんなゲームに、銃の素人である俺たちを行かせようってのか!?無茶にも程があるだろ!!」
菊岡「それだ。そのプロってのは、どういう事なんだい?」
俺たちがそう言う中、菊岡さんは指を指してくる。
キリトは、口を開く。
和人「文字通りだよ。ガンゲイル・オンラインは、全VRMMOで唯一、ゲームコイン現実還元システムを採用してるんだ。」
菊岡「ほう…………?」
冬馬「それって、確か、あれだよな?GGO内で稼いだ金を、現実の金として還元出来る奴だよな?」
和人「そうだ。プロってのは、GGO内で、毎月コンスタントに稼ぐ連中さ。トッププレイヤーで、月に20万から30万ってとこらしい。」
なるほどな。
それなら、ALOをプレイしている人よりも、ゲームに時間を割く人が多いだろうな。
和人「そういった理由で、GGOのハイレベル連中は、他のMMOプレイヤーなんか比較にならない時間と情熱を、ゲームに注ぎ込んでいるのさ。」
冬馬「それだと、俺たちがGGOに行っても、返り討ちに遭いそうだよな…………。と言う訳で菊岡さん、他を当たってくれ。」
菊岡「待った、待った!他の当てなんか無いってば!プロの相手は荷が重いという事なら、調査協力費という名目で、報酬を払おうじゃ無いか。これだけ。」
そう言って、指を3本立てる。
つまり、三十万という事だ。
何か、断りづらくなってきてないか?
すると、キリトが質問をする。
和人「…………なんで、そこまでこだわるんだ?ネットにありがちなオカルト話じゃないか。」
菊岡「…………実はね、上の方が気にしてるんだよね。」
冬馬「何を気にしてるんですか?」
菊岡「フルダイブ技術が現実に及ぼす影響というのは、今や、各分野で最も注目されている。この一件が、それを規制しようとする勢力に利用される前に、事実を把握しておきたい。その確信が欲しい。…………こんな所でどうかな?」
冬馬「………………。」
菊岡さんの言いたい事は、一理ある。
確かに、フルダイブ技術は、現実に及ぼす影響があるのは事実だ。
何せ、噂によると、軍隊の訓練にも使えるのでは無いかと言われるほどだ。
ちなみに、何でそんな事を知っているのかというと、母さんがそういう事を調べてくるので、知っている感じだ。
ちなみに、何でそんな事を調べるのかと聞いたら、母さんは黒い笑みを浮かべて、『それは、知らない方が良いかもしれないわよ?』と語った。
すると、キリトが菊岡さんに質問をする。
和人「直接、運営に聞けば早いんじゃ無いのか?」
冬馬「確かに。GGOって、あの雪村迅さんが設立した、サイバーイングラム社も開発に関わってるんだろ?」
そう。
アーロンこと、佐々木悟曰く、雪村迅が、サイバーイングラムという会社を設立して、ゲームの開発に協力しているとの事だ。
その中に、GGOもあった。
すると、その疑問に、菊岡さんが答えた。
菊岡「GGOを運営しているザスカーなる企業は、アメリカにサーバーを置いているんだ。現実の会社の所在地はおろか、電話番号もメールアドレスも未公開。それに、サイバーイングラムも、あくまで武器のデータを作ったのに過ぎないから、運営には関わっていないそうだ。例の《ザ・シード》公開以来、怪しげなバーチャルワールドは、増える一方だよ。」
和人「へぇ…………。」
冬馬「そうなんですね。」
なるほどな。
まあ、菊岡さんの言う事には、偽りはない。
怪しげなバーチャルワールドが増えているのは事実だしな。
菊岡「そんな理由で、真実の尻尾を掴もうと思ったら、ゲーム内で直接の接触を試みるしか無いんだよ。勿論、最大限の安全措置は取る。銃撃されろとは言わない。君たちから見た印象で判断してくれれば、それで良い。行ってくれるね?」
そう言って、菊岡さんは俺たちを見る。
俺は、ある事を思う。
四千人もの命を奪ったVRMMO、ソードアート・オンラインの舞台、アインクラッドの記憶は、一年も経って、過去の物になろうとしていた。
だが、再び仮想世界で殺人事件が起こり、その世界に呼ばれようとしている。
それは、誰かが俺たちに『忘れるな』と言わんがばかりに感じた。
俺は、ため息を吐いて、口を開く。
冬馬「分かりました。行きますよ。」
和人「冬馬が言うなら俺も………。」
菊岡「ありがとう。」
???「話は済んだか?」
俺たちがそう言うと、違う方向から、声がしてくる。
その声がした方向を向くと、八人の集団が居た。
冬馬「えっと…………どちら様で?」
和人「菊岡さん、この人たちは?」
菊岡「そうだった。…………彼らは、その調査に協力してくれる人たちだよ。」
克己「なるほど、お前らか。俺は石動克己だ。」
その石動克己という人物は、そう名乗った。
菊岡さん曰く、日本における重要機関を護衛する組織『X』の次期司令官らしい。
何だよそれ。
それで、他の人たちは、アメリカ国防総省『ペンタゴン』の次期司令官、キョウスイハジメ。
財務大臣の子息、鋼塚優樹。
警察庁の長官の息子、引鉄明。
イギリス王室御用達のSP、炎姫レイカ。
世界1の天才頭脳を持つ少年、神農来人。
日本現職総理大臣の息子、左晴人。
イギリス軍総司令官の息子、照井進之介。
このメンバーで、アメリカ、イギリス、日本のVRゲーム内における事件を解決する刑事組織である『エンディング』を設立したそうだ。
何か、凄いんだけど。
冬馬「つまり……………事件性を感じたから、調査するって事か?」
晴人「そういうこった。」
来人「ゲーム内の銃撃で、人が死んだというのは、何か裏がありそうな気がしてね。」
レイカ「そういう事だから、貴方達も協力しなさい。」
進之介「武器や防具に関しては、心配するな。」
優樹「俺たちが調達しよう。」
ハジメ「そういう事だから、心配しないで!」
明「ああ。」
なるほど、武器とかも調達してくれるのか。
それはありがたいな。
菊岡「…………それで、今から聞いてもらうのは死銃の声だ。何かのヒントになって欲しいんだけど。」
菊岡さんがイヤホンを渡してきて、タブレットを操作すると、男の声が。
死銃『これが本当の強さだ!愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!俺と、この銃の名は死銃……デス・ガンだ!』
そんな声が聞こえてきた。
死銃ね…………。
こいつは、何を企んでいるのだろうか。
そして、先ほどから、SAOの時の記憶を刺激されるのは、何でだ?
今回はここまでです。
ファントム・バレットの物語が動き出しました。
そして、シノンの彼氏キャラ、石動克己が登場しました。
ちなみに、石動克己を含めて、エンディングの面々は、Warewareさんからのリクエストです。
モチーフは、仮面ライダーWのNEVERの面々と、左翔太郎、フィリップ、照井竜です。
あと、今回から、新たなアンケートを始めます。
それは、ユウキの処遇に関してです。
リメイク前は、ミトの家で引き取っていましたが、ミトの家族の設定を確認して、不可能だなと感じたので、違う人が引き取る事にします。
その際、ついでに、ユウキに彼氏キャラは必要なのかのアンケートも兼ねています。
ユウキの彼氏キャラに関して、何か意見やリクエストがある場合は、メッセージで送るか、下記のリンクからお願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=286358&uid=373253
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
評価のバーに色がつきましたが、評価1と評価0に1票ずつ入っていたので、若干ショックを受けました。
ショックを受けましたが、何とか、頑張っていきます。
これからも応援の程、宜しくお願いします。
カルムの相棒のモチーフは、どちらにするか
-
富加宮賢人
-
五十嵐大二
-
その他