レイヒムside
アスナさんが連絡する為にログアウトして、また戻ってきてから数分しか経っていないが、その時間は長く感じる。
リズベット「アスナもちょっと落ち着きなさいよ……って言っても、無理だよね。」
アスナ「ごめん……。でも、嫌な予感がするの。キリト君達が私たちに《ラフィン・コフィン》の事を言わなかったから……。ただの因縁って訳じゃ無くて、何かとんでもない事が起こってる……そんな気がする………。」
まさか、ラフコフの面子がGGOに居るなんて。
そりゃあ、普通にゲームをやるだけならそれで良いんだけど、嫌な予感がする。
誰も喋らずに、ライブ中継から出ている音しか聞こえない中、入り口のドアがノックされ、ドアが開いた。
それを聞いたリズベットが口を開く。
リズベット「もう遅ーい!」
部屋の中に入ってきた人物に言い放ったリズの一言は、この場にいる全員の内心を代弁してくれたものだった。
クリスハイト「こ、これでもセーブポイントから特急で飛んで来たんだよ、ALOに速度制限があったら免停確実だよ。」
開口一番にそんなとぼけたセリフを言いながら入ってきたのは、ひょろりとした長身を簡素なローブで包み、マリンブルーの長髪を片分け、銀縁の丸眼鏡をかけているアスナと同じウンディーネの魔法使いの男性だ。
名前は《クリスハイト》。
これまで何度か共に戦ってきたことがあるため、ある程度面識はあった。
その正体は、キリトやカルムに接触した菊岡誠二郎だ。
恐らく、菊を意味する《クリサンセマム》と岡を意味する《ハイト》の造語だろう。
名前は本当に分かりやすいな。
クリスハイトが後ろ手にドアを閉めると、アスナさんが詰め寄る。
アスナ「何が起きているの?」
クリスハイト「えっと、何から何まで説明すると、ちょっと時間が掛かるかもしれないなぁ。それにそもそも、どこから始めていいものか……。」
アスナ「誤魔化す気……!?」
ユイ「なら、その役は私達が代わります。」
そう言って、ユイちゃんとカナちゃんが出てきた。
ユイちゃんとカナはいつもの普段の愛くるしい表情とは違い、今は厳しい顔を浮かべていた。
2人は俺たちに今GGOで起きていることを話してくれた。
それは、ゲームの中で死銃と名乗るプレイヤーによって撃たれた《ゼクシード》、《薄塩たらこ》という2人のプレイヤーが現実でも死亡したという恐るべきものだった。
先ほどボロマントのプレイヤー……死銃に撃たれた《ペイルライダー》という人も3人と同様に死んでいる可能性が高いらしい。
ユイちゃんとカナちゃんは倒れ込み、アスナさんが支える。
2人のネットからこれだけの情報をまとめ、日本語にするAIとしての完成度は凄い。
しかし、ネットの悪意といった黒い感情は2人には処理しきれないだろう。
カルム曰く、ユイちゃんとカナちゃんは、メンタルヘルス・カウンセリング・プログラムだが、無数のプレイヤーがシステムに流し込む恐怖や欲望、悪意と言った黒い感情を処理しきれないそうだ。
そんな2人には感謝している。
リーファ、アーロン、リズベット、シリカ、クライン、ノーチラス、ユナ、フィリア、レイン、パラドが唖然とした表情を浮かべる。
そんな中、クリスハイトは軽い口調で言う。
クリスハイト「これはまったく驚いたなぁ。この短時間でそれだけの情報を集め、その結論を引き出したのかぁ。どうだい、ラー……いや、《仮想課》でバイトしてみないかい?」
レイヒム「ラー……?」
とぼけたことを言うクリスさんをアスナは睨みつける。
するとクリスハイトは両手をさっと持ち上げ、降参するようなポーズを取る。
その際、俺は何かの単語に引っかかっていた。
クリスハイト「いや、済まない。この期に及んで誤魔化す気はないんだ。おチビさん達の言うことは全て…………事実だよ。」
クリスハイトは、最初こそは軽く言っていたが、最後は重く言う。
すると、クラインが口を開く。
クライン「おい、クリスの旦那よ。あんたがキリトとカルムのバイトの依頼主なんだってな?ってことはテメェ、その殺人事件のこと知っててキリトとカルムにミトをあのゲームにコンバートさせたのか!?」
クラインが詰め寄ろうとするが、クリスハイトが押し止める。
クリスハイト「ちょっと待った、クライン氏。これは
クライン「ン....だと......?」
ノーチラス「クリスハイトさん。それが殺人事件じゃないってどういう意味だ?」
ユナ「その2人の話だと、既に死銃に撃たれたプレイヤー2人………いや、3人も死んでいるって……。これはどう見ても殺人事件でしょ?」
ノーチラスとユナも立ち上がり、クリスハイトに問いかける。
すると、クリスハイトはヒートアップした生徒を宥める教師みたいに、冷静かつ論理的にノーチラス達に話す。
クリスハイト「2人も冷静になって考えてみたまえよ。どうやって殺すんだ?アミュスフィアは、ナーヴギアのセキュリティ強化版。どんな手段を用いようとも脳に一切傷を付けられない。ましてや、機械と直接リンクしていない心臓を止めるなんて不可能だ。僕は2人と先週リアルでたっぷり議論し、最終的にそう結論付けたんだよ。」
クラインもノーチラスもユナも渋々納得すると、リーファとアーロンが立ち上がる。
リーファ「クリスさん。なら、あなたはどうして、お兄ちゃんとカルムさんをGGOに行く様に頼んだんですか?あなたも感じてた……いえ、今も感じているんですよね?あの死銃というプレイヤーが何か恐ろしい秘密を隠してるって。」
アーロン「どうなんですか?クリスハイトさん。」
リーファとアーロンのその発言に、クリスハイトが黙って、アスナさんはとある事を言う。
アスナ「クリスさん。死銃は、私達と同じ、SAO生還者よ。しかも、最悪とも言われたレッドギルド……ラフィン・コフィンの元メンバーだわ。」
クリスハイト「っ!?それは、本当なのかい!?」
レイヒム「アスナさんの言う通りです。僕にアスナさん、クラインもラフコフ討伐戦に参加していましたから。しかも、これが初めてじゃない。あなたが警察を動かす様頼めないんですか?」
俺とアスナの言葉に、クリスハイトが黙り込み、リズが話に入ってくる。
リズベット「ねえ……アスナ。クリスハイトって、SAOのこと知っているの?確か、リアルではリアルでは何かネットワーク関連の仕事してる公務員さんで、VRMMOの研究がてらALOやってるって話だったけど......。」
クリスハイト「その通りなんだが、昔は別の仕事をしていたんだよ。僕は、総務省の《SAO事件対策チーム》一員だったんだ。……と言っても、対策らしい対策なんて何もできない、名ばかりの組織だったんだが……。」
そんな自嘲的な事を言っていると、アスナが言ってくる。
アスナ「それでも、あなたなら今すぐに死銃と名乗るプレイヤーの現実世界の名前や住所を突き止めて、今自宅からGGOサーバーに接続しているか、契約プロバイダに照会することはできるでしょ?」
クリスハイト「確かに可能だよ。でも、明確な証拠が上がっていないから、今すぐにっていうのは難しいんだよ……。それに、仮想課にあるSAO プレイヤー諸君のデータは、本名とキャラネーム、それに、最終レベルだけなんだ。所属ギルド名や、その……………殺人の回数は一切分からない。元《ラフィン・コフィン》という情報だけでは、現実の住所氏名までは突き止められないんだ。」
つまり、どうする事も出来ないという事か。
そんな風に歯噛みしていると、リーファが呟いた。
リーファ「お兄ちゃんとカルムさん、ミトさんは、自分たちで何とかするしかないって思って、今あの戦場にいるんだと思います。」
皆の視線が、リーファに集中する。
多分、現実世界でキリトを一番見ているのは、リーファなのは、間違いない。
リーファ「夕べ帰ってきた時、お兄ちゃん、凄く怖い顔してました。カルムさんは流石に分かりませんが多分、昨日の予選の時点で気付いたんだと思います。GGOにラフィン・コフィンに入ってた人達がいること、その人たちが本当に人を殺していることを……。」
アーロン「リーファ……………。」
リーファがそう言う中、アーロンはリーファの左肩に手を置く。
クライン「バッカ野郎がぁ!水クセェんだよ!一言言ってくりゃ、どこだろうとオレもコンバートしたのによ!」
クラインが力任せに左手をカウンターに叩きつける。
シリカ「でも、キリトさんとカルムさんとミトさんなら言わないと思います……。あの3人なら、少しでも危険があるなら、私たちを決して巻き込もうとしない。」
フィリア「そういう人たちだからね……。」
パラド「ったく。こりゃ、帰ってきたら説教だな。」
ノーチラス「そうだな。」
ユナ「うん……。」
壁の大スクリーンには、いくつもの映像が映し出されている。
でも、俺たちはカルムとキリト、ミトのGGOでのアバターの外見を知らない。
だけど、映し出される映像には三人の姿はない。
そしてあのボロマントもだ。
大スクリーンの左端にあるプレイヤーリストには、カルムたちの名前がある。
他の出場者たちが【DEAD】ステータスになる中、3人ともまだ【ALIVE】のままだ。
きっとどこかで死銃と戦っているのだろう。
そう信じるしかなかった。
すると、アスナさんがクリスハイトさんに尋ねる。
アスナ「クリスハイト、あなたは知っているはずよね?キリト君とカルム君、ミトの三人がどこからダイブしているのか。」
クリスハイト「あー……それは、まあ……。と言うか、その場所は僕が用意したんだ。セキュリティは鉄板、モニタリングも盤石だよ。すぐそばには何か起こった時に最適な人がいるから、キリト君たちの現実の体に危険がないのは責任もって安全は保証するよ。」
アスナ「それはどこにあるの?」
クリスハイト「流石にそれは……。」
クリスハイトは、そう言って誤魔化そうとする。
すると、アスナさんは険しい表情で一歩踏み出す。
それを見て、クリスハイトは頷きながら口を開く。
クリスハイト「えっと……ち、千代田区の……お茶の水の……病院です……。」
アスナ「千代田区の都立中央病院?そこってキリト君とカルム君がリハビリで入院してたっていう!?」
クリスハイト「は、はい……。」
アスナさんへの恐怖から、敬語になるクリスハイト。
すると、アスナさんは口を開く。
アスナ「私、行きます。現実世界の、キリト君にミト、カルム君の所に。」
アスナさんはそう言って、ログアウトしていった。
行動力がすごいね。
まあ、親友に彼氏が居るしな。
すると、クリスハイトが口を開く。
クリスハイト「………今後、アスナ君の逆鱗に触れないようにしないとね……。」
レイヒム「それがいいと思いますよ。それより、クリスハイトさん。先程言いかけたラー……とは一体何ですか?」
クリスハイト「……君には、関係ないよ。」
俺がそう聞くと、クリスハイトはそう言い残して、部屋から立ち去っていった。
一体、クリスハイトは何を隠しているんだ?
ノーチラスは、ユナに話しかける。
ノーチラス「……そういえば、ユナ。何か、重村教授が話があるって聞いたけど。」
ユナ「ああ……。お父さんがね、ノー君と一緒に新たなAR機器を作らないかだって。」
ノーチラス「分かった。返答は僕がやっておくから。」
ユナ「……そういえば、お父さん、最近どこかに出かけるようになったけど、なんだろ?」
ノーチラスとユナがそんな風に話す。
俺たちは、ただモニターを見つめる。
カルム達の無事を祈って。
その間、パラドがどこかへと向かう。
今回はここまでです。
今回は、ALOでの話です。
アスナを怒らせると、やばい目に遭いそうですよね。
次回は、死銃達との戦いの始まりです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
アリシゼーションの話で、アーロン、エターナルの2人の神様アカウントはどうしましょうか?
ミトの場合は、月神ルナリアのアカウントを使わせる予定です。
ルナリアのアカウントの特殊能力でリクエストがあれば、受け付けます。
あと、Re:紫紺の剣士とは別のSAOの小説をやろうかなと検討しています。
仮面ライダーとかの要素は無しにした感じの話です。
まあ、やるかどうかは検討中ですが。
もし、リクエストがあれば、下記から受け付けます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=299030&uid=373253
アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか
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