あの事件から2日が経とうとしていた。
この日、私は学校の敷地内にある花壇の縁石に腰掛けて、12月の寒い風が吹く中、ある人物たちが来るのを待っていた。
10分近く待ち続けていると、甲高い笑い声と共に複数の足音が近づいてきた。
校舎の北西端と焼却炉の間から現れたのは、遠藤と取り巻きの2人だった。
遠藤たち唇を歪め嗜虐的な笑みを浮かべた。
私はカバンを置いて遠藤たちに向かって言った。
詩乃「呼び出しておいて待たせないで。」
取り巻き「朝田さぁ。最近マジちょっと調子乗ってない?」
取り巻き「本当、ちょっと酷くなーい?」
遠藤「別にいいよ。友達なんだから。なあ、そんかしさぁ、あたしらが困ってたら助けてくれるよな?取り敢えず2万でいいや。貸して?」
遠藤たちはいつものように悪い笑みを浮かべ、お金を要求してきた。
対する私は一旦拳を強く握り、度の入っていないNXTポリマーレンズのメガネを外し、睨みつけてこう言い放った。
詩乃「前にも言ったけどあなたにお金を貸す気はない。」
遠藤「今日はマジで兄貴からアレ借りて来てんだからな。」
怒った遠藤は、大量のマスコットが付いた通学用のカバンからモデルガンを取り出した。
右手に持つと私に銃口を向けてきた。
その瞬間、いつものように心臓の鼓動が早くなり、呼吸が苦しくなってしまった。
遠藤「これ、絶対人に向けんなって言われたけどさ。朝田は平気だよな。慣れてるもんな。ほら泣けよ。朝田。土下座して謝れよ。」
やっぱりダメなのかと諦めそうになっていた時だ。
不意に「お前なら大丈夫だ。俺が付いている」とエターナルの声が聞こえた気がした。
――そうだ、今の私にはエターナルがいるんだ。
銃の扱いがわからずトリガーを引けずにいる遠藤から、モデルガンを奪い取った。
詩乃「1911ガバメントか。お兄さん、いい趣味ね。私の好みじゃないけど。大抵の銃はセーフティーを解除しないと撃てないの。」
唖然としている遠藤たちに説明しながら、手慣れた手付きで安全装置の解除とハンマーを起こす。
6メートルほど離れた焼却炉の傍らに、引っくり返されているポリバケツの上にある空き缶があるのを見つける。
それに銃口を向けて構え、トリガーを引いた。
すると、発射された弾は空き缶に命中し、ポリバケツから落ちた。
私が遠藤たちの方を見た途端、彼女たちは怯んだように口元を強ばらせて半歩後退った。
遠藤「や、やめ……!」
詩乃「確かに、人には向けないほうがいいわ。これ。」
そう言いながらモデルガンのセーフティーをかけて遠藤に渡した。
遠藤は、呆然としていた。
遠藤たちが視界からいなくなった途端、両足から力が抜けて、この場に倒れそうになるが、何とか堪えた。
詩乃「やっぱりまだキツイわね……。」
でも、私にとって大きな一歩になっただろう。
そう言い聞かせ、眼鏡を掛けなおしてこの場から去っていく。
一方、遠藤の方には。
遠藤「…………………。」
京水「こら!アンタ達!」
遠藤が呆然としていると、そこに京水先生がやってくる。
遠藤「げっ……………!?」
京水「校内にそんな物を持ち込んでくるなんて、もう言い逃れは出来ないわよ!大人しく来なさい!」
と、京水先生に見つかり、連行されていった。
下校しようと校門に向かっていると、学校の敷地を囲む塀の内側に何人かの女子生徒が集まって、チラチラと校門を見て何か話している光景が見えた。
その中に同じクラスでそこそこ仲の良い2人の女子生徒がいるのに気が付き、彼女たちに歩み寄った。
すると、2人も私に気が付いて声をかけてきた。
女の子「朝田さん、今帰り?」
詩乃「うん。何かあったの?」
女の子「校門のところに、この辺の学校の制服じゃない男の子がいるの。バイク停めて、ヘルメットを2つ持っているからウチの生徒を待っているんじゃないかって。悪趣味だけど、相手がどんな人なのか興味あるじゃない?」
詩乃「その男の子ってどんな人なの?」
女の子「それがね、黒髪で、大人びた感じの男の人だよ。」
女の子「何か、漫画やドラマで出てきそうなクールなイケメンって感じ!」
何処か興奮するかのように話す2人。
黒髪でクールなイケメンというと、彼しか思い浮かばない。
すぐに時計を確認してみるとすでに約束の時間は過ぎていた。
こっそり塀から覗くと、校門の近くに1台のバイクを停め、2つのヘルメットを用意して待っている石動君の姿があった。
石動君は私に気が付くとこっちに歩み寄ってきた。
克己「詩乃。遅かったから心配したぞ。」
詩乃「ご、ゴメン。ちょっと色々立て込んでて……。」
克己「まあ、何もなかったからいいが……。」
でも、こうやって迎えに来てくれて凄く嬉しかった。
そんな風に話す中、周囲が騒ぎだす。
克己「目立っているな。」
詩乃「そりゃあ、校門の前にバイクで、しかもこの学校の人じゃない人が来たら、嫌でも目立つでしょ。」
克己「それもそうか。なら、さっさと行くぞ。」
石動君はそう言って、ヘルメットを渡してくる。
私はそれを被って、石動君の後ろに乗る。
すると、石動君が声をかける。
克己「ところで、スカートは大丈夫か?」
詩乃「体育用のスパッツはいているから心配ないわ。」
克己「そうか。なら、飛ばすぞ。」
詩乃「ええ。」
女の子「朝田さ〜ん!また明日、その人との関係を教えてよね〜!!」
バイクのリアシートに乗り、石動君の身体にギュッと手を回す。
すると、クラスメイトの女の子の声が聞こえてくる。
そして私たちが乗るバイクは走り出した。
バイクに乗られながら、私はある決意をしていた。
石動君に想いを伝えると。
私たちがやって来たのは、銀座にあるいかにも高級そうな喫茶店だった。
こういうところには入ったことがないため、狼狽えてしまう。
石動君は、ポーカーフェイスを崩さずに入ったので、私も着いていく。
ウエイター「いらっしゃいませ、お二人様でしょうか?」
克己「いや、待ち合わせで……。」
石動君は、白いシャツに黒蝶ネクタイのウェイターさんにそう言い、高級感あふれる喫茶店内を見渡すと、その中にいた太い黒縁眼鏡をかけてスーツを着た男性がこちらに気が付き、無邪気な笑みを見せながら手を大きく振る。
???「おーい、エターナル君、こっちこっち!」
手を振っているメガネをかけた男性の隣には、少し不機嫌そうにしてその男性を見ているキリトと、それを宥めていたカルムとミトがいた。
私たちはそこへ行き、向かい側に空いている席へと座った。
和人「遅いぞ。」
克己「悪かったな。」
冬馬「まあまあ。来たから良いだろ。」
深澄「そうね。」
四人がそう話す中、ウェイターさんが私と石動君にメニューとおしぼりを持ってくる。
メニューを見てみるとのものもほとんどが4ケタの値段で驚いてしまう。
???「さ、2人もお金のことを心配しないで何でも好きに頼んでよ。」
和人「エターナル、シノン。この人が全額奢ってくれるっていうから、遠慮なんていらないぞ。どうせ代金は国民の血税だからな。」
和人の言葉にフッと軽く笑う石動君。
克己「そう言うことなら安心して頼めるな。」
???「エターナル君まで……。カルム君は少しは遠慮してくれたのに……。」
冬馬「だったら、この店を待ち合わせ場所にしない方が良いんじゃないですか?」
???「ここは、僕のお気に入りの店なんだよ。」
石動君とキリトの言葉にメガネをかけた男性は苦笑いを浮かべ、カルムが突っ込む。
それを見ながら、私はメニューを見てオーダーする。
私が頼んだものだけでも2200円で、石動君達のも合わせると合計金額はかなりのものとなった。
ウェイターさんが注文したものを確認すると、この場から去っていく。
すると、メガネをかけた男性は私に名前を名乗る。
菊岡「はじめまして。僕は総務省通信基盤局の菊岡誠二郎と言います。」
詩乃「は、はじめまして。朝田……………詩乃です。」
私がそう言うと、菊岡という人は、頭を下げる。
菊岡「この度は、こちらの不手際で朝田さんを大変な危険に晒してしまい、本当に申し訳ありませんでした。」
詩乃「い、いえ、そんな……………。」
和人「本当だよ。菊岡サンがもっと真剣に調べてれば、俺たちもあんな目に遭わなかったんだからな。」
菊岡「そう言われれば、返す言葉も無いが、キリト君達も予想してなかった訳だろう?まさか、《死銃》がチームだったなんてさ。」
冬馬「まあ、それもそうなんだが。」
深澄「それはそうと、分かった事を教えてくれないかしら?」
菊岡「それもそうだね。」
菊岡さんが謝る中、キリト達はそう言う。
そんな中、菊岡さんは口を開く。
菊岡「さっき、チームと言ったけど、実際には5人居たわけだね。少なくとも、リーダー役だった新川昌一の供述では、そうなっている。」
克己「その新川昌一が、あのステルベンのアバターを動かしていたんだろう?」
菊岡「それは間違いないね。彼のアミュスフィアのログにも、該当時間にガンゲイル・オンラインに接続していた事が記録されている。」
和人「それで、新川昌一というのは、どういう人間だったんだ?首謀者は彼ということなのか?」
菊岡「……………それを説明する為には、2022年のSAO事件以前から始めなくてはならない様だ。だが、まあ、その前に………………。」
菊岡さん、石動君、キリトがそう話す中、ウェイターがワゴンに大量の皿を載せて戻ってきた。
それらが音もなくテーブルに並べられると、菊岡さんに勧められ、食べる事に。
そのケーキは、美味しかった。
詩乃「……………美味しいです。」
菊岡「美味しい物は、もっと楽しい話をしながら食べたいけどね。また今度付き合ってください。」
詩乃「は、はあ……………。」
私がそう言うと、菊岡さんはそう言う。
すると、石動君とカルムが口を開く。
克己「おい。あんまりそういう事を言うと、犯罪の匂いがするからやめておけ。」
冬馬「それに、菊岡さんの楽しい話って、大体臭いかキモいかのどちらかじゃないですか。」
深澄「そうなの?」
菊岡「心外だなあ。僕が犯罪をするわけないじゃないか。それに、東南アジア食べ歩きの話とかは、自信あるんだよ?……………ま、その前に事件の話をしておこう。」
石動君とカルムがそう言うと、ミトが反応して、菊岡さんはそう反論しながら、タブレットPCを取り出す。
それを見て、私は気を引き締める。
新川君の兄である新川昌一は、幼い頃から病弱気味で、新川兄弟のお父さんは、弟である新川君を自分の後継ぎとさせようとする中、お兄さんの方は顧みなかったらしい。
それで、二人は追い詰められていたのではと、新川君達のお父さんは話していたらしい。
二人の仲は悪くなかったようで、お兄さんがSAOに閉じ込められて、解放された後、新川君だけに、語ったらしい。
自分がSAOで多くのプレイヤーをその手にかけて、殺戮者として恐れられていた事を。
それを聞いた新川君……………恭二君は英雄視していたそうだ。
死銃が誕生したのは、リアルマネートレードで透明化できる能力を持つマント、メタマテリアル光歪曲迷彩を購入してからだった。
それを聞いて、私は口を開く。
詩乃「あの……………物凄い値段になったと思うんですけど………………。」
菊岡「日本円で三十万ちょっと、だったそうだ。しかし昌一氏は、父親から月に五十万という生活費を与えられていたそうだ。」
深澄「という事は、あのライフルや、レア素材のエストックも、そのリアルマネートレードで買ったのね。」
冬馬「本当、SAOに課金システムの類が無くて助かったよ。」
菊岡「全くだ。」
三十万……………。
私のヘカート以上の値段になるのは、想像するのは容易かった。
それを聞いたミトとカルムは、そう言う。
キリトも含めて、冗談でもなさそうな色が浮かんでいた。
新川昌一は、そのマントと双眼鏡を使い、晶一はリアル情報を盗むのに熱中した。
菊岡さんによると、先にマントを入手してから、リアルの情報を盗む様になったそうだ。
冬馬「今度、ジンさんに言って、そのマントの街中での使用を禁止する様に言わないとな。」
カルムはそんな風に言った。
その後、リアルの情報を盗んでいき、私の情報も含めて、16人程の情報を手に入れたそうだ。
同じ頃、新川君はキャラクター育成の行き詰ったという。
AGI型万能論だという偽情報を流したゼクシードを深く恨んでいた。
それを聞いた昌一さんは、ゼクシードの本名と住所を手に入れた事を語った。
そこから、仮想と現実を隔てる壁が少しずつ溶け始めたのだろう。
それから、連日ゼクシードをどう粛清してやろうか話し合う内に、今回の《死銃事件》の計画が出来上がっていき、エターナルの事も恨む様になったそうだ。
エターナルに関しては、私と良く居たから、それで恨む様になったのではと言っている。
最終的に、彼らのお父さんが経営する病院から緊急時に電子錠を解錠するマスターコードと高圧注射器、劇薬のサクシニルコリンを盗み出す算段をつけた。
克己「なるほどな。大病院なら、サクシニルコリンもあるし、緊急時のマスターコードもあるからな。それを悪用したのか。」
菊岡「そういう事だね。」
彼らは念入りに下調べをし標的をセキュリティの低い場所で一人暮らしをしている人物に絞った。
昌一が現実世界の実行犯とゲーム内のサポート役を交代で行い、新川君が死銃でもあるスティーブン……《ステルベン》で、ゼクシードと薄塩たらこの2人を銃撃した。
だが、GGOのプレイヤーたちは死銃に怯えるどころかデマ扱いをしていたため、今回の大会でも私を含めて3人を殺すこととなった。
今回のターゲットは、標的はゼクシード達と同じ条件を満たす《ペイルライダー》、《ギャレット》、そして私だった。
それを聞いて、私はある事に気づいた。
詩乃「そういえば、これは偶然かもしれないんですけど……………。」
菊岡「何ですか?」
詩乃「ターゲットにされたのは、全員、ステータスタイプが非AGI型なんです。」
菊岡「ほう?」
詩乃「恭二君は、純粋なAGI一極ビルドで、そのせいでプレイに行き詰まっていました。それで、特にSTRに余裕のあるプレイヤーに対しては、複雑な感情があったと思います。」
菊岡「ふむぅ………………。」
私がそう言うと、菊岡さんはそう唸る。
すると、キリト達が口を開く。
キリト「いや、ありえる事だよ。MMOプレイヤーにとって、キャラクターのステータスというのは、絶対の価値基準だからな。」
ミト「悪戯のつもりで、ウィンドウ操作中の仲間の腕を押して、ステータスアップの操作を1ポイント分ミスらせて、大喧嘩になったのを知ってるから。」
カルム「多分、ゼクシードの情報に踊らされたと思って、恨みを募らせていたんだろうな。」
キリト達はそう言う。
恭二君が現実での実行役に固執した結果、新たな仲間を加えたそうだ。
菊岡「その加わった人は、金本敦、浅切総司、伊担聡介の3人だ。SAO時代のギルドメンバーで、キャラクターネームは、金本敦はジョニー・ブラック、浅切総司はロー、伊担聡介はシーフ。聞き覚えは………………。」
冬馬「あるよ。まあ、うち二人は、BoBに参加してたからな。」
深澄「ええ。その3人は捕まったんですか?」
菊岡「いや。浅切総司ことローは逮捕されたが、残りの二人は未だに逃走中だそうだ。」
菊岡さんがそう聞くと、カルムは答える。
ミトがそう聞くと、菊岡さんはそう答えた。
どうやら、昌一さんが、念の為に4本渡していたそうだ。
菊岡さんは一通り話し終えると、ずっと黙ってた石動君が口を開く。
克己「なあ、菊岡。新川恭二は、これからどうなるんだ?」
菊岡「彼は未成年だから、医療少年院に収容される可能性が高いと思うよ。実際、人が4人も死んでいるからね。」
詩乃「彼と面会出来るのは、いつになるんでしょうか?」
菊岡「送検後もしばらくは拘置されるから、鑑別所に移されてからになるかな。」
詩乃「私……………彼に会いに行きます。会って、私が今まで何を考えてきたか、今何を考えているか話したい。」
克己「朝田………………俺からも頼めるか?あいつとはそこまで接点があった訳じゃない。だが、あいつをあそこまで駆り立ててしまったのは、ある意味では俺でもあるからな。」
私と石動君はそう言う。
それを聞いた菊岡さんは微笑を浮かべて語った。
菊岡「うん、2人は強い人だ。 ええ、是非そうしてください。面会できるようになったらメールでご連絡しますよ。」
菊岡さんは、左腕に付けてる時計を見ながら言った。
菊岡「ああ、申し訳ないがそろそろ行かなくては……。その前にキリト君、カルム君、ミト君。ザザこと新川昌一から君たち3人に伝言を預かっている。もちろん、それを聞く義務はない。どうする?」
3人が頷いて答えると菊岡さんはメモを取り出し、それに眼を落した。
菊岡「それでは、えー……『これが終わりじゃない。終わらせる力はお前たちにはない。すぐにお前たちもそれに気づかされる。イッツ・ショウ・タイム。』……………以上だ。」
喫茶店から出て菊岡さんと別れた後、私は石動君とキリトとカルムがバイクを停めたところへと向かう。
和人「何か、すっきりしない終わり方だったな。」
冬馬「ああ。未だに逮捕されていないジョニー・ブラック。そして、謎が多いPoH。だが、気になるのはアイツもだ。」
詩乃「本当に…………総務省の役人なの?」
和人「実は前にカルムと一緒に菊岡を尾行したんだけど、アイツは霞ヶ関じゃなくて市ヶ谷に向かっていたんだよ。途中で見失ってしまったけどな。」
深澄「市ヶ谷にあるのは総務省じゃなくて防衛省でしょう?まさか、菊岡さんは防衛省……自衛隊の人間だっていうの?」
和人「俺だって知りたいよ。」
キリトとカルムとミトは、菊岡さんが何者なのか話し合っていたが、結局正体はわからなかったため、この話を終えることにした。
すると、石動君は私の方を見てこう言った。
克己「詩乃、この後は時間あるか?お前に会って欲しい人がいるんだ。」
詩乃「別にいいけど……。」
石動君のバイクに乗り、連れて来られたのは台東区御徒町の裏通りにある黒い木造の小さな店だった。
ドアの上に揚げられた2つのサイコロを組み合わせたデザインの金属製の飾り看板には《Dicey Café》とあった。
どうやら喫茶店のようだ。
詩乃「ここ?」
克己「ああ。」
冬馬「中に入ろう。」
私は、そのカフェの中に入る。
マスター「いらっしゃい。」
中に入ると店のカウンターには巨漢でスキンヘッドの頭をした黒人のマスターが迎えてくれた。
客席には他校の制服を着た二人の女の子が居た。
???「おそーい!待っている間にアップルパイ2切れも食べちゃったじゃない。太ったらキリトのせいだからね。」
開口一番に文句を言ってきたのは、茶髪のショートヘアーをしたそばかすが特徴の少女だった。
和人「何でそうなるんだ。」
???「まあまあ。キリト君、早く紹介してよ。」
栗色の長い髪をした少女が話すと、カルムが私たちのことを紹介する。
冬馬「紹介するよ。この二人は、ガンゲイル・オンラインの3代目チャンピオンである、エターナルとシノンだ。」
克己「どうも。リアルネームは、石動克己だ。」
和人「で、こっちが、ぼったくり鍛冶屋のリズベットこと篠崎里香。」
里香「な…………何よ!?」
カルムがそう言うと、石動君はそう話す。
キリトがそう言うと、里香という少女が攻撃してくるが、それを受け流す。
次はミトが口を開く。
深澄「で、あっちがアスナこと結城明日奈よ。」
明日奈「初めまして。」
和人「そんで、あれが……………壁のエギルことエギル。」
エギル「おいおい!俺は壁かよ!?だいたい、俺はママに貰った立派な名前があるんだ。…………アンドリュー・ギルバード・ミルズ。SAOではエギルという名で、両手斧使いで商人でもあった。今後ともよろしく。」
更にカウンターにいたマスターまで名乗ってきた。
彼もVRMMOプレイヤーだったことに驚いてしまう。
つまり、ここにいる全員が石動君とキリトとカルムとミトの4人と同じく、全員がVRMMOプレイヤーってことになる。
そうして、テーブルに座って、今回の『死銃事件』についての内容を手短に説明した。
それを話し終えると、明日奈さんが立ち上がる。
明日奈「ふぅん……………。全く。キリト君たちは、そういう事に首を突っ込むんだから。……………3人とも、そこに正座。」
冬馬「え?俺も?」
深澄「正座をさせるなら、キリトとカルムの二人で良いでしょ?」
明日奈「……………正座。」
和人「は、はい………………。」
そう言って、明日奈さんはキリト達を正座させて、説教を始める。
3人は、首を縮めていた。
しばらくして、説教を終えたのか、里香さんと話す。
里香「まあ……ともあれ、女の子のVRMMOプレイヤーとリアルで知り合えたのは嬉しいな。」
明日奈「本当だね。友達になってくださいね?朝田さん。」
篠崎さんと結城さんが笑みを見せてそう言ってきた。
しかし、私は2人のことを受け入れることができなかった。
あの事件以来、私には友達と言える存在がいなくなった。
私の過去を知ったら、私を避けるに違いないだろう。
彼女らとは友達になりたいと思いつつもそれは望めないことだ。
そんな中、石動君が話しかけた。
克己「詩乃、日この店に来てもらったのには理由がある。怒ったりするかもしれないと思ったけど、俺たちは詩乃に伝えたいことがあるんだ。そのことで、まずはお前に謝らなければならない。」
石動君は深く頭を下げてから、私を凝視した。
克己「実はここにいる全員に詩乃の昔の事件のことを話した。協力してもらうにはどうしても必要だった。」
詩乃「え……?」
明日奈「詩乃さん。実は、私とリズとキリト君と深澄とカルム君は、昨日の月曜日に学校を休んで、彼の知り合いと一緒に、以前あなたが住んでいた町に行ってきたの。」
明日奈さんの言葉に驚きを隠せなかった。
そこはあの事件があったところで、忘れたい、二度と帰りたくない場所だ。
――皆がそのことを知っている?
怖くなってこの場を離れそうとしたが、克己が私の腕を掴んだ。
克己「詩乃、待ってくれ。お前はまだ会うべき人に会っていない、聞くべき言葉を聞いていないと思ったからだ。お前を傷つける、お前に嫌われるかもしれないが、どうしても俺はそのままにしておけなかった。」
詩乃「え……?会うべき人、聞くべき言葉……?」
呆然としていると結城さんと兎澤さんが立ち上がって、店の奥に見えるドアへ歩いて行った。
そこにあるドアが開けられると、30歳くらいの1人の女性と小学校に入学する前だと思われる1人の女の子が出て来た。
顔がよく似ているから、きっと親子なのだろう。
でも、この親子は誰なんだろう。
女性が深々と一礼すると、微かに震えを帯びた声で名乗る。
大澤「はじめまして。朝田……詩乃さん、ですね?私は大澤祥恵と申します。この子は瑞恵、今年で4歳です。この子が生まれてくる前は……市の郵便局で働いていました。」
大澤さんが働いていた郵便局に心当たりがある。
そこはあの事件があった郵便局だ。
もしかして、彼女はあのとき、犯人に銃口を向けられていた女の職員の人……。
大澤「ごめんなさい……。本当にごめんなさいね、詩乃さん。もっと早くあなたにお会いしなければならなかったのに……。謝罪もお礼すらも言わずに……。あの事件のとき、お腹にこの子が居たんです。だから詩乃さん、あなたは私だけではなく、だけではなくこの子の命も救ってくれたの……。本当に……本当に、ありがとう。ありがとう……。」
詩乃「命を……救った……?」
私はあのとき、犯人を撃ち殺した。
でも、それと同時に救った命もある。
隣にいた石動君が話しかけてきた。
克己「シノン。お前はずっと自分を責め続けてきた。自分を罰しようとしてきた。それが間違いだとは言わない。だが、お前には、同時に自分が救った人たちのことを考える権利がある。そう考えて、自分自身を許す権利がある。それを、伝えたかった。」
すると、瑞恵ちゃんが椅子から降りて、私の方に来た。
肩にかけたポシェットから1枚の四つ折りにした画用紙を取り出す。それを広げ差し、私に出してきた。
画用紙にはクレヨンで男の人1人と女の人1人、そして小さな女の子が1人描かれていた。 これは瑞恵ちゃんたち家族の絵に違いない。
その上には覚えたばかりなのだろう平仮名で、『しのおねえさんへ』と書かれていた。
瑞恵「しのおねえさん、ママとみずえを、たすけてくれて、ありがとう。」
瑞恵ちゃんの言葉を聞き、私は堪えきれずに涙を流し始める。
その後、大澤親子は頭を下げながら帰っていった。
そして、石動君が私を家に送ってくれる事になった。
バイクに乗る中、石動君が話しかける。
克己「朝田。少し寄りたい所があるんだが、良いか?」
詩乃「え?い、良いけど……………。」
そう話して、バイクが走り出す。
しばらくして、到着したのは、人気の少ない公園だった。
詩乃「寄りたい所って……………ここ?」
克己「ああ。……………朝田。話がある。」
詩乃「…………話って?」
そこで、石動君が話があると言った。
私は、石動君を見つめる。
克己「俺は、ずっとお前を気にかけていた。お前の事が心配だった。あの事件の時、俺は何も出来なかった。だからこそ、死銃事件では、絶対に守ると誓った。」
詩乃「そう……………なんだ。」
克己「俺は、お前に言いたい事がある。朝田…………いや、詩乃の事が好きだ。」
石動君はそう言った。
それを聞いて、私は嬉しかった。
思いは同じだった事に。
詩乃「……………私も、あなたの事が好き。私の過去を知っても、変わらずに接してくれた。だから、私を石動君……………ううん。克己の恋人にして下さい。」
克己「ああ。」
私と克己は、そう言う。
過去の全てを受け入れられるようになるには、まだまだ長い時間がかかるだろう。
それでも私は、私が今居るこの世界が好きだ。
克己と一緒なら、大丈夫だと確信出来る。
そんな気がする。
今回はここまでです。
これにて、ファントム・バレットは終わりました。
そして、詩乃と克己の二人が、恋人となりました。
次回は、キャリバーに入っていきます。
もしかしたら、そーどあーと・おふらいんの話をやるかもしれませんが。
どっちをやるのかは、検討します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
そーどあーと・おふらいんは、どういう感じにやるのか、リクエストがあれば、活動報告にて受け付けます。
オーディナル・スケールや、アリシゼーションなどのリクエストがあれば、勿論受け付けます。
明日は、ギーツの映画が公開するので、楽しみです。
アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか
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刃王剣十聖刃
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オージャカリバー
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オージャカリバーZERO
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その他