シノンside
暗視モードに変更したヘカートⅡのスコープを右目で覗き込み、闇風と死銃を迎え撃とうとする。
スコープで確認するが、まだ闇風と死銃の姿は見えない。
だけど、どちらも確実に接近しているのは間違いない。
エターナルは広大な砂漠の中に立ち、闇風と死銃が来るのを待っている。
事実上、今回の優勝候補者筆頭だと言われている闇風を一撃で仕留めるということに不安もあった。
闇風はAGI型ビルドでも最強のプレイヤーで前大会の準優勝者だ。
私の狙撃をかわす可能性も十分にあり得る。
でも、そんな不安もエターナルの姿を見てなんとか無くすことができた。
カルムにミトにキリト、そしてエターナルがいたおかげで私は今もこうして戦うことができている。
そのためにも今私がやるべきことを果たさなければならない。
シノン(全て終わったら、彼に私の想いを伝えよう。拒絶されても、エターナルにこの想いを伝えたい。)
そう思い、今持っているヘカートⅡに話しかけるように呟く。
シノン「お願い、私に力を貸して。ここからもう一度、歩き始める為の力を……。」
私は、ヘカートにそう言う。
ついにスコープ越しに闇風の姿を捉えた。
シノン「速い!」
AGI型ビルドは衰退しているとよく言われているが、そうでもないと改めて思う。
決して立ち止まらず、高速で走り続けることで相手に照準を許さないダッシュは、プレイヤー名の通り、まさしく闇色の風のようだ。
それでも今ここで倒さなければならない。
すると、1発の銃弾がエターナルに向かっていく。
死銃の物だ。
エターナルは間一髪に避けて、弾丸は遥か後方の廃ビルに着弾して、ビルが崩れる。
闇風も、突然銃弾が飛来してくることに予想出来ていなかったため、岩陰に隠れて次いで岩陰へと方向転換しようとした。
闇風を倒せるチャンスは今しかない。
ヘカートⅡのトリガーを引き、弾丸が放たれる。
スコープ越しに見た闇風は、驚きと悔しさ、確かな賞賛の表情が浮かんでいた。
闇風のアバターは数メートル以上吹き飛ばされ、砂の上を数度転がり、仰向けになって止まった。
直後、闇風のアバターには【DEAD】のタグが表示され、辺りにはグレネードが散らばっていた。
ーーエターナル!
すぐに死銃が狙撃してきた方に銃口を向ける。
エターナルは、弾丸を躱しながら、死銃に迫っていく。
スコープの暗視モードを切り、倍率を限界まで上げ、銃弾が飛んできた位置を捉えた。
スコープには物陰からサイレント・アサシンでエターナルを狙っている死銃の姿があった。
――いた!
死銃を見ると、恐怖が湧き上がる。
それでも、エターナルに教えてもらった本当の強さで恐怖をねじ伏せる。
すぐに死銃に照準を合わせ、トリガーに触れて絞る。
だが、死銃は弾道予測線に気付き、私にサイレント・アサシンの銃口を向けてきた。
――勝負!!
ヘカートⅡのトリガーを引き、死銃もサイレント・アサシンのトリガーを引く。
2つのライフルが同時に火を噴いた。
同時に放たれた弾丸同士が衝突するという奇跡的なことが起こるかと思ったが、ギリギリのところですれ違う。
死銃が放った弾丸がヘカートⅡに付いていた大型スコープを破壊し、それと同時にスコープ越しに私が放った弾丸がサイレント・アサシンが完全に破壊されるのが一瞬見えた。
シノン「ごめんね……。」
破壊されてしまった、この世界で稀少かつ高性能な銃であるサイレント・アサシンに、弔いの言葉を呟く。
スコープが破壊され、今はもう遠距離狙撃は不可能となってしまった。
シノン「あとは任せたわよ、エターナル。」
エターナルside
エターナル(狙撃では死銃を倒せなかったか。だが、良くやった。後は任せろ。)
これで、死銃のサイレント・アサシンは破壊されて、黒星・五十四式のみになった。
それで撃っても、俺ならエターナルエッジでも倒せる。 そう思い、加速していく。
死銃はバラバラになったサイレント・アサシンの銃身の下から細い金属棒を抜き出した。
あれは、クリーニング・ロッドの類か?
あれはただのメンテナンスツールで、攻撃してもHPは少しも減らない。
だが、違和感を感じる。
クリーニング・ロッドは先端が針みたいに尖っていない。
死銃に躱されると同時に、死銃が攻撃してくるが、俺は回避する。
だが、完全には回避しきれず、攻撃を受ける。
俺は口を開く。
エターナル「ほう。少しはやるじゃないか。それは、エストックというところか?」
死銃「分かるのか。《ナイフ作製》スキルの、上位派生、《銃剣作製》スキルで、作れる。長さや、重さは、このへんが、限界だが。」
エターナル「そうまでして、アイツらに復讐をしたかったのか?ザザとやら。」
ザザ「なぜ、貴様が…………!?」
エターナル「カルムから聞いたんだよ。」
俺がそう言うと、ザザは驚く。
そう。
俺はSAOにはログインしていない為、ラフコフの事は知らなかったが、カルム達が予め教えてくれたのだ。
それを聞いたザザは、口を開く。
ザザ「ほう…………。紫紺の剣士は、覚えていたのか。なら、そこを、退け。あの女を殺す。」
エターナル「なら、尚更退けないな。」
ザザ「ならば、貴様を、殺す。俺は、全てにおいて、最強なのだ。」
エターナル「貴様が全てにおいて最強だと?笑わせてくれる。」
ザザ「何……………?」
ザザがそう言う中、俺はそう吐き捨てる。
それを聞いたザザに怒りの気配が出てくる中、俺は言う。
エターナル「確かに、誰かを殺して得た力は凄まじいものだ。だが、守れなくて後悔して、二度と同じ過ちを犯さないと覚悟を決めた力は……………そんな薄っぺらい力より上だ!」
ザザ「………………。」
エターナル「それに、ゼクシード達を殺したのも、お前が今持っている拳銃の力でも、お前たち自身の能力でもない。メタマテリアル光歪曲迷彩を使い、総督府の端末で大会出場者の住所を調べた。部屋に予め共犯者を侵入させ、銃撃に合わせて薬品を注射し、心不全による変死を演出をしたんだろ?」
ザザ「………………。」
俺はそう言う。
強盗が襲ってきた時、朝田を守る事が出来なかった。
だからこそ、その過去を受け入れ、同じ過ちを繰り返さない。
その為に俺はここにいる。
俺の問いに、ザザは押し黙る。
エターナル「その様子だと、概ね合っているようだな。俺と戦うのが怖いなら、今すぐログアウトして警察に自首す……っ!?」
俺がそう言う中、ザザが銃撃して、俺は何とか躱す。
ザザ「俺は、レッドプレイヤーだ……!貴様を殺して、あの女絶望させて、あの女を殺す。これを、使って!」
ザザはそう言うと、ガイアメモリを取り出す。
そのガイアメモリは、デスのガイアメモリだった。
エターナル「デスメモリか……………。」
ザザ「このメモリの、力を、味わえ…………!」
『デス!』
そのガイアメモリを起動すると、ザザの気配が強くなる。
エターナル「ほう。」
ザザ「貴様だけは、絶対に、殺す…………!」
エターナル「やれる物ならやってみろ。踊りな!死神のパーティータイムだ!」
俺とザザはそう話すと、お互いに向かっていく。
シノンside
シノン「エターナル……!」
思わず声が出る。
約700メートル先でエターナルと死銃が互角に戦っている。
でも、エターナルは苦戦していた。
エターナルが苦戦するのは初めて見る。
そんな光景を見て、私はトリガーに指を掛ける衝動を必死に堪えていた。
ヘカートⅡのスコープは先ほど破壊されてしまい、いつものように狙撃でエターナルを援護することができない。
スコープがない状態でこの距離から狙撃するのは危険だ。
闇雲に撃てば、エターナルに当ってしまう可能性だってある。
このまま、エターナルが勝つことを祈って、黙って見ていることしかできないことが辛かった。
エターナル『お前の過去が壮絶なのは分かる。お前のその罪は、俺も背負ってやる。だから、そんな事を言うな。お前は、決して1人なんかじゃない。誰が何と言おうと、誰も理解してくれなくても、俺が理解者になってやる。』
私が泣いていた時、エターナルにこんな事を言われて、とても嬉しかった。
そして、それを聞いて、私は確信を得ていた。
エターナルが、石動君である事を。
そう思う中、絶対に助けたいと思った。
でも、私がエターナルを助けるには一体どうすれば……!
いや、ある。
それは死銃にどれくらい効くのかは分からない。
でも、やる価値はある。
大きく息を吸って、エターナルと死銃が戦っている方を見る。
エターナルside
スピード、バランス、そしてタイミング。
全てが完成されている。
強いのは確かだな。
ここで俺が負けても現実の体が傷つくことも死ぬことはない。
だが、俺が負ければ、ザザは絶対にシノンを《黒星・五十四式》で撃ち、現実世界にいる共犯者がシノン……朝田を手に掛ける。
俺はシノン/朝田に絶対に殺させないと約束した。
その約束を果たすためにも絶対に負けるわけにはいかない。
だが、このままではジリ貧だ。
どうすればと思っていると、一本の赤いラインがザザを突き刺す。
照準予測線だ。
ザザは突然の攻撃で、回避しようと後ろに大きく跳んだ。
だが弾丸は飛んでこない。
ーーエターナル!!
これはシノンの予測線による攻撃。
この半年間の経験と閃き、闘志をあらん限り注ぎ込んで放ったラストアタック。
幻影の一弾……ファントム・バレットを無駄にするわけにはいかない!
ザザはメタマテリアル光歪曲迷彩を使って姿を消そうとする。
エターナル「させるか!」
すぐさま拳銃から銃撃して、不可視の何かに当たった。
ザザ「グッ!」
エターナル「ここはSAOじゃない!銃の世界だということを忘れたのが命取りだったな!」
ザザ「まだだっ!」
ザザは、エストックの攻撃をしようとするが、俺はマントを外して、ザザにぶつける。
ザザがマントに気を取られている中、俺はゾーンのメモリを取り出す。
このメモリは、シノンから受け取った物だ。
『ゾーン!』
俺は、ゾーンメモリをマキシマムスロットに装填する。
『ゾーン!マキシマムドライブ!』
エターナル「ハァァァァァァァ!!」
すると、アイツらが持ってるガイアメモリが、俺の方へと向かっていき、俺の体にたくさん付いているマキシマムスロットに装填されていく。
『アクセル!バード!サイクロン!ダミー!エターナル!ファング!ジーン!ヒート!アイスエイジ!ジョーカー!キー!ルナ!メタル!ナスカ!オーシャン!パペティアー!クイーン!ロケット!スカル!トリガー!ユニコーン!バイオレンス!エクストリーム!イエスタデイ!マキシマムドライブ!』
これが、俺の本気だ!
それを見たザザは。
ザザ「これは……………!?」
エターナル「メモリの数が…………人殺しの重みが…………乗り越えて来た場数が…………何より、背負っている覚悟が違う!終わりだぁぁぁぁ!」
俺はそう叫ぶ。
そして、エターナルエッジにエターナルメモリを装填する。
『エターナル!マキシマムドライブ!』
エターナル「ハァァァァァ!」
俺は、エターナルエッジに蒼炎を纏わせて、ザザに攻撃する。
その大技をザザにぶつけて、その際に、腰のホルスターに収まっていた《黒星・五十四式》ごとザザを真っ二つに斬り裂いた。
同時に爆発を引き起こす。 その衝撃で地面を転がりつつも、何とか起き上がる。
分断されたザザのアバターと引き千切られた黒いボロマントが宙を舞い、俺から少し離れた場所にザザの上半身が転がり、その近くに僅かに遅れてエストックが地面に突き刺さった。
ザザ「まだ、終わらない。終わらせ……ない……。……あの人が……黒の剣士たちを……。」
最後まで言い終える前に、ザザのアバターには【DEAD】と死亡したことを表すタグが浮かび上がる。
エターナル「いや、お前たち《ラフィン・コフィン》はもう終わりだ。ここはもう、ソードアート・オンラインじゃない。」
俺はザザにそう言い残して、落としたマントを拾いつつ、後ろを振り返ってこの場を離れる。
砂漠の中を歩いていると、前の方からスコープを破壊されたヘカートⅡを抱えたシノンがやってくる。
シノン「お疲れ様……。」
エターナル「ああ、シノンも良くやった。最後のバレットラインには助けられた。」
シノン「ええ。あの…………一つ聞きたい事があるの。」
エターナル「なんだ?」
俺がそう言う中、シノンはそう言う。
シノン「エターナルって…………石動君…………だよね?」
エターナル「そうだ。」
シノン「やっぱり……………!助けてくれて、ありがとう。」
エターナル「いや、俺も助ける事ができて良かった。」
俺とシノンが拳を突き合わせていると、2台のバイクの音がして、カルムとキリトとミトが来た。
3人は、大分ボロボロだった。
カルム「そっちも片付いたみたいだな。」
キリト「苦戦したけど。」
ミト「お疲れ様。」
エターナル「大した事ない。」
それでも、あいつらが無事でよかった。
そう思う中、キリト達が口を開く。
キリト「死銃が倒された今、この大会における危険は去った。シノンを狙っていた共犯者も捕まるのを恐れて逃げ出したと思うぜ。」
エターナル「一応、念の為に110番した方が良いはずだ。カルム。菊岡に警察を動かしてもらえるように頼めるか?」
カルム「まあ、問題ないとは思う。でも、流石にシノンの住所を知らないからなぁ…………。」
ミト「そうね。」
俺がそう言うと、カルムとミトはそう言う。
確かに、俺は、シノンがどこに住んでいるのかは、京水に聞いたから分かるが、カルム達は知らないからな。
すると、シノンが口を開く。
シノン「良いわ。エターナル達にも教えておくわ。私の本当の名前は朝田詩乃。住所は東京都文京区湯島四丁目……。」
シノンがアパート名と部屋番号まで教えた途端、キリトとカルムは驚いた。
カルム「湯島だったら、今俺たちがダイブしている千代田区の御茶ノ水からかなり近いぞ。」
シノン「そこって眼と鼻の先じゃない。」
これには俺もシノンも驚いた。
キリトとカルムは住んでいる埼玉県の川越市じゃなくて別のところからダイブしているとは聞いていたが、まさかこんなに近いところからダイブしていたとはな。
ミトも来てくれる事になった。
エターナル「なら、ログアウトしたら、俺たちが駆けつけた方がいいだろう。」
シノン「そう。……………ところで、私にだけ情報開示させて終わり?」
キリト「あ。そうだったな。俺の名前は桐ヶ谷和人だ。」
カルム「で、俺は小野冬馬。」
ミト「私は兎沢深澄よ。」
シノン「なるほどね……………。キリトとミトに関しては、安易なネーミングじゃない?少しはカルムを見習ったら?」
ミト「別に良いじゃない。」
キリト「君には言われたくないな。」
カルム「ていうか、エターナルの本名は聞かなくて良いのか?」
シノン「良いわよ。もう聞いたから。」
シノン達はそう話す。
まあ、俺に関しては、シノンの方も分かってたみたいだからな。
この間にも中継カメラたちが集まってきて、大会の優勝者が決まるのを待ち望んでいるようにも見えた。
エターナル「だが、俺達5人で早く大会の優勝者を決めないとログアウトできないぞ。」
キリト「そうだったな。どうやって決めるか?」
カルム「俺は遠慮しておく。体力も限界だし、この状況でこの場の全員に勝てる気もしないから。」
ミト「私も同感。こんな状況で戦いたくないし。」
キリト「俺も帰りを待っている人がいるからパス。やっぱり銃より剣の方が俺に合っているしな。でも、最後くらいは銃で決めるか。カルム、ミト、やるぞ。」
カルム「ああ。」
ミト「ええ。」
キリトは《FNファイブセブン》、カルムはマグナムシューター、ミトはベルブラスターを取り出す。
向かい合い、キリトはミトに、ミトはカルムに、カルムはキリトに向かって同時に発砲した。
3人は倒れ、残ったアバターには【DEAD】のタグのタグが浮かびあがった。
その顔は、安らかだった。
シノン「まさか最後は3人揃って相打ちで死ぬなんてね。」
エターナル「コイツらは慣れない銃の世界で戦ってきたんだ。今はゆっくりと休ませてやろう。」
シノン「そうね。じゃあ、3人の邪魔にならないように決着を付けましょう。」
エターナル「ああ。」
俺たちは、3人がいる場所から離れ、シノンと向き合う。
エターナル「俺たちはどうやって決着を付ける?昨日みたいに決闘スタイルをして勝負を決めるか?」
シノン「それよりもいい方法があるわよ。エターナルは、第1回BoBは優勝するはずの人が油断してお土産グレネードに引っかかって2人同時優勝になったことは知っているでしょ?」
エターナル「ああ。」
シノン「なら話は早いわ。」
シノンは俺の手に何かを置いてスイッチを入れた。
この世界で何度も見たことがあるものため、シノンが俺の手に置いたものはプラズマグレネードだとすぐに分かった。
エターナル「おい、これってまさか……!」
俺はすぐにプラズマグレネードを放り投げようとしたが、シノンが抱きついてくる。
それも、微笑を浮かべて。
エターナル「シノン……………!?」
シノン「ふふふ……………エターナル。あなたの事が好き。」
俺が驚く中、シノンは耳元に口を近づけて、そう囁く。
その直後、俺たちは爆発して、BoBは終了した。
今回はここまでです。
すいません。
色々と諸事情により、再投稿します。
ご迷惑をおかけいたしました。
今回で、死銃との戦いは終わりました。
あと2話か1話ほどで、ファントム・バレットは終わります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
オーディナル・スケールに相当する話は、現状、フェアリィ・ダンスに出てきたゲムデウスをストーリーに絡ませようかなと考えています。
あと、ソードアート・オフラインや、自分が他に書いている小説とのコラボの話を書こうかなと思っています。
コラボの話は、『アクセルワールドVSソードアート・オンライン 千年の黄昏』みたいな感じで。
もし、これらで意見がある場合は、活動報告にリクエストを送ってください。
アリシゼーションに関しても、リクエストがある場合は、活動報告にて受け付けます。
アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか
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刃王剣十聖刃
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オージャカリバー
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オージャカリバーZERO
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その他