クラインの掛け声の後、トンキーとジョンが空中ダンジョンの入り口へと送ってくれて、俺たちは、中へと突入していく。
ウルズ曰く、妖精たちに協力させる為に、地上に沢山の人型邪神を降ろしたそうで、以前、俺、キリト、ミト、アスナ、リーファ、アーロンと挑んだ際に比べて、楽だった。
フォーメーションとしては、俺、キリト、ミト、クライン、リーファ、アーロン、パラド、エターナルが前衛で、シリカ、リズベットが中衛、アスナ、シノンが後衛だ。
第一層のボスであるサイクロプス型の巨人を倒して、第二層を駆け抜けて、第二層のボス部屋まで来たのだが……。
リーファ「ヤバイよお兄ちゃん!金色の方、物理耐性が高すぎる……!」
パラド「理不尽すぎるだろ……!」
ユイ「衝撃波攻撃、二秒前!いち、ゼロ!」
ユイのカウントと共に、金色のミノタウロスが衝撃波攻撃を放つ。
そう、俺たちSAO組は、魔法が排除された世界で戦ってきたのだ。
その為、物理メインで行っていたが、こんな風に、魔法使いがいないとどうにもならない状況にもなり得る。
アスナ「キリト君!今のペースだと、あと150秒でMPが切れる!」
エターナル「くそ!黒いミノタウロスが、また回復してるぞ!」
クライン「野郎には物理が通るのに……!」
シリカ「金色が邪魔……!」
現状、物理耐性が極端に高い金ミノタウロスと、魔法耐性が極端に高い黒ミノタウロスと交戦してるが、黒ミノタウロスのHPを削っても、即座に下がって、金ミノタウロスが黒ミノタウロスをカバーするのだ。
厄介なAIだな。
それでも、魔法攻撃はしてこないのが、不幸中の幸いと言えよう。
リーファ「お兄ちゃん!メダリオンがもう7割以上黒くなってる!死に戻りしてる時間はなさそう……!」
キリト「………分かった。」
アーロン「時間が無いな……!」
そう、時間がない。
すると、キリトが何かを思いついたのか、叫ぶ。
キリト「皆!こうなったら出来る事は一つだ!一か八か金色をソードスキルの集中攻撃で倒し切る!」
今年の5月、アインクラッドが実装されたと同時に、ソードスキルも導入された。
リズベット武具店でユイとカナが言った通りに、上級ソードスキルには、属性も含まれている。
しかし、連撃数が多いソードスキルであるほど、硬直時間が長い。
もし、ミスをすれば、前衛と中衛は即座に全滅だ。
だが、これに賭ける。
クライン「うっしゃァ!その一言を待ってたぜキリの字!」
カルム「さて、行こうか!」
ミト「ええ!」
パラド「ああ!心が躍るな!!」
その発言に、全員が頷く。
すぐさま準備に入る。
キリト「シリカ!カウントで《泡》頼む!」
シリカ「OKです!」
キリト「……二、一、今!!」
シリカ「ピナ!バブルブレス!」
通常、ペットに対する命令は、どんなマスターテイマーでも、100%ではない。
だが、俺は、ピナがシリカの命令を無視するなんて事を見たことが無い。
ピナから放たれた泡は、大技を放とうとした金ミノタウロスの鼻先で破裂して、幻惑効果に囚われて、動きを止める。
キリト「ゴー!」
それをチャンスにして、俺たちは突撃していく。
クラインの刀にリーファの剣、ミトの鎌、パラドのガシャコンパラブレイガン、エターナルの短剣、シリカの短剣、リズベットのメイスが色んな色に光りながら金ミノタウロスに振るわれ、後方から、シノンの氷の矢、が火を吹く。
そして、キリトと俺も片手剣8連撃ソードスキルの《ハウリング・オクターブ》を放つ。
すると、キリトの左手の剣が光り出す。
クライン「に……《二刀流》だぁあ?いや……ALOにユニークスキルは存在しないはず……。」
そう、ユニークスキルは削除されたらしい。
つまり、エボリューションキングも使えるかどうか分からない。
しかし、キリトのアレは、キリトから教えてもらったが、《スキルコネクト》と言うらしい。
アレは、システム外スキルだ。
俺もやろうと思ったが、結構難しくて、良くても三連撃しか繋がらない。
だが、キリトは既に三連撃目へと入っている。
この間に、俺たちの硬直も解けて、またソードスキルを叩き込む。
一応、俺も、ハウリング・オクターブとサベージ・フルクラムを繋げるが、そこで終わる。
そして、キリトがヴォーパル・ストライクを放ち、キリトが貫通した。
アーロン「やりしたか!?」
ミト「いや、まだよ!」
そう、金ミノタウロスのHPゲージは、2%を残して停止した。
アーロン「早く離れてください!」
パラド「いや、まだ硬直してて動けねぇぞ、キリトの奴!」
アスナ「い………やあァァァ!!」
すると、後衛にいた筈のアスナが飛び出してきて、《ニュートロン》という細剣スキルを放って、金ミノタウロスに止めを刺した。
アスナ「大丈夫?キリト君。」
キリト「よく後衛から間に合ったなぁ。お見事。」
アスナ「ありがと。」
そうしている間にも、黒ミノタウロスが完全回復して、勝ち誇ったかのように大斧を振るうが、金ミノタウロスは爆散した。
…………え。
と言う様な表情で目を剥く黒ミノタウロスに俺たちの視線が向く。
クライン「………おーし、テメェ。そこで、正座!」
俺たちはこれまでの戦闘の鬱憤をぶつけるように、黒ミノタウロスをあっという間に撃破した。
すると、クラインがキリトに近づいて。
クライン「おらキリ公!オメェ何だよさっきのはよ!?」
キリト「………言わなきゃダメか?」
クライン「ったりめぇだ!見たことねぇぞあんなの!」
キリト「システム外スキルだよ。《スキルコネクト》。」
クライン「じゃあ、カルムのもか?」
カルム「まあ、俺の場合は、行っても三連撃までだよ。」
アスナ「ウッ……何か、凄いデジャブった気がするんだけど……。」
ミト「奇遇ね、私もよ。」
俺もだな。
何か、グリームアイズ戦を思い浮かべる。
まあ、俺は明かす様な物はないが。
アーロン「さて、のんびり話してる暇は無いと思うよ。リーファ、残り時間は、あとどれくらいになるんですか?」
リーファ「あ、うん。……今のペースだと1時間はあっても、2時間はなさそう。」
カルム「なるほどなぁ。………カナ。このダンジョンって、4層構造だよな?」
カナ「うん。三層の面積は二層の七割程度で、4層は殆どボス部屋だけ。」
カルム「ありがとう。」
俺は、教えてくれたカナに、人差し指で頭を撫でる。
すると、エターナルがキリトに話しかける。
エターナル「キリト。今頃、ヨツンヘイムのフィールドでは、《霜の巨人族》側のクエストを受けたプレイヤーが動物型邪神狩りが勢いを増している筈だ。」
キリト「残り時間は1時間か……。」
パラド「多分、30分で三層と四層を突破しねぇとな。」
アーロン「もう少し時間があれば、クエストを破棄できたり出来るんですが……。」
カルム「サクヤさんやアリシャ・ルーさんに援軍を要請してる暇は無いしな。」
ミト「どの道、私たちだけで、このダンジョンをクリアしないと行けないみたいね。」
そういう事になる。
すると、リズベットが近寄ってきて、キリトの背中をぶっ叩く。
リズベット「ほーら!こうなったら、邪神の王様だか何だか知らないけど、どーんと当たって《砕く》だけよ!」
作戦もへったくれもないが、それしかない。
キリト「……よし、全員HPとMP全快したな。そんじゃ、三層はさくさくっと片付けようぜ!」
こっからが凄かった。
何せ、最新型のインテリジェント・カーナビも裸足で逃げ出すナビゲーション・ピクシーが2人も居るしな。
奥の手である地図データにアクセスするというのを今回ばかりは解禁した。
パラドが不満顔だが、時間が無いことをパラドも承知している為、了承した。
次々立ちはだかる、レバーだの歯車だの踏みスイッチ等を駆使したパズル系ギミックをあっさりクリアしていく。
途中……。
ミト「………何これ?」
ユイ「女性アバター1名限定の、重量判定型圧力スイッチなのです。」
それを聞くと、俺たちの視線が、リーファに注がれる。
すると、リーファがハッとした様な表情をしたと思ったら、乗って、その後、キリト、クライン、アーロン、パラドをぶっ叩いた。
ちなみに、リーファ曰く、「体重が重いんじゃ無いもんッ!」らしい。
ちなみに、叩かれた面子は、アーロンを除いて、リーファの事をニヤニヤしながら見てた面子だ。
その際、アーロンは涙目になりながら、『理不尽だ……………。』と呟いていた。
2回の中ボス戦を挟み、三層のフロアボスにまで辿り着き、そこに居たのは、サイクロプスやミノタウロスの2倍近い体躯を誇る、長い下半身の左右にムカデよろしく10本の足が生えた気色悪い巨人だった。
物理耐性は然程のことは無かった。
しかし、その分攻撃力は高く、全滅寸前まで追い詰められた。
それでも、何とか足を一本ずつ切り落とし、最後は動けなくなった所を、キリトのスキルコネクトと俺のウィザーソードガンの攻撃で止めを刺した。
このままスリュムをニブルヘイムに叩き返さんと向かっていたが、判断に迷う一つの光景が現れた。
細長い氷柱で壁際に作られた檻の中に、女性が居たのだ。
俺たちに気付いたのか。
???「お願い……。私を……ここから、出して………。」
それを聞いて、クラインがフラフラと吸い寄せられるかの様に近づくが、キリトがバンダナの尻尾を掴む。
キリト「罠だ。」
カルム「罠だな。」
パラド「罠だ。」
シノン「罠よ。」
エターナル「罠だ。」
リズベット「罠だね。」
俺たちがそう言うと、クラインは微妙な表情で頭を掻く。
クライン「お、おう……罠、だよな。……罠、かな?」
往生際が悪いクラインに、俺とキリトはカナとユイに訊ねる。
すると、即答してきた。
ユイ「NPCです。女王ウルズさんと同じく、言語エンジンモジュールに接続しています。」
カナ「ただ、一点だけ違うのが、この人は、HPゲージが
カルム「NPCって、普通無効化されてるよな。死んだらクエストがスタックするし。」
スタックとは、様々な原因で、ゲームが移行しない事だ。
クラインが何かを思いついたかのような表情を浮かべるが。
アスナ「罠だよ。」
ミト「罠ね。」
シリカ「罠ですね。」
リーファ「罠だと思う。」
アーロン「十中八九罠でしょうね。」
クラインが何かを言おうとする直前に、ミト達はそう言う。
すると、クラインは眉を八の字に寄せて、眼を見開いて、口を窄めるという表情で俺とキリトに掴み寄ってきた。
キリト「も、もちろん罠じゃないかもしれないけど、今はトライ&エラーしてる余裕はないんだ。」
カルム「1秒でも早く、スリュムの所に辿り着かないと。ね!?」
クライン「お………おう、うむ、まあ、そうだよな、うん。」
流石のクラインも氷の檻から視線を外して、俺たちは奥の階段へと進む。
???「………お願い……誰か………。」
正直言うと、俺も助けたいが、これはALOの存続がかかってるのだ。
無用のリスクは背負うべきではない。
すると、クラインが足を止めた。
クライン「………罠だよな。罠だ、分かってる。………でも、罠でもよ。罠だと分かっていてもよ………。それでもオリャぁ………どうしても、ここであの人を置いていけねェんだよ!例え……例えそれでクエが失敗して……アルンが崩壊しちまっても……それでもここで助けるのが、それが、俺の生き様………武士道ってヤツなんだよォ!」
そう言って、檻の方に戻って行った。
その際に、俺達全員が思った事がある。
それは。
………………かっこいいけど、アホや。
そう思いながら、俺たちは呆れの表情を浮かべる。
クラインは居合い系ソードスキル《辻風》を発動して、氷柱の檻を壊した。
クラインに助けられた女性が囁く。
???「………ありがとう、妖精の剣士様。」
クライン「立てるかい?怪我ァねぇか?」
クラインが右手を差し出すのを見て、俺たちはジト目になっていた。
クラインは、完全に入り込んでいた。
俺たちのジト目すら気にならないほどに。
パラド「何やってんだ、アイツ?」
カルム「さあ?」
???「ええ………大丈夫です。」
クライン「出口まではちょっと遠いけど、1人で帰れるかい、姉さん?」
???「…………。」
カーディナルの自動応答言語化モジュール・エンジンは、プレイヤーとの応答をかなりの数をラーニングする物だ。
それが幾つかのブレイクスルーやシンギュラリティに達すると、ユイやカナ、パラドみたいな感じになる。
すると、女性が顔を上げる。
???「………私は、このまま城から逃げ出す訳には行かないのです。巨人の王スリュムに盗まれた、一族の宝物を取り戻すために忍び込んだのです。どうか、私もスリュムの元へと連れて行ってもらえませんか?」
クライン「お………う………むぅ………。」
ミト「何か、キナ臭い展開になったわね。」
カルム「そうだな。」
その女性がそう言う中、俺とミトはそう話す。
すると、クラインが俺とキリトを見る。
クライン「お……………おい、キリの字、カルの字よう……………。」
カルム「そんな情け無い顔で俺たちを見るな。」
キリト「あーもー……………。分かった!分かったって。こうなりゃ最後までこの
まあ良いか。
まだ罠だとは決まった訳じゃないし。
俺とキリトがそう言うと、クラインは叫ぶ。
クライン「おっしゃ!引き受けたぜ、姉さん!袖擦り合うも一蓮托生!一緒にスリュムのヤローをブッチめようぜ!」
???「ありがとうございます!剣士様!」
クラインがそう言うと、その女性は腕を掴み、クラインは鼻の下を伸ばす。
ユイ「旅は道連れ♪」
カナ「余は満足♪」
キリト「ユイに妙なことわざを聞かせるなよなー。」
カルム「カナにもな。」
俺とキリトはそう言って、キリトはパーティー入りを受諾する。
新たに追加された名前は、【Freyja】と書いてあった。
恐らく、フレイヤと呼ぶのだろう。
すると、キリトが口を開く。
キリト「皆!ダンジョンの構造からして、あの階段を降りたらすぐラスボスの部屋だ。今までのボスよりも更に強いだろうけど、あとは小細工抜きでぶつかってみるしかない。序盤は、攻撃パターンを掴めるまで防御主体。反撃のタイミングは指示する。ボスのゲージが黄色くなるとこと赤くなるとこでパターンが変わるだろうから注意してくれ。……………それじゃあ、ラストバトル、全開でぶっ飛ばそうぜ!」
一同「おーーーっ!!」
キリトがそう言うのに対して、俺たちとフレイヤさんはそう叫ぶ。
今回はここまでです。
女性に弱いクライン。
そのクラインは、武士道に従い、フレイヤを助ける。
相変わらずという感じでしたね。
次回は、トール戦に入っていきます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
マザーズ・ロザリオ、オーディナル・スケールに相当する話、アリシゼーションなどでリクエストがあれば、活動報告にて受け付けています。
アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか
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